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 自衛隊のイラク派遣をめぐっては、労働組合、大衆団体等による抗議集会、デモが取り組まれましたが、いずれも幅広い市民各層を巻き込むような大きな盛り上がりはみられませんでした。
 特に、平成17年3月19日には、大衆団体が、イラク攻撃2周年であるとして、東京都内の日比谷野外大音楽堂に4,500人(主催者発表)を集め、集会、デモに取り組みましたが、16年3月20日の取組み(主催者発表では3万人が参加)を大幅に下回る結果となりました。
 また、自衛隊のイラク派遣再延長をめぐって、労働組合、大衆団体等が10月から12月にかけて抗議集会、デモに取り組みましたが、実質上の派遣延長部隊となる第8次派遣部隊の第1陣出発日である10月22日に熊本市内で取り組まれた抗議集会、デモにおいても、大きな盛り上がりはみられませんでした。
 18年は、政府が通常国会において成立を目指している憲法改正手続を定める法案の国会審議をとらえ、憲法第9条の改正に反対する労働組合、大衆団体等を中心とした反対運動が取り組まれるものとみられます。


自衛隊のイラク派遣に反対するデモ行進(3月、東京)(共同)




 反原発運動をめぐっては、プルサーマル計画等「核燃料サイクル」をとらえ、反原発団体による集会、デモが取り組まれました。
 MOX燃料工場建設(青森県六ヶ所村)をめぐっては、4月19日、青森県が、日本原燃株式会社と同工場建設計画に同意する旨の基本協定を締結したことに対し、県内の反原発団体が、調印式会場付近において、「知事は県民の命を守れ」、「協定を結ぶな」などとシュプレヒコールを上げ、抗議行動に取り組みました。
 7年12月のナトリウム漏れ事故で運転停止中の高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の再稼働をめぐり、住民らが原子炉設置許可の無効確認を求めた行政訴訟で、最高裁は、5月30日、「国の安全審査に見過ごせない過誤や欠落があったとは言えない」として二審名古屋高裁金沢支部判決を破棄し、住民側の請求を棄却する逆転判決を出しました。この判決に対し、福井県内の反原発団体は、抗議集会を開催しました。
 また、プルサーマル計画をめぐっては、九州電力株式会社による玄海原発(佐賀県玄海町)での実施計画に抗議し、地元漁民らが5月11日と9月15日に、海上デモに取り組み、計画の撤回を訴えました。
 18年も「核燃料サイクル」をとらえた反原発運動が引き続き取り組まれるものとみられます。


核燃料受け入れに抗議するデモ行進(4月、青森)(共同)

 11年のWTO第3回閣僚会議(米国・シアトル)以降、世界各地で反グローバリズム運動が顕在化しています。日本国内でも、13年12月以降、この運動に取り組む海外団体の支部組織が各地に結成されています。
 17年中は、これらの組織や国内の労働組合、大衆団体等が、1月にブラジル・ポルトアレグレで開催された世界の反グローバリズム運動の国際会議(世界社会フォーラム)に参加したほか、11月の韓国・釜山におけるAPEC首脳会議、12月の香港におけるWTO第6回閣僚会議に際し、現地で抗議デモ等に取り組みました。
 グリーンピースの元メンバーが結成した「シー・シェパード(Sea Shepherd)」を始めとする世界の環境保護団体等は、10月に「ジャパン・ドルフィン・デー(Japan Dolphin Day)」と称して、日本の在外公館に対して日本のイルカ漁に対する抗議行動を行いました。さらに、シー・シェパード、グリーンピースは、日本が12月から南極海で行っている調査捕鯨に対し、所有船舶を使用して妨害を行っています。
 また、英国を中心に動物実験の完全廃止を訴えて活動し、過去に日本国内の動物実験施設への侵入事件等を引き起こした「SHAC(Stop Huntingdon Animal Cruelty)」は、17年中、日系製薬企業等への抗議メール送付をウェブサイト上で呼び掛けたほか、執ように在英日本大使館や日本企業の海外支店に対し、抗議行動を行いました。
 18年は、各団体とも引き続きウェブサイト上で活動実績を宣伝したり、抗議行動への参加を呼び掛けたりし、国際的な連携を強めつつ、活動の定着・拡大を図っていくものとみられます。

グローバル化反対を訴えデモ行進する世界社会フォーラムの参加者(1月、ブラジル)(時事)

 

 


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