第2章 国際化社会と警察活動

 近年の交通、通信手段等の飛躍的発展に従って、我が国と諸外国との交流はますます活発化している。
 これに伴い、我が国における来日外国人による犯罪が急増しているほか、海外からの薬物、けん銃等の流入、日本人の国外における犯罪及び我が国において犯罪を犯した者が国外へ逃亡する事案の増加傾向がみられる。不法就労を目的とする不法滞在外国人については、関係機関との合同摘発等の対策をとった結果、不法残留者の増加傾向に歯止めが掛かったものの、約30万人という大量の不法滞在者が存在し、それらの者による犯罪の発生、不法就労や不法入国を手引きするブローカーの存在、住民とのトラブルの発生等の社会問題が生じている。これらの問題に対して、警察では、国際捜査力、国際捜査協力を強化するとともに、不法滞在の防止及び取締りに努めるなどして対応している。
 また、我が国は、世界的にみて最も治安の良い国の一つであると言われており、治安維持に関する協力は、我が国が積極的に国際貢献を行いうる分野の一つである。警察では、各種セミナーの開催や技術専門家の諸外国への派遣等を通じて、開発途上国における捜査能力の向上等に協力している。

1 国際化の進展に伴う警察事象の変化

(1) 急増する来日外国人犯罪
 昭和59年に約200万人であった外国人入国者総数は、平成5年には約1.8倍の374万7,157人となっており、これを反映して、来日外国人(注)による犯罪も急増している。
ア 高い増加率を示す来日外国人犯罪
 5年中に刑法犯、薬物事犯(薬物四法)で検挙された来日外国人は、前年に比べ、それぞれ22.1%、32.6%増加しており、同時期の検挙人員全体の増加率(刑法犯4.5%、薬物事犯3.9%)よりも著しく高い伸び率を示している(表2-1)。

表2-1 検挙人員増加率の比較(平成4、5年)

イ 検挙人員全体に占める来日外国人構成比の高さ
 日本の総人口(満14歳以上)に占める来日外国人人口の構成比は約0.9%であるとみられるが、5年の検挙人員全体に占める来日外国人検挙人員の構成比は.刑法犯2.4%(凶悪犯では4.7%)、薬物事犯4.2%(大麻では12.7%、コカイン事犯では41.4%、ヘロイン事犯では67.3%)である。このように人口構成比との比較で見た場合、検挙人員全体に占める来日外国人検挙人員の構成比の高いことは、来日外国人の多くが20歳代から

表2-2 来日外国人構成比の比較(平成5年)

40歳代に集中しているであろうことを考慮しても、国際化がもたらす治安上の問題として注目する必要がある(表2-2)。
(注) 来日外国人とは、我が国にいる外国人から、いわゆる定着居住者(永住者等)、在日米軍関係者及び在留資格不明の者を除いた者をいう。
(2) 来日外国人による刑法犯
 5年の来日外国人刑法犯の検挙件数は1万2,771件、検挙人員は7,276人で、件数、人員とも過去最高を記録した(図2-1)。
ア 目立つ国際的職業犯罪グループ等による犯罪
 近年、韓国人グループによる集団暴力すり事件、香港人等による盗難トラベラーズチェック使用詐欺事件、ナイジェリア人グループ等による盗難クレジットカード使用詐欺事件等、国際的職業犯罪グループ等によると思われる犯罪が増加しており、その犯行の凶悪化、広域化が目立っている。
〔事例1〕 5年11月、駅構内で女性の手提げバッグから財布を窃取しようとした韓国人の男5人は、同人らを逮捕しようとした警察官に対し、所持していた柳刃包丁で切りつけたり、催涙スプレーを噴射したりして激しく抵抗した。同日3人を逮捕(警視庁)
〔事例2〕 3月、香港人の男は、銀行で盗難トラベラーズチェックを換金しようとして見破られ、未遂に終わった。同日逮捕(北海道)
 これらの事犯においては、母国において組織的に準備された偽造、偽名旅券を用いて毎回異なる偽名で入国し、1週間、10日といった短期間に集中的に犯行に及んで出国する、いわゆるヒット・エンド・ラン型の形態が特徴的である。
 警察では、国際的職業犯罪グループ等による犯罪に的確に対処するため、関係外国捜査機関、特にアジア諸国の捜査機関との情報、資料の交換をはじめとした連携の強化に努めている。

図2-1 外国人入国者数及び来日外国人刑法犯検挙状況(昭和59~平成5年)

イ 急増する凶悪事件
 来日外国人犯罪の検挙件数を包括罪種別にみると表2-3のとおりであり、窃盗犯が最も多いが、凶悪犯が最近5年間に約4.5倍に急増しているのが目立っている。
 凶悪犯に関しては、従来、就労のあっせん等に絡む不法就労者同士のトラブルが原因となった事件が目立ち、日本人を犯行対象とするものは比較的少なかったが、最近になって、日本人を最初から犯行の対象として選定した上で敢行したとみられる強盗事件等が目立っている。5年に凶悪犯で検挙された来日外国人246人のうち、日本人に対して被害を加えたものの割合は、殺人事件では72人中19人(26.4%)であるが、強盗事件では142人中96人(67.6%)である。
〔事例〕 3月、不法残留中のフィリピン人男性は、女性宅に侵入し室

表2-3 来日外国人刑法犯の包括罪種別検挙状況(昭和59~平成5年)

内を物色中、就寝中の同女に発見されたことから、首を手で締めて殺害した上、現金を強奪した。4月逮捕(千葉)
ウ 被疑者の国籍の多様化
 5年の来日外国人犯罪の国籍別検挙状況は表2-4のとおりであり、

表2-4 来日外国人刑法犯の国、地域別検挙状況(昭和63~平成5年)

アジア地域が9,829件(全体の77.0%)、5,761人(同79.2%)で、依然として高い割合を占めており、特にタイ、フィリピンの増加が目立っている。その一方で、ペルー、ブラジル等も増加するなど、被疑者の国籍が多様化している状況がうかがわれる。
エ 大都市圏以外の地域への拡散
 来日外国人刑法犯の地域別検挙状況をみると、東京、神奈川、大阪等の大都市において多発しているが、その一方で、図2-2のとおり、地方へ拡散しつつある状況がうかがわれる。

図2-2 都道府県別来日外国人刑法犯検挙件数の推移(昭和63、平成5年)

(3) 薬物、けん銃等の流入
ア 薬物の密輸入
(ア) 海外からの薬物の流入
 我が国で乱用されている薬物のほとんどは、国外において密造、密輸されたものである。外国人入国者数の増加に伴い、来日外国人が関連した薬物事犯は、年々増加傾向にあるが、特に平成5年は、イラン人による大麻事犯、あへん事犯が多発した。また、平成元年以降、麻薬供給ルートの確保、市場の開拓、拡大を図るため、我が国への進出を強めている南米のコカイン・カルテルの活動も活発である。
(イ) 来日外国人による薬物事犯
 5年に薬物事犯で検挙された来日外国人は886件、737人で、前年に比べ、件数は209件(30.9%)、人員は181人(32.6%)それぞれ大幅に増加した。これを罪種別にみると、覚せい剤事犯が365件、288人、麻薬等事犯(麻薬及び向精神薬取締法違反及びあへん法違反という。)が260件、204人、大麻事犯が261件、245人となっており、いずれも年々増加する傾向にある。特に、あへん事犯、大麻事犯の検挙人員は、それぞれ前年の約4.8倍、約1.6倍であり、大幅に増加している。
 国、地域別では、フィリピンが282件(31.8%、うち覚せい剤事犯266件)、215人(29.2%)で最も多く、次いでイラン244件(27.5%、うち大麻事犯129件、あへん事犯86件)、195人(26.5%)、マレーシア87件(9.8%、うちヘロイン事犯67件)、70人(8.5%)、タイ36件(4.1%、うち大麻事犯12件)、42人(5.7%)の順となっており、東南アジアの検挙が多くなっている。
イ けん銃の密輸入
(ア) 真正けん銃の製造国別押収状況
 最近5年間の真正けん銃の製造国別押収丁数の推移は、表2-5のとおりである。5年に押収した真正けん銃は1,356丁であるが、そのうちのほとんどが国外で製造されたものであり、海外から流入したけん銃の押収が依然として多い。
 製造国別では、アメリカが469丁(押収真正けん銃全体の34.6%)で最も多く、次いで中国297丁(21.9%)、フィリピン103丁(7.6%)の順になっており、近年、特に中国製けん銃の押収が増えている。

表2-5 真正けん銃の製造国別押収丁数の推移(平成元~5年)

(イ) 外国人によるけん銃密輸入
 5年に検挙したけん銃密輸入事犯9件11人のうち、外国人被疑者によるものは4件4人であり、これらの外国人から7丁のけん銃を押収した。最近は、外国人船員がけん銃を売って金儲けなどをしようと企て、密かに持ち込む事例がみられる。
〔事例1〕 9月、中古自動車と交換するためにけん銃を密輸入したロシア人貨物船船員(28)とこれを譲り受けようとした日本人中古自動車販売業者(46)を銃刀法違反等で逮捕し、けん銃1丁を押収(富山)
〔事例2〕 10月、けん銃を密輸入し、これを密売しようとしたフィリピン人貨物船船員(39)を銃刀法違反等で逮捕し、けん銃4丁を押収(兵庫)
ウ その他の密輸入事犯
 我が国では、知的所有権を侵害する偽ブランド商品や海賊版ビデオ等は禁制品として輸入が禁止されている。また、国際的な保護が求められている希少野生動植物等は輸入に際し、事前の承認が必要とされている。警察では、こうした法規制をくぐり抜けて密輸入等を敢行する悪質な業者等に対して関税法、外為法等を適用して取締りを行っている。
〔事例1〕 韓国人電気商(43)らは、偽ブランド商品の密輸入を企て、外国有名ブランドの偽バッグ等をパナマ船籍の貨物船に積み込み、大阪港に密輸入した。9月までに、関税法、商標法違反で2人を逮捕、偽バッグ等約4,000点を押収(大阪)
〔事例2〕 タイ人貿易商(35)は、ワシントン条約で国際取引が規制されている陸ガメを洋服の隠しポケットやウィスキーの箱等に隠し、密輸入しようとした。3月、関税法違反で逮捕、陸ガメ175匹を押収(千葉)
(4) 不法滞在者問題
ア 大量の不法滞在者の存在
 近年、我が国と周辺諸国との経済格差を背景として、就労目的の外国人の入国が急増している。法務省の推計によれば、不法残留者は、平成2年7月1日現在10万6,497人であったものが、5年5月1日現在では29万8,646人にまで増加した。その後、不法残留者は、同年11月1日現在で29万6,751人に減少し、その増加傾向に歯止めが掛かったものの、依然として我が国国内には約30万人もの大量の不法滞在者が存在する(表2-6)。
 不法滞在者(注1)の大部分はこれら不法残留者で構成されており、そのほとんどは不法就労者(注2)であるとみられる。このような不法滞在者は、来日外国人人口の約30%を占めているほか、外国人労働者(約60万人。労働省推計)の約半数が不法滞在者であるとみられる。また、来日外国人凶悪犯の半数以上が不法滞在者によるものであるなど、大量の不法滞在者の存在は、治安上重要な問題となっている。

表2-6 国、地域別不法残留者数の推移(平成2~5年)

(注1) 不法滞在者とは、出入国管理及び難民認定法第3条違反の不法入国者、同法第9条違反の不法上陸者及び適法に入国した後在留期間を経過して残留している不法残留者をいう。
(注2) 不法就労者とは、就労している不法滞在者及び無許可で資格外活動を行っている者をいう。
イ 不法滞在を助長する犯罪
(ア) 身分事項等を偽るための文書偽造事件
 5年は、上陸許可証印を偽造するなど、身分事項等を偽るための文書偽造事件が頻発した。4年には7件の検挙であったのが、5年は26件の検挙と大幅に増加(約3.7倍)しており、偽造ブローカーによる事件の検挙も、4年には1件であったのが、5年は8件に上った。
 また、偽造文書を使用して合法滞在に見せかけていた外国人の検挙は、44人に上り、国籍別にみるとペルー人26人、韓国人9人、中国人9人の順となっており、ペルー人による文書偽造事件のほとんどは、在留資格変更許可証印を偽造して日系人を装うためのものであった。
 このほか、在留延長及び不法就労を目的とした偽装結婚事件、不正出入国を目的とした日本人旅券不正取得事件、他人名義の旅券又は偽造査証を押印した旅券で入国してくる事件も継続して発生している。
〔事例〕 6月、不法滞在者約50人の旅券に偽造証印を押印していたパキスタン人(32)ら15人を有印公文書偽造・同行使等で逮捕(埼玉)
(イ) 不法就労を目的とした集団密航事件
 5年中に検挙した集団密航事件は、鹿児島(4月)、長崎(4月)、沖縄(4月)、北海道(6月)、和歌山(11月、12月)の6件133人(海上保安庁扱いを含めると7件335人)であり(表2-7)、前年の9件272人(海上保安庁扱いを含めると14件396人)に比べ、件数及び人員は減少したが、集団密航1回当たりの人員は、前年の最大88人に比べ、鹿児島145人(海上保安庁扱い)、和歌山105人、北海道約100人(被疑者の供述による推定)等と急増した。これらの事件は、いずれも日本における不法就労を目的としたものであるが、前年の事件がすべて中国・台湾の船

表2-7 集団密航事犯の検挙状況(平成2~5年)

を使用したものであったのに対し、5年中の事件のうち2件(鹿児島、北海道)は、日本漁船を使用したものであった。この2件にはいずれも暴力団が関与しており、暴力団が中国からの集団密航を新たな資金源にしようとしていることがうかがわれる。
〔事例〕 6月11日、日本人暴力団組長(住吉会系)らは、日本漁船を使用し、中国人約100人を北海道厚岸港に不法に上陸させた。住民の通報により、密航者受入れ案内人(来日台湾人及び元就学生の中国人等)7人を不法残留又は旅券不携帯で現行犯逮捕。その後の捜査により、東京、神奈川、大阪等に潜伏していた密航者21人をはじめ、暴力団組長を含む密航船乗組員等の日本人10人の合計38人を逮捕(北海道)
(ウ) 雇用関係事犯
a ブローカーによる不法就労あっせん事犯
 不法就労者を含めた外国人労働者が急増した背景には、我が国と開発途上国との間の経済格差のほか、就労あっせんブローカーや外国人労働者を雇用しようとする者の存在があるが、最近、特にブローカーが外国人労働者の就労に介入する動きが活発化している。これらブローカーは、外国人労働者と雇用主の間に介在して不当な利益を得ており、また、雇用主の中には、外国人労働者を低賃金で酷使するなど悪質な者がみられる。そのため、警察では、職業安定法、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(労働者派遣法)、労働基準法等の雇用関係法令の規定や入管法の不法就労助長罪の規定を適用して、ブローカーや悪質な雇用主等の取締りを推進している。
 5年中に検挙したブローカーは147人で、前年に比べ51人(53.1%)増加している。最近、外国人ブローカーと日本人ブローカーが結託して外国人労働者をあっせんするケースが多くなっているが、5年中に検挙した外国人ブローカー45人を出身国、地域別にみると、タイ(20人)をは

表2-8 外国人労働者に係る雇用関係事犯の法令別検挙状況(平成2~5年)

表2-9 雇用関係事犯に関与した外国人の国、地域別状況(平成2~5年)

じめ、台湾、韓国、ラオス、中国、パキスタン、マレーシア、イラン、フィリピンの9箇国、地域に及んでおり、日本国内での活動拠点も関東地方だけでなく全国へ広がる傾向が強まっている。
 最近4年間の外国人労働者に係る雇用関係事犯の法令別検挙状況は表2-8のとおりで、これに関係した外国人の国、地域別状況は表2-9のとおりである。また、最近2年間の外国人ブローカーの国、地域別検挙状況は表2-10のとおりである。

表2-10 外国人ブローカーの国、地域別検挙状況(平成4、5年)

〔事例1〕 日本に難民として定住しているラオス人ブローカー(39)は、不法残留中のタイ人ブローカー(27)と共謀し、短期滞在の在留資格で入国し不法残留となっているタイ人男性5人及びフィリピン人男性6人を塗装会社にあっせん.していた。6月までにラオス人ブローカー、タイ人ブローカー及び塗装会社関係者3人を不法就労助長罪で逮捕(神奈川)
〔事例2〕 定住者の中国人ブローカー(26)は、短期滞在の在留資格で入国し不法残留となっているマレーシア人男性3人を人材派遣業者にあっせんし、人材派遣業者は、これら外国人労働者を自転車部品加工会社に派遣していた。6月、中国人ブローカーを不法就労助長罪で、人材派遣業者を不法就労助長罪及び労働者派遣法違反で逮捕(大阪)
b 暴力団関与事犯
 暴力団は、以前から外国人女性を売春婦等として飲食店等にあっせんすることが多かったが、最近では外国人男性を建設現場工場等の単純労働者としてあっせんしたり、自己が経営する建設会社等で低賃金で雇用したりすることも多くなっている。また、暴力団フロント企業が外国人労働者の人材派遣を手掛ける傾向がみられ、ブラジルの現地新聞に求人広告を出して労働者を募集していた例もみられた。これら暴力団及び暴力団フロント企業が外国人労働者のあっせん等によって得る利益は、暴力団の新たな資金源となっている。5年中の外国人労働者に係る雇用関係事犯で検挙した暴力団員は67人で、前年に比べ28人(71.8%)増加している。
〔事例1〕 人材派遣業を営む暴力団幹部(50)は、妻(51)と共謀し、日系ブラジル人約90人を7企業に派遣し、機械の研磨作業等に従事させ、派遣先企業の契約賃金の約35パーセントをピンハネして1億円以上の暴利を得ていた。2月、暴力団幹部及びその妻を労働者派遣法違反で逮捕(滋賀)
〔事例2〕 暴力団フロント企業である人材派遣業の代表取締役(52)は、会社関係者7人と共謀し、短期滞在の在留資格で入国し不法残留となっているペルー人12人を建設会社等に派遣し、建設現場の解体作業等に従事させていた。11月までに代表取締役及び会社関係者7人を労働者派遣法違反及び不法就労助長罪で逮捕(鹿児島)
(エ) 風俗関係事犯
 近年、短期滞在、興行等の在留資格で入国し、風俗関係事犯に関与する外国人女性が増加している。これら外国人女性は、深夜飲食店等における接待行為、さらに売春、猥褻(わいせつ)事犯等にまで関与しており、地域的にも大都市から地方都市にまで広がりをみせている。
 これらの中には、多額の借金を背負わされて売春を強要されたり、無報酬で働かされたり、賃金をピンハネされたりするなど劣悪な条件下で不法就労している者も認められる。
 一方、2年ごろから新宿地区、池袋地区において外国人による街娼型の売春が目立ち始めたが、現在では、横浜市、大阪市等にまで広がりをみせ、売春防止法違反(勧誘等)による検挙が増加しているほか、経営者等として検挙される外国人も目立っている。
 このような事犯の背後には、現地ブローカーと結託した日本のブローカーの存在や暴力団の関与等も認められるため、警察では、これら背後組織の摘発を重点に取締りを強化している。
 5年中に風俗関係事犯に関与した外国人女性は2,405人で、前年に比べ6.3%(143人)増加した。国、地域別では、タイ人が1,849人と最も多く、次いで台湾人158人、コロンビア人109人となっており、依然として東南アジア諸国の女性が多くなっている(表2-11)。

表2-11 風俗関係事犯に関与した外国人女性の国、地域別状況(平成元~5年)

〔事例1〕 現地タイ人女性ブローカー(36)らは、タイ人女性500人以上を関東一円のスナック等にあっせんし、スナック等の経営者は、これらのタイ人女性を売春等に従事させていた。12月までに、タイ人女性、暴力団幹部らブローカー20人を職業安定法違反等、飲食店経営者ら47人を売春防止法違反等で検挙(警視庁)
〔事例2〕 4月、保護したタイ人女性が350万円の借金を背負わされてスナックで売春を強要されていることが判明したため、スナック経営者の台湾人女性1人を売春防止法違反、稼働中のタイ人女性20人を不法残留等の入管法違反、これらの女性をあっせんしたタイ人女性ブローカー1人を職業安定法違反で逮捕(福井)
ウ 不法滞在者による犯罪
(ア)高い不法滞在者の検挙人員構成比
 5年中に検挙された来日外国人による凶悪犯246人のうち、不法滞在者は130人(52.8%)であり、前年に比べ24人の増加である。また、5年中に検挙された来日外国人による薬物事犯737人のうち、不法滞在者は305人(41.4%)であり、前年に比べ84人の増加である(表2-12)。不法滞在者の来日外国人に占める割合は約30%であるとみられるので、それとの比較で考えると、我が国の治安に大きな影響を与える凶悪犯や薬物事犯において、不法滞在者検挙人員の構成比の高いことが注目される。

表2-12 凶悪犯、薬物事犯における不法滞在者検挙人員構成比(平成4、5年)

〔事例1〕 5月13日朝、不法残留中の中国人男性2人は、マンションを経営する日本人男性宅に出入り業者を装って侵入し、同人及び同人の長女を所携のナイフで刺殺した上、現金約30万円及び腕時計等5点を強取した。6月23日までに被疑者1人を通常逮捕し、逃亡被疑者1人は追跡捜査中(警視庁)
〔事例2〕 コカインを隠してコロンビアから発送された国際郵便小包を受領した不法残留中のコロンビア人男性を検挙するとともに、コカイン1.04キログラムを押収(2月、警視庁)
(イ) 犯罪の温床となった不法滞在者のい集
 不法滞在者のい集は、2年末ころから目立ち始め、4年末には、東京・代々木公園(日曜日に約5,000人)等で顕著となった。これらのい集者の間では薬物や変造テレホンカード密売等が行われ、犯罪の温床となっている状況がうかがわれた。不法滞在者のこのようない集事案に関し、周辺住民や施設利用者からは苦情等が寄せられるなど、地域の治安問題となっていたため、4年末から5年9月にかけ、入国管理局や地方自治体等と協力し、代々木公園周辺、上野公園、新宿駅南口、名古屋駅周辺、大阪城公園において不法滞在者415人を検挙するとともに、薬物事犯17件17人を検挙し、大麻約305グラム、大麻樹脂約320グラム等合計約730グラムを押収した。さらに、変造テレホンカード約10万3,500枚、同製造機5台を押収した。そのほか、関係機関の協力を得て、パトロールや警告板の設置等の諸対策を推進し、これらの場所については、現在、不法滞在者の顕著ない集は見られなくなっている。
(5) 日本人の国外における犯罪
 平成5年中の日本人の出国者総数は1,193万3,620人であり、前年に比べ1.2%増加し、過去最高を記録した。
 日本人が外国においてその国の法令に触れる行為をした場合、我が国の警察がICPOや外務省等を通じて通報を受けることがある。このようにして把握された日本人の国外犯罪者数は、ここ数年横ばい状態であるが、最近の日本人の出国者数の急激な伸びから考えると、通報を受けていない日本人の国外犯罪が増加していることが懸念される。
〔事例〕 5年4月、暴力団組長らは、ハワイに覚せい剤を持ち込み、密売しようとして米国連邦捜査局(FBI)に逮捕され、覚せい剤約2キログラムが押収された。6年5月、ハワイの連邦地方裁判所において、懲役11年3月の判決が言い渡された。
(6) 被疑者の国外逃亡事案
 近年の国際交流の活発化を背景に、国内で犯罪を犯した者が、捜査を逃れるため国外に逃亡する事案が増加傾向にある。平成5年末現在の国外逃亡被疑者数は306人(うち日本人82人)である(表2-13)。これらの者の逃亡先としては、台湾、フィリピン、韓国が多いとみられる。

表2-13 国外逃亡中の被疑者数の推移(昭和59~平成5年)

 5年末現在の国外逃亡被疑者のうち、出国年月日の判明している155人について、その犯行から出国までの期間をみると、犯行当日に出国した者が6人(3.9%)、翌日に出国した者が19人(12.3%)であり、犯行から10日以内に68人(43.9%)が出国しており、犯行後短期間のうちに出国する計画的な事案が多い。
 警察では、被疑者が国外に逃亡するおそれがある場合は、港や空港に手配するなどしてその出国前の検挙に努めており、出国した場合でも、関係国捜査機関等の協力を得ながら、被疑者の所在確認に努めている。また、ICPOに対し、国際手配書の発行を請求することもある。
 逃亡被疑者が発見されたときは、逃亡犯罪人引渡しに関する条約、外交交渉に基づく被疑者所在国の国内法上の手続、国外退去処分等により、被疑者の身柄の引取りを行っている。
〔事例〕 2年9月ごろにノンバンクから約50億円をだまし取った男(42)について、アメリカから発見した旨の連絡を受けたことから、外交ルートを通じて仮拘禁請求及び身柄引渡請求を行い、5年8月米連邦裁判所により引渡しが許可され、被疑者は9月初め、ホノルル国際空港から帰国(警視庁)

2 国際化社会への対応

(1) 国際犯罪への対応
ア 国際捜査力の強化
(ア) 国際捜査官の育成
 来日外国人犯罪等の国際犯罪の捜査には、国際条約のほか、出入国管理、国際捜査共助、刑事手続等に関する内外の法制、言語、慣習を異にする外国人の取扱い、出入国手配、ICPO、外務省等を通じた外国捜査機関への協力要請等の極めて幅広い分野に関する特別の知識、手法が要求される。
 そこで、警察では、警察大学校の附置機関である国際捜査研修所において国際捜査に関する実務研修等を行っており、都道府県警察においても、国際捜査実務能力を備え、国際的なものの見方、感覚をもった捜査官を養成するための各種の研修を行っている。
 また、従来から、警察職員に対する英語、中国語、韓国語等の教養、海外研修等を実施してきたが、アジア地域出身の来日外国人が被疑者や被害者として犯罪にかかわる事案が増加しており、タガログ語(フィリピン)、タイ語、ウルドゥー語(パキスタン)等アジア系言語への対応の必要性が高まっていることから、これらの言語についても、部外の語学研修機関に委託し、語学教養を推進している。このほか、都道府県警察において、国際捜査に従事する捜査員に対する英語専科教養や、通訳担当者も参加しての実務的な語学研修等が実施されている。
 また、国際捜査課(室)、国際犯罪捜査係等専門組織の設置、拡充、専務員の配置、増強を図るとともに、語学に堪能な者を国際捜査官として中途採用するなどの措置がとられている。
〔事例〕 平成5年4月、大阪府警察本部では、国際犯罪の急増に対処するため、警視庁に次いで2番目の国際捜査課を設置した。
(イ) 通訳体制の整備
 来日外国人の関与する犯罪の捜査に当たって、最も問題になるのが言語の壁である。来日外国人被疑者の人権に十分配慮した適正な捜査を推進するためには、被疑者の供述をニュアンスまで正確に把握することはもとより、我が国の刑事手続の流れを理解させ、権利の告知を確実に行うことが不可欠である。都道府県警察においては、高い語学能力を備えた者を警察職員として採用し、取調べにおける通訳等に当たらせている。
 しかし、近年、少数言語の通訳の需要が急激に増加しており、警察部内でそのすべてに対応することが極めて困難であるため、部外の通訳人に対し、捜査業務の補助として、取調べにおける通訳を依頼している。警察では、被疑者の人権の保護等のためにできる限り優秀な通訳を確保する必要があること、夜間等に突発的に発生する事件等に迅速に対応する必要があることなどにかんがみ、謝金を充実させるなど、部外通訳人の確保等に努めるとともに、都道府県警察内及び管区警察局内における通訳人相互派遣制度等の通訳人運用制度の整備に努めている。
 また、外国人被疑者等関係者の権利を守り、適正な手続を保障するため、国際捜査研修所や各都道府県警察において、捜査官及び通訳人のための捜査関係用語集等の各種執務資料を作成している。特に、部外通訳人に対しては、通訳に当たって理解しておくべき我が国の刑事手続等について説明した「通訳ハンドブック」を配布したり、刑事手続等に関する研修会を開催したりするなど、そのレベルアップに努めている。
イ 国際捜査協力の強化
(ア) 情報、資料の交換
 国際犯罪の増加に伴い、個々の事件捜査における各種照会や証拠資料の収集の依頼等、外国捜査機関との国際協力が一層重要になっている。捜査に必要な情報、資料を外国捜査機関と交換するためには、ICPOルート、外交ルート等があるが、ICPOルートは、外国捜査機関との国際捜査協力において、簡便、迅速な手段として重要な役割を果たしている。過去10年間に警察庁が行った国際犯罪に関する情報の発信、受信の総数は表2-14のとおりで、10年間で約1.5倍となっている。

表2-14 国際犯罪に関する情報の発信、受信状況(昭和59~平成5年)

 また、警察では、各種国際会議への参加等により、外国捜査機関との情報、資料の交換に努めている。
〔事例〕 10月、警察庁は、中国、フィリピン、タイ、米国等15箇国、地域及びICPOの銃器対策責任者を東京に招請し、第1回銃器対策国際会議を開催した。
(イ) 外国捜査機関との協力
 国際捜査共助法に基づき、外国からの協力要請に対し、警察が調査を実施した件数は表2-15のとおりで、5年は、ICPOルートによるものが673件(前年比112件減)、外交ルートによるものが6件(1件減)である。

表2-15 外国からの依頼に基づき捜査共助を実施した件数(昭和59~平成5年)

〔事例〕 オーストラリアから外交ルートにより共助要請のあった化石不正輸出事案に関し、9月、来日した捜査官の立会いの下、捜索、事情聴取等を行った(警視庁、千葉、京都)。
(ウ) 国際刑事警察機構(ICPO)との協力の強化
a ICPOへの貢献
 我が国は、昭和27年にICPOに加盟して以来、警察庁を国家中央事務局として、国際的な捜査協力を積極的に実施している。また、60年以降平成2年までの間はICPO事務総局の警察局長として、2年以降5年までの間はICPOの副総裁として警察庁の職員を派遣したほか、分担金の拠出、ICPO情報通信ネットワークの近代化のための技術提供等、ICPOの機能強化のために多大な貢献をしている。
 外国捜査機関との捜査協力のほとんどがICPOを介して行われており、我が国の警察にとって、ICPOは、極めて重要な存在となっている。今後とも、ICPOの発展のため、可能な限り貢献するとともに、国際犯罪を防止するため、ICPOのより積極的な活用を図り、外国捜査機関との捜査協力を推進していく必要がある。
(注) ICPOは、国際犯罪捜査に関する情報交換、犯人の逮捕と引渡しに関する円滑な協力の確保等国際的な捜査協力を迅速、的確に行うための国際機関であり、5年末現在、174の国、地域が加盟している。ICPOの活動は、国際犯罪に関する情報の収集や交換のほか、逃亡犯罪人の所在確認や身柄の確保を求める国際手配書の発行、各種の国際会議の開催等多岐にわたっている。
b ICPO通信網
 ICPOは、国際捜査協力と国際手配を迅速に実施するため、ICPO専用の通信網を保有している。ICPO通信網は、中央局、地域局及び国家局から構成されており、我が国では、警察庁に、アジア地域の地域局と我が国の国家局を兼ねるICPO東京局が設置されている。
 ICPO東京局では、テレテックス、無線テレタイプ、ファクシミリ等により大量の国際警察電報を送受信しているが、平成5年4月からはメッセージ交換システムを導入し、電子メールの運用を開始した。また、国際手配書等の即時照会が可能な自動検索システム及びデジタル信号方式の写真電送装置の運用も開始した。
(2) 来日外国人に係る犯罪等に対する総合的な対策
ア 来日外国人犯罪の確実な検挙
 来日外国人犯罪、特にその凶悪犯や薬物事犯については、我が国の治安に与える影響の大きさにかんがみ、確実に検挙していく必要がある。
 このため、来日外国人犯罪捜査に精通した捜査官の育成、通訳者の確保、外国捜査機関との協力体制の強化に努めている(前記(1)参照)。
イ 不法滞在者を減少させるための取締り
 不法滞在を防止し、不法滞在者数を減少させるため、集団密航事犯、ブローカーによる不法就労あっせん事犯、旅券の偽造事犯等の不法滞在を助長する犯罪の取締りを強化するとともに、不法滞在事犯そのものについても悪質なものを重点に取締りを強化していく必要がある。このため、法務省、外務省等の関係機関と緊密に連携して、不法滞在者の合同摘発、入国審査の厳格化、査証免除の停止措置等の施策を推進している。
〔事例1〕 査証免除の停止措置が成果を挙げた例
 不法就労者の増大を防止するため、パキスタン、バングラデシュ(平成元年1月)、イラン(4年4月)との査証免除取極が停止され、また、マレイシアについては5年6月から査証取得が勧奨され、それぞれ大きな成果を挙げている(表2-5参照)。
〔事例2〕 原宿駅前におけるい集状況
 5年4月28日の代々木公園の原宿門における植栽工事開始後、原宿駅周辺に毎日曜日、最盛時100~200人の不法滞在外国人等がい集し、雑誌、ビデオ等を販売したり、大麻や変造テレホンカードを密売したりしていたため、東京入国管理局と合同で取締りを実施し、37人を警察逮捕(入管法違反35人、大麻取締法違反2人)、210人を入管収容(警視庁)
ウ 来日外国人に対する防犯保護活動
 警察では、来日外国人が事故や犯罪等の被害に遭うのを防止するため、外国語で書かれた防犯心得等についてのパンフレットを作成、配布しているほか、外国人との防犯懇談会を開催して防犯相談や防犯指導を実施するとともに、防犯パトロールを強化して外国人と周辺住民とのトラブル防止等に努めている。政府が実施した「外国人労働者問題啓発月間(6月)」に併せて警察が取り組んだ「不法滞在、不法就労防止のための活動強化期間(6、7月)」中には、4都道府県で216回(約6,000人対象)の防犯懇談会を開催し、その後も各都道府県で継続的に開催している。
エ 雇用主に対する外国人適正雇用の要請
 警察では、来日外国人の不法就労、不法滞在を防止するため、法務省、労働省と共同して、日本経営者団体連盟、日本商工会議所、全国中小企業団体中央会に対し、不法就労防止の要請を行った(5月28日)。また、5年末現在、47都道府県において214の不法就労防止協議会が結成されている。

3 国際協力の推進

(1) 警察活動に関するセミナー等の実施
 開発途上国からは、我が国の警察が有する科学技術等に対して、高い関心が寄せられている。警察では、ODA事業として、我が国の警察制度や警察運営、犯罪捜査等の警察活動に必要な技術等を積極的に各国に紹介することによって、これらの国々の要望にこたえている。平成5年中に、警察が独自に又は国際協力事業団(JICA)の協力を得て実施した主なセミナー等は、表2-16のとおりである。
(2) 専門家の派遣
 開発途上国に対する協力の実施に当たっては、相手国の担当者を我が国に招請して指導を行うだけでなく、現地において指導を行うことも重要である。平成5年中は、写真鑑識及び指紋鑑識の専門家をタイに派遣し、タイ警察の担当者に対して、鑑識技術の指導を行った。
 また、開発途上国に対する技術協力を実施するには、現地の治安状況、警察の技術水準等を把握することが必要である。警察では、アジア、アフリカ、南米の各国に対して、調査団を派遣し、協力の実施に向けた調査を行った(表2-17)。

表2-16 警察が開催した主な国際セミナー、研修(平成5年)

(3) 国際会議への参加
 近年は、犯罪等の警察事象について、一国のみでは解決できない問題が増加しつつある。したがって、犯罪の防止、捜査、検挙のためには、国際的な対策の実施、関係国間の情報、資料の交換、国際的な捜査のノ

表2-17 主な専門家の派遺(平成5年)

ウハウ等の交換等が不可欠である。警察では、国際連合等の国際機関等が主催する会議に積極的に参加するとともに、銃器対策国際会議、薬物乱用防止教育に関する日米シンポジウム等の国際会議を我が国で開催し、犯罪の防止等に向けて関係諸国との協議を実施した(表2-18)。
(4) 国際連合平和維持活動
 平成4年10月から、国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律に基づき、警察官の身分を有する国際平和協力隊員75人がカンボディアに派遣され、UNTAC文民警察部門の下で現地警察官への助言、指導、監視等の任務に当たった。

表2-18 警察職員が参加した主な国際会議等(平成5年)

 5年5月4日、武装集団の襲撃により日本人警察官の隊員1人が殉職し、4人が重軽傷を負うという事件が発生したが、残る要員は任務を終了し、7月8日までに帰国した。
(5) 国際警察緊急援助隊の活動
 警察では、国際緊急援助隊の派遣に関する法律に基づき、開発途上にある海外の地域等における大規模な自然災害の発生に際し、迅速かつ効果的な救助活動を行うため、国際警察緊急援助隊の充実に努め、携行資機材の整備、救出及び救護訓練等を行っている。
 マレイシアで平成5年12月11日に発生したビル倒壊被害に対し、国際緊急援助隊の派遣が決定され、国際警察緊急援助隊も同国へ派遣され、高層マンション倒壊現場において被災者の捜索活動等を行った。
(6) 海外研修等
 近年、我が国企業の海外拠点がテロ事件や暴力団の国際化等による被害を受けている。このような情勢の下、海外安全対策に関する関係機関への期待が高まっており、警察庁は、在タイ日本国大使館等とともに、財団法人公共政策調査会、全国暴力追放運動センター及び在タイ安全対策連絡協議会が、タイに拠点を持つ我が国企業を対象に開催した第1回海外安全対策会議(バンコクセミナー)に講師を派遣するなどの協力を

行った(平成5年11月、バンコク)。
 平成5年中に警察職員を派遣した主な海外研修は、表2-19のとおりである。

表2-19 警察職員を派遺した主な海外研修等(平成5年)

(7) 海外からの研修要望への対応
 我が国の治安の良さは世界各国の注目を集めていることから、我が国の警察を訪れる諸外国の警察幹部、政府関係者、研究者等が急増している。警察庁では、研修を実施したり、都道府県警察の施設の視察に便宜を図るなど、海外からの要望への協力をできる限り行っている。


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