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警察の対応サブタイトル

1 情報収集と捜査の徹底

 近年の国際テロは、大規模化、無差別化の傾向が著しく、その発生を許せば多くの犠牲を生むことから、テロ対策の要諦は、その未然防止にあります。そのためには情報収集及び捜査の徹底が不可欠です。テロの実行に向けた準備は秘密裏に行われるため、テロに関する情報のほとんどは断片的なものです。このため、個々の情報のみではその真偽や情報としての価値を判断することが困難であり、情報の蓄積と総合的な分析が必要となります。また、その分析結果を踏まえ、外国治安情報機関等との情報交換を推進するなど、国際的な連携を一層緊密化することも不可欠です。そこで、情報収集・分析体制の強化を図るため、17年4月、警察庁の国際テロリズム対策課に国際テロリズム情報官を設置しました。
 さらに、10月の「インドネシア・バリ島における同時多発テロ事件」に際し、国際テロリズム緊急展開班(TRT-2:Terrorism Response Team-Tactical Wing for Overseas)を現地に派遣し、当該事案に関する情報収集、現地治安機関に対する捜査支援等を実施しました。

2 水際対策の強化

 テロリスト等の入国を防ぐためには、国際空港・港湾において、出入国審査、輸出入貨物の検査等の水際対策を的確に推進することが重要です。現場における関係機関の連携強化を図り、政府一体となった危機管理を実現するため、16年1月には政府に空港・港湾水際危機管理チームが、また、同年3月までに、国際空港・港湾に危機管理官等が設置されました。これらの空港・港湾のすべてに警察官が危機管理官、副担当官等として配置されており、これらを中心に、関係機関が連携して、各種訓練の実施、施設警備の改善等に取り組み、多くの成果を上げています。
 また、テロリスト等の入国を防ぐためには、顔情報、虹彩、指紋等のバイオメトリクス(生体情報)の活用が有効です。このため、16年6月、犯罪対策閣僚会議の幹事会の下にワーキングチームが設置され、関係省庁が連携し、バイオメトリクスを活用した出入国管理の推進を図っており、警察庁でも制度的、技術的な検討を行っています。

3 関係省庁との協力

 テロ対策に万全を期するため、警察では、関係省庁との緊密な連携に努めています。
 こうした中、16年12月、政府の国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部は「テロの未然防止に関する行動計画」を策定しました。現在、同計画において、今後速やかに講ずべきとされた16の対策のうち、スカイ・マーシャルの導入を含む8の対策が既に実施されています。さらに、17年11月、FATF勧告実施のための法律案の作成を警察庁が行うことなどが決定されました。警察庁においては、引き続き関係省庁と連携しつつ、諸対策の実施に向けた検討を行っていきます。
 防衛庁・自衛隊とは、平素から情報交換を推進するなど密接な連携を図っています。また、重大テロ等の発生時には、必要に応じ、装備資機材の貸与、部隊輸送の支援等を相互に行いつつ、十分な連携の下で事態に対処することとしています。さらに、17年7月までに、武装工作員等事案を想定した治安出動に係る共同図上訓練を、すべての都道府県警察とこれに対応する陸上自衛隊の師団等との間で実施しました。その成果等を踏まえ、警察庁と防衛庁は、「治安出動の際における武装工作員等事案への共同対処のための指針」を、都道府県警察と陸上自衛隊の師団等は、「治安出動の際における武装工作員等事案への共同対処マニュアル」を作成しています。また、10月、北海道警察と陸上自衛隊北部方面隊との間で、初の共同実動訓練を実施しました。
 海上保安庁とは、17年7月までに、原子力発電所が設置されているすべての道県において、原子力発電所に対する不審船の接近を想定した共同訓練を実施しました。

4 重要施設等の警戒

 警察では、テロ関連情報の分析結果を踏まえ、情勢に応じた警備計画を立案し、効果的かつ効率的な警戒警備を実施しています。
 特に、「米国における同時多発テロ事件」以降、厳しい国際テロ情勢を踏まえ、総理大臣官邸、原子力発電所、空港等の重要施設や米国関連施設等の警戒警備を強化しています。
 また、7月の「英国・ロンドンにおける同時多発テロ事件」や、9月の第44回衆議院議員総選挙に際しては、鉄道等公共交通機関に対する警戒の更なる徹底を図るなど、情勢に応じた的確な警戒警備を実施しています。

5 生物・化学テロ対策

 警察では、生物・化学テロの未然防止を図るため、関連物質の不自然な取引等に関する情報収集、関連物質やその空中散布に使用されるおそれのある小型航空機の盗難防止対策の指導、保健・医療機関等との緊密な連携等を推進しています。
 また、万一、生物・化学テロが発生した場合に迅速・的確な現場対処を図るため、8都道府県警察(北海道、宮城、警視庁、神奈川、愛知、大阪、広島、福岡)に、高度な装備資機材を配備したNBCテロ対応専門部隊を設置しており、18年3月には千葉県警察にもこれを新設することとしています。また、この専門部隊が置かれていない府県警察には、必要な装備資機材を配備したNBCテロ対策班を設置しています。これらの部隊は、平素から、装備資機材の充実強化、実戦的な訓練の実施等により対処能力の向上に努めています。


成田国際空港の警戒警備活動(千葉)
自衛隊との共同実動訓練(北海道)
自衛隊との共同実動訓練(北海道)
地下鉄梅田駅の警戒警備活動(大阪)
地下鉄梅田駅の警戒警備活動(大阪)
NBCテロ対応専門部隊
NBCテロ対応専門部隊

 


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