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第2章 犯罪被害者等のための具体的施策と進捗状況

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第1節 損害回復・経済的支援等への取組

2 給付金の支給に係る制度の充実等(基本法第13条関係)

(1) 現行の犯罪被害給付制度の運用改善

【施策番号12】

犯罪被害給付制度(以下「犯給制度」という。)とは、通り魔殺人等の故意の犯罪行為により、不慮の死を遂げた被害者の遺族又は身体に障害を負わされた犯罪被害者等に対し、社会の連帯共助の精神に基づき、国が犯罪被害者等給付金を支給し、その精神的、経済的打撃の緩和を図ろうとするものである。

この制度については、平成18年4月、重傷病給付金の支給要件の緩和や支給対象期間の延長等を行うとともに、親族間の犯罪における支給制限を緩和し、20年7月には、大規模な法令改正により、生計維持関係のある遺族に対する遺族給付金及び重度後遺障害者(障害等級1~3級)に対する障害給付金の引上げ等を図った。また、21年10月、親族間の犯罪のうち、配偶者からの暴力事案であって特に必要と認められる場合には、全額支給ができるように特例規定の見直しを行った。さらに、26年11月には、「犯罪被害給付制度の拡充及び新たな補償制度の創設に関する検討会」取りまとめの提言を受け(【施策番号13】参照)、親族間犯罪に係る減額・不支給事由について見直しを行った。

警察庁では、都道府県警察に対して、パンフレット、ポスター、インターネット上のウェブサイト等を活用して犯給制度の周知徹底を図るとともに、犯給制度の対象となり得る犯罪被害者や遺族に対しては、犯給制度に関して有する権利や手続について十分な教示を行うよう指導している。また、犯給制度の事務担当者を対象とした会議を開催するなどして、迅速な裁定等運用面の改善を指導している。

図表2-14 犯罪被害給付制度
図表2-14 犯罪被害給付制度

26年度における犯罪被害者等給付金の裁定金額は、約12億4,300万円であった。また、26年度の平均裁定期間(申請から裁定までに要した期間)は6.9月であった(第2次基本計画が策定された22年度は7.4月)。

今後も、警察庁として都道府県警察に対して、犯給制度の周知徹底、迅速な裁定等運用面の改善を指導していく。

図表2-15 犯罪被害給付制度の運用状況
図表2-15 犯罪被害給付制度の運用状況

(2) 犯罪被害給付制度の拡充及び新たな補償制度の創設に関する検討

【施策番号13】

推進会議決定(平成23年3月25日)により、20年度に拡充された犯給制度の運用状況等を踏まえ、犯給制度の更なる拡充及び新たな補償制度の創設の要否並びに犯給制度の拡充又は新制度創設を要するとした場合の制度設計に関して検討するため、有識者並びに内閣府、警察庁、法務省、厚生労働省及び国土交通省からなる検討会が開催された。

同検討会では、開催の趣旨を踏まえ、犯罪被害者等からの生活状況等に関するヒアリング、20年度改正後の犯給制度の運用状況、要件が該当する場合に犯罪被害者等の経済的負担軽減に活用できる又は実際に活用されている社会保障等の枠組み、海外での犯罪被害者等に対する経済的支援制度の現状確認や、全国犯罪被害者の会(あすの会)作成に係る「犯罪被害者補償制度案要綱(生活保障型)第二版」に基づく新たな補償制度に関する提案等を踏まえて議論を重ね、26年1月に議論の経過及び提言について取りまとめを行った。

同取りまとめの中では、まず、犯給制度については、一定の場合の配偶者間暴力被害事案以外の親族間犯罪では原則不支給又は減額割合が3分の2までとされている点につき、全額支給又は減額割合を3分の1までとする特例の範囲を広げるべきとされたほか、親族間犯罪に係る規定に関し、都道府県警察等の支援の現場への教育、周知が徹底されるべきとの提言がなされた。また、本給付の迅速な裁定に努めていくべきであり、犯罪被害者等の要望を踏まえ、仮給付制度の一層の活用がなされるべきであるとの提言がなされた。

さらに重傷病給付金について、被害者の負担軽減を更に図るべき合理性が認められる実態があるか確認するため、現行制度について運用状況を更に詳細に調査すべきであるとされ、加えて、同検討会開催期間中に、海外での複数の邦人犯罪被害が社会の耳目を引いたことも踏まえ、海外での犯罪被害者に対する経済的支援に関して、犯給制度の拡大適用の形ではないとしても、社会の連帯共助の精神にのっとり、何らかの経済的支援をスタートさせるべきとの提言がなされた。また、海外での犯罪被害者のためには、経済的な支援の観点だけではなく、外務省(在外公館)と、日本での当該被害者又はその家族の住所地における既存の犯罪被害者支援体制との連携構築が必要であるとの提言もなされた。

そのほか、同検討会では、ヒアリング等において犯罪被害者が保険診療を断られるケースが見受けられるとの言及がなされたことを踏まえ、犯罪被害者である被保険者が保険診療を求めた場合については、現行制度上加害者の署名が入った損害賠償誓約書等の有無にかかわらず保険給付が行われることになっている旨の保険者及び医療機関への周知が、改めて徹底されるべきであることと、これに合わせて、支援の現場に対しても、各種研修等を通じて、同様の趣旨が改めて周知されるべきであること、さらに、引き続き、内閣府においては、市町村に対し、犯罪被害者等に対して適切な情報提供を行う総合的な対応窓口の設置促進を働き掛けることが提言された。

以上の取りまとめの内容は、同年3月に開催された推進会議に報告され、同会議において、今後、同取りまとめに従った施策を推進していくことが決定された。

(3) カウンセリング等心理療法の費用の公費負担についての検討

【施策番号14】

有識者並びに内閣府、警察庁、法務省、文部科学省及び厚生労働省からなる「犯罪被害者等に対する心理療法の費用の公費負担に関する検討会」は、平成25年1月、最終取りまとめにおいて、警察内部有資格者等によって提供されるカウンセリング等、既存の公的機関・制度において提供されている心理的支援について、これらを実施する人材の育成等が図られ、犯罪被害者がその地域を問わず一層充実した心理療法・カウンセリングが受けられるようになるための措置が執られるべきであるとの提言を行った。

また、検討会は、公費負担制度の対象として相当と認められる範囲を、心理療法・カウンセリングの実施の必要性を判断する者、その類型及び実施者等の観点から、明らかにするための研究会を開催し、その研究に基づき、公費負担制度が導入されることを期待するとの提言を行った。

同提言内容は、同年3月に開催された推進会議に報告され、同会議において、これに従った施策の実施の推進が決定された。

これを受けて、警察庁では、26年3月から、6人の有識者による「犯罪被害者の精神的被害の回復に資する施策に関する研究会」を開催し、27年4月に「犯罪被害者の精神的被害の回復に資する施策に関する報告書」 (http://www.npa.go.jp/higaisya/study/kaifuku/houkoku/shien-report.pdf) を取りまめた。

同報告書を踏まえ、警察庁においては、都道府県警察に対し、臨床心理士資格等を有する警察部内カウンセラーの確実な配置に努めるよう指導している。また、警察庁及び都道府県警察においては、カウンセリング費用の公費負担制度の全国展開を図るとともに、同制度の周知に努めている。

また、日本司法支援センターにおいては、26年4月から、損害賠償命令申立対象犯罪の被害者等について、当該被害者等が、民事法律扶助制度を利用して弁護士等に事件処理を委任した場合、当該弁護士等との打合せに同席したカウンセラーの費用も、立替援助の対象としている。

そのほか、犯罪被害者等がその地域を問わず一層充実した心理療法・カウンセリングが受けられるようにするための措置については、【施策番号45】【施策番号46】【 施策番号61】に掲載している。

(4) 地方公共団体による見舞金制度等の導入促進

【施策番号15】

内閣府においては、地方公共団体に対して、犯罪被害者等施策主管課室長会議や地方公共団体職員を対象とする研修会等を通じ、犯罪被害者等に対する見舞金の支給制度や生活資金の貸付制度の導入について要請した。既に制度を導入している地方公共団体及びその制度概要は、犯罪被害者白書(資料10-5参照)に掲載しており、また、警察庁犯罪被害者等施策ウェブサイトにおいても掲載している。

平成28年4月現在、犯罪被害者等を対象とし得る見舞金の制度を導入しているのは、1県、2政令指定都市、116市町村、貸付金の制度を導入しているのは、2県、8市区町であり、前年と比較して、見舞金制度の導入については1県、17市町村が、貸付金制度の導入については1市が、それぞれ増加した。

(5) 生活保護制度における犯罪被害者等給付金の収入認定除外についての検討

【施策番号16】

厚生労働省においては、生活保護受給者が犯罪被害者等給付金を受給した場合、自立更生のために当てられる額については収入認定しないこととしているほか、地方自治体から聴取した意見を踏まえ、犯罪被害者等特有の特別な事情が認められれば、裁判やカウンセリングに係る費用等は、収入認定から除外することが可能であることを地方自治体に通知している。

(6) 性犯罪被害者の医療費の負担軽減

【施策番号17】

警察庁においては、平成18年度から、性犯罪被害者に対し、緊急避妊等に要する経費(初診料、診断書料、性感染等の検査費用及び人工妊娠中絶費用等を含む。)を公費で負担することにより、犯罪被害者等の精神的・経済的負担の軽減を図っており、各都道府県警察においては、これら全ての項目を公費負担の対象としている。

また、性犯罪被害以外の身体犯被害についても、被害者等の刑事手続における負担を軽減するため、犯罪被害に係る診断書料、死体検案書料、初診料の費用を公費により負担している。

今後も、警察庁において引き続き予算措置を講じ、できる限り全国同水準の支援がなされるよう、都道府県警察に対して支援内容の充実を図るよう指導していくとともに、性犯罪被害に伴う精神疾患についても犯給制度の対象になることの周知も含め、本制度の適切な運用について指導していく。

※3 海上保安庁においても、犯罪被害に係る事件の立証上診断書又は死体検案書が必要とされる場合は、診断書等の取得に必要な作成費用を公費により負担している。また、捜査上の要請から行う事情聴取のために犯罪被害者等が出頭する場合の旅費についても公費により負担している。

(7) 司法解剖後の遺体搬送費等に対する措置

【施策番号18】

都道府県警察においては、司法解剖後の遺体を遺族宅等まで搬送する費用や解剖による切開痕等を目立たないよう修復するための費用を公費により負担し、遺族の精神的・経済的負担の軽減を図っている。

○ 海上保安庁においても、司法解剖後の遺体を遺族宅まで搬送する費用や解剖による切開痕等を目立たないよう修復するための費用を公費により負担している。

海上保安庁作成のリーフレット
海上保安庁作成のリーフレット

(8) 医療保険の円滑な利用の確保

【施策番号19】

厚生労働省においては、犯罪被害者であることをもって保険診療を拒むことは法律上認められていないため、平成23年度及び25年度に、改めてその旨の医療機関への周知を徹底した。仮に保険診療の実施を拒まれる事例があれば、地方厚生局から当該医療機関に対して適切な指導を行うことにより、犯罪被害者の医療保険利用の利便性を確保することとしている。

※3 「○」は、第2次基本計画に盛り込まれている具体的施策の担当省庁以外の省庁が実施している施策であることを示す。

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