第2節 少年の非行防止と健全育成

 1 深刻な少年非行情勢
 平成11年は,刑法犯少年や薬物乱用少年の検挙人員は減少したものの,凶悪犯の検挙人員は依然として多く,凶悪犯の集団化の進行,ひったくりの急増のほか,校内暴力事件,いじめに起因する事件の増加等,少年非行情勢は「戦後第4の波」にあって依然として深刻な状況にある(第1章第2節4(6)参照)。
 (1) 少年非行の概況
 ア 少年非行情勢
 平成11年中の刑法犯少年の検挙人員は14万1,721人(前年比1万5,664人(10.0%)減)で,7年以降4年ぶりに減少した。また,刑法犯総検挙人員に占める少年の割合は44.9%(前年比3.6ポイント減),刑法犯少年の人口比は15.6(1.3減)とそれぞれ減少した。
 11年中の刑法犯少年の包括罪種別検挙状況は,表2-6のとおりで,窃盗犯が8万6,561人(全体の61.1%)で最も多い。また,初発型非行(万引き,自転車盗,オートバイ盗及び占有離脱物横領の4種をいう。)で検挙した少年は10万4,644人で,刑法犯少年総数に占める割合は73.8%(前年比1.8ポイント減)となった。
 また,11年中の触法少年(刑法)の補導人員は2万2,503人で,前年に比べ4,402人(16.4%)減少した。
 イ 平成11年の少年非行の主な特徴
 (ア) 深刻な状況にある凶悪犯罪
 11年中に凶悪犯で検挙した刑法犯少年は2,237人(前年比40人(1.8%)増)で,3年連続で2,000人を超えた。罪種別にみると,強盗1,611人(73人(4.7%)増),放火90人(1人(1.1%)増)が増加し,殺人110人(5人(4.3%)減),強姦426人(29人(6.4%)減)が減少した。特に強盗の検挙人員は,昭和42年以降の最悪を記録した平成9年に次ぐ数字となった。
 また,11年中の少年による刃物使用事件の検挙件数は343件で,前年に比べ24件(6.5%)減少したが,このうち凶悪犯の検挙件数は167件で,11件(7.1%)増加した。なかでも刃物を使用した強盗は130件で,前年に比べ36件(38.3%)増加し,過去10年間では2.9倍となっている。
 少年による凶悪犯の検挙件数のうち,共犯者のいる事件は602件(前年比2件(0.3%)減)で,全体の57.2%(0.9ポイント増)を占め,過去10年間で2.4倍,その割合は21.1ポイントの増加となっている。とりわけ3人以上の集団による凶悪犯の共犯事件の検挙件数は414件で,前年に比べ29件(7.5%)増加し,凶悪犯の共犯事件全体の68.8%を占め,過去10年間で3.0倍,その割合も12.1ポイントの増加となっており,少年による凶悪犯の集団化が進行している。
 2年以降の凶悪犯少年の検挙人員の推移は,図2-3のとおりである。
 [事例] 11年11月,中学生及び高校生から成るグループの構成員19人は,同グループの高校2年生(17)が集会に参加しないことに憤慨し,共謀の上,公園に呼び出して殴る蹴るの暴行を加え殺害した。同月,殺人罪で検挙した(群馬)。
 (イ) ひったくりの急増
 11年中にひったくりで検挙した少年は2,420人で,前年に比べ549人(29.3%)増加した。6年以降一貫して急増傾向にあるひったくりの検挙人員は,統計を取り始めた昭和47年の11.1倍と最悪を記録している。また,検挙件数は1万1,829件で,前年に比べ1,505件(14.6%)増加しており,過去10年間では8.0倍となっている。
 [事例] 男子中学生(15)ら9人は,10年10月から11年1月までの間,バイクに2人乗りして,ひったくりにより,通行中の女性からハンドバッグを奪うなどした。少年らは,同様の手口で計49件,被害総額267万円の犯行を行っていた。4月,窃盗罪で検挙した(大阪)。
 (2) 少年の薬物乱用
 平成11年中に覚せい剤事犯,大麻事犯及びシンナー等の乱用で検挙した犯罪少年の学職別状況は,表2-7のとおりである。
 11年中に覚せい剤事犯で検挙した犯罪少年は996人で,前年に比べ74人(6.9%)減少した(図2-4)。このうち,中学生の検挙人員は24人(15人(38.5%)減),高校生は81人(17人(17.3%)減)と前年に比べいずれも減少した。
 少年による覚せい剤事犯の検挙人員は,2年連続で減少となったものの,最近の少年の覚せい剤乱用の背景には,少年でも繁華街や駅前等で外国人等の密売人から容易に覚せい剤を入手できる状況となっていること,少年が覚せい剤に対し,「ダイエット効果がある」等と誤った認識を持っていたり,「S(エス)」とか「スピード」等と呼び,抵抗感が希薄になっていたりするなど,少年に薬物の危険性・有害性についての認識が欠如していることが挙げられ,依然として予断を許さない状況にある。
 [事例] 11年8月,女子中学生(14)ら2人は,知り合いの男性から覚せい剤を勧められ,興味本位で,同人から覚せい剤の注射を受けるなどして乱用した。同月,覚せい剤取締法違反で検挙した(愛知)。
 (3) 校内暴力,いじめに起因する事件
 平成11年中に警察が取り扱った校内暴力事件の事件数は707件,検挙・補導人員は1,220人で,前年に比べそれぞれ46件(7.0%),12人(1.0%)増加した。また,校内暴力事件のうち教師に対するものは,事件数481件,検挙・補導人員588人で,前年に比べそれぞれ35件(7.8%),19人(3.3%)増加し,件数,人員とも4年連続の増加となった。
 また,11年中に警察が取り扱ったいじめ(注)に起因する事件の件数は137件,検挙・補導した少年は369人で,前年に比べ件数で39件(39.8%),検挙・補導人員で101人(37.7%)増加した。7年以降のいじめに起因する事件で検挙・補導した少年の推移は,図2-5のとおりである。
 いじめにより少年を検挙・補導した事件について,いじめた原因,動機をみると,被害少年が「力が弱い・無抵抗」とするものが49件(35.8%)で最も多い。また,発生場所をみると,学校外が69件(52.7%)となっている。
 (注) 「いじめ」とは,単独又は複数の特定人に対し,身体に対する物理的攻撃又は言動による脅し,いやがらせ,無視等の心理的圧迫を反復継続して加えることにより,苦痛を与えること(ただし,番長グループや暴走族同士による対立抗争事案を除く。)をいう。
 (4) 女子少年の性の逸脱行為
 平成11年中に性の逸脱行為で補導・保護した女子少年(注)は4,475人で,前年に比べ35人(0.8%)減少した。学職別では,中・高校生が全体の67.8%を占めている。
 また,このうち「遊ぶ金欲しさ」を動機とする者は1,810人で,前年に比べ118人(6.1%)減少したが,過去10年間では1.9倍となっている(表2-8)。
 (注) 「性の逸脱行為で補導・保護した女子少年」とは,売春防止法違反事件の売春をしていた女子少年,児童福祉法違反(淫行をさせる行為)事件,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下「児童買春・児童ポルノ法」という。)違反(児童買春,児童ポルノ製造)事件,青少年保護育成条例違反(みだらな性行為)事件及び刑法上の淫行勧誘事件の被害女子少年,ぐ犯少年のうち不純な性行為を行っていた女子少年並びに不良行為少年のうち不純な性行為を反復していた女子少年をいう。
 2 犯罪等による少年の被害の状況
 (1) 少年が被害者となる刑法犯の状況
 平成11年中に少年が被害者となった刑法犯の認知件数は31万3,985件で,前年に比べ6,283件(2.0%)減少した。
 罪種別にみると,凶悪犯被害が1,600件,粗暴犯被害が1万7,274件で,前年に比べそれぞれ77件(5.1%),930件(5.7%)増加した。特に,少年の凶悪犯被害が昭和59年以来最悪を記録したほか,少年の性犯罪(強姦及び強制わいせつ)被害が4,367件(前年比730件(20.1%)増)と大幅に増加するなど,少年の犯罪被害の深刻化がうかがわれる。
 性犯罪被害について学職別でみると,高校生の被害が1,446件(強姦329件,強制わいせつ1,117件)と最も多く,次いで小学生,中学生となっている(表2-9)。
 (2) 少年の福祉を害する犯罪
 警察では,少年の心身に有害な影響を与え,また,少年の非行を助長する原因ともなる福祉犯の取締りを推進するとともに,その被害を受けている少年の発見・保護に努めている。
 平成11年中に福祉犯の被害者となった少年は1万727人で,前年に比べ708人(6.2%)減少した。学職別では,高校生が3,649人(34.0%)と最も多く,次いで無職少年となっている(表2-10)。
 また,11年中の福祉犯の検挙人員は8,182人で,前年に比べ557人(6.4%)減少した。法令別では,青少年保護育成条例(テレホンクラブ等規制条例を含む。)違反が最も多く,次いで毒物及び劇物取締法違反となっている(図2-6)。
 (3) 児童買春・児童ポルノ問題
 国際的にも問題となっている児童買春や児童ポルノは,児童の権利保護や健全育成を図る上で大きな問題である。平成11年11月,児童買春・児童ポルノ法が施行されたことから,同法による積極的な取締りに努めており,12年4月末現在,346件,264人を検挙している。
 [事例] 11年12月,インターネットで知り合った女子高校生(15)に金品を供与してみだらな行為を行い,その状況をビデオで撮影して児童ポルノを販売する目的で製造した会社員(35)を児童買春・児童ポルノ法違反で検挙した(愛知)。
 また,被害に遭った児童の保護の観点から,被害児童の受けた精神的打撃を軽減し,早期立ち直りを図るため,心理学等に関する知識や豊富な経験を有する警察職員等による継続的な支援を実施している。
 (4) 児童虐待問題
 近年,保護者が子どもに対し暴行を加えるなどの児童虐待が大きな社会問題となっており,警察に寄せられる児童虐待に関する相談件数も増加傾向にある。
 平成11年中に警察が受理した児童虐待に関する相談件数は924件で,前年に比べ511件(123.7%)増加し,最近5年間では7.6倍となっている(表2-11)。
 また,11年中に警察が取り扱った児童虐待事件(注)は,事件数は120件,検挙人員は130人であり,被害少年124人のうち45人(36.3%)が死亡していた。
 (注) 保護者が,その監護する児童(18歳に満たない者)に対して加える行為で,身体的虐待,性的虐待,監護の怠慢・拒否及び心理的虐待をいう。
 [事例] 11年11月,無職の女(37)とその内縁の男(35)は,自宅において,次女(4)の行儀作法が悪く素直に言うことを聞かないことに激昂し,殴る蹴るなどの暴行を加え,全治約1か月の傷害を負わせた。同月,傷害罪で検挙した(埼玉)。
 3 総合的な少年非行対策の推進
 (1) 少年サポートセンターの活動を中心とした非行防止対策の推進
 最近の少年非行の特徴として「いきなり」型の重大な非行が目立つことが挙げられるが,こうした少年についても,重大な非行に走るまでには,飲酒,喫煙や深夜遊興等の不良行為があることが指摘されており,少年の重大な非行を防止する上で,補導段階での適切な対応が極めて重要である。
 また,人格形成期にある少年が犯罪,いじめ,児童虐待等により被害を受けた場合,その心身に極めて大きな打撃を受け,その後の健全育成に支障が生じるおそれが大きいことから,心理学的立場からの専門的なカウンセリングを施すなど,少年の精神的負担を軽減し,立ち直りを図るための施策を進めることが重要である。
 警察では,このような観点に立って,不良行為少年の補導段階で,個々の少年や家庭に対する助言・指導の充実を図るとともに,犯罪等の被害により心身にダメージを受けた少年の支援を強化するため,全国の警察に,少年補導職員や少年相談専門職員等を中核とした「少年サポートセンター」を設置し,次のような取組みを推進している。
 ア 少年警察ボランティアや学校関係者等との共同での補導活動の強化
 警察では,盛り場,公園等非行の行われやすい場所での街頭補導等の補導活動を日常的に実施し,重大な非行の前兆ともなり得る不良行為等の問題行動を早期に認知して,少年やその家庭等に対する適切な助言,指導等に努めている。
 また,社会としての非行防止機能の向上をも視野に入れ,移動補導センター用車(注)を活用し,少年警察ボランティアや学校関係者,市町村の少年補導センター等と共同しての補導活動を積極的に推進している。
 (注) 少年のプライバシーの保護,カウンセリングの実施等の機能を備えた車両で,全国の警察に配備されている。
 イ 関係機関・団体等とのネットワークの構築と少年やその家庭等に対する支援活動の充実強化
 少年問題に対しては,関係機関・団体が相互に連携を強化し,社会全体として取り組んでいくことが重要である。そのため,警察では,少年サポートセンターをキーステーションとして関係機関・団体との日常的な情報交換,意見交換等を行い,少年や家庭等に対する支援体制の充実強化に向けたネットワークの構築に努めている。
 ウ 情報発信活動の充実強化
 最近の少年非行の深刻化の背景の一つとして,少年の規範意識の欠如や家庭,地域社会の無関心が指摘されている。
 警察では,少年の規範意識の形成や家庭,地域の共通の問題認識の醸成を図るため,警察活動で得た生きた情報の社会への還元に力を入れており,学校に警察職員を派遣して行う薬物乱用防止教室の開催や学校,地域と連携した非行防止教室や座談会の開催等,情報発信活動の充実強化に努めている。
 (2) 少年の薬物乱用防止対策
 少年による薬物乱用が依然として高い水準にあることから,警察では,①覚せい剤等の供給源に対する取締りの強化,②薬物乱用少年の発見・補導等の強化,③教育委員会,学校等との連携の強化,④家庭,地域に対する広報啓発活動の強化を四本柱として,少年の薬物乱用防止のための総合的な対策を推進している。
 特に,少年に薬物の危険性・有害性についての正しい認識を持たせることが重要であることから,警察職員を学校等に派遣して行う薬物乱用防止教室の開催に力を入れており,平成11年度は,全国の高校の75.0%に当たる4,170校,中学校の62.9%に当たる7,091校で開催したほか,全国の警察に配備された薬物乱用防止広報車も活用して地域での開催にも努めている。
 また,警察では,薬物乱用少年に対して,再乱用を防止する観点から,必要に応じて継続的な指導・助言を行うなど,少しでも早い段階での立ち直りを支援しており,9都道府県警察では,再乱用防止対策を効果的に実施するため,警察,学校,医療機関,保健所等の実務担当者による「薬物乱用防止チーム」を結成し,チームによる支援活動を推進している。
 (3) 少年を取り巻く環境の浄化
 最近における少年非行情勢の深刻化の背景の一つとして,少年を取り巻く環境の悪化が挙げられることから,警察では,少年をむしばむ行為の取締りを強化するとともに,地域住民や関係機関・団体等と連携して,性を売り物とする営業に対する指導取締り,少年に対する有害情報の氾濫の抑止,不良行為を助長する環境の浄化,少年に対する暴力団の影響の排除等の対策に努めている。また,特に環境浄化の必要性の高い地域を「少年を守る環境浄化重点地区」(平成12年3月現在,全国276か所)に指定しており,少年のたまり場等の浄化運動,環境浄化住民大会の開催等の環境浄化活動を推進している。
 ア 性を売り物とする営業に対する指導取締り
 テレホンクラブ営業や性風俗特殊営業等の性を売り物とする営業は,性の逸脱行為や福祉犯被害のきっかけとなるおそれが大きいことから,警察では,風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下「風営適正化法」という。)等の法令による指導取締りに努めている。
 特に,テレホンクラブ営業は,同営業に係る女子少年の性被害が多発しているとともに,「援助交際」と称する買春の温床となっていることから,テレホンクラブ等を規制する都道府県条例により,広告・宣伝に関する規制等に違反する行為の取締りや都道府県公安委員会等による行政処分等条例の適切な運用に努めている。
 イ 少年に対する有害情報の氾濫の抑止
 性や暴力等に関する過激な情報を内容とする雑誌,ビデオ,コンピュータ・ソフト等が一般書店やコンビニエンスストア等で販売されており,少年でも簡単に入手できることから,警察では,関係機関・団体や地域住民等と協力して,関係業界による自主的措置の促進を図るとともに,個別の業者に対する指導や悪質な業者の取締りに努めている。
 特に,最近では,インターネット等コンピュータ・ネットワークを通じて,少年でも有害な情報に容易にアクセスできる状況が出現していることから,ネットワーク上の少年に有害な情報に関する総合的な対策を推進している(第4節1(3)参照)。
 ウ 不良行為を助長する環境の浄化
 カラオケボックス等の娯楽施設やコンビニエンスストアは,深夜における不良行為少年のたまり場となったり,飲酒,喫煙等の不良行為が行われるおそれが大きいことから,警察では,こうした営業に係る少年の不良行為の実態掌握や街頭補導活動を強化するとともに,法令に違反する行為の取締りに努めている。
 また,警察庁では,学識経験者等の参加を得て,少年の不良行為を助長するおそれの大きい社会環境対策の在り方についての検討を行っている。
 エ 少年に対する暴力団等の影響の排除
 11年中に暴力団等が関与する福祉犯の被害者となった少年は1,587人で,福祉犯被害少年総数の14.8%を占め,暴力団等が少年に対する薬物の密売や少女の売買春等悪質性の高い事案に関与している実態がみられる。また,11年中に把握された少年の暴力団員の総数は,全国で522人で,このほか790人の少年が暴力団の影響を強く受けて加入を勧誘されており,さらに,205の暴走族等の集団が暴力団の影響下にあるとみられている。
 警察では,暴力団等が関与する福祉犯等の取締りに努めるとともに,少年の暴力団員の離脱の促進や加入の阻止等,少年に対する暴力団等の影響の排除に努めている。
 (4) 児童虐待への取組み
 児童虐待は,人格形成期にある児童の心身に深刻な影響を及ぼす重大な問題である。警察では,児童の生命及び身体を守り,その健全育成を図る観点から,この問題を少年保護対策の最重要課題の一つとして位置付け,積極的に取り組んでいる。
 児童虐待は,早期に認知することが重要であることから,警察では,街頭補導,少年相談,110番通報の受理等の各種活動を通じて,児童虐待事案の早期発見に努めており,犯罪に該当するものは事件として厳正に措置している。また,保護者に監護させることが不適当であると認める児童については,児童相談所等に通告を行うほか,児童相談所,保健医療機関,学校,民間の被害者相談室等関係機関・団体との連携を図りながら,全国の警察の少年サポートセンターに配置されている少年相談専門職員や少年補導職員等が中心となって,面接や家庭訪問等による被害児童のカウンセリング,保護者に対する助言・指導等の支援活動を実施している。
 (5) 少年相談活動
 警察では,少年の非行,家出,自殺等の未然防止とその兆候の早期発見や犯罪,いじめ,児童虐待等に係る被害少年等の保護のために少年相談の窓口を設け,少年や保護者等からの悩みや困りごとの相談を受け,教育学,心理学等に関する知識を有する専門職員や経験豊富な少年補導職員,少年係の警察官が必要な助言や指導を行っている。また,「ヤング・テレホン・コーナー」等の名称で電話による相談窓口を設けているほか,ファックスの設置やフリーダイヤルの導入等,少年が相談しやすい環境の整備を図っている。
 平成11年中に警察が受理した少年相談の件数は9万6,962件(前年比4,694件(5.1%)増)となった。このうち,保護者等からの相談が7万7,423件で,全体の79.8%を占めている。また,相談の内容についてみると,少年自身からの相談では性,健康問題に関するものが,保護者等からの相談では非行問題に関するものが最も多くなっている(図2-7)。さらに,継続的助言・指導を必要とする相談は2万1,588件で,全体の22,3%を占めている。
 (6) 少年の社会参加,スポーツ活動
 警察では,関係機関・団体,地域社会と協力しながら,環境美化活動,社会福祉活動等の社会奉仕活動や伝統文化の継承活動,地域の産業の生産体験活動等地域の実態に即した様々な少年の社会参加活動を展開している。また,スポーツ活動については,特に,警察署の道場を開放して地域の少年に柔道や剣道の指導を行う少年柔剣道教室を全国的に展開しており,平成11年中は約1,000警察署において,約6万人の少年が参加した。これらの教室に通う少年が参加して,11年8月には,(財)全国防犯協会連合会及び(社)全国少年補導員協会の共催による「第12回全国警察少年柔道・剣道大会」が開催された。
 (7) ボランティア活動
 警察では,少年の非行を防止し,その健全な育成を図るため,約6,000人の少年指導委員,約5万1,000人の少年補導員,約1,100人の少年警察協助員等のボランティアを委嘱している(平成12年4月1日現在)。少年指導委員は,風営適正化法に基づき,都道府県公安委員会の委嘱を受け,少年を有害な風俗環境の影響から守るための少年補導活動や風俗営業者等への協力要請活動に,少年補導員は,街頭補導活動,環境浄化活動を始めとする幅広い非行防止活動に,少年警察協助員は,非行集団の解体補導活動に,それぞれ従事している。
 警察では,少年補導職員等の警察職員とこうしたボランティアとの連携の強化を図っており,警察職員とボランティアとが一体となった地域に密着したきめ細やかな活動の展開に努めている。
 また,(社)全国少年補導員協会は,全国各地で行われているこれらの活動を支援しているほか,11年11月には,ボランティア,PTA等約400人の参加を得て少年問題シンポジウム「子どもを非行から守るために~いま,地域社会に何ができるか」を(財)社会安全研究財団と共催するなど,少年の非行防止と健全育成を目指した活動を推進している。


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