平成15年2月
警察庁生活安全局
 
「古物営業法施行規則の一部改正試案」に対する意見の募集の結果について
 
 警察庁は、平成15年1月17日(金)から2月14日(金)までの間、「古物営業法施行規則の一部改正試案」(以下「試案」といいます。)に対する意見の募集を行いました。頂いた御意見の要旨及びそれに対する警察庁の考え方を以下のとおりまとめましたので、公表いたします。
 
1 意見の総数
  19件
 
2 本件試案に対する御意見の要旨とそれに対する警察庁の考え方
  頂いた御意見は19件ですが、類似のものは内容ごとにまとめてあります。
 (1) 試案2(4)について
  (頂いた御意見の要旨)
    試案2(4)は、郵便による口座開設で架空口座を作ることができ、危険であるからやめるべきである。(1件)
  (御意見に対する警察庁の考え方)
    現に架空口座を利用した犯罪が摘発されていることを踏まえ、「本人名義の預貯金口座に代金を振り込む契約を結ぶこと」に加えて、「身分証明書、運転免許証、国民健康保険被保険者証等のコピーの送付を受けること」及び「配達記録郵便により郵便物を送付してその到達を確認すること」を併せて行うこととしていますので、他人になりすまして盗品等を処分することが困難となります。
    しかし、今回の改正により、古物の非対面取引は量的に拡大し、その中で盗品等処分事例も増加するおそれがありますので、試案よりも措置を厳格化することの適否については、今後の状況の推移をみて引き続き検討してまいります。
 
 (2) 試案2(5)について
  (頂いた御意見の要旨)
    試案2(5)は、具体的内容が通達や行政指導により決定されることとなるので、削除すべきである。(1件)
  (御意見に対する警察庁の考え方)
    本件意見の募集の結果や古物商の団体に対するヒアリング結果を踏まえ、試案2(1)~(4)に掲げる措置と同等以上の効果を有すると認められる措置については、個別具体的に古物営業法施行規則において規定することとします。
 
 (3) 試案2(6)について
  (頂いた御意見の要旨)
    企業同士の間でインターネットを通して取引をしているが、取引の都度、インターネット画面へのアクセスはIDとパスワードで制限をかけているので、適法な措置として容認してほしい。(1件)
  (御意見に対する警察庁の考え方)
    取引の担当者について確認をした上でIDとパスワードを付与し、当該担当者に限らず、当該担当者の指示を受けた者からそのIDとパスワードの送信を受ける場合も、当該担当者が取引を実質的に管理しているのであれば、試案2(6)に含まれます。
 
  (頂いた御意見の要旨)
    企業グループ内のネットワークシステムは、外部からの侵入を防止する措置と電文の専用性があるため、これを利用して取引をする場合には、オーダー単位でのIDとパスワードの送信は不要としてほしい。(1件)
  (御意見に対する警察庁の考え方)
    試案2(6)については、相手方の確認をした際に提供したIDとパスワードの送信を受けることに限らず、「確認済みの者を識別でき、かつ、第三者によるなりすましが困難な方法により、取引の相手方について既に確認をしていることを確かめること」を追加することとします。
 
 (4) 新たな措置の提案
  (頂いた御意見の要旨)
    「身分証明書、運転免許証、国民健康保険被保険者証等のコピーの送付」と「本人名義口座への振込み」を併用する措置を認めてほしい。(2件)
  (御意見に対する警察庁の考え方)
    上記の措置は、試案2(4)から「配達記録郵便により郵便物を送付して、その到達を確認すること」を省略したものですので、試案よりも盗品等の処分を防止する効果が低いと考えられます。
    今回の改正により、古物の非対面取引は量的に拡大し、その中で盗品等処分事例も増加するおそれがありますので、試案以上の更なる規制緩和の適否については、今後の状況の推移をみて引き続き検討してまいります。
    しかし、戸籍の謄本又は抄本(戸籍の附票の写しが添付されたもの)、外国人登録原票の写し等は、住民票の写しと同等の効果が得られますので、試案2(2)及び2(3)について、住民票の写しの代わりにそれらを利用する措置を追加することとします。
 
  (頂いた御意見の要旨)
    「相手方から住民票の写しの送付を受け、そこに記載された住所あてに配達記録郵便により郵便物(表面に「転送不要」と記載すること)を送付して、そこに記載されたコードワード等を利用して、その到達を確認すること」という方法を提案する。(1件)
  (御意見に対する警察庁の考え方)
    送付した配達記録郵便物の到達を確認する方法としては、試案2(注2)にあるとおり、御意見のような措置を取り入れています。
 
  (頂いた御意見の要旨)
    「住所、氏名等を直筆した書類の送付を受けること」、「免許証、健康保険証、パスポート等のコピーの送付を受けること」、「本人名義の預貯金口座に代金を振り込むこと」を併用する措置を認めてほしい。この措置でも時間がかかり証拠が残るので、十分な防犯効果を上げているところである。(5件)
  (御意見に対する警察庁の考え方)
    上記の措置は、試案2(4)について、「配達記録郵便により郵便物を送付して、その到達を確認すること」に代えて「住所、氏名等を直筆した書類の送付を受けること」を行うものですが、「住所、氏名等を直筆した書類の送付を受けること」については、古物商等の面前で記載していないので、本人の署名である保証はなく、実質的効果は低いと考えられます。したがって、上記の措置では、試案よりも効果が低くなると考えられます。
    今回の改正により、古物の非対面取引は量的に拡大し、その中で盗品等処分事例も増加するおそれがありますので、試案以上の更なる規制緩和の適否については、今後の状況の推移をみて引き続き検討してまいります。
 
  (頂いた御意見の要旨)
    試案2(1)(2)(4)について、郵便の代わりに宅配便も利用できるようにしてほしい。(1件)
  (御意見に対する警察庁の考え方)
    配達記録郵便と同様の取扱いをされる宅配便であれば、相手方の真偽の確認について同等の効果が得られると考えられますので、そのような宅配便を利用する措置を追加することとします。
 
 (5) 個別の措置の効果について
  (頂いた御意見の要旨)
    現に、他人名義の銀行口座がアングラサイトで販売されており、試案には効果がない。(1件)
  (御意見に対する警察庁の考え方)
    架空口座を利用した犯罪が現に摘発されていることを踏まえ、試案では、「本人名義の預貯金口座に代金を振り込む契約を結ぶこと」については、併せて、他の十分な措置をとることを求めています。
    しかし、今回の改正により、古物の非対面取引は量的に拡大し、その中で盗品等処分事例も増加するおそれがありますので、試案よりも措置を厳格化することの適否については、今後の状況の推移を見て引き続き検討してまいります。
 
  (頂いた御意見の要旨)
    「金融機関等による顧客等の本人確認等に関する法律」に基づいて開設された個人名口座を利用することは、郵便局を利用するのと同様の効果が期待され、双方の負担も最小限に抑えられる。(1件)
  (御意見に対する警察庁の考え方)
    御意見の法律により、預貯金口座の開設等に当たっては、顧客等の本人確認が義務付けられましたが、これまで架空口座を利用した犯罪が発生している状況を踏まえますと、他の効果的な措置と併用することが必要であると考えられます。
 
  (頂いた御意見の要旨)
    査定の結果相手方に古物を返送する場合もあるので、古物を送付してきた宅配便の伝票には、真実の住所が書かれていると考えられ、確認のための措置として利用できる。(1件)
  (御意見に対する警察庁の考え方)
    売買条件を合意した上で古物を送付する取引形態も考えられ、そのような場合には、宅配便に真正な住所を記載する必要性は低くなると考えられます。
 
 (6) その他
  (頂いた御意見の要旨)
    質屋については、防犯面で貢献してきた実績があるので、個人取引(インターネット・オークション)との規制の差別化を要望する。(1件)
  (御意見に対する警察庁の考え方)
    相手方の確認は、古物商に対する法令上の義務ですから、古物商の中で特定の業界のみ特例扱いをすることは困難です。
 
  (頂いた御意見の要旨)
    インターネット・オークションでの確認措置は、買主とのトラブル防止のため、サイト経営者に任せ、公式サイト以外での売買は禁止するべきである。(1件)
  (御意見に対する警察庁の考え方)
    本件試案は、インターネット・オークションに限らず、すべての非対面取引において古物商が実施すべき義務の内容であり、インターネット・オークションを通じて取引する場合のみ当該義務を免除すべき理由はないものと考えられます。
 
  (頂いた御意見の要旨)
    ぜいたく品、生活利用品などで柔軟な対応はできないか。
  (御意見に対する警察庁の考え方)
    現在でも、原則として対価の総額が1万円未満の取引については、相手方の確認をするための措置は不要とされており、このルールは非対面取引にもそのまま適用されます。
 
  (頂いた御意見の要旨)
    今回の改正案が成立した場合、複雑な取引になり、どんどん水面下での個人売買の方に流れていくので、それよりもその取締りを強化すべきである。(1件)
  (御意見に対する警察庁の考え方)
    今回の改正により、古物商が非対面取引において相手方の確認をするための措置が新たに定められたことから、これを活用して、古物商による非対面取引が促進されるようになると期待しております。
 
  (頂いた御意見の要旨)
    古物商に重い義務を課すのに比べてインターネット・オークション事業者の義務が緩く、盗品等がインターネット・オークションでさらに大量に処分されるようになるおそれがある。インターネット・オークション事業者の義務を強化すべきである。(7件)
  (御意見に対する警察庁の考え方)
    今回の古物営業法の改正により、インターネット・オークションにおける盗品等の売買防止等のための制度を導入しましたので、これらを活用して、窃盗等の犯罪防止とその被害の迅速な回復に努めてまいります。
 
  (頂いた御意見の要旨)
    リスト業者などが取引を装って落札し、個人データ等を入手して、悪用する気がする。(1件)
  (御意見に対する警察庁の考え方)
    御意見のような行為については、個々の事案により判断が必要でありますが、刑罰法令に触れる場合には厳正に対処することとなります。
 
 (7) 本件試案と直接関係のない主な御意見
   ○ 個人情報に関しては、未だに日本はセキュリティが甘いので、きちんとした法律を作り、誰もが安心できる社会、システム作りをお願いしたい。(1件)
   ○ リビルトパーツについては、古物営業法上の「古物」ではないと判断したい。(1件)
 
  御協力ありがとうございました。