<<前へ 目次へ 次へ>>

反戦運動を中心に各種社会事象に敏感に取り組まれた大衆運動



1 自衛隊派遣を軸に取り組まれた反戦運動


  自衛隊のイラク派遣をめぐり、労組、市民団体等は、反対集会、デモ、米国大使館への抗議行動等に取り組みました。
 特に、陸上自衛隊本隊の第一次派遣の前日となる平成16年3月20日には、全国で延べ約13万人が集会、デモに取り組み、とりわけ、東京都内では、日比谷公園一帯に約3万人が集まりました。また、「イラクにおける三邦人人質事件」等をめぐっては、自衛隊の即時撤退を求め、国会周辺での抗議行動等に取り組みました。
 一方、政府では、6月に有事関連7法が成立した後、自衛隊の多国籍軍参加を閣議決定しました。こうした中、警視庁は、市民団体主催の集会、デモに際し、警察官に暴行を加えた3人を公務執行妨害罪で逮捕しました。
 17年は、政府が通常国会において成立を目指している憲法改正手続を定める法案の国会審議をとらえて、労組、市民団体等による反対運動が取り組まれるものとみられます。

イラク派遣・派遣中止を求める集会(1月、東京)(共同)
イラク派遣・派遣中止を求める集会(1月、東京)(共同)
2 核燃料サイクルを軸に取り組まれた反原発運動


  全国の反原発団体は、関西電力美浜原子力発電所3号機(福井県美浜町)のタービン建屋で、二次冷却水の蒸気が噴出し、作業員5人が死亡し、6人が重軽傷を負った事故をとらえて、電力会社等への抗議行動やプルサーマル計画の中止を求め、集会、デモに取り組みました。
 17年は、ウラン試験に伴う安全協定の締結と試験開始、プルサーマル計画再開等をとらえて、脱原発に向けた運動が取り組まれるものとみられます。

青森県六ヶ所村でのウラン試験に対する抗議集会(12月、青森)(時事)
青森県六ヶ所村でのウラン試験に対する抗議集会(12月、青森)(時事)

3 海外から波及した過激な大衆運動


  11年のWTO閣僚会合(米国・シアトル)での抗議行動以降、顕在化した反グローバリズム運動は、国内でも13年12月以降、反グローバリズムを掲げる海外団体の関連組織が結成されるなど運動基盤の広がりがみられます。
 16年中は、1月にインド・ムンバイで開催された国際会議や6月に韓国・ソウルで開催されたアジア社会運動総会への参加等のほか、10月に米国・ワシントンで開催されたIMF・世界銀行年次総会等の一連の国際金融会議をとらえ、IMF日本事務所が入居するビル前での抗議行動に取り組み、11月には、日韓FTA交渉に対する抗議行動の際、警察官に暴行を加えたため、警視庁が1人を公務執行妨害罪で逮捕しました。
 17年は、海外での国際会議に対する抗議行動をめぐり、海外団体との交流を深めるとともに、国内で幅広い共闘に取り組むものとみられます。
 元グリーンピースのメンバーが結成した環境保護団体である「シー・シェパード(Sea Shepherd)」は、捕鯨問題に関し、保有する船舶を捕鯨船等に体当たりさせるなど、過激な行動を行っており、我が国に対しては、ホームページ上で「イルカ狩りを行っている唯一の国」と名指しで批判し、日本語サイトを新設したほか、「太地(和歌山県)で行われるイルカ殺害のビデオ写真を制作した人物に賞金を贈る」と掲載しました。また、10月から同所において行われる追込漁の様子を詳細に伝えるとともに、11月19日を捕鯨に対する「世界抗議デー」として、在外日本公館等に対する抗議活動を呼び掛けました。
 また、海外では、動物実験の完全廃止を訴え、過激な活動を展開し、過去に日本国内の動物実験施設への侵入事件等を起こしたSHAC(Stop Huntingdon Animal Cruelty)が、在英日本大使館や日本企業の海外支店に対する抗議活動に取り組みました。
 17年は、シー・シェパードが日本に対する反捕鯨キャンペーンを引き続き行うものとみられ、それに呼応した団体・個人による来日や抗議行動の可能性が考えられます。
 また、SHACが日本企業に対する抗議行動を海外を中心に継続して行うものとみられます。

インド・ムンバイでグローバル化反対を訴え、デモ行進する世界フォーラム参加者(1月)(共同)
インド・ムンバイでグローバル化反対を訴え、デモ行進する世界フォーラム参加者
(1月)(共同)


<<前へ 目次へ 次へ>>