ロシア及び中国による対日有害活動等

1依然として情報活動を活発に展開するロシア

 ロシアでは、平成20年5月にメドヴェージェフ大統領が就任するととともに、プーチン前大統領が首相に指名された結果、タンデム体制(双頭体制)が始動しました。現在のところ、2人の関係は良好との見方が支配的であり、政策決定では、大統領と首相の調整はスムーズに行われているとみられています。
 一方、リーマン・ショックに端を発した世界的な金融危機はロシア経済を急速に悪化させています。ロシアは、資源輸出に依存する経済構造を有しており、ロシア国内で製造業を育成、発展させることが国家的な課題となっています。また、ロシアは、「ナノテクノロジー」に注目しており、19年7月、同技術を研究開発するため、「ロシア・ナノテクノロジー公社」を設立しました。同社の幹部には、政府関係者が就任しており、「国策企業」としての性格を有しているとみられます。ロシアは、今後も、これらの分野における国家的な関与を強め、技術開発や欧米からの技術導入に力を注ぐものと考えられます。
 メドヴェージェフ大統領は、21年12月、「ロシア国家保安機関員の日」の祝賀会において、「国家は、近年、情報機関の強化に向けた様々な取組みを行っており、装備品や技術関係の充実のほか、機動力や分析力の向上に努めている」、「特に諸君らに強調したい点は、経済近代化であり、特に求められるものは、テクノロジーの保護、経済、航空機産業、宇宙分野、他のハイテク分野等における発展である」などと述べ、情報機関は国益に関し重要な役割を担っていることを強調していることから、今後も情報機関を重要視していくものとみられます。
 こうした中で、我が国における在日ロシア情報機関員による活動は、冷戦終結後も活発であり、警察は、17年・18年に、在日ロシア情報機関員が、民間企業の技術者をターゲットとし、先端科学技術を違法に入手した事件を検挙しました。また、20年には、内閣情報調査室職員をターゲットとし、同室の情報等の入手を図った事件を検挙しました。
 ロシア情報機関員による違法な情報収集活動は、今後も繰り広げられるとみられることから、警察では、我が国の国益が損なわれることのないよう、違法行為に対して厳正な取締りを行うこととしています。
モスクワ郊外で会談するメドヴェージェフ大統領(左)とプーチン首相(時事)
モスクワ郊外で会談するメドヴェージェフ大統領(左)とプーチン首相(時事)

2建国60周年を迎え急速に台頭する中国

 21年は、建国60周年を迎えた中国が、国内外に向け、30年余の改革開放路線の成果を誇示し、共産党による統治の正統性を強調した1年でした。
 チベット動乱(1959年)から50年、天安門事件(1989年)から20年、法輪功の中南海包囲(1999年)から10年となりますが、これまで数々の動乱が「9の付く年」に発生したことから、中国は、当初から、2009年(21年)を「敏感な年」と位置付け、暴動への警戒を強めていました。
 中国は、国内では、農民や労働者を対象とした負担軽減策で融和を図り、また、思想宣伝、言論統制及び活動家拘束を中心とした治安維持対策を強化することにより、共産党の統治を脅かす諸問題に対応しつつ、国際社会においては、世界的な金融危機からいち早く脱却して、その政治的・経済的な発言力を強め、建国60周年の軍事パレードは、国内外に威信と存在感を示しました。
 こうした中、7月、新疆ウイグル自治区のウルムチ市で大規模な暴動が2度発生し、多数の死傷者が出ました。中国は、その直後から、世界ウイグル会議のラビア・カーディル議長を首謀者として名指しした上で、これらの暴動を海外の「3つの勢力」(「テロリズム」・「分離主義」・「過激主義勢力」を指します。)が扇動し、国内の敵対勢力が呼応した襲撃事件と位置付けました。
 こうした中で、中国は、我が国において、先端科学技術保有企業、防衛関連企業、研究機関等に研究者、技術者、留学生等を派遣するなどして、長期間にわたって、巧妙かつ多様な手段で、様々な情報収集活動を行っているとみられます。
 19年3月には、愛知県警察が、国内大手自動車部品メーカーに勤務する中国人技術者について、約13万件もの電子設計図データを不正にダウンロードした社有パソコンを持ち出したとして、横領容疑で逮捕し、中国人による違法な先端科学技術情報の収集実態を明らかにしました。
 警察では、我が国の国益が損なわれることのないよう、違法行為に対して厳正な取締りを行うこととしています。
建国60周年に行われた軍事パレード(時事) 新疆ウイグル自治区で発生した暴動の様子(時事)
建国60周年に行われた軍事パレード(時事) 新疆ウイグル自治区で発生した暴動の様子
(時事)