活発化する動き

組織基盤の復活

 オウム真理教は、(1)東京地方検察庁及び東京都が東京地方裁判所に対して請求した解散命令が確定して宗教法人としての法人格を失い(平成7年12月19日確定)、(2)事件の被害者、遺族及び国が東京地方裁判所に対して申し立てた破産宣告の決定が確定し(平成8年5月10日)、財産の差押えを受け、また、(3)破壊活動防止法に基づく規制処分(解散指定)が公安審査委員会において審査されました。
 しかし、公安審査委員会が「オウム真理教の将来の危険性を認めることは極めて困難である」と判断し、破壊活動防止法に基づく解散指定処分の請求が棄却(平成9年1月31日)された後、オウム真理教は、布施(参加費)集めを目的とするセミナーを頻繁に開催したり、関連企業でパソコン販売を行うなどして財政基盤も整えていったのです。

信者による街頭パフォーマンス(東京)

現在の指導体制

 オウム真理教は、現在、6人の幹部(「正悟師」と称しています)と松本智津夫の子供達で構成される「長老部」と呼ばれる指導部を頂点に置く指導体制をとり、松本智津夫が確立した教義に沿った組織運営を行っています。
 最盛時約1万人を擁した信者は、現在は約2、100人ですが、既に脱会した信者の自宅を訪問して執拗に復帰を呼びかけるなどしています。
 年末には、松本智津夫に対する絶対的帰依を表明し、現在の幹部よりも高い地位(「正大師」と称しています)にある幹部が出所する予定であり、組織運営に少なからず影響を与えるものとみられ、今後の動向が注目されます。

オウム真理教組織図

全国に散らばるオウム施設

 オウム真理教は各地に施設を持ち、「長老部」のほか、信者の裁判・住民運動に対処する部署(「法務部」)、教団の正当性を対外的に広報する部署(「広報部」)などの中央組織を置いています。中央組織の中には株式会社、有限会社の形態をとって活動している部署もあります。
 支部、修行施設などを含めると全国16都道府県、約40ヶ所に及び、これらは、インターネットやイントラネットを駆使した通信網で結ばれています。
 出家信者は全国約100ヶ所のアパート、マンションの一室及び一戸建ての住宅などで数人ずつ集団生活しています。これらの信者はオウム真理教関連企業などで働き、帰宅後は部屋の中で礼拝や修行をするなどしています。信者は真夜中にも頻繁に出入りしたり、一晩中修行用の音楽を流すなど近隣の迷惑を顧みません。他の居住者に不安感を与えたりするなどから建物所有者は賃貸契約の更新を断る傾向にあります。このため、オウム真理教は各地で新たな拠点の確保を必要としているのです。オウム真理教は、自己所有の物件確保も図り、長野県内に核シェルターを備えた1、000人規模の集団居住施設を建設しようとしていたことが警察の捜査によって明らかになっています。

オウム真理教主要活動拠点分布図と核シェルター写真

偽装サークルの罠

 オウム真理教は、オウム真理教であることを隠した偽装サークルやインターネットによるメール交換などで勧誘し、新たな信者の獲得を狙っています。このほかに、大学のキャンパスでサークルを偽装したビラを配布したり、一般住宅にミニコミ誌を偽装した勧誘ビラを投函する場合もあります。
 趣味の情報や不要品の交換のつもりでサークル主宰者に連絡したはずなのに、オウム真理教の勧誘対象にされてしまうのです。

資金源活動

 オウム真理教の関連企業は全国に約40社あり、業種はコンピュータ部品の輸入、パソコンの組立・販売、出版、建設、食品製造など多岐にわたっています。特に、コンピュータ関連企業は、秋葉原電気街(東京都)などに店舗を構え、一般のパソコンショップ同様の店頭販売をしているほか、雑誌に通信販売の広告を載せています。これがオウム真理教の財源を担っており、東京都内3店舗だけでも平成10年度に60億円近い売上げとなっています。

オウム真理教関連パソコンショップ

オウム真理教の「休眠宣言」

 オウム真理教は平成11年9月29日、東京都内の関連施設で記者会見を行い、「休眠宣言」を行いました。その内容は、各支部を閉鎖し、セミナー、勉強会などの集会や、ビラ配布、街頭宣伝などの勧誘活動を休止し、「オウム真理教」の名称使用を一時停止するというものです。
 しかし、これは、警察の取締りや社会的非難を浴びて自らの論理だけで活動できなくなっていることを認めざるを得なくなったことにほかなりません。つまり、支部運営が破綻状態にあること、セミナー、勉強会には人が集まらなくなっており、また、違法行為を辞さないビラ配布の指示で多数の信者が逮捕されているからなのです。
 したがって、この「休眠宣言」は、検討され始めた新しい法律の制定を妨げ、住民運動を和らげる目的以外のなにものでもないとみられます。オウム真理教の反社会的な本質は全く変わっていないのです。

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