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国際情勢に応じて展開される対日有害活動

依然として情報活動を活発に展開するロシア

 プーチン大統領は、平成17年7月、対外情報庁による情報の収集と分析を強く求める提言を行うなど、対外諜報(ちょうほう)活動の重要性を強調しており、今後ともロシアによる諜報活動は活発に行われるものとみられます。
 こうした中、警視庁は、16年9月ころから17年5月ころまでの間、都内の飲食店等において、日本人元会社員が会社の先端科学技術に関する機密情報等を在日ロシア連邦通商代表部員に交付するなどし、その報酬として約100万円を受領していたとして、10月20日、両名を背任事件被疑者として東京地方検察庁へ書類送致しました。
 この事件は、12年9月の「ボガチョンコフ事件」、14年3月の「シェルコノゴフ事件」に続くロシアによる諜報事件でした。こうした事例が示すとおり、ロシア情報機関は、現在も我が国において、政治、軍事、経済、科学技術等に係る情報収集や諸工作を継続しています。警察は、こうした対日有害活動により我が国の国益が損なわれることのないよう、今後も違法行為に対しては、法令に照らし厳正に対処することとしています。


在日ロシア通商代表部員らによる背任事件を報道する各紙(10月20日、朝日新聞、東京新聞、毎日新聞、読売新聞)

 8月、東シナ海上空で、電子、電波情報収集能力があるとみられる中国軍機が、複数回にわたって、日本の防空識別圏に侵入しました。また、9月には、東シナ海の日中中間線付近で、中国が開発を進めているガス田「白樺(しらかば)」(中国名「春暁」)周辺を、中国海軍のソブレメンヌイ級ミサイル駆逐艦等の艦艇5隻が航行しているのを海上自衛隊が確認しました。これらは、ガス田開発をめぐる日本への示威行動であるとの指摘がされています。さらに、東シナ海における海洋情報の収集を目的とした中国軍の活動である可能性も排除できません。
 また、中国は、10月に、2度目となる有人宇宙船「神舟6号」の打ち上げに成功しました。中国の宇宙開発は、軍の傘下で進められており、情報は機密扱いで予算も公表されていません。「神舟」の名付け親である江沢民前総書記は、14年3月、神舟3号の打ち上げ時に、「国防の現代化に重要な意義がある」と演説し、宇宙開発の目的が、軍事力の向上にあることを示唆しました。ロケット開発に使われた技術は、そのまま軍事用ミサイルに転用可能であるなど、宇宙開発と軍用ミサイル開発は、表裏一体の関係にあるものとみられ、中国の宇宙開発の名の下に行われる軍事技術の発展に対する警戒が広がっています。
 中国は、17年10月の中国共産党第16期中央委員会第5回全体会議において、「新5カ年計画」という今後5年間の国民経済と社会発展に関する基本方針を採択しました。中国は、その中で、科学技術教育の発展を国の競争力向上の決定的要素と位置付けており、更に高水準の科学立国を目指しているものと考えられます。
 中国は、先端科学技術の習得のため、多数の学者、技術者、留学生、代表団等を我が国に派遣し、巧妙かつ多様な情報収集活動を活発に行っているものとみられます。また、これらの目的で来日した中国人や、在日公館員等を介して、日本の先端科学技術関係者等に対する幅広い働き掛けを行い、我が国からの技術移転等の拡大を図っています。
 これらの活動には違法行為が混在する可能性も否定できないことから、警察としては平素から情報収集に努めるとともに、違法行為に対しては、厳正な取締りを行うこととしています。

「白樺」ガス田の掘削施設周辺を航行する中国海軍のミサイルフリゲート艦(9月)(時事)

中国の有人宇宙船「神舟6号」の打ち上げ(10月)(時事)

 


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