<<前へ 目次へ 次へ>>

我が国の治安を脅かす不法入国・不法滞在事犯


1 巧妙化・潜在化する不法入国・不法滞在事犯


  平成16年中に警察及び海上保安庁が検挙した船舶利用による集団密航事件は、9年のピーク時に比し、大幅な減少傾向にあります。他方、偽造旅券等を使用した航空機利用による集団密航事件の検挙は増加傾向にあり、空路による密航事件が深刻化しています。
 こうした中、警察は、不法入国や不法残留事実を隠ぺいし、合法身分を偽装しようとする不法滞在者に、旅券や外国人登録証明書等を偽造し、これを売買する「偽造工場」を相次いで摘発したほか、偽変造文書の行使による在留資格の虚偽申請事件、暴力団等が介在した組織的な偽装結婚事件や、犯罪収益等を不正送金する「地下銀行」といった形態の犯罪を相次いで摘発するなど、国内に拠点を置く外国人犯罪組織の拡大を防止しました。
 このように、「蛇頭」や我が国の暴力団等国内外の犯罪組織が連携した不法入国・不法滞在事犯は、その形態・手口の巧妙化・多様化が進んでおり、今後、更に潜在化、定着化することが懸念されるところから、今後とも取締りを徹底していくこととしています。

【事例】

 北海道警察では、5月18日、台湾から旭川空港に到着したチャーター便で、台湾の旅券を所持し、他人になりすまして入国しようとした中国人男女7人を出入国管理及び難民認定法違反(不法入国)で現行犯逮捕しました。
 本件は、旭川空港において入国審査中の入管職員が、台湾の団体観光客を装って入国しようとした中国人の顔と旅券の顔写真が似ていないことから、不審に思い警察に通報した事案で、台湾においても密航あっせん組織の「蛇頭」メンバーが摘発されています。

入管法違反送致件数・人員の推移

2 不法滞在者に対する取締りの強化


  我が国に存在する不法滞在者の数は、20数万人といわれ、依然として高い数字で推移しています。 警察では、外国人犯罪の温床と指摘される不法滞在者を5年間で半減させるために、入国管理局との合同摘発や集中取締りを積極的に実施してきました。この結果、16年中における出入国管理及び難民認定法違反で、過去最高となる12,903件11,504人を検挙しました。
 しかし、これらの検挙人員は、大量の不法滞在者数に比べれば、まだ「氷山の一角」に過ぎず、また、不法滞在を助長する犯罪、例えば、偽装結婚、在留期間延長のための文書偽造、日本旅券の不正取得等様々な手段を用いて我が国での不法滞在を図る外国人は後を絶たない状況にあることから、引き続き取締りを強化する必要があります。
 近年、外国に本拠を置く国際犯罪組織が我が国に進出するとともに、国内に居住する不法滞在者が犯罪組織を形成し、凶悪化、組織化、全国への拡散といった傾向が顕著になっており、治安悪化の大きな要因となっています。
 警察としては、今後とも、関係機関と緊密に連携し、重点的な取締りや不法滞在者の発見検挙に資する装備資機材の充実を図るなどの諸対策を推進するとともに、中国を始めとする外国捜査機関と積極的に情報交換を行い、国際犯罪組織の共同摘発や個別の犯罪捜査における協力を更に推進していくこととしています。

【事例】

 愛知県警察では、5月31日、岐阜県岐阜市所在の外国人登録証明書等の偽造工場を摘発し、パソコン等の偽造機材等を押収するとともに、同偽造工場から押収した証拠資料を分析して、7月29日、東京都北区所在の偽造アジト及び偽造工場を摘発し、同日までに偽造組織関係者の中国人男女24人を検挙しました。
 偽造された外国人登録証明書と旅券は、セットで3万5,000円から5万円で販売されていました。
 本件の特徴として、全国で初めて、外国人登録証明書の偽造用ホログラムシール、プラスチック板を外国人登録証明書の大きさに切り取る型抜き器及び偽造用素材集として、全国129自治体の公印の印影等を記録した電磁的記録媒体を押収しています。

(注) 平成16年中における出入国管理及び難民認定法違反の検挙件数・人員は、17年2月1日現在の暫定数です。

偽造工場摘発時における押収品(9月、愛知)
偽造工場摘発時における押収品(9月、愛知)


<<前へ 目次へ 次へ>>