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反社会的な本質に変化のないオウム真理教


1 松本色を前面に出した教団運営の下、組織拡大活動を展開


1 教団の危険性

  オウム真理教(以下「教団」という。)は、麻原彰晃こと松本智津夫被告が確立した教義に基づき、松本サリン事件や地下鉄サリン事件を始めとする数々の凶悪なテロを行った団体です。平成16年2月、東京地裁は、松本被告を、一連のテロ事件の首謀者と認定し、同被告に対して求刑どおり死刑を言い渡しました。
 累次にわたる警察の捜査や実態解明により、教団は、依然として松本被告の強い影響下にあり、組織活動の閉鎖性及び欺瞞性を維持しているなど、いまだ国の治安に対する危険性を具備する団体であることが明らかとなっています。

地下鉄サリン事件発生時の状況(共同)
地下鉄サリン事件発生時の状況(共同)

2 「原点回帰」の活動が顕著

 教団は、上祐史浩最高幹部が15年10月ころから「長期修行」入りして以降、正悟師による「合議」で運営されていますが、松本被告の権威を前面に出した一種の開き直りともみられる活動が顕著になっています。
 こうしたことは、在家信者を対象とした集中修行や説法会等で幹部信者が繰り返し松本被告への絶対的帰依を強調していることからもうかがえます。
 指導体制に動揺がみられる中、教団の維持、存続のため、松本被告の権威を強く打ち出した「原点回帰」の教団運営が、今後、一層強化されていくものとみられます。

3 組織活動の閉鎖性及び欺瞞性を維持

 教団は、依然として、信者を教団施設に集団居住させ、一般社会と融和しない独自の閉鎖的活動を続けているほか、教団名を秘匿したサークル活動等を通じた勧誘活動や施設確保を行うなど、組織活動の閉鎖性及び欺瞞性を維持しています。
 こうした中、警視庁は、無許可で医薬品を販売した薬事法違反事件で、教団幹部を含む信者等16人を逮捕するとともに、ステロイドを含有する医薬品であるにもかかわらず、含有していないと偽って販売したとして、医薬品の無許可販売に初めて詐欺罪を適用し、教団西荻施設責任者等2人を再逮捕しました。
 また、同じく警視庁は、オウム真理教分派グループが「修行」と称して信者を集団で暴行して死亡させた傷害致死事件で、グループ代表ら8人を逮捕しました。この事件の捜査を通じ、違法な資金獲得活動や松本を唯一の帰依対象として活動している実態が明らかとなりました。

4 ロシア人信者に対する指導の強化

 教団は、13年に再びモスクワ市内に拠点を確保し、ロシア国内での組織建て直しに取り組んでいます。現在のロシア人信者は、約300人とみられ、信者が集団居住しているアパートや共同の修行場所とされるアパートが数か所把握されています。

2 オウム真理教に対する諸対策の推進


1 特別手配被疑者追跡捜査の推進

  地下鉄サリン事件から10年が経過しようとしていますが、警察庁指定特別手配被疑者である平田信、高橋克也及び菊地直子の3人については、依然として逃走中です。
 警察は、これら3人の発見検挙を最優先の課題とし、広く国民からの協力を得ながら、全国警察を挙げた捜査を鋭意推進しています。

オウム真理教関係特別手配被疑者
オウム真理教関係特別手配被疑者

2 組織的違法行為の厳正な取締りの推進

 警察は、特別手配被疑者の追跡捜査とともに、教団信者による組織的違法行為に対する厳正な取締りを推進しています。16年中は、前記医薬品の無許可販売に係る薬事法違反事件、オウム真理教分派グループによる傷害致死事件等6件の事件で34人を検挙するとともに、9都県延べ67か所 の教団施設等を捜索し、パソコン、ハードディスク等関係資料約2,700点を押収しました。

3 信者による違法事案の未然防止

 警察は、松本被告の第一審判決に際しては、情報活動の強化と関連施設周辺における警戒警備等の諸対策を推進した結果、国内外の教団信者による違法事案の未然防止を図りました。
 また、住民の平穏な生活を守り、公共の安全を確保するため、教団施設周辺における警察官詰所の設置やパトロール、検問等の警戒警備活動、相談への対応等必要に応じ、各種の警察活動を実施しています。
 さらに、警察庁は、「オウム真理教対策関係省庁連絡会議」(総務省、法務省等7省庁で構成)に参画し、関係省庁との連携を強化しています。


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