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北朝鮮対策


1 日本人拉致(らち)容疑事案の捜査状況

 警察は、北朝鮮による日本人拉致容疑事案について、被害者の所在が不明であり、事案発生の時点で目撃者もおらず、証拠もほとんど残されていない状況の下、鋭意関連情報の収集と証拠の積み上げに努め、これまでの一連の捜査の結果、これらの拉致に関与した北朝鮮工作員やよど号犯人ら3人について、既に逮捕状の発付を得て、所要の手配等を行っています。また、これまでに、北朝鮮から伝えられた拉致被害者の安否を含む各種事実関係の説明には、不十分な点や疑わしい点があり、事実関係を慎重に見極める必要があることから、内閣官房や外務省等と連携し、北朝鮮に対して、更に詳細な説明を求めています。
 なお、10件15人以外にも、北朝鮮による拉致の可能性を排除できない事案があるとみて、所要の捜査や調査を行うとともに、新たな情報の収集に努めています。

2 北朝鮮の動向に関する情報収集

 北朝鮮による核開発問題等をめぐって国際情勢が緊迫化する中、地理的に近接する朝鮮半島の動向に多大な影響を受ける我が国において、警察には、各種の対日有害活動を封じ込め、国益を守るという重責があります。
 また、北朝鮮は、過去に「ラングーン爆弾テロ事件」(昭和58年10月)や「大韓航空機爆破事件」(62年11月)等の重大な国際テロ事件を引き起こし、さらには、依然として「よど号ハイジャック事件」(45年3月)の犯人グループを保護しており、米国も継続して北朝鮮を「テロ支援国家」と認定していることなどから、十分な警戒が必要です。
 警察としては、テロの未然防止を図るため、最近の北朝鮮をめぐる情勢の変化も踏まえながら、国内外の関係各機関と協力して鋭意情報収集を進めています。

3 万景峰92号

 北朝鮮と日本を結ぶ北朝鮮籍の貨客船である万景峰92号は、親族訪問者や朝鮮学校の修学旅行生、物資の輸送等に利用される一方で、不正送金や不正輸出、工作員の送り込み等の役割も担っているのではないかとの指摘がなされてきたところですが、警察は、実際に、同船をめぐって不正輸出事件を摘発しているほか、同船の指導船長を通じ、在日工作員に対する北朝鮮の指示・命令が伝達されていたことを確認しています。
 警察としては、今後とも、関係各機関と緊密に連携し、違法行為に対しては、厳正に対処していきます。

万景峰92号 写真
万景峰92号

4 北朝鮮の工作活動

1 スパイ事件

 警察は、戦後約50件の北朝鮮関係の諜報事件を検挙しています。
 これまでの検挙事例から、こうした工作活動は、流動する国際情勢、国内情勢等を反映し、展開されてきたことが判明しており、今後も、その活動は活発に行われるものと思われます。
 警察は、こうした北朝鮮による活動について、我が国の国益を害し、国民の生命、身体にも危険を及ぼす治安上重大な問題であると認識しており、今後、外国治安情報機関等との緊密な情報交換を実施し、その分析を進め、我が国における北朝鮮によるスパイ活動の実態を把握するとともに、工作員の検挙に全力を尽くすこととしています。


2 北朝鮮工作船の活動

 平成13年12月に発生した「九州南西海域工作船事件」では、翌年に引き揚げられた船体から、小型舟艇、ゴムボート、水中スクーター等北朝鮮工作員が潜入・脱出するための道具やロケットランチャー、携帯型地対空ミサイル等極めて殺傷力、破壊力の強い武器が多数発見され、その脅威が明らかになりました。
 14年9月に行われた日朝首脳会談で、金正日
(キム・ジョンイル)国防委員長は、本工作船について、北朝鮮によるものであることを認める発言をするとともに、今後の再発防止を約束しました。
 これまでの検挙した事例やその他の情報を総合的に判断して、北朝鮮工作船は、工作員の潜入・脱出を行ったり、拉致等を行うことを目的として活動しているものとみられます。近年における、朝鮮半島情勢の緊迫化を反映して、今後も、我が国周辺海域において違法活動を敢行することが十分予想されるところです。
 不審船対策に関しては、現在、政府において、過去の不審船事案を踏まえ、海上保安庁と自衛隊の共同対処、運用態勢・装備の充実、必要な法的措置等各般の対策を進めているところであり、警察としても、北朝鮮工作員による不法入出国事案等の防止及び発見検挙のため、引き続き、海上保安庁等関係機関との連携を強化し、沿岸警備の徹底等各種対策を講じていくこととしています。

工作船から押収された対空機関銃 写真   工作船から押収された銃器等を視察する首相 写真
工作船から押収された対空機関銃
(海上保安庁提供)
 
  工作船から押収された銃器等を視察する首相(代表) 

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