第1節 第3次犯罪被害者等基本計画の策定経緯
(1) 策定に向けた検討の枠組み
基本法において、内閣総理大臣は犯罪被害者等基本計画の案について閣議の決定を求めなければならないとされており(基本法第8条第3項)、その案の作成については、内閣府に特別の機関として設置されている犯罪被害者等施策推進会議(以下「推進会議」という。)の事務とされている(基本法第24条第2項第1号)。また、推進会議は、犯罪被害者等施策の実施状況を検証・評価等することとされている(基本法第24条第2項第2号)。
推進会議の下では、「基本計画策定・推進専門委員等会議の開催について」(平成22年2月15日推進会議決定)により、犯罪被害者等基本計画の見直しに当たり新たな計画に盛り込むべき事項の検討や犯罪被害者等施策の実施状況の評価の補佐を行う基本計画策定・推進専門委員等会議(以下「専門委員等会議」という。)が開催され、第3次基本計画の策定に向けた実務的な検討が行われた。
第3次基本計画は、このような枠組みの下で策定された。
(2) 第2次犯罪被害者等基本計画の見直しに関する要望意見の募集
基本法では、犯罪被害者等施策の適正な策定及び実施に資するため、犯罪被害者等の意見を施策に反映し、当該施策の策定過程の透明性を確保することとされている(基本法第23条)。
これを受けて、第3次基本計画の策定に当たっては、犯罪被害者等やその支援に携わる者を始めとして、広く国民一般から、第2次基本計画の見直しに関する要望意見を募集し、これを踏まえて検討が行われた。要望意見の募集方法としては、郵送やインターネットを通じて広く要望意見を募集するとともに、犯罪被害者団体、犯罪被害者等の援助を行う民間の団体からは、直接、要望意見を聴取した。その結果、70人及び56団体から約350項目の要望意見が寄せられた。
(3) 第2次犯罪被害者等基本計画の実施状況の評価
上述のほか、第3次基本計画の策定に当たっては、第2次基本計画の実施状況の評価を行って現行施策では不十分な事項や今後より一層充実すべき事項を明らかにし、これを踏まえた検討が行われた。
実施状況の評価は、5つの重点課題(<1>損害回復・経済的支援等への取組、<2>精神的・身体的被害の回復・防止への取組、<3>刑事手続への関与拡充への取組、<4>支援等のための体制整備への取組、<5>国民の理解の増進と配慮・協力の確保への取組)の各項目で評価を行い、第2次基本計画の計画期間内に明確な成果を上げることができなかったとされた施策が今後の課題として挙げられた。
具体的には、海外で被害に遭った犯罪被害者等に対する経済的支援については、「「犯罪被害給付制度の拡充及び新たな補償制度の創設に関する検討会」の取りまとめに従った施策の推進について」(平成26年3月26日推進会議決定)において、「与党と連携しつつ、具体化に向けた取組を進める。」とされたが、いまだ実現されておらず、引き続き、その具体化に向けた取組を推進していく必要があると評価された。また、カウンセリング等心理療法の費用負担については、国の支援・関与の下での全国展開を盛り込んだ「犯罪被害者の精神的被害の回復に資する施策に関する報告書」(27年4月2日犯罪被害者の精神的被害の回復に資する施策に関する研究会)が取りまとめられ、同報告書で示された提言を実現していく方向で一定の改善を図っていくこととなったが、提言内容を早期に実現するために予算を確保していく必要があると評価された。
第2次基本計画全体の評価としては、第2次基本計画に盛り込まれた具体的施策について、着実に推進が図られ、一定の成果をあげたものと評価できるとされた一方で、中長期的な支援を含めた更なる取組の強化及び被害が潜在化しやすく、そのニーズを把握することが困難な被害者に対する支援の検討が、今後の課題として指摘された。
(4) 策定に向けた検討状況
第2次基本計画の見直しについて寄せられた要望意見及び第2次基本計画の実施状況の評価等を踏まえて、第3次基本計画の策定に向けて重点的に検討すべき論点が抽出された。
第2次犯罪被害者等基本計画の見直しにおける主な論点
- 地方公共団体における犯罪被害者支援の充実促進
- 犯罪被害者等を支える気運の醸成
- 被害が潜在化しやすい犯罪被害者等への支援
- 被害児童に対する国費による専門的治療等
- 犯罪被害者等に対する中長期的支援
- 犯罪被害者等の安全・安心の確保
- 民間団体の活動促進
- 加害者の損害賠償責任の実現方策
また、第2次基本計画の見直しについて寄せられた要望意見については、その一つ一つへの対応について専門委員等会議において検討された。
なお、性犯罪及び配偶者等からの暴力(DV)の被害者への支援等については、先行して進められていた第4次男女共同参画基本計画の策定に向けた検討の場においても論点となっていたことから、同計画と第3次基本計画との整合性が図られるよう、専門委員等会議における検討は第4次男女共同参画基本計画の策定に向けた検討の結果も踏まえて行われた。
こうして、平成27年1月から同年9月まで月1回の頻度で計9回開催された専門委員等会議での論点等に関する活発な議論を経て、第3次基本計画案の骨子案が取りまとめられ、同年11月18日、推進会議において第3次基本計画案の骨子が決定された。この骨子について、同月19日から12月10日までの3週間、パブリックコメント(国民からの意見募集)が実施され、個人62名並びに地方公共団体及び民間の犯罪被害者団体、犯罪被害者等の援助を行う団体等の28団体から、内容が重複するものを除いて377件の意見が寄せられた。
そして、28年1月に開催された専門委員等会議において、パブリックコメントに寄せられた意見等を踏まえ、骨子に盛り込まれた具体的施策の修正等が行われ、その後、第3次基本計画の案が確定された。同年3月30日、推進会議で第3次基本計画の案が決定され、同年4月1日の閣議において、第3次基本計画が決定された。
平成26年 | |
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8月~9月 | 第2次基本計画の見直しに向け、国民から要望意見を募集 |
9月~10月 | 東京都内及び大阪府内において、犯罪被害者団体・犯罪被害者支援団体を対象とした要望意見聴取会を開催 |
平成27年 | |
1月26日 |
第14回基本計画策定・推進専門委員等会議
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2月17日 | 第15回基本計画策定・推進専門委員等会議
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3月16日 | 第16回基本計画策定・推進専門委員等会議
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4月28日 | 第17回基本計画策定・推進専門委員等会議
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5月26日 | 第18回基本計画策定・推進専門委員等会議
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6月30日 | 第19回基本計画策定・推進専門委員等会議
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7月27日 | 第20回基本計画策定・推進専門委員等会議
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8月24日 | 第21回基本計画策定・推進専門委員等会議
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9月29日 | 第22回基本計画策定・推進専門委員等会議
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11月18日 | 第12回犯罪被害者等施策推進会議
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11月~12月 | 第3次基本計画案骨子に対するパブリックコメント |
平成28年 | |
1月26日 | 第24回基本計画策定・推進専門委員等会議
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3月30日 | 第13回犯罪被害者等施策推進会議
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4月1日 | 第3次基本計画を閣議決定 |