反社会的な本質に変化のないオウム真理教

1「原点回帰」を進める主流派と「脱麻原」をアピールする上祐派

 オウム真理教(以下「教団」という。)は、平成19年5月、麻原彰晃こと松本智津夫への絶対的帰依を強調する主流派(「宗教団体アーレフ」)と、松本の影響力の払拭を装う上祐史浩代表を支持する上祐派(「ひかりの輪」)に内部分裂しました。
 主流派は、20年5月、綱領、規約、活動規定の改正等を行い、名称を「宗教団体アーレフ」から「Aleph(アレフ)」に改めるとともに、組織の刷新を図りました。松本については、「観想の対象」、「霊的存在」という12年以降の位置付けに変更はないのの、松本が提唱した「救済」の3つの柱(注)を団体の活動の内容とし、綱領を改めた「宗教理念」に明記する一方で、松本の写真や教材の使用を制限するとしていた規定を削除しました。
 また、拠点施設では、松本の写真が掲示されていたり、松本が唱えるマントラを流していたりしたほか、松本の脳波を信者の脳に流す装置とされるPSI(通称ヘッドギア)を信者が装着して修行を行っていました。
 一方、上祐派は、教団による事件を総括した文書や旧教材の廃棄状況を公表し、松本からの脱却が図られていると主張しています。しかしながら、地下鉄サリン事件以前からの信者が多数を占めており、また、かつて松本が教団をつぶさないために別の宗教団体を作るよう指示し、その件は主に上祐に任されていたことや、「ひかりの輪」の設立前後においても、幹部信者が「脱麻原」は対外的に装うだけであり、帰依の対象は松本である旨の発言をしていたことなどがわかっています。
 今後、主流派は、「原点回帰」路線を一層進める一方、上祐派は、形の上では松本色の希薄化に努め、観察処分の回避に全力を挙げるものとみられます。
 なお、教団は、12年2月から無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律に基づく公安調査庁長官の観察に付されていますが、観察処分の期間については、24年1月まで更新されています。
オウム真理教の現勢
オウム真理教の現勢
オウム真理教の現勢
オウム真理教の現勢
オウム真理教の現勢
(注)「救済」の3つの柱
松本は、「救済」には、「人々を病苦から解放する」、「この世の幸福をもたらす」、「解脱、悟りへと導く」の3つの柱があり、これらを総合し、すべての魂を絶対自由・絶対幸福の世界であるマハーヤーナへ導くことが救済計画の究極の目的であるとしていた(麻原彰晃著「マハーヤーナスートラ」)。

2組織拡大に向けた動向

 教団は、15都道府県に30箇所の拠点施設を有しています。また、教団は、依然として多数の信者用居住施設を維持しており、出家信者はこれらの施設に居住して、活動を続けています。
 教団報告による両派の信者は合計で約1,000人ですが、信者の活動状況等から、実際の信者数は約1,500人に上るとみられます。現在も両派は、インターネットのウェブサイトを通じた信者獲得を図り、組織拡大に取り組んでいます。
オウム真理教関係特別手配被疑者(年齢は20年11月現在) オウム真理教関係特別手配被疑者(年齢は20年11月現在)
オウム真理教関係特別手配被疑者(年齢は20年11月現在) オウム真理教関係特別手配被疑者(年齢は20年11月現在)
オウム真理教関係特別手配被疑者(年齢は20年11月現在) オウム真理教関係特別手配被疑者(年齢は20年11月現在)
オウム真理教関係特別手配被疑者(年齢は20年11月現在) オウム真理教関係特別手配被疑者(年齢は20年11月現在)
オウム真理教関係特別手配被疑者(年齢は20年11月現在)

3オウム真理教に対する諸対策の推進

1特別手配被疑者の追跡捜査の推進

 教団が松本の指示の下に実行した地下鉄サリン事件から13年が経過しました。
 警察は、地下鉄サリン事件以降、全国警察を挙げて教団のテロ事件等に対する捜査を強力に推進し、これまでに、松本を始めとする教団幹部及び信者合わせて500人以上を検挙しました。
 しかしながら、警察庁指定特別手配被疑者である平田信、高橋克也及び菊地直子の3人は依然として逃走中であることから、警察は、3人の発見検挙を最優先課題の1つとし、広く国民の協力を得ながら、引き続き捜査を推進します。

2違法行為の厳正な取締り

 警察は、教団信者による違法行為に対して厳正に取締りを実施しています。その結果、20年は、インターネットを利用した取引において不正な手段で利益を得ようとした「資金源確保を目的とした私電磁的記録不正作出・同供用事件」(9月、滋賀)で主流派出家信者1人を検挙するとともに、拠点施設等4箇所を捜索してパソコン、ハードディスク等関係資料約1,100点を押収しました。  
オウム真理教施設の捜索状況
オウム真理教施設の捜索状況