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2 内部・外部との連携の状況

(1) 「犯罪被害者支援ハンドブック(仮称)」の作成・活用の促進

地域における犯罪被害者等支援のネットワークを構築するためには,犯罪被害者等支援に携わる各関係部局,関係機関,団体等が,それぞれどのような支援を提供しているかなどについて,認識を共有している必要がある。このため,内閣府において,平成20年に「犯罪被害者支援ハンドブック・モデル案」を作成・配布している。また,第2次基本計画にも,内閣府において犯罪被害者等への支援を行う際の留意点や関係機関・団体等の支援内容や連絡先等をまとめた「犯罪被害者支援ハンドブック(仮称,以下「ハンドブック」という。)」の作成・活用等について要請することが施策として掲げられており(第4-1-(1)ア,施策番号141),様々な機会を通じ,地方公共団体に対して働きかけているところである。

平成25年4月1日現在,47都道府県・政令指定都市においてハンドブックが作成されており,その内17都道府県・政令指定都市において,1回以上の改訂が行われている。また,作成に当たっては,制度改正等の反映を容易にするために差し替え式のファイル形式で作成したり,関係機関・団体の連絡先については毎年修正できるよう別冊にしたりするといった工夫を凝らしているところもある。

ハンドブック作成状況(累計)

また,作成されたハンドブックは,関係部局や都道府県内の市区町村,関係機関・団体等に配布されるとともに,配布時に研修会を開催するなど,地域における犯罪被害者等支援のネットワーク構築に活用されている。

差し替え式で作成されたハンドブックの例(兵庫県)

(2) 地域における関係諸機関・団体間の連携

地域における関係諸機関・団体間の連携については,第2次基本計画上,「警察において,法務省,文部科学省,厚生労働省及び国土交通省の協力を得て,各都道府県警察・警察署レベルで設置している知事部局,地方検察庁,弁護士会,医師会,臨床心理士会,犯罪被害者等の援助を行う民間の団体等をメンバーとする被害者支援連絡協議会及び被害者支援地域ネットワークについて,メンバー間の連携を図るとともに,相互の協力を強化し,生活,医療,裁判等多岐にわたる分野について,具体的な事案に応じた対応力の向上を図る」(第4-1-(10)施策番号154,第2章P69参照)ほか,検察庁(第4-1-(18)施策番号162,第2章P73参照),教育委員会(第4-1-(21)施策番号165,第2章P74参照),精神保健福祉センター,保健所等(第4-1-(29)イ施策番号176,第2章P76参照)のように,関係機関ごとに連携協力の充実・強化が掲げられている。

なお,「被害者支援連絡協議会」は,都道府県警察レベルでの関係機関・団体などの相互の連携を図る取組であり,「被害者支援地域ネットワーク」は,個々の事案において,犯罪被害者等の具体的なニーズを把握し,よりきめ細かな総合的支援を行うために,警察署を単位とした連絡体制である。平成24年4月1日現在,被害者支援連絡協議会が47全都道府県において,被害者支援地域ネットワークが1,126(全警察署数1,174)設置されている。

内閣府において,各都道府県施策主管課(被害者支援連絡協議会の構成メンバーとされている各都道府県知事部局)に対して,被害者支援連絡協議会の構成機関について調査を行ったところ,平成25年4月1日現在の状況は下記の表のとおり,都道府県警察及び施策主管課はもとより,地方検察庁,日本司法支援センター(法テラス),犯罪被害者支援団体が,全ての連絡協議会に共通する構成機関であった。児童相談所などの専門機関は,後述のように,連絡協議会そのものというよりは,特定の犯罪被害者等に特化した分科会等の形で,別途連携が図られている場合もあり得る。保護観察所,臨床心理士会,弁護士会,医師会などについても大多数の連絡協議会に参加している様子がうかがえるが,精神保健福祉センター,福祉総合相談センター,教育委員会等の参加は部分的にとどまっている様子がうかがえる。また,労働局,商工会議所が参加している連絡協議会もあるとのことであるが,犯罪被害者等の就労関係にも関係する機関・団体であり,他の地域においても,協議会とは別途であったとしても,連携をもたれることが望ましいと思われる。

今後とも,内閣府において,各地域でのより多面的な支援体制が構築されるよう,促していくこととする(なお,被害者支援連絡協議会への構成機関に関するより詳細な表は,P229資料9-4参照)。

被害者支援連絡協議会の構成機関(抜粋・平成25年4月1日現在, 47都道府県中の数値)
構成機関都道府県数
都道府県施策主管課47
都道府県関係部局47
都道府県警察47
地方検察庁47
日本司法支援センター(法テラス)47
犯罪被害者支援団体47
保護観察所46
臨床心理士会46
弁護士会44
医師会44
婦人相談所・男女共同参画センター・女性相談センター41
精神保健福祉センター39
児童相談所37
その他47

(3) 様々な連携体制構築への取組

連絡協議会のほかに,神奈川県では全国に先駆け,平成21年6月に県,警察,民間被害者支援団体の三者が一体となった「かながわ犯罪被害者サポートステーション」が開設されている。これに引き続き,埼玉県においても平成23年5月から県,警察,民間被害者支援団体の三者が,同一施設内に事務所を置き,窓口を一元化する取組を行っている。

さらに,地域によっては,性犯罪被害者,少年犯罪被害者,交通事故被害者等それぞれ固有の支援のニーズが認められる分野に特化した専門部会・分科会を上記連絡協議会等に設置したり,県や警察と県産婦人科医会等関係団体との間での協定締結や,大規模事故発生時における関係機関団体による支援体制の要領づくり,具体的な想定事例に基づいた支援シミュレーションの実施等,きめ細かな連携体制の構築を図っている。

内閣府においても,各地域の実情に応じた連携体制の構築,犯罪被害者等支援の広報啓発活動を支援するため,ワークショップ事業を進めているところ,平成24年度においては,福島県,神奈川県,大阪府において,性犯罪被害者支援の観点での連携体制強化について様々な事業を実施した(下記コラム4「地方公共団体の取組(性犯罪被害者支援のための連携強化事業)」参照)。これを契機に,それぞれの地域における支援の充実が図られるとともに,他地域におけるモデルともなることが期待される。

(4) 民間犯罪被害者支援団体との連携・支援状況

上記のような連携体制の中で,関係諸機関が個別に提供している支援等に犯罪被害者を「途切れることなく(基本法第3条第3項)」つなげる上で,民間の犯罪被害者支援団体の活動に負うところは大きい。もともと基本法に基づく国や地方公共団体の施策・取組に,民間から犯罪被害者等支援活動が先行してきたという経緯はもとより,社会への信頼を失った犯罪被害者等にとって,身近な人々の善意を感じることが回復の何よりもの手助けとなるためである。他方,民間犯罪被害者支援団体の活動は,これを担う個々人の努力に委ねられていることも大きく,団体間・地域間の差や,支援としての安定性に欠ける面も見受けられ,現在,民間支援団体においても,体制作りが進められているところである(P21コラム5「「犯罪被害者としての私」と「犯罪被害者支援の実情と今後の課題」」参照)。

第2次基本計画においても,犯罪被害者等支援体制の充実を図る上で,民間支援団体の活動の重要性にかんがみ,内閣府において,地方公共団体に対し犯罪被害者支援団体の実態を把握し連携の強化を図るよう要請することが施策として掲げられている(第4-3-(3)施策番号209,第2章P89参照)ほか,「V 重点課題に係る具体的施策―第4 支援等のための体制整備への取組―3 民間の団体に対する援助」として9施策が掲げられているところである(その他の施策の実施状況に関しては,第2章P86以下参照)。

地方公共団体においても,平成25年4月1日現在,下記のように,様々な形で民間の犯罪被害者支援団体との連携を強める取組を進めている。

特に,民間被害者支援団体の財政基盤の安定の上で地方公共団体の果たしている役割は大きく,補助金や委託料等(各都道府県警察により措置されている予算を含む。)のほか,施設の事務所等としての無償又は低額での提供,研修会への講師の派遣・手配等の支援が見受けられた。

犯罪被害者支援団体との連携のための取組状況(平成24年度)

犯罪被害者支援団体への援助の状況(平成24年度)
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