第5節 良好な生活環境の保持

1 風俗営業の健全化と風俗環境の浄化

 警察では、風営適正化法等に基づき、風俗営業に対して必要な規制を加えるとともに、風俗営業者の自主的な健全化のための活動を支援し、業務の適正化を図っている。
 また、平成10年には、無店舗型性風俗特殊営業(派遣型ファッションヘルスやアダルトビデオ等の通信販売)、映像送信型性風俗特殊営業(インターネット等を利用して客にポルノ映像を見せる営業)及び接客業務受託営業(風俗営業者等から委託を受けて風俗営業所等において接客業務の一部を行う営業)が新たに規制の対象とされることなどを内容とする風営適正化法の改正がなされ、同法の適正な施行に努めている。
(1) 風俗営業の健全化
ア 風俗営業の状況
 最近5年間の接待飲食等営業(第2条第1項第1号から第6号までに規定する営業)及び遊技場営業(第2条第1項第7号及び第8号に規定する営業)の営業所数の推移は、それぞれ表2-19及び表2-20のとおりである。
 接待飲食等営業及び遊技場営業の営業所数は、共に減少傾向にある。特にダンスホール等(第2条第1項第4号に規定する営業)は、風営適正化法の改正により、一定の要件に該当するダンス教授営業が除外されたことから半減した。
イ 風俗営業の健全化に向けた施策の推進
(ア) 風俗営業からの暴力団排除
 ぱちんこ営業等の風俗営業に対する暴力団の関与は、その営業の健全化を阻害する大きな要因となっているが、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律施行後、風俗営業者の間でも暴力団排除気運が盛り上がりをみせている。しかし、依然として、用心棒料等名下にみかじめ料を提供したり、暴力団から高額で芳香剤等を購入したりするなど、暴力団と関係を有する営業者がみられるほか、暴力団が関与する風俗関係事犯も後を絶たない。このため、警察では、暴力団が関与する事件の取締りを強化するとともに、風俗営業者の管理者講習や各種会合において暴力団排除講習等を行うなど、風俗営業者の自主的な暴力団排除活動を積極的に支援している。
(イ) ぱちんこ営業の健全化
 ぱちんこ営業は、国民の身近で手軽な大衆娯楽となっているが、パソコンを利用して出玉を操作する「遠隔操作」をはじめとする営業者による遊技機の不正改造事犯が後を絶たない

表2-19 風俗営業(接待飲食等営業)の営業所数の推移(平成6~10年)

表2-20 風俗営業(遊技場営業)の営業所数の推移(平成6~10年)

など、依然として健全化を阻害する要因は少なくない。このため、警察では、遊技機の不正改造事犯等の取締りを強化するとともに、関係団体による自主的な健全化のための活動を支援するなど、ぱちんこ営業の健全化を図っている。
 また、ぱちんこプリペイドカードの変造・行使事犯の検挙件数については、平成9年以降大幅に減少している。
(2) 店舗型性風俗特殊営業等の状況
ア 店舗型性風俗特殊営業の状況
 最近5年間の店舗型性風俗特殊営業(第2条第6項に規定する営業、風営適正化法改正前の風俗関連営業)の営業所数は、表2-21のとおりであり、平成10年中の店舗型性風俗特殊営業の違反態様別検挙状況は、図2-16のとおりである。
 店舗型性風俗特殊営業の営業所数は、全体として減少傾向が続いている。
イ 深夜飲食店営業の状況
 最近5年間の深夜飲食店営業(第2条第9項第3号に規定する営業で深夜において営むもの)の営業所数の推移は、表2-22のとおりである。

表2-21 店舗型性風俗特殊営業の営業所数の推移(平成6~10年)

図2-16 店舗型性風俗特殊営業の違反態様別検挙状況(平成10年)

表2-22 深夜飲食店営業の営業所数の推移(平成6~10年)

(3) 売春事犯等及び風俗関係事犯の現状
 最近5年間の売春防止法違反の検挙状況は、表2-23のとおりである。これらの売春事犯の総検挙人員に占める暴力団の構成員及び準構成員の割合は20.9%(306人)であり、売春事犯が暴力団の資金源になっていることがうかがわれる。形態としては、公衆電話ボックス

表2-23 売春防止法違反の検挙状況(平成6~10年)

等にピンクビラをはり付け、売春を誘引したり、客との連絡に携帯電話や転送電話等を利用して売春をあっせんしたりしており、また、外国人女性に売春を強要するなど悪質な飲食店経営者等による売春事犯も後を絶たない状況にある(第1章第1節2(6)参照)。
 わいせつ事犯の検挙状況は、表2-24のとおりである。

表2-24 わいせつ事犯の検挙状況(平成6~10年)

 最近は、パソコン通信やインターネットを利用してわいせつな映像を公然と閲覧させたり、わいせつな画像情報を記憶させたCD-ROM等を販売したりするという新たな形態の事犯が増加している(第3章第3節1(3)参照)。
 ゲーム機等を使用した賭博事犯の検挙状況は、表2-25のとおりである。最近は、トランプゲームやルーレット用の設備を設けて遊技をさせる「カジノバー」といわれる営業における賭博事犯が多くなっている。また、ノミ行為事犯の検挙状況は、表2-26のとおりである。
(4) 風俗環境の浄化活動
ア 風俗環境浄化協会の活動
 風俗環境浄化協会は、民間における環境浄化の気運を一層促進するため、風俗環境に関する苦情の処理、風営適正化法に違反する行為を防止するための啓発活動、少年指導委員の活動に対する援助等を行っているほか、都道府県公安委員会の委託を受けて、風俗営業の営業

表2-25 ゲーム機等を使用した賭博事犯の検挙状況(平成6~10年)

表2-26 ノミ行為事犯の検挙状況(平成6~10年)

所ごとに選任された管理者を対象に、風営適正化法に規定する遵守事項や暴力団からみかじめ料等を要求された場合の対応要領等について指導を行う管理者講習を実施している。
イ 地域住民と連携した風俗環境浄化活動
 警察では、売春やわいせつビデオテープの販売等を目的として一般家庭にまで大量に配布されているピンクチラシの作成、配布に関与した者を取り締まるなど、悪質な風俗関係事犯の積極的な取締りを推進するとともに、地域住民や関係団体と協力して風俗環境の浄化に努めている。
[事例] 仙台市国分町地区では、デートクラブや派遣型ファッションヘルス等のピンクチラシの大量頒布や飲食店従業員の看板携行による客引き類似行為等が横行していたため、宮城県警察は、仙台市をはじめとする関係機関・団体を巻き込んだ環境浄化活動キャンペーンを実施した。キャンペーンでは、ボランティアとの共同によるピンクチラシ回収のほか、ピンクチラシ「まき屋」104人を売春防止法違反(周旋目的誘引)で検挙し、デートクラブの摘発によってピンクチラシ70万枚等を押収した。また、同地区内の飲食店営業者等による自主的なチラシの追放活動、町内会による浄化活動を推進した(宮城)。

2 環境問題への対応

(1) 環境犯罪の取締り
ア 廃棄物事犯
 平成10年中の廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という。)違反の検挙件数は2,371件であり、これを態様別にみると、不法投棄事犯が全体の71.8%を占めている。このうち、産業廃棄物事犯の検挙件数は1,120件であり、9年に比べ208件増加した。
 その内容としては、行政指導を無視して敢行したり、有価物や一時保管等と称して、適正処理を装いながら産業廃棄物を不法処理したり、不法処理を隠蔽(ぺい)する目的でマニフェスト(注)を偽造するなど悪質、巧妙な事犯が目立った。なお、最近5年間における環境犯罪の法令別検挙状況は、表2-27のとおりである。
 警察では、産業廃棄物の不法投棄、その他の不法処理を防止し、これらの事犯に対する迅速、的確な対応を行うため、関係機関・団体と「産業廃棄物不法処理防止連絡協議会」を設置し、緊密な連携に努めている。
(注) 一般に、廃棄物を排出した事業者が、廃棄物の処理を委託する際に、処理業者に帳票(マニフェスト)を交付し、処理終了後に処理業者からその旨を記載した帳票の写しの送付を受けることにより、排出事業者が廃棄物の流れを管理し、適正な処理を確保する仕組み

表2-27 環境犯罪の法令別検挙状況(平成6~10年)

[事例] 石油精製業者(71)らが、石油製造過程で生じる硫酸ピッチを無許可業者に処分委託し、委託を受けた無許可業者(47)らが、貸倉庫に硫酸ピッチ入りドラム缶約2,000本を保管するとともに、県内各地の山林に不法投棄していた。11月までに、廃棄物処理法違反で、石油精製業者ら3法人32人を検挙した(愛知)。
イ 水質汚濁事犯
 10年中の水質汚濁事犯の検挙件数は13件であった。このうち、工場等が水質汚濁防止法で定められている基準に違反して排水等を排出する事犯の検挙は7件であった。
(2) 環境犯罪対策推進計画の策定
ア 背景
 地球環境を守る取組みは、人類存続の基盤として人類共通の課題であり、世界各国で様々な努力がなされているところであるが、近時、環境を破壊する悪質な行為を環境犯罪ととらえ、犯罪対策の強化を推進する動きが国際的に顕著になってきている。1998年(平成10年)5月に開催されたバーミンガム・サミットにおいても、「環境犯罪と闘うための措置を歓迎する」旨の「コミュニケ」が合意されている。
 我が国においては、ダイオキシン問題やいわゆる環境ホルモン問題への急速な関心の高まりにみられるように、環境を守るための取組み強化を求める声がますます強まる一方で、産業廃棄物の不法投棄が広域にわたって横行するなど、悪質な環境破壊行為が後を絶たず、大きな社会問題となっている。
 そこで、警察庁では、平成11年4月に「環境犯罪対策推進計画」を策定し、産業廃棄物事犯や野生動植物の不法取引等の環境犯罪に対する取組みを強化するとともに、特に我が国で深刻な問題となっている産業廃棄物不法投棄事犯等に対する取締りを当面重点的に行うこととした。
イ 重点推進事項
 この計画では、広域にわたる産業廃棄物不法投棄事犯、有害廃棄物事犯及び野焼きを伴う廃棄物事犯等を当面の重点取締り対象とし、組織的・計画的事犯、暴力団が関与する事犯、行政指導を無視して行われる事犯等を中心に取り締まるとともに、排出業者が関与する事犯にあっては廃棄物処理法上の委託基準違反の追及等により、その責任を明らかにしていくこととしている。また、広域にわたる産業廃棄物不法投棄事犯の取締りを効果的に行うため、都道府県警察における広域捜査体制を整備するとともに、その取締りに必要な捜査力の整備を推進するほか、警察庁に都道府県警察の広域捜査を指導・調整する体制を整備していくこととしている。そのほか、広く国民からの情報提供等を受け付ける窓口の整備、環境破壊の拡大防止を図るための環境行政部局との連携強化、排出業者等関係業界に対する指導強化等の内容も盛り込んでいる。
 警察では、必要な捜査力の整備等を図りつつ、この計画に盛り込まれた事項の実現に努めている。

3 正常な経済活動等の確保

(1) 経済事犯の取締り
ア 悪質商法の現況と取締り
 和牛オーナー商法に係る預り金事件をはじめとする「元本保証、高利回り」をうたい文句にした事件の検挙のほか、資格商法の被害者から更に金員をだまし取る二次被害の詐欺事犯、コンピュータ・ネットワークや個人情報誌を悪用した代金前払による通信販売等に係る詐欺事犯の検挙等、多種多様な手口による事犯を検挙した。
(ア) 和牛オーナー商法や株式投資に係る資産形成(利殖商法)事犯の取締り
 資産形成事犯の検挙は、和牛オーナー商法や未公開株による投資話に係る預り金事犯7事件、37人を含む14事件、72人で、平成9年に比べ、9事件、12人の減少であった。なお、被害規模は約11万8,000人、約178億5,000万円であった。
[事例1] 福祉事業を行うと標ぼうする団体の代表者(53)らが、7年12月ころから10年7月ころまでの間、「未公開株が手に入るので必ず儲(もう)かる。元金保証の上、1口100万円の運用金が4か月で倍になる。」等と宣伝して約1,500人から約60億円を受け入れていた。8月、出資法違反で同代表者ら3人を検挙した。また、投資会社を仮装した会社員(42)が、同団体の資金運用担当者に対して「大手証券会社の出資会社に投資すれば元金保証で必ず儲かる。」等と欺いて約13億円をだまし取っていた。同月、詐欺罪で検挙した(愛知)。
[事例2] 畜産業者の役員(59)らが、8年4月ころから9年11月ころまでの間、牛の預託飼育による高配当等の宣伝により、契約金を25万円から300万円として黒毛和牛のオーナーを募集し、約3,300人から約49億6,000万円を受け入れていた。10年4月までに、出資法違反で27人を検挙した(福島、京都)。
(イ) 訪問販売等に係る事犯の取締り
 「資格商法」(注1)や、その被害者を対象に、受講打切り料が必要等として更に金員をだまし取るなどの二次被害に係る事犯の検挙のほか、いわゆる「マルチ商法」(注2)、寝具等販売に係る「催眠商法」(注3)、絵画等販売に係る「キャッチセールス」(注4)、浄水器等販売に係る「危険商法」(注5)等に係る事犯を検挙するなど、手口の多様化がみられた。また、コンピュータ・ネットワーク等を悪用した通信販売に係る詐欺事犯の検挙が目立っている。
(注1) 公的資格と極めて紛らわしい架空の資格や正規の資格の取得を名目に、教材費、受講料等をだまし取るなどの商法
(注2) 販売組織の加入者が高い手数料等を得るため、他の者を強引に組織に加入させるなどし、さらに、その加入者が別の者を組織に加入させることを次々に行うことにより組織を拡大していく商法
(注3)大安売り等の名目で人を集めた上、無料配布や格安販売といった方法で集まった者を興奮状態とするとともに、巧みな話術を用い、高額な羽毛布団等があたかも安いかのように錯覚させて売り付ける商法
(注4)人通りの多い路上等で、アンケートを求める振りをするなどして呼び止め、営業所等に連れて行き、健康食品や絵画等を売り付ける商法
(注5)換気扇や水道点検等と言って家庭を訪問し、「換気扇が古くなっている。このままでは火事になる。」「水道の水が汚染されていて病気になる。」等と危険であることを告げ、不安感を起こさせるなどして商品を売り付ける商法
 10年中の訪問販売等に係る事犯の検挙は108事件、340人で、9年に比べ、1事件、36人の増加であった。
[事例1] 宝飾店の役員(62)らが、ダイヤ商品等を販売するに際し、顧客からの買取請求の増大等により資金繰りに窮し、ほどなく同社が倒産し、顧客からの買取請求に応じることができなくなる状態であったにもかかわらず、従業員らに、キャッチセールスした顧客に対し、「5年後には販売価格と同額で買い取る。」等と言わせて、ダイヤ商品販売名下に、顧客約1万2,000人から約420億円をだまし取っていた。11月、詐欺罪で同社の役員ら3人を検挙した(神奈川)。
[事例2] 浄水器等販売会社の代表者(37)らが、塩素に反応する試液を使用して水道水を変色させるなどし「水道水は体に良くない。浄水器はアトピーや喘息に効く。」等と不実のことを告げるとともに、医療用具の承認を受けていないのに効能効果等に関して広告し、約5,000人と約30億円の売買契約を締結していた。5月、訪問販売法違反及び薬事法違反で代表者ら12人を検挙。また、関連の製造卸売業者(56)らが、従業員の家族等の写真を利用して整水器の効能等を記載した虚偽の体験談チラシを作成し、顧客に配布していた。6月、訪問販売法違反及び薬事法違反で同卸売業者ら3人を検挙した(神奈川、大分)。
イ 金融関係事犯の現況と取締り
 景気が低迷する中で、多重債務者の弱みに付け込む金融事犯の増加が目立ち、被害人員や被害額も増加するとともに、資金繰りに窮する企業経営者等を対象としたいわゆる「システム金融」(注)事件も発生した。
(注) 融資を申し込んできた客に対し、手形や小切手を担保として極めて短期間に高利の貸付けを行い、貸付データ等をもとに、他の業者が同様の貸付けを次々と行うもの
 10年中の金融関係事犯の検挙件数は574件、検挙人員は406人で、被害者約7万8,000人、被害総額約388億8,000万円に上っている。
 最近5年間の金融関係事犯の法令別検挙状況は、表2-28のとおりである。

表2-28 金融関係事犯の法令別検挙状況(平成6~10年)

ウ その他の経済事犯の取締り
(ア) 不動産取引をめぐる事犯の取締り
 10年中の不動産取引をめぐる事犯の検挙件数は175件、検挙人員は187人であり、検挙した事件の主な適用法令は宅地建物取引業法、建築基準法及び建設業法であった。
[事例] 宅地建物取引業免許を有する不動産業者(48)らが都市計画区域内の土地約4,800m2をリゾート地等と標ぼうして分譲販売するに際し、同土地には、建物の建築及び上下水道の使用に制限があるという重要事項を隠して販売し、さらには、代金決済が完了し物件引渡期日が経過しているにもかかわらず、物件の引渡をせずに第三者に移転登記した。3月までに、この不動産業者らを宅地建物取引業法違反(重要事項の不告知等、不当な履行遅延)及び詐欺罪で検挙した(京都)。
(イ) 国際経済関係事犯の取締り
 10年中の外国為替及び外国貿易管理法違反の検挙件数は24件、検挙人員は8人で、関税法違反の検挙件数は72件、検挙人員は51人であった。最近5年間の国際経済関係事犯の法令別検挙状況は、表2-29のとおりである。

表2-29 国際経済関係事犯の法令別検挙状況(平成6~10年)

[事例] 衣料品輸入販売業者(35)らが、国内で販売する目的で、香港から偽ブランド衣料品を大量に密輸入しようとした。5月、関税法違反で2法人7人を検挙し、偽造品約3万点を押収した(愛知)。
(ウ) 諸法令違反の取締り
 10年中の主な諸法令違反の検挙状況をみると、電波法違反で872件、869人、漁業法違反で199件、258人、水産資源保護法違反で184件、219人を検挙した。
 また、有線ラジオ放送の設備が道路法の許可又は所有者等の承諾を得ないで他人の電柱等に設置されている事案については、郵政省等関係行政機関等で構成される有線音楽放送正常化中央連絡協議会に参画し、関係行政機関等の正常化に向けた取組み状況、不法架設の実態等を把握しつつ、その正常化に努めている。
 警察では、今後とも、関係行政機関と連携して、こうした諸法令違反に対し、更に厳正に対処することとしている。
エ 悪質商法からの消費者被害防止活動の推進
 悪質商法からの消費者被害の未然・拡大防止を図るため、悪質商法事犯の取締りのほか、各都道府県警察に「悪質商法110番」等の消費者相談窓口を設置し、消費者相談を受け付けるとともに、これらの苦情・相談を捜査活動に反映させて悪質な事件を多数検挙している。
 また、最近の悪質商法の発生状況と被害防止対策等について、各種会合における講話や寸劇、パンフレット、インターネットのホームページ等あらゆる媒体を介した広報啓発活動を推進した。
(2) 知的所有権保護対策の推進
ア 海賊版事犯の増加
 平成10年中の海賊版事犯の検挙件数は588件、検挙人員は138人で、9年に比べ、検挙件数で155件増加し、検挙人員で33人減少した。
 その内容としては、海賊版ビデオを大量に複製し、レンタル・販売していた事犯が目立ったほか、インターネット等を悪用した多種の海賊版コンピュータ・ソフト等の販売事犯が増加するなど、現在の社会状況を反映した事犯の検挙が目立った。
 また、偽ブランド事犯では、依然として外国から密輸入した偽ブランド品の販売事犯が多くを占めており、若者に人気の流行衣料品等の偽物販売事犯や、インターネットを悪用した通信販売事犯等が目立つなど、商品や販売方法が多様化している。
 最近5年間の知的所有権関係事犯の法令別検挙状況は、表2-30のとおりである。

表2-30 知的所有権関係事犯の法令別検挙状況(平成6~10年)

[事例1] 会社員(29)らは、インターネットを悪用して海賊版ビジネス・ゲームソフトを通信販売していた。9月、著作権法違反で6事件8人を検挙し、海賊版ソフト約4,000点を押収した(富山)。
[事例2] 衣料品輸入販売業者は、国内で販売する目的で、台湾等から偽ブランド衣料品等を大量に密輸入して所持していた。2月、商標法違反で1法人5人を検挙し、偽ブランド品約4万3,800点を押収した(福岡)。
イ 知的所有権保護のための広報啓発活動
 警察では、検挙した事件の適時適切な広報や不正商品の展示等、積極的な広報啓発活動を実施した。また、不正商品対策協議会(権利者団体9団体で構成する民間団体)が2月に開催した「アジア知的所有権シンポジウム’98」(東京都)や、5月に開催した「不正商品防止フェア」(青森市)、さらには10月に開催された全国生涯学習フェスティバル「まなびピア兵庫’98」での広報活動等に積極的に協力を行った。
(3) 保健衛生事犯の取締り
 平成10年中の薬事関係事犯の検挙件数は191件、医事関係事犯の検挙件数は53件、公衆衛生関係事犯の検挙件数は170件であった。
[事例] 医療研究所社長(64)らは、医師免許がないのに、点滴静脈注射等の医療行為を行うとともに、医薬品製造業、医薬品販売業の許可を受けずに、人の血液から分離して抽出したリンパ球を含有する液体入り点滴用バッグを製造、販売していた。12月までに、医師法、薬事法、採血及び供血あっせん業取締法違反等で、同社長ら3法人14人を検挙した(警視庁)。
(4) 危険物対策の推進
ア 高圧ガス、消防危険物等による事故の状況
 平成10年には、事業所や一般家庭において、高圧ガス、消防危険物等による事故が282件発生し、死傷者は258人に上った。
 警察では、高圧ガス、消防危険物等による事故を防止するため、関係機関との連携の下、取締りを行っており、10年中に、高圧ガス保安法、消防法及び放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律違反により260件、243人を検挙した。
イ 放射性物質及び特定物質等の安全対策の推進
 放射性物質及び化学兵器の原料となるような特定物質の運搬に当たっては、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律及び化学兵器の禁止及び特定物質の規制等に関する法律に基づき、都道府県公安委員会に届け出ることとされている。10年中の届出件数は、核燃料物質等関係が1,016件、放射性同位元素等関係が595件であった。警察では、運搬の安全確保を図るため、放射性物質及び特定物質の使用者等に対し事前指導や必要な指示等を行っている。


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