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現在も危険性を有し、本質に変化のないオウム真理教
1 教団の危険性と「原点回帰」の教団運営

一 危険性を具備する教団運営の実態

 オウム真理教(以下「教団」という。)が麻原彰晃こと松本智津夫(以下「松本」という。)の指示の下、地下鉄サリン事件を始めとするテロを行ってから一○年以上が経過しました。しかし、教団は、依然として松本を「尊師」として位置付け、絶対的帰依の対象としているほか、殺人を暗示的に勧める危険な教義を保持しています。また、松本の説法を収録したビデオテープや書籍を用いて教学する修行月間を設定したり、年三回の集中セミナーを実施して、松本への絶対的帰依・服従を指導するなど、「原点回帰」の教団運営を鮮明にしており、いまだに治安に対する危険性を具備しています。
 一方、こうした「原点回帰」の教団運営を進める執行部に対し、同方針に批判的な観点を持つ派閥との間で対立があり、同派閥内には、新たな団体の設立を示唆する動向も見られ、平成一九年中も、両者間で確執が更に増していくものとみられます。

二 組織拡大に向けた活動

教団は、一七年一一月には神奈川県横浜市に、一八年一月には大阪府大阪市に新たな拠点施設を増やし、一六都道府県二九か所の拠点施設と全国約一○○か所の信者居住用施設を有しています。
 信者の数は、約一、六五○人とみられます。教団は、依然として、信者を教団施設に居住させ閉鎖的活動を続けているほか、インターネットのウェブサイト、地域のサークル活動等を通じ、教団名を伏せた信者の勧誘活動を組織的に行っています。
 教団は、一九年中も、こうした教団活動に関連して違法行為を引き起こすことが懸念されます。

三 観察処分の期間更新の決定

 教団は、無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律に基づき、一五年二月から三年間(一八年一月まで)、公安調査庁長官の観察に付されていましたが、同長官は、警察庁長官から「観察処分の期間の更新を請求することが必要である」旨の意見を聴いた上、一七年一一月、公安審査委員会に対し、観察処分の期間更新を請求しました。これを受けた同委員会は、一八年一月、「教団は、依然として松本被告を絶対的帰依の対象とするなど、無差別大量殺人行為に及ぶ危険な要素を保持していると認められる」などとして、観察処分の期間を三年間更新する決定を行いました。

四 松本の裁判動向

 地下鉄サリン事件等一三事件の首謀者として殺人等の罪に問われた松本は、一六年二月二七日、東京地方裁判所で死刑判決を受けました。その後、松本の弁護団は、東京高等裁判所に控訴しましたが、松本の訴訟能力の有無について争う一方で、期限内の一七年八月までに控訴趣意書を同裁判所に提出しませんでした。
 こうした中、一八年二月二○日、松本の精神鑑定の嘱託を受けた鑑定医が「松本被告は裁判を続けられる状態にある」との鑑定結果を提出したことを踏まえ、東京高等裁判所は、同年三月二七日、弁護団が期限までに控訴趣意書を提出しなかったことを理由に控訴を棄却しました。弁護団は、同月三○日、東京高等裁判所に異議申立てを行いましたが、同裁判所は、同年五月二九日、弁護団の異議申立てを棄却しました。さらに弁護団は、同年六月五日、最高裁判所に特別抗告を行いましたが、同裁判所は、同年九月一五日、特別抗告を棄却する決定を行い、これにより松本の死刑が確定しました。

地下鉄サリン事件発生時の状況(共同)
オウム真理教南烏山施設(東京)
「オウム真理教」の現勢
松本被告の死刑確定を報道する各紙
(9月16日、朝日新聞、読売新聞)
オウム真理教関係特別手配被疑者
2 オウム真理教に対する諸対策の推進

一 特別手配被疑者の追跡捜査の推進

 警察は、地下鉄サリン事件以降、教団のテロ事件等に対する捜査を強力に推進し、これまでに、松本を始めとする教団幹部及び信者併せて五○○人以上を検挙しました。
 しかし、警察庁指定特別手配被疑者である平田信、高橋克也及び菊地直子の三人は依然として逃走中であることから、警察は、三人の発見検挙を最優先の課題とし、広く国民からの協力を得ながら、全国警察の総力を挙げた追跡捜査を推進しています。

二 組織的違法行為の厳正な取締りの推進

警察は、教団信者による組織的違法行為に対する厳正な取締りを推進しています。
  一八年七月には、警視庁が教団信者らに係る詐欺容疑で、三都県延べ五か所の教団施設等を捜索し、パソコン、ハードディスク等関係資料約四、一○○点を押収しました。

オウム真理教施設の捜索状況