近年、市販の化学物質から爆発物を製造する事案が発生しています。爆発物の原料となり得る化学物質は、薬局、ホームセンター等における購入やインターネットを利用した購入が可能な状況にあります。また、インターネットにより爆弾の製造方法を習得する事例も見受けられます。

【事例1】

 会社員の男(25)は、塩酸や硫酸を大量に購入して自宅に保管し、インターネットオークション上で転売していた(毒劇物の無登録販売で5月に検挙・福岡)。
 また、偽名を使って同人から硝酸アンモニウム等を購入した会社員の男(45)は、失恋で自殺しようと爆弾の製造方法をインターネットで調べていた(爆発物取締罰則違反で9月に検挙・警視庁)。

【事例2】

 
無職の男(38)は、ロンドン同時多発テロ事件やその爆弾の製造方法に関するウェブサイトに触発され、通勤電車を爆破するため、インターネットの通信販売で爆発物の原料を購入し、実際に爆弾を製造し、爆発実験を行っていた(爆発物取締罰則違反で平成19年6月に検挙・警視庁)。




押収された化学物質(事例1・福岡)



   
■ 化学物質の販売事業者との連携

 警察では、7万を超える販売事業者に対して継続的に個別訪問を行い、販売時における本人確認の徹底、保管管理の強化、不審情報の通報等を要請しています。

 また、インターネットを利用した通信販売は非対面で行われることから、通信販売事業者に対しては、身分証の写しの郵送による本人確認、クレジットカード決済の推奨、販売台帳や配送伝票の保存等を行うよう依頼しています。

 これらの取組みを行うに当たっては、化学物質の管理に関係する機関や団体とも緊密に連携することが不可欠であり、爆弾テロの未然防止を目的とした協議会を設置するなど、不審な購入事例に関する情報の共有を進めています。


 
個別訪問の際には、実際に接客に当たる従業員に対し、不審購入者の来店や電話による問い合わせがあった場合を想定して体験型の訓練(ロールプレイング訓練)を実施しています。

 
■ 過激なウェブサイトへの対策

 インターネット上には、殺傷力の高い爆弾の作り方を解説する過激なウェブサイトが多数存在しています。

 警察では、このようなウェブサイトについても、わいせつ情報や犯罪を助長する違法・有害情報と同様に定期的に調査しています。一般利用者からの通報や警察の調査で把握した過激なウェブサイトに対しては、プロバイダやウェブサイトの管理者に情報を削除するよう依頼しています。