第5章 安全かつ快適な交通の確保

 車は、人間の移動を容易かつ快適なものにし、個人の活動の範囲の拡大と、スピード化を推進する。モータリゼーションの進展は、その安全と円滑が確保されている限りにおいて、社会の様々な分野の発展に大きく寄与することとなる。
 しかしながら、こうしたモータリゼーションの進展は、交通事故の多発、交通渋滞の深刻化といった負の影響につながることもまた事実である。平成5年には交通人身事故件数が史上最多を記録し、6年には最多件数が更新された。さらに、都市部を中心に、慢性的な交通渋滞が発生し、迅速で快適な移動手段としての車の機能そのものが損なわれる事態に至っている。
 こうした事態に対処するため、交通警察はこれまで様々な活動を展開してきたところであるが、今後ますます肥大化することが予想される「くるま社会」において、真に安全と快適を確保するためには、交通社会の主人公である国民の一人一人が、より高い交通安全意識をもち、より適切な交通行動をとることが必要不可欠である。交通警察の活動は、交通安全教育、交通情報の提供、指導・取締り等を通じて、こうした国民自身の活動を支援するものとして位置付けられる。

1 交通情勢

(1) 道路交通の現況
ア 車両保有台数の伸び
 我が国の自動車保有台数は年々増加傾向にあり、平成6年末には約6,818万台となっている。車種別車両保有台数の推移は、図5-1のとおりである。

図5-1 車種別車両保有台数の推移(昭和41~平成6年)

イ 運転免許保有者数の増加
 運転免許保有者数は、交通事故死者数が過去最高であった昭和45年には約2,600万人であったが、59年に5,000万人を超え、平成6年末には6,720万5,667人となった。運転免許を取得することができる16歳以上の者のうち、男性では1.2人に1人、女性では2.0人に1人、全体では1.5人に1人が免許を保有していることになる。運転免許保有者数の推移は、図5-2のとおりである。
 高齢化社会の進展に伴い、運転免許保有者に占める高齢者(65歳以上)の割合は年々高くなっており、昭和45年末には0.8%(約21万人)であったものが、平成6年末には6.5%(約434万人)となっており、この傾向は、今後更に顕著になっていくものと考えられる。(男女別及び年齢別又は種類別運転免許保有者数については、資料編統計5-10、統計5-13参照)

図5-2 運転免許保有者数の推移(昭和51~平成6年)

(2) 平成6年の交通事故発生状況
ア 概況
 平成6年に発生した交通事故は、件数が72万9,457件(前年比4,782件(0.7%)増)、死者数が1万649人(293人(2.7%)減)、負傷者数が88万1,723人(3,090人(0.4%)増)であった。死者数は元年以降最も少ないものの、昭和63年以降7年連続して1万人を超えた。
 過去19年間の交通事故件数等の推移は、図5-3のとおりである。

図5-3 交通事故件数等の推移(昭和51~平成6年)

イ 交通死亡事故の発生状況
(ア) 交通死亡事故の特徴
 平成6年の交通死亡事故の主な特徴は次のとおりである。
○ 自動車乗車中の死者数が最も多く、全死者数の42.1%を占めている。
○ 自動車乗車中の死者数のうち、シートベルトを着用していなかった者が74.4%を占めている。
○ 高齢者と若年者(16~24歳の者をいう。以下この章において同じ。)の死者数が多く、両者合わせて全死者数の過半数(52.5%)を占めている。
○ 高齢者の歩行中と若年者の自動車乗車中の死者数が多く、また、高齢者の原付自転車乗車中の死者数が前年に比べ大幅に増加している。
○ 夜間、週末に死亡事故が多発している。
(イ) 状態別、年齢層別にみた交通事故死者数
 6年の状態別死者数は図5-4のとおりで、自動車乗車中の死者数が4,482人で最も多く、全死者数の42.1%を占めている。5年に比べ減少が顕著なのは、自動車乗車中(353人(7.3%)減)と歩行中(80人(2.7%)減)で、これに対し、自動二輪車乗車中の死者数は76人(6.8%)増加している。

図5-4 状態別交通事故死者数(平成6年)

 6年の年齢層別死者数は図5-5

図5-5 年齢層別にみた交通事故死者数の構成率と人口構成率の比較(平成6年)

のとおりで、2年連続して高齢者、若年者の順に多く、死者数の構成率は、高齢者が人口構成率の2.2倍、若年者が1.7倍である。最近数年の傾向をみると、若年者の死者数が4年連続して減少しているのに対し、高齢者の死者数は昭和63年以降7年連続して増加している。平成6年の状態別死者数と年齢層別死者数を組み合わせて図解すると図5-6のとおりで、その主な特徴と5年との比較については、次のとおりである。

図5-6 状態別、年齢層別死者数(平成6年)

○ 自動車乗車中の死者数については、若年者が最も多い(29.5%)が、212人(13.8%)減少している。
○ 自動二輪車乗車中の死者数については、若年者が圧倒的に多く(63.9%)、61人(8.7%)増加している。
○ 原付自転車乗車中の死者数については、高齢者、若年者の順に多く(両者で66.3%)、特に高齢者は50人(17.7%)増加している。
○ 自転車乗用中の死者数については、高齢者が圧倒的に多い(5.9%)。増加が顕著なのは、15歳以下の年齢層で、27人(33.8%)増加しており、これに対し、50~59歳の年齢層は29人(15.8%)減少している。
○ 歩行中の死者数については、高齢者が圧倒的に多い(53.9%)。減少が顕著なのは、15歳以下、60~64歳の年齢層で、それぞれ32人(15.9%)、33人(10.9%)減少している。
 若年者の状態別死者数の推移は、図5-7のとおりである。
 なお、高齢者の状態別死者数の推移については、4(1)参照

図5-7 若年者の状態別死者数の推移(昭和54~平成6年)

(ウ) シートベルト着用有無別の死者数
 自動車乗車中の死者数をシートベルト着用有無別にみると、非着用死者数が3,336人(前年比421人(11.2%)減)で、着用死者数の1,061人(79人(8.0%)増)を大きく上回っている。非着用死者数は昭和63年以降6年連続して増加していたが、平成6年は大幅に減少している。また、シートベルト着用調査によれば、低下傾向にあった着用率は、6年に入って上昇している。シートベルトの着用有無別自動車乗車中の死者数の推移は図5-8、シートベルト着用率の推移は図5-9のとおりである。

図5-8 シートベルトの着用有無別自動車乗車中の死者数の推移(昭和61~平成6年)

図5-9 シートベルト着用率の推移(昭和61~平成6年)

(エ) 昼夜別にみた死亡事故の発生状況
 6年の死亡事故件数を昼夜別にみると、昼間(日の出から日没まで)が4,473件(全体の44.1%)、夜間(日没から日の出まで)が5,681件(55.9%)で、夜間の死亡事故件数は昼間の約1.3倍である。しかし、5年に比べ、昼間は41件(0.9%)、夜間は200件(3.4%)減少しており、夜間の方が減少が大きい。(昼夜別及び道路幅員別又は道路種類別の死亡事故件数については、資料編統計5-1、5-2参照)
(オ) 曜日別にみた死亡事故の発生状況
 6年の死亡事故件数は1万154件で、1日当たり27.8件の死亡事故が発生している。これを曜日別にみると、平日(月曜から金曜まで)が1日当たり27.1件、週末(土、日曜)が29.6件で、週末が平日を1日当たり2.5件上回っており、週末に多発する傾向にある。
ウ 30日以内死者の発生状況
 6年の交通事故発生から24時間経過後、30日以内の交通事故死者数は2,119人(前年比208人(8.9%)減)で、24時間以内の死者数と合計すると1万2,768人(501人(3.8%)減)となり、その結果30日以内死者数は、24時間以内の死者数の約1.2倍となった。(30日以内死者数の月別推移及び都道府県別一覧表は、資料編統計5-8、統計5-9参照)
(3) 交通渋滞、交通公害の状況
ア 交通渋滞の状況
 自動車の過密による交通渋滞は、東京、大阪等の大都市のみならず、地方都市においても大きな社会問題となっており、社会経済活動に多大な影響を及ぼしているほか、大気汚染、騒音公害等の一要因ともなっている。
 東京都内の一般道路の交通渋滞発生状況は、表5-1のとおりである。

表5-1 東京都内の一般道路の交通渋滞発生状況(平成2~6年)

イ 交通公害の状況
 自動車交通に起因する環境問題として、自動車の排出ガスによる大気汚染の問題が注目されている。
 大都市とその周辺地域における大気中の二酸化窒素(NO2)の環境基準の達成状況は表5-2のとおりで、厳しい状況にある。それらの地域における2年度中の窒素酸化物(NOX)の総排出量に占める自動車から

表5-2 二酸化窒素の環境基準の適合状況(日平均値の98%値)(昭和63~平成5年度)

の排出量の割合は53.4%で、自動車から排出される窒素酸化物の削減対策が緊急の課題となっている。
 また、道路の種類別の騒音の環境基準の達成状況をみると、4時間帯のすべてにおいて環境基準が達成されなかった測定地点の割合は、都市内高速道路、一般国道、主要地方道の順に高く、依然として厳しい状況にある(表5-3)。

表5-3 道路の種類別の騒音の環境基準の達成状況(平成5年)

2 交通警察活動の現状

 交通警察は、自動車交通の社会的効用を最大化し、かつ、交通事故や交通渋滞が当事者、その関係者や社会全体に及ぼす悪影響を最小化するため、各種の施策を多面的に展開し、道路における交通の安全と円滑の確保に努めている。
(1) 運転者政策
ア 運転者教育の推進
(ア) 自動車教習所における教習の充実
a 指定自動車教習所における教習の充実
 指定自動車教習所は、平成6年末現在、全国で1,535所ある。また、指定自動車教習所の卒業者で6年の運転免許試験に合格した者は約226万人で、合格者全体の95.0%を占めており、指定自動車教習所は、初心運転者教育の中心的役割を果たしている。6年5月からは、教習指導員制度を導入するなど指定自動車教習所の教習体制等の充実強化を図った。
 また、指定自動車教習所における教習を現在の「くるま社会」に対応したものとするため、指定自動車教習所の教習カリキュラムを改正し、従来の運転操作や法令に関する知識の習得に重点を置いた教習を、交通場面の読み取りや判断の仕方など危険への対応力を向上させるための内容及び方法を取り入れた安全運転教育重視のものとするとともに、危険予測教習、高速教習、応急救護処置教習等の実践的な教習を導入し、6年5月から実施した。
b 国民のニーズに応じた教習の推進
 指定自動車教習所では、国民のニーズに応じ、ペーパードライバー、高齢運転者等の免許保有者に対する再教育をはじめ、地域住民に対する交通安全教育を行っており、地域における交通安全教育機関としての役割を果たしている。
c 指定外の自動車教習所における教習水準の向上
 都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)に届出を行っている自動車教習所のうち、公安委員会の指定を受けていないものは、6年末現在、全国に289所ある。公安委員会では、これらの自動車教習所に対して、教習の適正な水準を確保するため必要な指導及び助言を行っている。
(イ) 各種講習の充実
a 取得時講習の拡充
 原付免許を受けようとする者に対する原付講習については、4年に受講を義務付け、6年には43万6,969人が受講した。
 また、6年5月からは、普通免許を受けようとする者は普通車講習及び応急救護処置講習を、二輪免許を受けようとする者は二輪車講習及び応急救護処置講習をそれぞれ受けなければならないこととした。

b 更新時講習の充実
(a) 更新時講習の受講の義務付け
 昭和47年から免許証の更新時に更新時講習を受講することが努力義務とされていたが、平成6年5月からは、公安委員会は更新時講習を受けていない者に対して免許証の更新をしないことができることとした。
(b) 優良運転者等に対する簡素な講習の実施
 6年5月からは、更新時講習における一般運転者講習と優良運転者等講習の区分を明確にした。優良運転者等講習では、ビデオ等の視聴覚教材の活用、資料の配布、パネル教材の展示等による簡素な講習を実施している。6年には、約1,700万人が優良運転者等講習を受講した。
(c) 特別学級の編成と特別講習の推進
 更新時講習における一般運転者講習では、若年者学級、二輪車学級、高齢者学級等の特別学級を編成して、運転者の態様に応じた講習を行っている。6年には、約39万人がこの特別学級による講習を受講した。
 また、受講者について更新時講習の受講義務が免除されることとなる特別の講習を実施している。この講習では、職種、生活環境等が共通する運転者を集めてその態様に応じた講習を行っている。6年には、約32万人がこの講習を受講した。
c その他
 二輪免許保有者を対象に学科講習と技能講習から成る自動二輪車安全運転講習を行っており、6年には2万1,956人が受講した。
イ 各種の運転者政策
(ア) 優良運転者の優遇と賞揚
 6年5月から、免許保有者を優良な運転を行う方向に誘導し、交通事故の防止を図るため、継続して免許を有する期間が5年以上であり、かつ、5年間無違反である者を優良運転者と定義し、優良運転者については、免許証の有効期間を更新日等における年齢に応じ、次のとおりとすることとした。
・ 70歳未満の者 5回目の誕生日が経過するまでの期間
・ 70歳の者   4回目の誕生日が経過するまでの期間
・ 71歳以上の者 3回目の誕生日が経過するまでの期間
 なお、改正道路交通法の施行の日(6年5月10日)から2年間は、優良運転者の基準は、継続して免許を受けている期間が8年以上であって、かつ、3年間無違反であることとした。6年5月10日から12月末までのの優良運転者数は、全更新者の54.3%に当たる約800万人であった。
 優良運転者制度の導入に伴い、優良運転者に係る免許証については、「優良」と記載するとともに、免許証の有効期間欄の色を他の運転者に係る免許証の有効期間欄の色と異ならせることとした。また、携帯を容易にするため、免許証の大きさをクレジットカードサイズに小型化することとした。さらに、免許証の更新の申請に係る事務の円滑な実施を図るため、公安委員会は、現に免許を受けている者に対し、その者の免許証の更新に係る更新期間その他公安委員会が必要と認める事項を記載した書面を送付するものとすることとした。
 長期間無事故無違反の運転者に対しては、行政処分等について優遇措置をとっているほか、各種の賞揚制度を設けている。自動車安全運転センターでは、無事故無違反証明書を発行しているほか、無事故無違反の期間が1年以上の運転者に対してSD(Safe Driver)カードを交付しており、6年の無事故無違反証明書等の発行件数は約437万件、SDカードの交付件数は約350万件であった。
(イ) 危険運転者対策
a 迅速、確実な行政処分の推進
 自動車等を運転することが危険であると判断される運転者を道路交通の場から早期に排除するため、違反、事故登録所要日数、処分所要日数の短縮等に努めている。最近5年間の運転免許の行政処分件数の推移は、表5-4のとおりである。

表5-4 運転免許の行政処分件数の推移(平成2~6年)

b 停止処分者講習
 運転免許の効力の停止等の処分を受けた者に対しては、その者の申出により停止処分者講習を行っている。6年には、この講習を受けることができる者の87.8%に当たる約133万人が受講した。
c 取消処分者講習
 運転免許の取消し等の処分を受けた者が免許を再取得しようとする場合は、取消処分者講習の受講が受験資格とされている。この講習では、受験する免許の種類に応じて四輪運転者用講習、二輪運転者用講習が設けられ、個別的、具体的な指導が行われている。6年には、4万2,745人がこの講習を受講した。
(ウ) 初心運転者対策
 初心運転者期間制度は、初心運転者が慎重な運転をするよう誘導するとともに、危険性の認められる者に対する適切な教育を実施し、以後の事故防止を図ろうとするものである。初心運転者期間内に一定の違反行為を行った者は、初心運転者講習を受けることができ、この講習を受講しなかった者等は再試験を受けなければならないこととされている。6年には、17万5,109人がこの講習を受講した。
 3年9月から実施された再試験では、運転免許試験と同等の基準で合格判定が行われ、5年には、1万1,541人が受験し、不合格となった8,812人が免許を取り消された。
(エ) 地域的な課題への取組み
 北海道警察等においては、運転免許取得時講習、更新時講習等の機会を利用して雪路用タイヤを装着した車両の運転方法、雪道等における運転マナー等の講習を実施している。また、アイスバーンを想定した運転コース(スキッドコース)、わだち等のある運転コースでの走行訓練等を盛り込んだ「夏期冬道安全運転講習」等を実施するなどして、雪道等における安全運転の技能の普及を図っている。
ウ 国際化への対応
(ア) 国外運転免許証の交付
 6年の国外運転免許証の交付件数は、35万693件である。警察では、電


~米軍交通安全講話~

青森県三沢警察署 交通指導係
 須藤 諭 巡査部長

 ここ、米空軍三沢基地がある三沢市には、米軍人とその家族、1万1,000人余が居住しており、カーステレオをかけたYナンバーの車が至る所に見られます。
 「異国において、交通ルールの不知からくる不安感を解消することができたら・・・」という思いで、独学で覚えた英語による交通安全講話を始めてから7年経ちました。
 講話を行う際には、「日本の交通ルールを本当に分かってもらえているのだろうか、自分の教え方はこれでいいのだろうか」という不安は絶えずつきまといますが、相手は外国人だという意識をもたない、具体的事例を挙げて分かりやすく説明することなどを念頭に置きながら、彼らが日本の交通ルールを着実に理解できるように努めています。


算化による国外運転免許証の発行事務の迅速化等、国際化に対応した事務の簡素合理化を推進している。
(イ) 国内の外国人運転者対策
 外国の運転免許を有する者については、一定の条件の下に運転免許試験のうち技能試験及び学科試験を免除している。6年の取得件数は2万9,305件である。また、運転免許証を発行した外国行政庁の数は126に上っている。
 なお、6年5月からは、一定の要件を満たす外国の免許証を所持する者は、本邦に上陸した日から起算して1年間、その免許証に係る自動車等を運転することができることとしている。
(2) 体系的な交通安全教育の推進
ア 段階に応じた交通安全教育
 警察では、関係機関、団体と協力して、幼児から高齢者まで、道路交通への参加の態様、心身の発達段階に応じた交通安全教育を体系的、組織的かつ継続的に実施している。
(ア) 幼児、子供に対する交通安全教育
 幼児、子供に対しては、道路の歩き方や横断の仕方等について、地域や幼稚園、保育所等を単位として体系的な交通安全教育を行うとともに、遊びながら交通ルールやマナーを学ぶことができる幼児交通安全クラブの結成とその活動の活発化を図っている。
 幼児交通安全クラブは、平成6年9月末現在、全国で約1万4,000が組織され、幼児約116万人、保護者約105万人が加入している。
(イ) 小中学生に対する交通安全教育
 小中学生に対しては、学校等と協力して、自転車の安全な乗り方教室を開催しているほか、交通少年団の結成と活動の活発化を図っている。交通少年団は、交通安全推進のための少年リーダーとして、学校や地域において同級生や下級生の模範となり、また、一般運転者や家族に対する交通安全のアピールを行うなど、その活動範囲は多岐にわたっており、将来の良き交通社会人を育成する観点からも、その結成の促進と育成に努めている。交通少年団は、6年9月末現在、全国で約3,600が組織され、小学生約57万人、中学生約8万6,000人が加入している。
(ウ) 高校生に対する交通安全教育
 高校生に対しては、自転車の安全な利用、二輪車、自動車の特性、交通事故防止についての安全教育を推進している。特に、二輪車の安全に関する指導については、教育委員会や学校と連携し、法令講習や実技指導員(白バイ隊員等)の派遣による安全運転実技指導を推進している。6年中に警察が主催し、あるいは警察官等を講師として派遣して実施し


~剣道を通じた交通安全指導~

山形県天童警察署 交通事故捜査担当
 白田 芳行 巡査部長

 交通事故は昼夜、天候を問わず発生します。重大事故が発生すればどんな時でも直ちに現場に赴き事故捜査に当たらなければなりません。自宅で就寝していても、街で友人と酒を飲んでいても、家族や自分の体調が悪くても、私生活を顧みることなく出動しなければなりません。また、重大事故は悪条件下で発生することが多いので、深夜の吹雪の中で、寒さに凍えながら、長時間にわたり事故捜査を行わなければならないこともあります。
 このように仕事は不規則で厳しいものですが、「交通事故の原因は、結局ドライバーのモラルの問題ではないか。しかし、それは、一朝一夕に身に付くものではない。子どもの頃からの指導の積み重ねがあってこそ可能になるものだ」という考えから始めた少年剣道クラブの交通安全教育は、交通事故防止を図るためにも続けていきたいと考えております。


た二輪車教室等の講習会は約7,900回で、約283万人の高校生が参加した。
 なお、高齢者に対する交通安全教育については、4(1)参照。
イ きめ細かな交通安全教育の推進等
(ア) 全国交通安全運動
 国民一人一人に交通安全思想の普及徹底を図るとともに、正しい交通ルールと交通マナーの実践を習慣付けることを目的に、6年春の運動は、4月6日(水)から15日(金)までの10日間、シートベルト着用の徹底、子供の交通事故防止を運動の重点に、秋の運動は、9月21日(水)から30日(金)までの10日間、高齢者の交通事故防止、シートべルト着用の徹底を重点に、31機関・団体が主催、127団体の協賛の下、国・地方公共団体及び民間交通安全団体が一致協力して、幅広い国民運動を展開した。
(イ) 自転車安全整備制度
 自転車安全整備制度は、整備不良の自転車を一掃するとともに、自転車の正しい乗り方を普及させるためのもので、毎年1回、自転車安全整備技能検定が実施されている。6年末現在、自転車安全整備士は5万2,720人、自転車安全整備店は2万4,520店である。なお、点検整備を受けた自転車にはTS(Traffic Safety)マークをはることとされており、また、TSマークのはられた自転車には、自転車事故の被害者の救済に資するため、傷害保険、損害賠償保険が付されている。
ウ 事業所等における交通安全活動の推進
 一定台数以上の自動車を使用する事業所等で選任されている安全運転管理者及び副安全運転管理者は、安全な運転の確保に留意した運行計画の作成、シートべルトの正しい着用方法の指導等事業活動に伴う交通安全対策を推進しており、7年3月末現在、約34万事業所において安全運転管理者約34万人、副安全運転管理者約4万8,000人が選任されている。
 警察では、これら安全運転管理者等に対して、安全運転管理に必要な知識等について講習を実施しており、5年度における実施回数は3,322回、受講者数は延べ約38万人であった。
 また、都道府県ごとに安全運転管理者等を会員とする安全運転管理者協(議)会が結成され、交通安全運動、シートべルト着用推進運動、無事故無違反コンクール等を積極的に推進しているほか、安全運転管理に関する各種講習会の開催、教育資料の作成、配布等を通じ、職域における交通安全思想の普及に努めている。
エ 自動車安全運転センター安全運転中央研修所の活用
 自動車安全運転センターでは、3年5月、茨城県勝田市(6年11月1日付けで「ひたちなか市」に変更)に開所した安全運転中央研修所において、実際の道路交通現場に対応した、安全運転の実践的かつ専門的な知識、技能についての体験的な研修を実施し、安全運転教育について専門的知識を有する交通安全指導者や高度の運転技能と知識を有する職業運転者、安全運転についての実践的な能力を身に付けた青少年運転者の育成を図っている。6年には、延べ5万3,597人日の研修を実施した。
(3) 交通秩序の確立
ア 効果的な交通指導取締りの推進
(ア) 効果的な取締りの推進
 道路における交通の安全と円滑を確保するため、道路交通法、道路運送車両法等の交通関係法令違反の取締りを行っている。
 道路交通法違反の取締りについては、交通事故発生状況等地域の交通実態を調査・分析し、かつ、市民の要望、意見等を踏まえ、無免許運転、飲酒運転、著しい速度超過、信号無視等悪質・危険性の高い違反や幹線道路の交差点等における駐停車違反、暴走族による騒音運転等迷惑性の大きい違反に重点を置いて実施している。最近5年間の主な道路交通法違反の取締り状況は表5-5のとおりである。(交通違反取締り件数の推移及び違反別交通違反取締り状況については、資料編統計5-15、統計5-16参照)

表5-5 主な道路交通法違反の取締り状況(平成2~6年)

(イ) 背後責任追及の徹底
 企業の事業活動に関してなされた放置駐車、過積載、過労運転等の違反及びこれらに起因する事故事件等については、運転者の取締りを行うだけでなく、使用者による下命・容認、荷主等による教唆・幇(ほう)助等の背後責任を徹底的に追及している。使用者等の背後責任追及状況は、表5-6のとおりである。
 このうち過積載については、平成6年5月から、過積載車両の運転者に対する取締りを強化するとともに、使用者に対する指示、自動車の使用制限処分、荷主等に対する再発防止命令等の規定を積極的に適用している。

表5-6 使用者等の背後責任の追及状況(平成5、6年)

イ 交通捜査活動の推進
(ア) 交通事故事件
 6年の交通事故に係る業務上(重)過失致死傷事件の検挙件数は64万2,262件(前年比6,160件(1.0%)増)、検挙人員は66万6,193人(5,443人(1.0%)増)である。
(イ) 人身事故の取扱い
 事故当事者等の負担の軽減を図るため、交通事故簡易見分システム等の科学的機器の開発、運用や比較的軽微な人身事故に関する捜査書類について簡易な様式を定めた「簡約特例書式」の適用によって、交通事故捜査業務の簡素合理化を推進している。
(ウ) 物件事故の取扱い
 6年の物件事故の発生は287万9,529件(前年比7,272件(0.2%)増)である。事故当事者等の負担の軽減を図るため、物件事故のうち一定の要


 ~「熊退治のハルちゃん」こと佐々木巡査部長(山口県本郷警察署)の活動~

 ここは、山口県東部の中国山地にある本郷警察署管内。のどかな土地柄、熊が出没することもしばしばみられ、昨年は15件の熊騒動があり、その度にパトカーで出動して警戒に当たっていた彼は、いつしか「熊退治のハルちゃん」と呼ばれるようになりました。
 署の交通課唯一の課員(課長1人、課員1人)として、運転免許事務、交通指導取締り、交通安全教育等警察署の交通業務を一手に担っており、彼の存在抜きには、交通課の一日は始まりません。事件・事故があると、24時間管内のどこへでも駆けつけなければなりません。
 冬場になると、凍てつく早朝の道路に融雪剤を散布して、路面凍結防止を図り、また、通学・通勤時間には、村役場前で、道路を横断する児童やお年寄りに笑顔で声を掛け、ときには手を引いて誘導するなどの優しい心配りに対し、地域住民から「優しくて頼りになるお巡りさん」と厚い信頼を得ております。



~「あんたには負けた。」~

京都府宇治警察署 交通事故捜査担当
 中島英治 警部補

 重傷ひき逃げ犯の容疑者であるスナック店長は、当初から強硬に口をつぐんで開きませんでした。この捜査に当たっては、同人の妻、同店従業員、立回り先の関係者の供述を得ることに重点を置きました。捜査当初は、勤務日や公休日を利用して容疑者宅へ何度赴いても、関係者の口は相変わらず堅く、居留守を使われたほか、「あんたの顔は見たくない、帰れ。」と罵声を浴びせられることも度重なりました。しかし、「逃げ得は許さない。」という信念の下、数か月にわたる捜査で、居留守や面会拒否に遇いながらも、目に見えない人間関係を築き、徐々にではありましたが、あれほど堅かった関係者の口を開かせることができたのです。そして、約半年後、被疑者に「あんたには負けた。」と全面自供へと追い込むことができました。
 交通事故というものは、一般市民にとって最も身近な問題の一つであり、瞬時にして被害者にも加害者にもなり得ます。この現実に直面しながら、交通事故による被害者及び加害者の数を減らすことを念頭に日夜激務と戦っていきたいと思います。


件を充足する軽微なものについては、事故当事者の希望を尊重しながら、現場見分を省略できる制度を運用している。
(エ) ひき逃げ事件
 最近5年間の死亡ひき逃げ事件の発生、検挙状況は表5-7のとおりである。
(オ) 交通特殊事件
 偽装交通事故による自動車保険金詐欺事件等交通特殊事件の検挙状況は、表5-8のとおりである。

表5-7 死亡ひき逃げ事件の発生、検挙状況(平成2~6年)

表5-8 交通特殊事件の検挙状況(平成5、6年)

ウ 暴走族対策の推進
(ア) 最近5年間の暴走族の動向
 6年末現在、暴走族として把握されている者の総数は2万7,736人であり、そのい集走行状況は表5-9のとおりで、やや鎮静化してきている。
 最近は、グループに加入しない、又は小規模グループの暴走族が増加している。また、暴走形態は、消音器を不法に改造した車両により大きな排気音を発しながら住宅街等を走行する爆音走行が増加しているほか、ローリング族、ゼロヨン族、ドリフト族等の小規模グループによる多様な暴走行為が行われている。さらに、暴走族は、グループ間での対立抗争事件を引き起こしたり、一般車両やパトカーを襲撃したりするなど、非行集団的性格を強めている。

表5-9 暴走族のい集走行状況(平成2~6年)

(イ) 暴走族を許さない社会環境づくり
 警察では、交通、少年、刑事等各部門の連携により、暴走族に関する情報を収集して、その実態を把握するとともに、暴走族少年に対する個別的な指導、補導を強化して、グループの解体や暴走族からの離脱を図るなど、暴走行為をさせないための対策を推進している。
 また、暴走族を追放するため、関係機関、団体等で構成される暴走族対策会議が中心となって、地域ぐるみで「暴走を『しない』、『させない』、『見に行かない』」運動を展開し、ボランティアを中心とした暴走族の更生活動、暴走族へのガソリン不売、深夜営業の自粛等を行っている。
 暴走族による車両の不法改造については、6月に「暴走族取締り強化期間」を実施するなどして取締りを強化し、押収措置により暴走族と車両の分離を図るとともに、車両の運転者のみならず、改造等を行った業者に対しても徹底した責任追及を行っている。
 なお、6年の暴走族に対する共同危険行為等による行政処分は、取消処分1,400件、停止処分987件であった。


~アフターケアの大切さ~

福岡県警察交通指導課
 今中 賢二 巡査部長

「いたずら書きごめん、元暴走族の少年達反省し、きれいに」
 これは、新聞記事の見出しです。
 昨年、捜査で調べた8人の暴走族の少年達は、私が名前を呼んでも返事をせず、天井を見詰めたり、わざと聞こえないふりをしては、私を無視し続けました。暴走行為の危険性について諭しても、「あんたには関係ない。俺は悪いことはしとらん」の一点張りで、取り付く島もないような状況でした。
 それでも、粘り強い説得のかいがあって、彼らが属する暴走族グループを解散させることができましたが、再度グループを結成して暴走行為を行うようなことにでもなれば、それまでの努力は水泡に帰してしまいます。その防止のため、仕事の合間を縫っては、少年達の家庭訪問を行い、ときには「何の用か。帰れ」と怒鳴られ、門前払いをくらうこともありましたが、彼らとのコミュニケーションを根気強く続けました。
 そんなある日、冒頭の新聞記事が掲載されたのです。少年達が反省の気持ちを行動で表すため、かつてスプレーで落書きをしたJR駅舎の壁を白ペンキで塗り替えているのを駅員が見て、新聞社に連絡したとのことでした。その記事の内容を知ったときは、今までにない、仕事に対する充実感を味わったものです。


(4) 高速道路における交通警察活動
ア 高速道路交通察察隊の活動
 高速道路交通警察隊は、高速道路における交通指導取締り、交通事故事件の処理、交通実態に即した交通規制等を行うほか、犯罪の発生を未然に防止し、警察事象が発生した場合には、これを第一次的に処理するための活動を行っている。
イ 高速道路の交通実態
(ア) 高速道路の供用状況
 平成6年末現在、高速道路の全供用距離は60路線、6,617.6キロメートル(高速自動車国道5,652.4キロメートル、指定自動車専用道路965.2キロメートル)である。6年には、高速自動車国道として四国縦貫自動車道(藍(あい)住~脇(わき)町)、東北横断自動車道(北上~北上西)等153.8キロメートルが新たに供用開始された。
(イ) 高速道路における交通事故発生状況
 6年の高速道路における交通事故の発生状況は、表5-10のとおりである。
 高速道路は自動車専用の道路であり、原則として交通流が上下線に分離されていることから、事故率は低く、高速自動車国道についてみると、1億走行台キロ当たりの人身事故は10.7件で、その他の道路の106.7件に比べ、約10分の1である。その反面、高速道路においては、高速走行のため、わずかな運転上のミスが事故に結び付きやすく、しかも関係車両や死傷者が多数に及ぶ重大事故が多い。6年の高速道路の死亡事故率(発生件数に占める死亡事故件数の割合)は、その他の道路の2.3倍となっている。
 また、高速道路においては貨物車混入率が高いこともあり、貨物自動車による重大事故が多くみられ、6年の高速道路の死亡事故のうち47.8%が貨物自動車によるものであった。

表5-10 高速道路における交通事故の発生状況(平成6年)

ウ 高速道路における安全で円滑な交通流の確保
(ア) 先行対策の推進
 供用予定の高速道路については、交通の安全と円滑を確保するため、道路管理者に対して、道路線形の改良、交通安全施設の整備等必要な申入れを行うとともに、既に供用されている高速道路の交通規制との整合性や一般道路との関連性、道路構造、気象条件等を総合的に判断し、最高速度規制等所要の交通規制を実施している。
(イ) 効果的な交通指導取締り
 6年の高速道路における交通違反取締り状況は、表5-11のとおりである。

表5-11 高速道路における交通違反取締り状況(平成5、6年)

(5) 交通事故分析の高度化
ア 交通事故分析の高度化への取組み
 現下の厳しい交通情勢の下で、真に効果的に交通安全対策を導き出すためには、総合的な交通事故調査分析体制の確立、交通事故関係統計の高度化等による的確な分析を行うことが不可欠である。
 警察では、従来から交通事故について科学的、実証的に検討を加え、その実態や原因を把握して、効果的な交通事故防止対策に資するため、個々の交通事故について交通事故統計原票を作成し、これらの資料に基づき、日常業務の中でも統計的分析、事例的分析等の交通事故分析を行っている。
 また、交通事故分析の一層の高度化を目指し、平成6年度からの3箇年計画で、交通事故統計データと交通規制データ等の交通関連諸データとの統合及び交通事故統計データの収集、管理及び解析の効率化を図るための調査研究を実施している。
イ (財)交通事故総合分析センターの活動状況
 (財)交通事故総合分析センターでは、警察庁の保有する交通事故統計データ及び運転者管理データ、運輸省の保有する自動車登録データ並びに建設省の保有する道路交通センサスデータの提供を受け統合データベースを構築し、これらを活用した分析を進めている。また、5年8月から茨城県つくば市及び土浦市周辺において、実際の交通事故を人、車両、道路、救急医療等の観点から総合的かつ科学的に調査する事故例調査(ミクロ調査)を実施しており、6年中には277件の交通事故について事故例調査を行った。これらの調査研究の成果については、交通事故の事故類型別分析、自動車乗員の死傷者に関する分析等に関する報告書として公表されているほか、小冊子「イタルダ・インフォメーション」による交通事故に関する知識の普及に利用されている。今後、同センター

の調査研究が官民において実施される様々な交通安全対策のために活用されることが期待される。
(6) 駐車対策の推進
ア 違法駐車の状況
 違法駐車は、幹線道路の交通渋滞を悪化させるばかりでなく、交通事故の原因にもなっており、また、住宅地においては生活環境を害し、緊急自動車の活動に支障を生じさせるなど市民生活全般に大きな影響を及ぼしている。
 警察においては、違法駐車に対する取締りを強化する一方、駐車対策のための各種システムの整備を行い、また、関係機関、団体や民間企業に対し、駐車場の整備や既存駐車場の有効利用及び違法駐車を生じさせないような業務改善を働き掛けている。
 このような総合的な駐車対策の結果、三大都市圏(東京都(特別区に限る。)、大阪市、名古屋市)での瞬間路上駐車台数は表5-12のとおりで、平成6年は、5年に続き更に減少した。また、夜間における長時間駐車台数は、夜間路上駐車の多い全国11都市におけるサンプル調査によると表5-13のとおりで、改正保管場所法(自動車の保管場所の確保等に関する法律)の施行(3年7月1日)前と比べ、約6割の減少がみ

表5-12 三大都市圏での瞬間路上駐車台数の推移(平成2~6年)

られた。しかし、いまだ相当数の違法駐車が存在する現状からみると、今後とも引き続き総合的な駐車対策を推進する必要がある。

表5-13 全国11都市における夜間の路上駐車の状況(平成2年3月、5年6月、6年6月)

イ 総合的な駐車対策の推進状況
(ア) 駐車対策のための各種システムの整備
a 違法駐車抑止システムの整備
 違法駐車抑止システムは、交差点に設置されたテレビカメラ及びスピーカーを用いて、違法駐車車両を監視し、必要に応じ音声で警告することにより、違法駐車の抑止を図るものであり、第5次交通安全施設等整備事業五箇年計画において整備が進められている。
b 駐車誘導システムの整備
 駐車誘導システムは、駐車場を探したり、空き待ちをしている車両による交通渋滞の緩和や交通事故の防止を図るとともに、違法駐車を抑止するため、交通管制システムと連動して、駐車場の位置、満空状況、誘導経路、交通渋滞等に関する情報を運転者に提供し、空き駐車場への誘導を行うもので、6年末現在、福岡市、神戸市等40都市で運用されており、第5次交通安全施設等整備事業五箇年計画において整備が進められている。
c パーキング・メーター集中管理・誘導システムの整備
 パーキング・メーター集中管理・誘導システムは、パーキング・メーターの利用、作動状況を管理し、運転者に対し、パーキング・メーターの満空状況、誘導経路に関する情報を提供するシステムである。横浜市において運用されており、パーキング・メーターの利用率の向上、駐車スペースを探している車両のもたらす交通渋滞の緩和、交通事故の防止、違法駐車の抑止、パーキング・メーターの不正使用の防止等に役立っている。

(イ) 違法駐車の効果的な取締り
 駐停車違反の取締りは、幹線道路の交差点、横断歩道、バス停留所等における悪質かつ危険性、迷惑性の大きい違反に重点を置いて行っており、6年中の駐停車違反取締り件数は約280万件で、1日平均約7,700件であった。
 また、6年中の放置駐車違反車両の使用者に対する指示件数は約2万件であった。
 さらに、6年5月からは、車輪止め装置の取付けの措置に関する規定が施行され、6年末現在、全国で約260区間、約200キロメートルが公安委員会により車輪止め装置取付け区間として指定され、同区間において約1万2,000台の違法駐車車両に対して車輪止め取付けの措置が行われ、違法駐車の抑止に効果を挙げている。
(ウ) 関係機関、団体との連携の強化
 警察では、都道府県道路使用適正化センター、報道機関等の協力を得て、違法駐車に起因する交通事故の実態、交通渋滞の状況等違法駐車の危険性、迷惑性についての情報の提供を積極的に行うなど、違法駐車抑止のための広報啓発活動を進めている。
 また、地方公共団体、道路管理者等とともに駐車対策協議会等を設立し、地域における駐車問題を協議、検討して、各種の駐車対策を推進するほか、このような協議会の場を利用するなどして、地方公共団体等に対し駐車場附置義務条例の早期制定、公共駐車場の整備等を強く働き掛けるとともに、地方公共団体に対し自主的な違法駐車対策の諸活動を要請している。6年末現在、129市6区112町11村が違法駐車防止条例を制定し、違法駐車防止活動を行っており、警察においてもその運用について必要な協力と支援を行っている。
(7) 良好な交通環境の実現
ア 交通安全環境の整備
(ア) 交通事故多発箇所に対する施策
 警察では、交通事故多発箇所を重点に、信号機等の交通安全施設等の整備を進めている。
 右折時における衝突事故の多発している交差点では、右折矢の付加を行うなど信号機の多現示化を進め、交通の円滑化を図る必要性が特に高い主要幹線道路等では、信号機の系統化を行うなどして、交通流、交通量を整序している。このほか、歩行者用の青信号をメロディ等により知らせる視覚障害者用付加装置を備えた信号機や、高齢者等が携帯している無線発信機等を操作することにより、歩行者用の青信号の時間を長めに設定する弱者感応信号機の整備を図るなど信号機の高度化を推進している。
 出会い頭事故、歩行者横断中の事故等が多発している箇所では、その事故類型に応じて、速度規制、一時停止規制、横断歩道の設置等必要な規制を実施するとともに、関係機関に対し、交差点形状の改良、段差舗装、夜間照明の整備等を働き掛けている。また、交通事故が発生しやすいカーブ等では、減速マークの路面表示、追越しのための右側部分はみ出し通行禁止規制、自動車のヘッドライトの光をよく反射する素材を用いた道路標示等の設置を行っている。
(イ) 生活ゾーン規制の実施
 子供や高齢者等の交通弱者を保護し、良好な生活環境を保全するため、住宅地域、学校や高齢者が利用する施設の周辺等の地域を対象に区域を設定し、その区域ごとに歩行者専用、車両通行止め、大型車通行止め、一方通行等の交通規制を総合的に組み合わせて、スクールゾーン規制、シルバーゾーン規制等の生活ゾーン規制を実施している。また、自転車交通の多い路線については、自転車利用者の通行の安全を図るために必要な交通規制を進めている。
イ 交通安全施設等整備事業五箇年計画
 交通安全施設等整備事業に関する緊急措置法に基づき、交通安全施設等を整備拡充し、道路における交通の安全と円滑を確保するため、交通安全施設等整備事業五箇年計画が策定されている。平成3年度を初年度とする第5次交通安全施設等整備事業五箇年計画の内容及び6年度の実施状況は、表5-14のとおりである。

表5-14 第5次交通安全施設等整備事業実施状況

ウ 交通事故防止、生活環境保全のための対策
(ア) 高速走行抑止システムの整備
 高速走行抑止システムは、高速走行車両を検出し、これに対し警告板で警告を与え、減速、安全運転を促すことにより、高速走行による事故防止を図るもので、第5次交通安全施設等整備事業五箇年計画において整備が進められている(図5-10)。

図5-10 高速走行抑止システム

(イ) 交通公害の防止のための施策
 大型車の夜間走行等による幹線道路沿いの騒音及び振動、自動車から排出される窒素酸化物による大気汚染等の交通公害の防止を図るため、大型車を中央寄りに走行させるための通行区分の指定、発進、停止回数を減少させるための広域的な信号制御等を実施している。
エ 交通の円滑化対策の推進
(ア) 交通管制センター等の整備
 交通管制センターは、都市及びその周辺の交通を安全で円滑なものとするため、コンピュータにより信号機、可変標識、中央線変移装置の制御を行うとともに、交通情報を運転者に提供する交通管理の中枢を成す施設である。6年度には、昭和54年度以前に設置された51都市の交通管制センターのうち5都市の交通管制センターのコンピュータ等の中央装置を高性能化するとともに、2都市に交通管制サブセンターを新設した。
 また、既設の信号機について、交通量の変化に応じて青信号の時間を自動的に変える地点感応化、同一路線上の複数の信号機を相互に連動させて制御する系統化、交通管制センターのコンピュータによって信号機を広域的に制御する地域制御等を図るなど機能を高度化したほか、夜間等に交通量が減少する地域においては、閑散時半感応化、閑散時押ボタン化等による合理的な信号制御の実現に努めた。

(イ) 交通ボトルネック解消対策
 交差点、橋梁(りょう)、踏切、トンネル等は、交通容量が他の区間に比べ比較的小さいため、交通渋滞が発生しやすい。このような交通ボトルネックを解消するため、適切な信号機の制御、右折レーンの設置、踏切信号機の設置等の対策を進めるともに、道路環境の改善を道路管理者等に働き掛けている。
(ウ) 行楽期等における交通の円滑化対策
 行楽期等における大規模な交通渋滞については、その発生を予測し、事前広報を行うとともに、臨時交通規制、交通情報の提供、警察官等による交通整理、道路における工事、作業の抑制等の対策を実施し、その予防、解消に努めている。
(エ) 道路使用の適正化
 道路における工事、路上競技等の道路使用行為は、交通渋滞の要因となっていることも少なくない。
 警察では、工事方法の改善や工事の集中化、競技コースの変更等について事前の指導を行い、許可に当たっても必要な条件を付するなどして、交通渋滞等の防止に努めている。また、膨大な数に上る道路使用の状況を適正に管理するため、コンピュータを活用したシステムの整備を進めている。
 また、道路交通法に基づき都道府県ごとに指定される都道府県道路使用適正化センターは、道路の使用等に関する事項について、照会、相談に応じ、あるいは広報啓発活動を行うとともに、警察署長の委託を受けて、道路使用許可条件の履行状況、原状回復状況等の調査を行っている。
(オ) 先行的交通対策
 大量交通社会においては、都市構造、道路網、駐車場、大量輸送機関、物流システム等が交通流、交通量に大きな影響を与えることから、都市計画事業、土地区画整理事業等各種の開発事業、道路や駐車場の整備、大規模施設の建設等について、都市計画地方審議会等に参画して、交通管理面からの必要な指導、提言を行うことなどにより、交通管理上望ましい都市交通が形成されるよう働き掛けている。
オ 交通情報の収集、提供
(ア) 交通情報の提供
 交通状況の変化に応じ交通流・量の配分、誘導を適切に行うため、交通情報を収集、分析して運転者に提供することは、交通規制の実施、信号機の制御と並ぶ交通管理の重要な手法である。
 警察は、交通管理者としての立場から、車両感知器、テレビカメラ等により収集した情報を基に、交通管制センターを通じて、主要な地点に設置されている路側通信設備、フリーパターン式交通情報板等の交通情報提供施設や電話照会に対する回答、テレビ、ラジオ放送といった様々な手段を利用して、交通渋滞情報から駐車場への誘導に関する情報に至るまで、幅広く交通情報の提供を行っている。また、6年度に(財)日本道路交通情報センターが行った情報の提供は、テレビ放送によるものが約4,086回、ラジオ放送によるものが30万3,626回であり、電話照会に対するものは約1,029万件であった。
(イ) 交通情報提供施設の整備充実
a 旅行時間計測提供システムの整備の推進
 旅行時間計測提供システムは、旅行時間計測端末装置により、二地点間を通過する同一車両の旅行時間を計測し、これを運転者に提供するもので、このシステムの整備により、交通流・量を適切に配分、誘導し、交通の円滑化及び大気汚染等の交通公害の防止等に努めている。(図5-11

図5-11 旅行時間計測提供システム

b 新たな情報提供手法の実用化の推進
 警察庁は、関係省庁とともに、3年10月に発足したVICS(Vehicle Information and Communication System、道路交通情報通信システム)推進協議会において、システムについての総合的な検討を行っている。
 これは路上に設置した光ビーコン及び電波ビーコン(近くを通る車に搭載された通信機に対して、光や電波を用いてデジタルデータ通信を行うもの)や、FM多重放送(通常のFM放送の電波の空きを利用して、デジタルデータの放送を行うもの)によって、車に搭載されているカーナビゲーション装置等に、渋滞、事故、規制等のリアルタイムの交通情報を提供するという画期的なシステムである。
 警察庁では、新交通管理システム(UTMS)構想の情報提供を担う重要なシステムとして位置付け、8年から予定されている実用化に向け、光ビーコン、情報収集機能の高度化等の整備を進めている。
 なお、新交通管理システムについては、4(2)参照。

3 交通安全活動の広がりと新たな交通安全関連産業

(1) 地域交通安全活動の推進
ア 地域交通安全活動推進委員の活動
 地域交通安全活動推進委員の制度は、地域において道路交通に関するモラルを向上させるための運動等のリーダーとして活動するボランティアに法律上の資格を付与し、その活動の促進を図るため、平成2年の道路交通法の一部改正により新設され、3年1月から全国でスタートしたものである。6年末現在、全国で約1万9,000人が公安委員会の委嘱を受けて、違法駐車防止のための広報啓発活動や、地域における交通の安全と円滑に資するための活動を行っており、違法駐車防止気運の醸成等に大きく寄与している。
イ 交通安全協会の活動
 民間交通団体の指導的役割を担っている交通安全協会は、(財)全日本交通安全協会、都道府県交通安全協会のほか、警察署単位に設置されている地区交通安全協会があり、警察や地域と連携して、全国交通安全運動やシートべルト着用推進運動等の交通安全啓発活動をはじめ、街頭における街頭立哨活動、交通安全功労者、交通安全優良団体等への表彰、交通安全教育等を地域の実情に応じ、積極的に推進している。
ウ 交通指導員の活動
 交通指導員は、警察、市町村、教育委員会、知事部局の委嘱を受け、通学路における街頭活動、幼児、高齢者に対する交通安全教育等について積極的な活動を推進している。平成6年末現在における全国の交通指導員は、約32万人である。
(2) 民間企業等による交通安全活動の活発化
ア 自動車関係団体等によるドライビングスクールの開催
 日本自動車連盟及び日本自動車工業会では、自動車の特性と性能の限界等の理解を通じ、複雑な交通状況に応じた実践的な安全運転技能の向上を図るため、一般公募した普通免許所有者を対象に全国の会場において、日常の運転では体験することのできない車の危険な挙動等を実車で体験する「JAF&JAMAセーフティトレーニング」を開催している。
イ ディーラ-協議会の活動
 各都道府県ごとに、自動車販売店による交通安全対策推進協議会、いわゆるディーラー協議会が設置されており、中央組織として交通安全対策推進協議会中央連絡会が結成されている。各自動車販売店では、交通安全活動の中核となる「セーフティアドバイザー」の選任及びショールーム等における交通安全コーナーの設置を推進するとともに、「セーフティアドバイザー」を中心とした交通安全ワンポイントアドバイスを実施するなど、ユーザーに対する交通安全意識の向上を図るための諸活動を推進している。
ウ ピザ等宅配業安全運転管理協議会の活動
 ピザ等の宅配業界は、その多くが運転経験の浅いアルバイト従業員によって配達が行われている。
 そこで、業界全体における安全運転管理体制の確立を図り、業務の特性に起因する交通事故の防止を目的として、平成5年9月、ピザ等宅配業安全運転管理協議会が設立された。
 同協議会には、6年11月末現在、17社、約1,400店舗(業界全店舗数の約8割)が加入しており、店長用交通安全マニュアルの作成、交通安全啓発用会報の発行、実技講習の実施等安全意識の向上に向けた諸活動を展開している。
(3) 交通安全関連産業
ア 運転代行事業
(ア) 運転代行事業の現状
 運転代行事業とは、一般的には、飲酒、疲労等の理由により、一時的に運転をしないこととした者の依頼に応じ、その者の運転していた自動車を運転する役務を提供する事業をいう。
 6年末現在、運転代行業の事業者数は2,434(前年比4.7%増)、従業員は3万5,459人(前年比4.5%増)、使用自動車数は1万3,876台(前年比2.7%増)である。
(イ) 交通死亡事故の発生状況
 運転代行事業は、アルバイト労働者の比率が高く、深夜の限られた時間帯に収益を挙げようとするため、過労運転、スピード違反等が構造的に生じやすいという内在的な問題点を有しており、交通事故の発生状況について、以下のような特徴がある。
 まず、死亡事故の多発傾向がみられる。また、事故の形態では、顧客を送り届けた後帰還する過程での事故が最も多い。これは、一刻も早く帰還して次の顧客に対応したいという気持ちが先行し、速度超過、交差点での安全確認不履行等危険な運転を行う傾向があることによるものと考えられる。これに次いで多い形態が顧客車両を運転中の事故であるが、これは、車両構造、運転操作、運転特性等が様々に異なる車両を、事故発生の危険性の高い深夜に運転するということが背景となっていると推定される。
(ウ) 運転代行事業の健全育成
 警察では、運転代行事業の交通安全対策を推進するため、安全運転管理者等の選任の徹底、全事業者を対象とした安全運転管理者協(議)会運転代行部会の設置等について事業者を指導している。また、特別講習の実施、重点指向による交通指導取締り、暴力団の排除等を徹底するとともに、関係機関との連携を図り、事業の健全育成を推進している。
イ 自家用自動車管理業
 自家用自動車管理業とは、契約に基づき、会社等の事業に伴う車両の運転業務、安全運転管理業務、整備管理業務等の車両の運行管理を業として行う事業である。
 7年3月末現在、自家用自動車管理業の事業所数は114(前年比7.5%増)、従業員数は1万1,OO4人(同12.3%増)、契約先数は4,779社(同4.0%増)、管理自動車台数8,553台(同0.7%減)である。
 警察では、同事業の実態把握に努めるとともに、平成4年3月に設立された社団法人「自家用自動車管理業協会」と連携を図りつつ、事業の健全育成を図っている。

4 今後の交通社会の課題と展望

(1) 高齢者に対する交通安全対策
ア 高齢者の交通死亡事故の現状
 平成6年中の高齢者の交通死亡事故の主な特徴は次のとおりである。
○ 高齢者の全死亡者数は3,098人で、5年に比べ100人(3.3%)増加し、2年連続して若者の死者数(2,490人)を上回ることとなった。
○ 高齢者の全死亡者の50.2%は、歩行中に死亡しているが、4年以降発生件数は、横ばい状態にある(図5-12)。
○ 高齢者の状態別死者数のうち、5年に比べて増加率が大きいのは、原付自転車運転中(17.4%)であり、次いで自動車運転中(11.1%)となっている。
○ 若者が第1当事者(注)となった死亡事故件数が減少傾向を示しているのに対し、高齢者が第1当事者となった死亡事故件数は、昭和54年以降連続して増加している(図5-13)。
(注) 第1当事者とは、当該交通事故に関係した者のうち、過失が最も重い者をいい、過失が同程度の場合は、被害が最も軽い者をいう。
イ 高齢者に対する交通安全対策の現状
(ア) 講習会等による交通安全教育の推進
 市町村や地域の老人クラブ等との連携により、高齢者自身の交通事故防止意識の定着、高揚を図るため、全国の老人クラブ、老人ホーム等に交通安全部会等の設置を促すとともに、指導力のある高齢者を交通指導員に委嘱するなど、高齢者自身による交通安全活動を促進している。6年9月末現在、全国で交通部会を置く組織が約4万4,000、高齢者交通指導員を置く組織が約5万5,000あり、約11万人の交通指導員が組織内の老

図5-12 高齢者の状態別死者数の推移(昭和54~平成6年)

図5-13 年齢層別死亡事故件数(第1当事者)の推移(昭和54~平成6年)

人に対する交通安全教育を行っている。6年中に警察が主催し、あるいは警察官等を講師として派遣して実施した講習会等は9万5,906回で、約345万人の高齢者が参加した。
(イ) 参加型・実践型交通安全教育の推進
 講義型交通安全教育に加えて、交通事故現場における実地教育、実際


~「エ~交通安全を一席」~

富山県小杉警察署 交通指導係
 山本永貢子 巡査部長

 「大学時代の経験を生かして、落語を取り入れた楽しい交通安全教育をお年寄り相手にやってくれないか」と上司から言われて始めた交通安全落語ですが、初めは、交通安全と落語を結びつけたネタをどのようにつくればいいのか全く分からず悩んだこともありました。また、うまいネタが浮かんでもそれを何度も何度も練習して、頭にたたき込み、身振りも自然と出てくるようにする必要があったので、勤務時間終了後、一人自宅の部屋にこもって特訓を重ねなければなりませんでした。
 初めてお年寄りの前で交通安全落語をすることになったときなどは、不安で胸はドキドキと高鳴り、手は汗でぐっしょりとなりましたが、とにかく一生懸命やった結果、拍手喝釆(さい)を受け、また、お年寄りの方々から「楽しかったよ。事故に遭わず長生きできる秘訣(けつ)もよく分かったし」と笑顔で話し掛けられたときは、本当にやって良かったとつくづく感じました。
 最初のチャレンジから、今までに何度か失敗したこともありますが、今後とも、交通安全の話に耳を傾けてもらうための一つのきっかけとして、落語を取り入れ、お年寄りをはじめとして多くの人々に楽しみながら交通安全を学んでいただきたいと思っております。


に自動車等を使用しての実技講習、夜間における反射材効果実験等、高齢者が自ら体験し考える参加型・実践型交通安全教育を推進している。
(ウ) 運転適性診断機器を利用した安全運転指導
 高齢者が死亡事故の第1当事者となるケースが増加している現状にかんがみ、高齢者の個々人の特性に応じた安全な運転が行えるよう実際の走行や模擬運転装置による技能診断及び科学的検査機器を活用した運転適性診断を行っており、必要に応じて個別指導を行っている。さらに、1台で7種類の運転適性診断ができるCRT型運転適性診断機器を導入し、高齢運転者の安全運転指導に活用している。
(エ) 更新時講習等における高齢者学級の編成
 更新時講習において高齢者学級を編成し、高齢運転者の運転特性、交通事故の特徴等に基づく講習を行っている。
 更新時講習における高齢者学級は、昭和58年から全国で編成され始め、平成6年中には、実施回数7,582回、受講者数は7万7,673人となっている。
(オ) シルバー・リーダーの養成
 高齢者家庭を訪問しての個別指導や自主的な交通安全教室開催計画の立案等を高齢者自身に率先して展開させ、高齢者の立場に立った交通安全教育の実施や交通安全に対する高齢者の認識の向上を図るため、関係機関・団体との連携の下に、交通安全活動の中核となる高齢者をシルバー・リーダーとして養成するよう努めている。
(カ) 高齢者にやさしい交通環境の整備
 平成6年4月現在、高齢者等の通行の多い地区に設置されている交通弱者保護ゾーン(シルバーゾーン、福祉ゾーン等)は46都道府県、2,099地区に上っており、このゾーンでは、歩行者用道路、速度規制、一時停止等の交通規制を実施しているほか、6年3月末現在、押しボタン式信号機(2万2,187基)、弱者感応信号機(612基)、歩行者用灯器(59万8,252基)等の交通安全施設を整備するなど、高齢者に優しい交通環境の整備に努めている。
ウ 今後の課題と展望
 我が国の高齢化は、世界でも例をみない速度で進行しているが、運転免許を保有する高齢者も、12年には716万人、22年には1,249万人、32年には1,833万人となることが予想されており、2年末の保有者が281万人であることから、10年間で2.5倍、20年間で4.4倍、30年間で6.5倍と急増することとなる(注)。
 このような高齢化社会を迎える我が国においては、高齢者の交通事故死者数の増加がそのまま全死者数の増加につながるおそれが強い。科学警察研究所や民間の調査研究法人においては、高齢者に配慮した交通安全施設の整備の在り方や高齢者に対する交通安全教育の実施手法等に関する各種の調査研究が実施されているところであり、警察としては、これらの調査研究の結果等を踏まえ、今後、関係機関、団体との緊密な連携により、高齢者に対する各種交通安全対策をより積極的かつ効果的に推進する必要がある。
(注) 高齢者の運転免許保有者の将来予測は、2年末の年齢層別運転免許保有率及び厚生省人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成4年9月推計)」(中位推計)による将来推計人口を基準として、2年末の免許保有率が将来も変わらないことと仮定して算出したものである。
(2) 新交通管理システム(UTMS)
ア 新交通管理システムの目的
 警察庁では、交通情報の収集・提供システムの高度化と、その交通情報を用いた信号制御の最適化を実現する「新交通管理システム(UTMS:Universal Traffic Management Systems)」の構想を推進している。このシステムは、現在整備を進めている赤外線を用いた車両との通信が可能な光センサー(光学式車両感知器)を中心に、様々な情報通信手段を駆使し、車両に搭載した機器との通信により、交通情報の収集・提供能力を飛躍的に高め、それに基づく信号の制御、大量かつ詳細な交通情報の提供等を行うことにより、集中した交通流・量の分散・適正化を図り、道路における交通の安全と円滑を実現しようとする画期的なシステムである。
イ 新交通管理システムの機能
 新交通管理システム(UTMS)は、以下の6つのシステムから構成されている(図5-14参照)。
(ア) 高度交通管制システム
 これまでの交通管制システムに車両との通信によって得られた膨大な情報を処理する機能を加え、旅行時間等を基にした信号制御の完全自動化、提供する交通情報の自動生成等を行う高度なものであり、新交通管理システム(UTMS)の核となるシステムである。
(イ) 交通情報提供システム
 渋滞、規制等の情報に加え、目的地までの旅行時間等の情報を、様々なメディアを用いてリアルタイムで提供するシステムで、交通情報に基づく運転者の自律的な交通流・量の分散・適正化を目指している。
(ウ) 公共車両優先システム
 バス専用・優先レーンの設定、バス優先信号制御等の設置により、公共交通機関の優先通行を確保し、効率的な運行、利用者の利便の向上を図るものである。
(エ) 動的経路誘導システム
 車両から目的地に関する情報を受け取ることによって、そのときの交通状況に応じた最適な経路誘導を行うシステムである。交通全体を視野に入れ、また、予測旅行時間等を活用することで交通流の最適化を図ろうとするものである。
(オ) 交通公害低減システム
 不要な発進・停止の削減、大気汚染・騒音等の顕著な地域からのう回路情報の提供等によって、交通公害の低減を図るシステムである。
(カ) 車両運行管理システム
 車両との通信機能を活用し、車両位置情報の把握、車両への運用情報の伝達等により、タクシー、トラック等業務用車両の効率的な運用管理を支援するシステムである。

図5-14 新交通管理システム(UTMS)Universal Traffic Management Systems

ウ 今後の課題と展望
 現在、新交通管理システム(UTMS)の実現に向けての第一歩として、交通情報提供システムの構成要素の一つである道路交通情報通信システム(VICS)について、8年度の実用化に向けて、警察庁、郵政省、建設省の3省庁が協力して検討を進めている。
 光センサーとの双方向通信機能の活用による各種のサブシステムについては、そのインフラストラクチャーの整備を着実に進めていくことが重要であり、第6次交通安全施設等整備事業五箇年計画における課題として検討している。
 また、諸外国においても、近年のモータリゼーションの急速な発展に伴う交通環境の悪化に対応するため、交通管理に対する新しい取組みが始められている。このような状況の中で、コンピューターにより集中制御される信号機を最も多く保有する我が国の取組みは、国際的にも注目されているところであり、今後は、国際協力も視野に入れた研究開発を推進していく必要がある。
(3) 交通需要マネジメント(TDM)
 近年、特に都市部においては、増加する交通需要に対して、交通容量の拡大を図る対策を早急に行うことが困難であるため、交通渋滞・交通公害対策として、自動車交通の需要そのものを軽減又は平準化する「交通需要マネジメント(TDM:Transportation Demand Management)」の手法が注目されており、警察でも同様の手法を用いた諸対策を関係機関と連携して推進している。
ア 交通需要軽減対策
(ア) 公共交通機関優先対策
 マイカー利用者の公共交通機関への転換対策を推進するため、バス專用・優先レーンの設定、バス優先信号制御等の設置により、公共交通機関の優先通行を確保し、定時性を向上させて、バス利用の促進を図るとともに、バス・ロケーション・システムの導入、バス運行時間の見直し、低床式バスの導入等、利用者の利便の向上を図るための対策をバス事業者に働き掛けている。
 また、自治体、バス・鉄道事業者等にパーク・アンド・ライドシステムの導入を促すとともに、施設整備に係るアクセスの利便性につながる交通規制を実施し、バス・鉄道等の利用促進を図っている。
(イ) 物流対策
 商業・業務集積地区においては、路外駐車場の整備状況や交通状況等の地域実態に応じて、貨物自動車専用パーキング・メーターの設置や時間帯を限った貨物自動車の駐車禁止規制の解除等の対策を推進している。

イ 交通需要平準化対策
 交通渋滞情報、旅行時間情報等の交通情報を迅速的確に提供することにより、交通流・量の誘導・分散を促している。また、通勤や業務に伴う交通需要を平準化するため、関係機関、団体等に対し、時差出勤又はフレックスタイム制の導入を働き掛けている。
ウ 今後の課題と展望
 交通円滑化等の問題は、警察の取組みだけで解決できる問題ではないため、今後もTDMの推進に当たっては、関係機関、団体が一体となって総合的な対策の推進を図る必要がある。
(4) 道路交通に関する法令違反者に対する処分の在り方の検討
ア 検討の背景
 交通関係業過(交通事故により人を死傷させるという犯罪態様)事件の起訴率は、昭和61年には72.9%に達していたところ、以後、62年には54.2%、63年には44.6%、平成元年には39.8%、2年には31.1%、3年には21.4%、4年には18.7%、5年には16.4%と、過去7年間において急激に低下している(注1)。
 この変化の背景には、次のような事情があるとされている(注2)。
○ 「国民皆免許時代」「くるま社会」の今日、軽微な事件について国民の多数が刑事罰の対象となるような事態となることは、刑罰の在り方として適当ではない。
○ 保険制度が普及し、治療費や修繕費に対する保険による保障が充実してきたことに伴い、加害者が起訴されなくても、被害者が納得することが多い。
○ 交通事故の防止は、刑罰のみに頼るべきものではなく、行政上の規制・制裁をはじめ、各種の総合的な対策を講ずることによって達成されるべきものである。
○ この種事件を起訴するとはいっても、従来から、その多くは略式手続によって処理され、少額の罰金が科されていたわけであるが、このように少額の罰金を科するのは、罰金の刑罰としての感銘力を低下させ、刑事司法全体を軽視する風潮を醸成することとなる。
(注1) 「第119検察統計年報」による。
(注2) 「平成4年犯罪白書」による。
イ 今後の課題と展望
 以上のような変化の結果、道路交通法に違反した者については、そのほとんどが反則通告制度の適用等によって何らかの処分を課せられているのに対し、交通事故を引き起こした者については、刑事的制裁が課されていない場合が多いという現象を生じることとなった。
 これらの現状を踏まえ、警察庁では、道路交通に関する法令違反者に対する処分の在り方について検討を開始したところである。今後は、現在、反則通告制度の対象となっているものへの行政制裁金制度導入の是非、現在の反則通告制度の適用対象の見直し等の事項について、外国の法制度をも参考にしながら幅広く検討を進めていくこととしている。


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