表紙・目次 はじめに 第1章 警備警察50年の歩み 第2章 警備情勢の推移 第3章 警備情勢の展望と警察の対応 資料編

<<前へ   次へ>>

北朝鮮によるテロ等
1 北朝鮮によるスパイ事件

 我が国は、朝鮮半島と地理的に近接しており、また、歴史的経緯から60万人を超える韓国・朝鮮人が居住していることから、北朝鮮は我が国をスパイ活動の重要拠点ととらえ、日本及び韓国に関する情報収集、在日米軍に関する情報収集、さらには、日本人の北朝鮮への拉致などの活動を行ってきました。
 警察は、これまで約50件の北朝鮮によるスパイ事件を検挙しています。そのうち、沿岸部における水際での北朝鮮工作員の検挙件数は、約15件です。
 これまで検挙した事件から、次のような事項が明らかとなっています。

【工作活動の目的、任務の変遷】
(1)  昭和25年9月から33年10月にかけて検挙された「第一次~第四次北朝鮮スパイ事件」などは、激動する朝鮮半島情勢を背景として、
● 在日米軍に関する情報収集
● 我が国の警察予備隊、保安隊に関する情報収集
 などを目的としていました。
(2)  39年7月に検挙された「本庄浜事件」、「一宮事件」、同年10月に検挙された「寝屋川事件」等は、
 我が国の政治、経済、外交、軍事等に関する情報収集、特に、自衛隊に関する情報収集等を目的としていました。
(3)  51年6月に検挙された「布施事件」等は、
● 在韓スパイ網埋設のための獲得工作等の対韓工作
● アジア等の海外拠点との連絡、海外スパイ網埋設のための各種工作
 等を目的としていました。
(4)  52年9月に検挙された「宇出津(うしつ)事件」や53年6月ころ発生した「李恩恵(リ・ウネ)拉致容疑事案」等は、
● 日本人の北朝鮮への拉致
 を目的としていました。
(5)  最近検挙された「新宿百人町事件」(平成12年11月)、「東中野事件」(15年2月)では、対韓地下党工作や、万景峰(マンギョンボン)92号を利用した指令文書のやりとり、工作員への指導等を目的としていたことが明らかとなっています。

【北朝鮮工作員の経歴】
(1)  日本で長期の生活経験を積んだ上で北朝鮮に帰国し、北朝鮮工作員として採用された者
(2)  北朝鮮において高等教育を受け、情報機関に採用された者
(3)  在日の韓国・朝鮮人で、北朝鮮工作員に獲得された者
等多岐にわたっています。

【工作員の身分偽変の実態】
(1) 精巧に偽造された外国人登録証明書
(2) 他人名義の真正外国人登録証明書に自己の写真を貼付したもの
(3) 実在する日本人に成り代わり取得した旅券や運転免許証
等を入手して、自らの身分を偽変して本邦において工作活動を行っていたことなどが分かっています。

 一方、北朝鮮工作船の活動に関しては、これまで、3年5月に検挙した「美浜事件」や13年12月に発生した「九州南西海域工作船事件」において、船体、船内から発見された多数の証拠物等により、当該船舶を北朝鮮工作船と特定するに至っていますが、これ以外にも、相当数の北朝鮮工作船が我が国の領海内に侵入してきているものと思われます。
 これら北朝鮮工作船は、これまでの検挙事例やその他の情報を総合的に判断して、工作員の潜入・脱出を行ったり、日本人拉致等を行うことを目的として活動しているとみられます。

乱数表「美浜事件」
乱数表「美浜事件」(平成2年10月28日、福井)
万景峰92号を介した工作活動を報道する各紙   「九州南西海域工作船事件」で引き上げられた工作船
万景峰92号を介した工作活動を報道する各紙
(平成15年1月29日、朝日新聞、東京新聞、読売新聞)
 
  「九州南西海域工作船事件」(平成13年12月22日)
で引き上げられた工作船(海上保安庁提供)
 

<<前へ   次へ>>

表紙・目次 はじめに 第1章 警備警察50年の歩み 第2章 警備情勢の推移 第3章 警備情勢の展望と警察の対応 資料編