反社会的な本質に変化のないオウム真理教

1松本への絶対的帰依を強調する主流派と松本からの脱却を装う上祐派

 平成21年1月23日、公安審査委員会は、オウム真理教(以下「教団」といいます。)に対し、無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律に基づき、現在も無差別大量殺人行為に及ぶ危険性があるとして公安調査庁長官の観察に付する処分(以下「観察処分」といいます。)の期間を3年間更新する決定を行いました。教団は、19年5月、松本智津夫への絶対的帰依を強調する主流派(「Aleph(アレフ)」)と松本からの脱却を装う上祐派(「ひかりの輪」)とに内部分裂しました。このうち上祐派は、観察処分の被請求団体とは別個の団体でこれには含まれないと主張しましたが、公安審査委員会は、同派について、「松本に対して帰依し、松本の説くオウム真理教の教義に従う者によって、観察処分を免れ、松本の意思を実現することを目的として組織されたものであると認められ、その後の活動状況等を考慮しても、「ひかりの輪」は、依然として、松本及び同人の説くオウム真理教の教義を共通の基盤としつつ、被請求団体の重要な一部を構成しているものと認められる」と、教団の一部であると認定しました。
 主流派は、拠点施設で、①松本が唱えるマントラを流す、②松本の脳波を信者の脳に流す装置とされるPSI(通称ヘッドギア)を信者が着装して修行する、③松本の肖像写真を祭壇に飾るなど、松本への絶対的帰依を強調しています。また、主流派は、これまで「旧役員」として教団運営から排除してきた野田成人正悟師に対し、ブログ等による外部への情報発信の中止を求めましたが、同人が拒否したため、21年3月、同人を除名処分としました。
 一方、上祐派は、「開かれた教団」をアピールするため、インターネットの生中継により上祐代表の説法会を公開したほか、東京都内の南烏山施設の近隣住民に対し、その理解を得るため、活動概要について説明を行っています。
 今後、主流派は、松本への絶対的帰依を一層進める一方、上祐派は、「開かれた教団」のアピール等を行い、観察処分の回避に全力を挙げるものとみられます。
オウム真理教の現勢 オウム真理教の現勢
オウム真理教の現勢 オウム真理教の現勢
オウム真理教の現勢 オウム真理教の現勢
オウム真理教の現勢

2信者獲得の取組み

 教団は、15都道府県に31か所の拠点施設を有しています。両派の信者数は、教団報告によると合計で約1,000人ですが、信者の活動状況等から、実際は約1,500人とみられます。
 教団は、インターネットを通じた勧誘をしているほか、在家信者が精神世界に興味を持つ者等に声掛けし、出家信者が身分を隠して勧誘するなどして、信者の獲得に取り組んでいます。
平田  信 44歳
[183cm位]
逮捕監禁致死   
爆発物取締罰則違反 高橋 克也 51歳
[173cm位]
殺人・同未遂
逮捕監禁致死 菊地 直子
38歳
[159cm]
殺人・同未遂
警察庁指定特別手配被疑者(年齢は平成21年12月末現在)

3オウム真理教に対する諸対策の推進

1 特別手配被疑者の追跡捜査の推進

 教団が松本の指示の下に実行した地下鉄サリン事件から22年3月20日で15年が経過します。警察は、地下鉄サリン事件以降、全国警察を挙げて教団のテロ事件等組織的違法行為に対する捜査を強力に推進しています。
 しかし、7年から手配されている警察庁指定特別手配被疑者の平田信、高橋克也及び菊地直子の3人は依然として逃走中であることから、警察は、3人の発見検挙を全国警察を挙げて取り組むべき最優先課題の1つとし、広く国民からの協力を得ながら、引き続き捜査を推進しています。

2 教団の旧アジトにおける隠し財産の発見

  8年から12年まで、教団のアジトとして使用されていたとみられる都内のマンション1室の浴室天井裏から、21年3月、現金約245万円が発見されました。当該現金は、教団の隠し財産であったことが判明したことから、警視庁は、破産管財人から業務を引き継いだ「オウム真理教犯罪被害者支援機構」に返還しました。

3 違法行為の厳正な取締り

  21年中、新たな信者獲得の場としていた美容所を無届けで営むなどしていた「美容師法違反事件」(9月、滋賀)で、教団信者1人を逮捕するとともに、拠点施設等3か所を捜索して関係資料を押収しました。
オウム真理教施設の捜索状況(9月、滋賀)
オウム真理教施設の捜索状況(9月、滋賀)