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コラム4 地方公共団体の取組(性犯罪被害者支援のための連携強化事業)

内閣府においては,平成24年度「地域における犯罪被害者等支援の普及促進(ワークショップ)事業」を活用して,福島県,神奈川県及び大阪府の3府県との共催で,性犯罪被害者支援の強化,理解促進のための事業を集中的に実施しました。このワークショップ事業は,実施県による主体的な企画案を基に実施するものです。平成24年度に3府県から性犯罪被害者支援強化という企画が重なったことは偶然でしたが,内閣府としても,平成24年版犯罪被害者白書において性犯罪被害者に特化した基本計画上の施策を特集とした等,性犯罪被害者支援の機運を高めたいと思っていたこととも,ちょうど合致しましたし,それだけ各地で,性犯罪被害者支援体制が課題となっていることがうかがえました。

3府県の企画は,いずれも性犯罪被害者支援強化を目的するという意味では共通していたものの,各実施地域の支援体制の状況が異なっていたことを受け,以下のようにそれぞれの企画の力点が異なりました。

1 「性暴力被害者等支援強化のための研修及び広報事業」(福島県)

福島県では,性暴力被害者支援のためのネットワークを強化,充実するため,各機関と連携し施策に取り組んでおりますが,性暴力被害者については,支援従事者にもどのように対応すれば良いのか分からないなどの不安があることが分かりました。そこで,それらの不安を取り除くこと及び被害者等を取り巻く状況等について学び,スキルアップを図ることを目的に本事業を実施しました。

まず,研修会を,相談支援員向け,教育関係者向け及び医療従事者向けと分けて開催しました。また,被害者やその身近な相談相手となる可能性がある10代女性向けと,その保護者向けにも研修会を実施しました。それぞれ,性犯罪被害に関連して,被害者の心理,刑事事件捜査,医療従事者の役割など,多くの講師の先生方に御協力をいただきました。

加えて,支援の要点をまとめたリーフレットを各支援機関・教育機関向けと,医療関係者向けと2種類作成,配布しました。

リーフレット

福島県においては,平成25年4月1日から県警,産婦人科医会,民間支援団体が発足させた,SACRAふくしまという救援機関とともに,この事業の成果を生かしながら,さらなる支援の強化,充実に取り組んで参ります。

2 「性犯罪被害者支援強化のための研修及び広報事業」(神奈川県)

神奈川県においては,既に県,県警察及び民間支援団体が県産科婦人科医会と性犯罪被害者支援について協定を締結しているので,ネットワーク化がある程度進んでいた地域であるといえます。その上で,産婦人科医師,看護師等の医療従事者において,さらに適切な保健医療・福祉サービスが提供されるよう,この点に焦点を当てた研修を実施しました。研修での講師は,ともに内閣府の「性犯罪被害者ワンストップ支援センターの開設・運営の手引(仮称)作成委員会」の構成員であった,社会福祉法人恩賜財団母子愛育会総合母子保健センター愛育病院産婦人科部長の安達知子氏及びまつしま病院看護師長の小竹久美子氏で,性犯罪被害者の診療等において必要な配慮等についてご講演いただきました。

カード

ステッカー

また,性犯罪被害者が来院された際の参考としていただくため,性犯罪被害者への対応にあたって配慮すべき事項や神奈川県警における緊急避妊費用等の公費負担制度など各種支援等を掲載した,産婦人科医療機関向けの手引き等を作成,配布しました。

これに加え,実際に被害に遭った方が支援を受けやすい環境を醸成するため,被害者が手に取り,相談の電話をかけやすいよう,県・県警・民間支援団体で運営している「かながわ犯罪被害者サポートステーション」の電話番号等を記載したカードやステッカーを県内産婦人科医療機関,商業施設等に配布し,女性用化粧室等への配置をお願いしました。

3 「急性期性犯罪・性暴力被害者支援のための府民向け広報啓発事業」(大阪府)

大阪府では,全国に先駆けて,病院内に性暴力被害者支援に特化した相談センターが設置された「ワンストップ支援センター」である「性暴力救援センター・大阪」を軸に,警察その他の関係諸機関,支援へとつながる基盤ができていたことから,予めいろいろな方々に性犯罪被害の実態と支援体制について知っておいていただく機会とすることを目的に本事業が実施されました。 

一つは,「性暴力救援センター・大阪」代表の産婦人科医師加藤治子氏,同センターの相談センター機能を受け持つ「ウィメンズセンター大阪」代表高見陽子氏及び大阪府警察本部職員を講師とし,それぞれの支援の実情等について講義いただく府民向け講演会を開催しました。

また,身近な人に知っておいて欲しいこと,気をつけて欲しいことについて広報啓発する「もし被害にあったら,身近な人の被害を知ったら」というリーフレットを作成し,府民へ配布したほか,府内の高等学校や支援学校にも配布し,教育現場での活用を促しました。

本事業の遂行によって,上記のような講演会の実施等,企画事項の完了自体に留まらないメリットもありました。例えば,福島において,リーフレットの作成のために関係者間の話し合いが進み,今までまだ警察に届け出ていなかった被害者が,産婦人科に来院後,警察への通報を決めた場合,犯罪地を所轄する警察署署員が証拠採取のための用具などを持って到着するまで待たなければならなかったところ,各県警において,当該医院の最寄り署がとりあえずの対応をして本来の所轄署につなげる体制に変えていただくことで被害者及び産婦人科医の負担軽減が図られることとなりました。また,大阪府においても,学校に届けられたリーフレットの活用方法に関するアンケート結果からは,リーフレット配布以前は,教職員としても把握していなかった性犯罪被害者への医療上の支援や警察での対応等,将来的に,様々な情報を必要とする生徒・保護者を支える上での備えとして保管される状況がうかがえます。

他地域においても,それぞれの実情に応じ,取り入れられるところは取り入れて性犯罪被害者支援の充実を図って頂くため,事業結果の報告書を施策主管課に配布するとともに,HPでも情報提供しております。内閣府において,さらに,独自の工夫をこらしている地方公共団体等についての情報収集・共有を図って参ります。

リーフレット
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