革マル派は、労働運動や大衆運動に積極的に取り組み、組織の維持、拡大を図りました。

 労働運動では、メーデー会場等に活動家を動員し、既成の労働組合を批判するビラ配布を行ったほか、非正規労働者、労働組合未加入者等の組織化に向け、機関紙「解放」において非正規労働者等の処遇改善を繰り返し訴えました。

 大衆運動では、米韓両国による合同軍事演習や中国、ロシアの軍事演習を「戦争の危機」と捉え、米国総領事館等に対するデモを実施するなど、「反戦・反安保」闘争に積極的に取り組みました。

 また、革マル派が相当浸透しているとみられるJR総連及びJR東労組は、JR東労組の組合員らによる組合脱退及び退職強要事件で、平成21年6月5日、東京高裁で控訴が棄却されると直ちに上告し、「不当判決」を訴え続け、被告人の無罪を訴える集会を開催したほか、最高裁判所に上告審の開廷や無罪判決を求めるはがきを送付するなどの支援活動に取り組みました。

 22年12月9日には、JR東労組の指導者であり、革マル派創設時の幹部の一人でもあった松嵜明・元JR東労組会長が死亡しました。JR東労組等は、「訃報」を出して死亡事実を公表するとともに、機関紙等で元会長の遺志の継承を訴えました。

 このような中、警視庁は、22年6月28日、東京都内のマンションに設定された革マル派の非公然アジトを摘発し、アジトから押収した資料を分析した結果、同派の中央指導部の実態の一部が明らかになりました。

 革マル派は、今後とも、労働運動や大衆運動に取り組み、組織の維持、拡大を図るものとみられます。



非公然アジトのあったマンション(6月、東京)



 中核派(党中央)は、労働運動を通じて組織拡大を図る「階級的労働運動路線」を進めながら、各種闘争に取り組みました。

 党中央は、22年4月9日、国労等がJR1,047名不採用問題で和解案受入れを表明したことに関して強く反発し、国鉄闘争の継続を訴えました。また、機関紙「前進」(5月24日付け)に、清水丈夫議長名で、3月4日に死亡した中野洋動労千葉常任顧問が推進した同路線を引き継ぎ「国鉄全国運動」を進める内容の論文を掲載し、組織の引締めを図りました。

 また、党中央は11月7日、東京・日比谷公園野外大音楽堂で、毎年恒例の「全国労働者総決起集会」を開催しました。この集会では、全国の活動家、同調者、米国・韓国の労働団体代表等が参加し、集会終了後、デモに取り組みました。警察は、デモの行進停滞を指揮・煽動した中核派活動家一人を東京都公安条例違反で逮捕しました。

 一方、19年11月に党中央と分裂した関西地方委員会(関西反中央派)は、失業者や非正規労働者等の獲得を狙って「生活・労働相談村」を開設したり、他セクトが主催する集会、デモ等に積極的に参加しました。
 党中央は、23年も、国鉄闘争を中心に労働運動への取組みを強化し、組織の維持、拡大を図るものとみられます。また、党中央、関西反中央派とも、沖縄基地問題等を捉え、反戦闘争に積極的に取り組むものとみられます。


11.7全国労働者総決起集会・デモ(11月、東京)



 革労協は11年5月に主流派と反主流派とに分裂し、主流派は「成田」を、反主流派は「反戦」を主要闘争課題に掲げ、それぞれが「テロ、ゲリラ」路線を指向しています。

 主流派は、福岡での組織的犯罪処罰法違反(組織的な詐欺)事件及び威力業務妨害等事件の公判闘争に取り組みました。同派は、機関紙「解放」に裁判官や警察官の顔写真を掲載するなど、ますます反権力的主張を強めています。

 一方、成田闘争では「ゲリラ的・パルチザン的闘い」との主張がみられたものの、成田国際空港株式会社による空港機能拡充に向けた工事等に関しては積極的な取組みはみられず、「テロ、ゲリラ」事件の発生もありませんでした。

 反主流派は 、在日米軍の再編問題、自衛隊の海外派遣等を捉えて反戦闘争に取り組み、22年11月2日には、埼玉県内の陸上自衛隊大宮駐屯地に向けて飛翔弾を発射する事件を引き起こしました。

 このほか、両派は、勢力の維持、拡大を狙い、主流派は福岡で、反主流派は東京、大阪、福岡、沖縄でそれぞれ日雇労働者の獲得を狙った炊出しなどに取り組みました。

 両派は、今後も組織の維持を主眼としつつ、それぞれが重点とする「成田」、「反戦」の闘争課題に関連した「テロ、ゲリラ」事件を引き起こす可能性があります。


主流派の集会(10月、埼玉)


反主流派のデモ(10月、都内



 成田国際空港株式会社は、空港機能の拡充のため、22年7月26日、第3誘導路の建設、「へ」の字誘導路の改良等の工事に着手しました。

 これに対し、三里塚芝山連合空港反対同盟とこれを支援する中核派、革労協主流派等の過激派は、成田現地等で反対闘争に取り組みました。警察は、一連の闘争過程で、支援の過激派活動家ら計3人を公務執行妨害罪等で逮捕しました。

 このほか、空港会社と反対同盟員等との間では、土地明渡裁判等の審理が進められています。

 過激派は、今後も、成田闘争に取り組み、その過程で、空港関係者、空港関連施設等に対する「テロ、ゲリラ」事件を引き起こす可能性があります。


 
成田の誘導路新設に関する公聴会でデモを行う空港反対派(5月、千葉)(共同)
 



 警察では、22年中、過激派の非公然アジト発見に向けたマンション、アパートローラーや、ポスター等各種広報媒体による広報活動の実施など、各種過激派対策を推進し、6月、革マル派非公然アジト1か所を摘発したほか、
○ 2月、中核派系全学連活動家ら6人を威力業務妨害罪等で逮捕
○ 8月、革労協反主流派活動家2人を公務執行妨害罪で逮捕
○ 10月、革労協主流派活動家3人を免状不実記載罪で逮捕
○ 11月、中核派(党中央)非公然活動家ら2人を詐欺罪で逮捕
するなど、過激派活動家ら39人を検挙しました。

 警察では、引き続き、国民の理解と協力を得ながら、過激派に対する取締りを徹底することとしています。