国内外の諸情勢を敏感にとらえて取り組まれた大衆運動

1国際会議に向けて行われた海外の過激な反グローバリズム運動

 反グローバリズム運動は、市場経済原理のグローバル化に反対する運動として、海外で発生したものですが、平成11年、米国シアトルで開催された世界貿易機関(WTO)第3回閣僚会議の抗議デモに約5万人が参加し、一部の参加者が、警察部隊との衝突や火炎瓶の投てき、店舗破壊等の過激な抗議行動を行って以降、世界的に注目されるようになりました。
 一方、国内では、14年、米国で開催されたIMF・世界銀行総会等の国際金融会議をとらえ、これに反対する勢力が、都内のIMF日本事務所に対して取り組んだ抗議行動がきっかけとなり、反グローバリズム運動が注目されるようになりました。
 21年中は、4月にイギリスで開催されたロンドンG20金融サミットに際し、反グローバリズムを掲げる勢力等約4,000人がロンドン市内で抗議行動に取り組み、その過程で一部が警察部隊と衝突したほか、銀行の窓ガラスを破壊して行内に侵入するなど暴徒化し、80人以上が逮捕されました。
 また、12月にデンマークの首都コペンハーゲンで開催されたCOP15(国連気候変動枠組条約第15回締約国会議)に際しては、延べ約5万2,000人が抗議行動に取り組み、延べ約1,700人が身柄拘束されました。この取組みには環境保護団体のみならず反グローバリズムを掲げる勢力等が参加しており、特に12日の抗議行動には約4万人が参加し、デモ隊の一部が警察部隊と衝突したほか、デンマーク外務省や銀行の窓ガラス等を破壊するなど暴徒化し、約1,000人が身柄拘束されました。
COP15での抗議行動(12月、コペンハーゲン)(時事)
COP15での抗議行動(12月、コペンハーゲン)(時事)

2過激さを増す南極海の捕鯨妨害活動

 南極海における我が国の調査捕鯨に対し執拗に妨害活動を繰り返す米国の環境保護団体シー・シェパード(Sea Shepherd)は、20年度調査捕鯨に対して、薬品入りの瓶を投てきしたり、同団体が所有する船舶を衝突させるなどの妨害活動を行いました。さらに、21年度調査捕鯨に対しても、高圧放水砲による放水や乗組員に対するレーザー光線の照射等の一層過激な妨害活動を行いました。
シー・シェパードの妨害行為(2月、南極海)((財)日本鯨類研究所提供)
シー・シェパードの妨害行為(2月、南極海)((財)日本鯨類研究所提供)

3在日米軍再編をめぐり取り組まれた大衆運動

 21年中、在日米軍再編問題や海上自衛隊のソマリア沖・アデン湾周辺海域派遣問題等をとらえた運動等が取り組まれました。
 「在沖縄米軍海兵隊のグアム移転に係る協定」に反対する団体等は、同協定の国会承認をとらえ、5月、国会周辺等において、「グアム協定承認は許さない」などと訴え、抗議集会に取り組みました。
 また、海上自衛隊のソマリア沖・アデン湾周辺海域派遣をめぐり、自衛隊の海外派遣に反対する団体等は、いわゆる海賊対処法成立をとらえ、国会周辺等において、抗議集会やデモに取り組みました。
 22年も引き続き、国内外の諸情勢を敏感にとらえ、在日米軍再編問題を基軸に、多様な勢力を結集した運動が取り組まれるものとみられます。

4雇用の悪化等をとらえて取り組まれた反貧困運動

 米国の金融危機に端を発した景気後退により、国内企業が非正規労働者を中心に大幅な人員削減を行う中、日本共産党の指導・援助により結成された全国労働組合総連合(「全労連」)等の労働組合や「労働者派遣法抜本改正」等を求める市民団体等は、20年末から21年初めにかけて、都内に「年越し派遣村」を開設し、仕事や住居を失った労働者の支援を行いました。また、全労連は、7月の「第24回臨時大会」において、「安定した良質な雇用を求める運動」を基調に、「派遣法抜本改正」、「生活できる雇用・賃金の実現」、「失業時の生活保障の整備」等を、20年7月の「第23回定期大会」で決定された運動方針の補強方針として採択しました。さらに、21年11月8日、都内において、「労働者派遣法抜本改正」や「社会保障制度の拡充」等を求める市民団体や労働組合等が主催する「新しい未来(あす)へ!11・8国民大集会」に、「全国商工団体連合会」や「全日本民主医療機関連合会」等と共に取り組みました。
 全労連は、今後も、引き続き前記方針に基づき、「労働者派遣法改正」、「社会保障の拡充」等を求める「反貧困運動」に積極的に取り組むとともに、国内外の諸情勢を敏感にとらえ、他の労働組合や様々な市民団体との連携を図りながら組織拡大を図っていくものとみられます。
失業者の社会保障等を訴えるデモ(1月、東京)(時事)
失業者の社会保障等を訴えるデモ(1月、東京)(時事)