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国際テロ情勢と警察の対応


1 国際テロ情勢


1 我が国への国際テロの脅威

  平成16年の国際テロ情勢は、依然として厳しいまま推移しました。国際テロに対しては、13年9月11日の「米国における同時多発テロ事件」後、米国を中心にテロ対策に関する広範な国際協調が進み、各国でアル・カーイダ等イスラム過激派メンバーの身柄が拘束されるなど、一定の効果を上げているものの、スペイン、サウジアラビア、インドネシアにおけるテロ等、イスラム過激派の関与が疑われる大規模・無差別テロが世界各地で発生しました。
 17年の国際テロ情勢は、引き続き厳しく、イスラム過激派を中心とした国際テロ組織が、今後も世界各地で国際テロ事件を引き起こすことが予想されます。
 我が国は、アル・カーイダを始めとするイスラム過激派から、いわゆる米国の同盟国とみなされており、15年10月及び16年5月のオサマ・ビンラディンのものとされる声明、10月のアイマン・ザワヒリのものとされる声明等において、テロの標的として名指しされています。また、我が国には、イスラム過激派がテロの対象としてきた米国関連施設が多数存在していることなどから、我が国がテロの標的とされ、国内においてテロが発生する可能性は否定できません。
 こうした中、アル・カーイダ関係者であり、殺人、爆弾テロ未遂等の罪で国際刑事警察機構(ICPO)を通じて国際手配されていたフランス人が、15年12月にドイツにおいて逮捕され、他人名義の旅券を使用して我が国に不法に入出国を繰り返していたことが判明し、さらに、別のイスラム過激派メンバーが、同人と同居して我が国に一時滞在していたことが明らかとなるなど、国際テロリストが我が国に潜伏していた実態が明らかとなりました。我が国には、イスラム諸国出身者が多数滞在し、コミュニティを形成していることから、今後、イスラム過激派が、こうしたコミュニティを悪用して、資金、資機材、支援者等のテロのインフラを形成するための活動等を行うことも懸念されます。
 また、14年10月の「インドネシア・バリ島における爆弾テロ事件」、15年8月及び16年9月の「インドネシア・ジャカルタにおける豪州大使館前爆弾テロ事件」にみられるように、大規模・無差別テロの脅威は、我が国に地理的に近接した東南アジアにまで及んできています。
 さらに、海外において、現実に我が国の国民や権益がテロの標的となる事案が発生しています。また、我が国の権益等が直接の標的ではない場合であっても、海外にいる邦人がテロに巻き込まれることも考えられます。既に、13年9月の「米国における同時多発テロ事件」を始め、14年10月の「インドネシア・バリ島における爆弾テロ事件」等で邦人が犠牲になっているほか、イラクにおいては、15年11月に我が国外務省職員が襲撃・殺害され、16年にも邦人が人質となったり、襲撃・殺害される事件が発生しています。

「インドネシア・ジャカルタにおける豪州大使館前爆弾テロ事件」(9月)(時事)
「インドネシア・ジャカルタにおける豪州大使館前爆弾テロ事件」(9月)(時事)

「スペイン・マドリードにおける同時多発列車爆破テロ事件」(3月)(時事)
「スペイン・マドリードにおける同時多発列車爆破テロ事件」(3月)(時事)

日本に潜伏していたアル・カーイダ関係者(時事)
日本に潜伏していたアル・カーイダ関係者(時事)

声明を読み上げる武装組織のメンバー(時事)
声明を読み上げる武装組織のメンバー(時事)


2 日本赤軍及び「よど号」グループ等の動向

(1)日本赤軍

  13年4月、重信房子は、獄中から日本赤軍の解散を宣言し、日本赤軍も同年の「5・30声明」(昭和47年5月30日の「テルアビブ・ロッド空港事件」を記念し、日本赤軍が毎年5月30日前後に発出している声明)で組織としてこれを追認しました。平成13年12月、日本赤軍メンバーは、新組織「連帯」を立ち上げ、日本赤軍と同様の主張を展開、事実上、日本赤軍の継承組織として活動を開始し、16年も15年と同様「5・30声明」を「ムーブメント「連帯」」の名で発出しています。
 現在、日本赤軍は、組織再編と逃亡メンバーに対する支援等のため新たな活動拠点の構築を模索しているものとみられますが、その危険性に変化はなく、今後も、かつて協力関係にあった海外テロリストと連携して、獄中メンバーの奪還等を目的とした国際テロ事件を引き起こす可能性は否定できません。

日本が国際手配中のテロリスト
日本が国際手配中のテロリスト

(2)「よど号」グループ

 「よど号」グループは、北朝鮮内において、当局との密接な関係を基盤に、グループ全員の帰国を重点目標として、機関紙、インターネット等を通じ、盛んに自己の主張を訴えています。
 「よど号」犯人の妻等については、15年までに帰国し逮捕した3人に続いて、16年2月、旅券法違反及び有印私文書偽造・同行使容疑で国際手配中の魚本民子を、10月には、旅券法違反で国際手配中の田中協子を帰国と同時に逮捕しています。なお、子女については、これまでに17人が帰国しています。「よど号」犯人は、機関紙等を通じて、日本人拉致への関与を否定するとともに、全員の早期合意帰国を訴えており、6月には、北朝鮮当局に対し、日本への帰国支援を要請する書簡を送付し、これに対して、北朝鮮当局は、7月、彼らの帰国には反対しないとの立場を改めて表明するなど、彼らの帰国をめぐる動向は活発化しています。
 「よど号」グループは、朝鮮労働党の指導の下、金日成主義による日本革命を目指し、日本人拉致に関与したものとみられるほか、過去にもメンバーが他人になりすまして潜入帰国中に逮捕されており、今後も我が国の国益を害する行為を行う可能性は否定できません。

日本が国際手配中のテロリスト
日本が国際手配中のテロリスト


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