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Ⅰ 総  論

Q 犯罪収益移転防止法の概要は。

A マネー・ローンダリング、すなわち犯罪により得た収益を隠そうとする行為やテロ行為への資金供与を防止するための新しい法律です。従来から金融機関等に求められていた本人確認などの措置が、宅地建物取引業者や宝石・貴金属等取扱事業者、司法書士等の士業者など一定の事業者にも拡大され、資金の流れを追跡できるようにして、こうした事業者が不正な資金の移転に利用されることを防ごうとするものです。

Q2 マネー・ローンダリングは実際にはどのように行なわれていますか。

A マネー・ローンダリングは、犯罪によって得た収益を隠す行為のことですが、日本でも年間約100件の事件が検挙されています。例えば、他人名義の預貯金口座に入金して隠す行為や、ペーパーカンパニーを利用して正当な事業収益を装うなどの手口があります。昨年は外国人と日本人が結託して、日本で多数の預金口座を開設し、アメリカ合衆国で騙し取った金をいったん日本に送金させて、それを払い戻した上でまた外国に送金していたという事例がありました。また、過去には立証できるだけで100億円にも上る資金を外国に送金して追跡を逃れようとしていた事例や他人の名前で銀行の貸金庫を借りて隠匿していた事例などもあります。

Q3 なぜ、今回法整備を行ったのですか。

A 従来から金融機関では口座の開設や大口の現金取引時に本人確認を行うなどしていました。これは犯罪収益を隠そうとする場合、他人名義の口座や無記名の証券を用いるなど金融機関のサービスが利用される傾向にあったためですが、金融機関による対応が厳しくなるにつれ、犯罪者も資金隠匿手口を巧妙化させてきました。例えば、詐欺により騙し取ったお金で他人名義の不動産を購入したり、賭博によって得た資金の没収を免れるために第三者からの貸借を装い差し押さえよしようとすることに弁護士が関与した事例など、金融機関等以外の業種や専門家が関与したり、金融資産以外の財産に形を買える場合が見られます。こうした傾向は国際的にも同様であり、このため平成15年にはマネー・ローンダリングとテロ資金対策に関する国際的な勧告が改訂され、各国は金融機関等以外の事業者にも本人確認などの措置を義務付けるべきとされました。政府では、こうした国際的な動向も踏まえ、第166回通常国会に犯罪収益移転防止法案を提出し、3月に成立し、約1年後の平成203月から全面施行されることとなったのです。

Q4 犯罪収益移転防止法により、国民の暮らしにどのような影響がありますか。

A この法律の施行によって暴力団などの資金基盤に打撃を与えることができれば、健全な経済活動の確保や、安全・安心の向上につながることが期待されますが、一方で国民の皆様にご協力をいただく場面も増えます。

国民の皆様が事業者を利用する際本人確認を求められる事業者の範囲が、これまでの金融機関等から、ファイナンスリース事業者、クレジットカード事業者、宅地建物取引業者、宝石・貴金属等取扱事業者、郵便物受取サービス業者、電話受付代行業者、司法書士、行政書士、公認会計士、税理士、弁護士などに拡大されます。こうした事業者を利用になる場合には本人特定事項(氏名・住居・生年月日)の確認を求められることになります。

 

2 本人確認

Q5 新たに本人確認の対象となる事業者のサービスを利用する場合、全ての取引に本人確認が必要ですか。

A 本人確認が必要になるのは、原則として継続的な取引であれば最初の時点、個々の取引であれば一定金額以上の場合です。

 例えば、クレジットカード事業者はクレジットカードを交付する最初の契約時点であり、貴金属などの取引業者では200万円を超える現金での売買の時に必要となります。

 また、司法書士等の士業者などでは、不動産の売買、会社等の設立等、200万円を超える現金などの管理・処分等の代理・代行を内容とする契約の締結時に必要となります。

 なお、訪問販売、インターネット・メールオーダー等での取引を行う際にも、本人確認が必要となる場合があります。

Q6 本人確認とはどのようにして行なわれますか。運転免許証を見せればよいのですか。

また、運転免許証がない場合はどうすればよいのですか。

A 本人確認は運転免許証を提示していただければ可能ですが、各種の健康保険証や国民年金手帳、住民基本台帳カード(氏名・住居・生年月日の記載のあるもの)、旅券(パスポート)、外国人登録証明書などの公的書類を提示することによっても可能です。

また、住民票の写しを提示することにより本人確認を行うことも可能ですが、この場合には、提示を受けた上で、事業者から取引に関する文書に記載された住所あてに転送不要郵便で送付することが必要になります。

Q7 運転免許証の写しを郵送する方法でも本人確認はできますか。

A 顧客と対面して取引を行う場合には、写しの提示では本人確認はできません。

インターネットを利用するなど顧客と対面しないで取引を行う場合には、運転免許証の写しなどを事業者に送付して、事業者からそこに記載された住所あてに転送不要郵便を送付する方法で本人確認を行うことも可能です。

Q8 法人の場合の本人確認とは何を確認するのですか。

A 会社などの法人の場合には、会社の名称、本店又は主たる事務所の所在地を確認するために登記事項証明書などの書類を提示する必要があります。

 また、法人自体の本人確認に加えて、取引担当者(実際に取引の任に当たる自然人)についても本人確認が必要となります。

 なお、国、地方公共団体、上場企業等と取引する場合は、取引担当者を顧客とみなして、その本人確認を行えばよいこととされています。

Q9 代理人による取引の場合の本人確認方法は。

A 顧客の本人確認とともに、顧客を代理して取引を行う者についても本人確認を行わなければなりません。つまり、取引に際して、本人および代理人双方について、本人特定事項(氏名・住居・生年月日)を確認することとなります。

Q10 本人確認を行う際、写し(コピー)を取る必要があるのか

A 法律上の規定はありませんが、本人確認記録を作成する際、写し(コピー)を添付することにより記載を省略できるなど、手続を簡略化できます。

Q11 追跡を逃れて犯罪収益を隠そうとする者は、他人の名前をかたって取引をする場合もあるのではないか。

A 虚偽申告には50万円以下の罰金が科され、また偽造した運転免許証などを使った場合には、刑法の公文書偽造罪などに問われることがあります。

Q12 法施行以前から取引のある顧客への本人確認は必要なのか。

A 法の規程に準じて既に顧客を特定するに足りる事項の確認を行い、かつ、顧客台帳などで当該確認に関する記録を保存している場合には、本人確認済取引として扱われるため、改めて本人確認をする必要はありませんが、すでに本人確認済みであることを確認するためお客様カードの提示を受けたり、本人しか知り得ない事項の申告を受けたりするなどが必要です。

Q13 本人確認済の顧客から、住居の変更や改姓の届出があった場合、改めて本人確認をする必要があるのか。

A 住居の変更や改姓の届出があった場合は、本人特定事項(氏名・住居・生年月日)の変更になりますが、法律上は、当該取引が特定取引に該当しなければ本人確認の必要はありません。しかし、変更後の事項を本人確認記録に記載する必要がありますので、それぞれの事業者ごとに任意の方法で確認してください。

Q14 事業者が本人確認義務等に違反した場合、罰則規定はあるのか。

A 所管行政庁を通じて指導、助言及び勧告、或いは是正命令を受けることになります。この是正命令に違反した場合には、2年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処せられることがあります。

Q15 顧客が本人確認に理解を示さない場合、または本人確認に応じない場合は、どのように対処するのか。

A 顧客との取引に際して、本人確認を行うことは法律上の義務であり一定の取引については、必ず本人確認をしなければなりません。

 本人確認に理解を示さない顧客に対して、法律上の義務であることをよく説明して理解を得ることが重要となります。

犯罪収益移転防止法第5条には「顧客等が特定取引を行う際に本人確認に応じないときは、顧客等がこれに応ずるまでの間、当該特定取引にかかる義務の履行を拒むことができる」と規定されています。

 

 

「法」    : 犯罪による収益の移転防止に関する法律(通称:犯罪収益移転防止法)