第1節 相次ぐ不祥事案の発生


 平成11年中の懲戒免職事案の件数及び処分者数は38件39人,12年上半期のそれらは33件38人であり,10年の14件19人と比べ,増加している。
 11年9月以降発生・発覚した不祥事案では,県警察の幹部自らの違法行為について責任を問われた事案,警察が地域住民の切実な訴えに対し不適切な対応をした事案が目立ったが,このうち,特に社会的反響が大きく,国民から強く批判されたものの概要は,下記のとおりである。
 神奈川県相模原南警察署の巡査長が,10年11月,押収品を持ち出し,その押収品を示して女性に交際を強要するなどした事案及び同県厚木警察署集団警ら隊の巡査部長らが,11年3月から7月までの間,同僚隊員数人に対し暴行を加えるなどした事案をめぐり,処理の適正を欠いたとして,11年9月,同県警察本部長らが減給の処分を受けた。
 こうした中,8年12月に発生した同県警察本部警備部外事課の警部補による覚せい剤使用事案について,本来行わなければならない捜査を行わず,当該事案を隠ぺいした上,同警部補を他の事実を理由に諭旨免職にしていた疑いが浮上した。同県警察本部では,11年11月,覚せい剤取締法違反で元外事課警部補を逮捕する一方,元同県警察本部長らに係る犯人隠避等事件を横浜地方検察庁に送致した。12月には,元同県警察本部警務部長らが懲戒免職等の処分を受けた。
 また,12年1月,新潟県柏崎市において,9年2か月間にわたって監禁されていた女性が,被疑者の母親からの要請により被疑者宅を訪れた保健所職員等によって発見・保護された。この女性の発見の過程において,同県柏崎警察署が,保健所職員からの警察官出動要請に対し,不適切な対応を行ったほか,同県警察本部は,同女性の発見の経過について事実と異なる発表をした。さらに,女性が発見された日の夜,同県警察に対する特別監察のため訪県中の関東管区警察局長と監察を受ける立場であった同県警察本部長らは,旅館において不適切な会食,遊興を続けた。この事案をめぐっては,12年2月,同警察本部長が減給の処分を受けるとともに,同人及び関東管区警察局長が引責辞職したほか,3月,警察庁長官が同管区警察局長に対する監督責任を問われ,減給処分を受けた。
 さらに,埼玉県上尾警察署が,同県上尾市在住の女性の自宅付近において同女性を中傷したビラが多数はられるなどした名誉毀損事件を捜査中の11年10月,同県桶川市において同女性が殺害される事件が発生した。この名誉毀損事件の捜査をめぐって,同警察署が,11年6月の被害申告時から被害女性らの訴えに対し不適切な発言と消極的な対応を繰り返し,また,捜査書類を偽変造していたことが12年4月に発覚し,同月,同警察署刑事第二課長らが懲戒免職の処分を受けるとともに,虚偽公文書作成等で送致されたほか,同県警察本部長,上尾警察署長らの幹部も減給等の処分を受けた。
 また,栃木県上三川町在住の少年が,2か月間余りにわたって各地を連れ回され,その間に金銭の要求や暴行を繰り返し受けた後,11年12月,同県内の山林において殺害される事件が発生した。同少年の家出人捜索願を10月に受理していた同県石橋警察署が,少年の両親からの再三にわたる相談や捜査要請に対し,事実関係の調査を怠るなど不適切な対応を行っていたことが12年5月,発覚し,同警察署生活安全課長らが停職等の処分を受けた。
 上記事案のほか,捜査関係事項照会により得た情報を漏えいした事案,交通違反の不正抹消登録事案,女性の被留置者に対しわいせつな行為をした事案等が相次いで発生・発覚した。


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