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多様な闘争課題を掲げて取り組まれた大衆運動
1 在日米軍再編、憲法改正問題等を中心に取り組まれた平和運動

 在日米軍再編をめぐっては、沖縄県を中心に関係する都道県で抗議集会・デモが取り組まれました。日米両国による最終報告の合意を前にした平成一八年三月五日、労働組合、大衆団体等は、沖縄県宜野湾市内において、米軍普天間飛行場のキャンプ・シュワブ沿岸部への移設に反対する抗議集会に取り組みました(主催者発表三万五、〇〇〇人)。
 また、同年一〇月二一日、労働組合及び大衆団体は、沖縄市内において、米軍嘉手納基地への地対空誘導弾パトリオット(PAC-3) 配備に反対する抗議集会・デモに取り組みました(主催者発表一、二〇〇人)。
 このほか、憲法改正等をめぐっては、労働組合、大衆団体等が、憲法改正手続を定める国民投票法案や教育基本法改正案等を「戦争する国家づくり」などととらえ、同年五月二七日、都内の代々木公園(主催者発表五万人)において、また、同年一一月一二日、都内の日比谷野外大音楽堂(主催者発表八、〇〇〇人)において、抗議集会・デモに取り組みました。
 一九年も引き続き、在日米軍再編や憲法改正問題を中心に、労働組合、大衆団体等を中心とした平和運動が取り組まれるものとみられます。

PAC-3配備反対を訴える抗議集会(10月、沖縄)(共同)
2 核燃料サイクル、耐震問題等をとらえて取り組まれた反原発運動

 反原発運動では、プルサーマル計画等の核燃料サイクル事業の推進をとらえ、集会・デモが取り組まれました。
 原発の使用済み核燃料からウランとプルトニウムを取り出す試運転(アクティブ試験)が、一八年三月三一日、日本原燃株式会社再処理工場(青森県六ヶ所村)で開始されました。これに対し、青森県内外の反原発団体は、「再処理工場の試運転の中止」を訴えて、同年四月九日、青森市内で集会・デモに取り組みました。
 また、プルサーマル計画をめぐっては、佐賀県と玄海町が、同年三月二六日、九州電力株式会社の玄海原発三号機(佐賀県玄海町)のプルサーマル計画の受入れに同意し、愛媛県と伊方町が、同年一〇月一三日、四国電力株式会社の伊方原発三号機(愛媛県伊方町)のプルサーマル計画の受入れに同意しました。佐賀県唐津市では、同年九月一七日、玄海原発三号機でのプルサーマル計画に反対する反原発団体が、反対集会に取り組みました。
 一方、愛媛県伊方町では、同年一〇月二二日、伊方原発三号機でのプルサーマル計画に反対する反原発団体が、反対集会に取り組みました。
 また、全国一三○の反原発団体で結成された市民グループは、同年六月一二日、中国電力株式会社の島根原発(島根県松江市)の近くに新たな活断層が見つかったとして、島根県と松江市に対し、プルサーマル計画の審議の凍結と島根原発の耐震性の再検討を申し入れました。
 一九年は、日本原燃株式会社再処理工場の本格稼働を始め、核燃料サイクル事業の推進をとらえた反原発運動が引き続き取り組まれるものとみられます。

再処理工場の試運転中止を訴える抗議集会(3月、東京)(共同)
3 海外から波及した過激な大衆運動
  一一年のWTO第三回閣僚会議(米国・シアトル)以降、世界各地で反グローバリズム運動が顕在化し、国内でも、一三年一二月以降、この運動に取り組む海外団体の関連組織が各地に結成され、活動しています。一八年六月に都内で開催された世界経済フォーラム・東アジア会議をめぐっては、国内の反グローバリズム団体が対抗行動としてシンポジウムを開催したほか、別の団体が会場周辺で抗議行動を行いました。同年七月にロシア・サンクトペテルブルクで開催された主要国首脳会議(サミット)をめぐっては、大規模な集会・デモはありませんでしたが、約三〇〇人が無許可デモを行うなどして約六〇人が警察に拘束されました。また、同年九月にシンガポールで開催された国際通貨基金(IMF)・世界銀行年次総会をめぐっては、インドネシアで対抗集会(国際民衆フォーラム)が開催され、我が国の団体も参加しました。
 環境保護運動をめぐっては、同年六月に開催された国際捕鯨委員会(IWC)の年次会議において、「調査捕鯨船等に対する危険な妨害行為は認めない」とする決議が採択されましたが、シー・シェパードとグリーンピースは、引き続き抗議行動を行う方針を示しています。また、同年九月には、各国の環境保護団体等が、我が国のイルカ漁に反対し、「Japan Dolphin Day ジャパン・ドルフィン・デー」と称して、各国の日本の在外公館前等で世界同時抗議行動に取り組みました。
 ストップ・ハンティンドン・アニマル・クルエルティ(SHAC)は、引き続き、動物実験受託会社HLS社や日系企業を含む同社の取引企業に対し、同社の閉鎖や同社との取引中止を求め、横断幕を掲げるなどの抗議行動に取り組みました。
 一九年は、各組織とも引き続きインターネットを活用した抗議行動等への参加呼び掛けや活動実績の宣伝を行い、特に、反グローバリズム運動では、二〇年に我が国で開催されるサミットをめぐる取組みが活発化するものとみられます。
Japan Dolphin Day
ジャパン・ドルフィン・デー(9月、米国・サンフランシスコ)