第3節 風俗営業の健全化と風俗環境の浄化

1 風俗営業の健全化

 警察では、風営適正化法等に基づき、風俗営業に対して必要な規制を加えるとともに、風俗営業者の自主的な健全化のための活動を支援し、業務の適正化を図っている。
(1) 風俗営業の状況
 最近5年間の料飲関係営業等(風営適正化法第2条第1項第1号から第6号までに掲げる営業)の営業所数の推移は、表2-26のとおりであ

表2-26 風俗営業(料飲関係営業等)の営業所数の推移(平成3~7年)

る。また、遊技場営業(風営適正化法第2条第1項第7号及び第8号に掲げる営業)の営業所数の推移は、表2-27のとおりである。ぱちんこ屋の営業所数は、増加の傾向にあり、平成7年の営業所数は、1万7,631軒(前年比178軒増)となっている。また、風俗営業の許可を受けたゲームセンター等については、営業所数は減少の傾向にあるが、7年の1営業所当たりの遊技設備の平均設置台数は昭和60年の1.8倍、100台を超える遊技設備を設置している営業所数は昭和60年の約3.8倍で

表2-27 風俗営業(遊技場営業)の営業所数の推移(平成3~7年)

あるなど、大型化の傾向にある。
(2) 風俗営業の健全化に向けた施策の推進
ア 風俗営業からの暴力団排除
 ぱちんこ営業等の風俗営業については、その営業の健全化を阻害する大きな要因である暴力団の関与が依然としてみられるが、暴力団対策法施行後、風俗営業者の間でも暴力団排除機運が盛り上がりをみせており、暴力団排除総決起大会、暴力団撃退研修会等の開催、みかじめ料支払拒否運動等の暴力団排除活動が活発に展開されるようになってきている。警察では、暴力団が関与する事件の取締りを推進するとともに、風俗営業者の自主的な暴力団排除活動を積極的に支援している。
イ ぱちんこ営業の健全化
 ぱちんこ営業は、国民の身近で手軽な娯楽を提供する産業として大きく成長しているが、不正に改造された遊技機を使用した違法な営業が後を絶たず、平成7年には、遊技機の不正改造事犯の検挙件数が過去最高を記録するなど、健全化を阻害する要因は少なくない。このため、警察では、遊技機の不正改造事犯等の取締りを強化するとともに、関係団体による自主的な健全化のための活動を支援するなど、ぱちんこ営業の健全化を図っている。また、ぱちんこ営業の健全化のため導入されたぱちんこプリペイドカードにつき、7年夏ころから変造・同行使事犯が多発したことから、警察では、カード発行会社に対しセキュリティ対策の強化を要請するとともに、取締りを推進した。
〔事例〕 遊技機内部のワンチップと呼ばれる電子部品1万個余りを不正に密造し、全国のぱちんこ営業者等に販売していた事件で、3月に自称裏ロム師を中心とする大規模不正部品密造グループを著作権法違反、風営適正化法違反で検挙(千葉)
ウ 管理者講習の実施
 警察では、風俗営業の営業所ごとに選任された管理者を対象として、風営適正化法に規定する遵守事項や暴力団からみかじめ料等を要求された場合の対応要領等について指導を行う管理者講習を実施している。最近5年間の管理者講習の実施状況は、表2-28のとおりである。

表2-28 管理者講習の実施状況(平成3~7年)

2 深夜飲食店営業の状況

 最近5年間の深夜飲食店営業(風営適正化法第32条第1項に規定する営業)の営業所数の推移は表2-29のとおりである。

表2-29 深夜飲食店営業の営業所数の推移(平成3~7年)

3 風俗関連営業の状況

 最近5年間の風俗関連営業(風営適正化法第2条第4項に規定する営業)の営業所数は表2-30のとおりである。
 平成7年の風俗関連営業の違反態様別検挙状況は図2-13のとおりであり、検挙総数361件の35.7%を売春防止法違反が占めている。

表2-30 風俗関連営業の営業所数の推移(平成3~7年)

図2-13 風俗関連営業の違反態様別検挙状況(平成7年)

4 売春事犯等及びわいせつ事犯の現況

(1) 売春事犯等
 最近5年間の売春防止法違反の検挙状況は、表2-31のとおりである。これらの売春事犯の総検挙人員に占める暴力団勢力の割合は19.3%(267人)であり、売春事犯が暴力団の資金源となっていることがうかがわれる。最近の売春事犯は、公衆電話ボックス等にビラをはり付け、客との連絡に携帯電話や転送電話等を利用して売春をあっせんするなどの派遣型が主流となっているが、悪質な飲食店経営者等が外国人女性に売春を強要する事犯も目立っている。
〔事例1〕 売春誘引ビラを公衆電話ボックスに貼(ちょう)付し、電話をかけてきた客に売春婦を紹介していた事件で、8月までにデートクラブ経営者らを売春防止法違反で、また、売春誘引ビラの印刷業者を同幇助で検挙(岩手)

表2-31 売春防止法違反の検挙状況(平成3~7年)

〔事例2〕 不法滞在中のタイ人女性を自己が経営するカフェーで働かせるとともに、飲食客を相手に売春をすることを強要していた事件で、7月に、同店経営者らを売春防止法違反等で検挙(群馬)
(2) わいせつ事犯
 最近5年間のわいせつ事犯の検挙状況は、表2-32のとおりである。わいせつ物頒布等では、わいせつビデオテープを販売する事犯が依然としてその主流を占めているが、わいせつな画像情報を記憶させたCD-

表2-32 わいせつ事犯の検挙状況(平成3~7年)

ROM等を販売する事犯や、パソコン通信ネットワークを利用して不特定多数の会員に対してわいせつな画像情報を送信するという新しい形態の事犯もみられる。また、7年は、同伴客同士が性的行為を相互に見せ合うことを売り物とするカップル喫茶と呼ばれる喫茶店における公然わいせつ事犯がみられた。
〔事例1〕 パソコン通信ネットワークを開設し、わいせつ画像をホスト・コンピュータに記憶させることにより、大手パソコン通信を活用して募集した当該パソコン通信ネットワークの不特定多数の会員に、当該わいせつ画像を常時閲覧させていた事件で、8月に、当該パソコン通信ネットワークの運営者をわいせつ図画公然陳列で検挙(京都)
〔事例2〕 4月に、喫茶店において、公然とわいせつな行為を行っていた男女の同伴客3組6人を公然わいせつで検挙するとともに、同喫茶店の経営者を同幇助で検挙(警視庁)

5 その他の風俗関係事犯の現況

(1) ゲーム機等使用賭(と)博事犯
 最近5年間のゲーム機等を使用した賭博事犯の検挙状況は、表2-33のとおりである。これらの事犯の中には、暴力団が関与してその活動資金としている事例も多数みられ、また、最近は、トランプゲームやルーレット用の設備を設けて遊技をさせる「カジノバー」といわれる営業における賭博事犯が急増している。
〔事例〕 5月に、ルーレット台等の設備を設けて客に賭博をさせていた「カジノバー」を摘発し、経営者等33人、賭客82人の合計115人を賭博開帳図利等で検挙(大阪)

表2-33 ゲーム機使用による賭(と)博事犯の検挙状況(平成3~7年)

(2) ノミ行為事犯等
 競馬、競輪等の公営競技をめぐるノミ行為事犯の最近5年間の検挙状況は表2-34のとおりである。ノミ行為事犯のほとんどが競技場外で行

表2-34 ノミ行為事犯の検挙状況(平成3~7年)

われており、ノミの受付に転送電話を使用するなど悪質巧妙化している。また、総検挙件数の約8割に暴力団が関与しており、暴力団の有力な資金源となっていることがうかがわれる。

6 風俗環境の浄化活動

(1) 風俗環境浄化協会の活動
 風俗環境浄化協会は、風俗環境に関する苦情の処理、風営適正化法に違反する行為を防止するための啓発活動、少年指導委員の活動に対する援助等を行っている。
(2) 地域住民と連携した風俗環境浄化活動
 盛り場等の風俗環境の悪化に対して、警察では、悪質な風俗関係事犯の積極的な取締りを推進するとともに、地域住民や関係団体と協力して風俗環境の浄化に努めている。


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