一般社団法人日本損害保険協会長とサイバー警察局長との対談について

1 概要

令和6年5月31日、サイバー事案に係る被害の潜在化防止の観点から、一般社団法人日本損害保険協会新納啓介会長とサイバー警察局大橋一夫局長が対談を行いました。

対談では、新納会長から、令和3年~令和5年に損保協会が国内の中小企業を対象に実施したアンケートにおいて、サイバー保険の認知度は上昇傾向(46.9%)にあるものの、加入率は5%程度と低いこと、一般的なサイバー保険には各種費用の補償に加えて、関連する付帯サービスの提供により、未然防止や損害軽減の役割を持つものもあること、サイバー保険特設サイトによる各種情報提供や、セミナーによるリスク啓発活動等を引き続き行っていくこと、などのご発言がありました。

また、大橋サイバー警察局長からは、サイバー空間における脅威としてランサムウェアの被害が依然として高水準であること、国際社会と緊密に連携し、ランサムウェアの脅威への対処含め、安全なサイバー空間の維持・発展のための取組をすすめていくこと、ランサムウェア被害にあった場合、被害の実態を明らかにし、拡大させないためにも警察へ通報・相談することが重要であること、などを話しました。

2 対談の主なやり取り

損保協会新納会長のご発言

  • 当協会にて、令和3年~令和5年に国内の中小企業を対象に実施したアンケートにおいて、サイバー保険の認知度は3年間で10.3pt上昇(直近では46.9%)。一方、加入率については、5%程度と低い水準となっている状況。
  • サイバー保険は、①法律上の損害賠償金の補償 ②調査費用や見舞品等の費用の補償 ③IT機器の機能停止により生じる喪失利益の補償のほか、関連する付帯サービス(情報セキュリティ診断サービス等)の提供による、被害の未然防止や損害の軽減といった機能も大きい。
  • 当協会のサイバー保険特設サイトでは、ランサムウェアを含む複数のサイバー攻撃の類型及びその被害事例について紹介し、注意喚起を実施。また、サイバー犯罪の被害を最寄りの警察署または都道府県警察本部のサイバー犯罪相談窓口へ通報・相談することを推奨している。 URL:https://www.sonpo.or.jp/cyber-hoken/別ウィンドウで開く
  • 各支部で行っているセミナーを含め、今後もリスク啓発活動を継続していく。

サイバー警察局大橋局長の発言

  • 警察庁では、令和5年におけるサイバー空間の脅威の情勢を示す指標および事例を記載した「令和5年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」を令和6年3月14日に公表。ランサムウェアの被害が依然として高水準で推移し、令和5年中は197件の被害を確認。このほか、データを暗号化することなくデータを窃取した上で企業・団体等に対価を要求する「ノーウェアランサム」の手口も確認。ランサムウェア被害の実態を明らかにし、拡大させないためには、被害を潜在化させず、警察への通報・相談が行われることが重要。
  • 警察庁は、ランサムウェア対策多国間会合(カウンターランサムウェア・イニシアティヴ会合:CRI)に参加、国際的なランサムウェアの脅威への対処に関する議論に参画。第3回会合後に発出された共同声明では、ランサムウェアに対する集団的な強靱性の構築、ランサムウェアの実行可能性を弱め、責任者の追跡に関する協力、ランサムウェアのエコシステムを支える不正資金への対抗、民間セクターとの協力、国際的な協力の継続などを再確認。
  • 引き続き、国際社会と緊密に連携し、ランサムウェアの脅威への対処含め、自由、公正かつ安全なサイバー空間の維持・発展のための取組を進めていく。
  • 警察庁では、令和5年3月には「サイバー事案の被害の潜在化防止に向けた検討会」を開催。警察では、通報・相談を受け、全国警察で保有している高度な知見等を基に、業務への影響が最小限となるよう当該相談者に配意した事件捜査を行うとともに、①被害企業の被害拡大防止対策に必要な情報の提供、助言、②被害企業の被害の復旧への貢献、③他の企業等の被害未然防止のための取組といった活動を推進し、被害の通報・相談が自ずと行われる社会的な機運の醸成を図っている。
  • ランサムウェア被害に対する取組として、警察庁ウェブサイト「ランサムウェア被害防止対策」コンテンツの提供等、被害の潜在化防止の重要性を訴求している。 URL:https://www.npa.go.jp/bureau/cyber/countermeasures/ransom.html

3 対談風景

対談中の新納損保協会長(写真左)と大橋サイバー警察局長(写真右)

対談終了後の新納損保協会長(写真左)と大橋サイバー警察局長(写真右)