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2節 支援等のための基盤・体制整備状況

「犯罪被害者等のための施策は,被害の状況及び原因,犯罪被害者等が置かれている状況その他の事情に応じて適切に(基本法第3条第2項)」,また,「犯罪被害者等が,被害を受けたときから再び平穏な生活を営むことができるようになるまでの間,必要な支援等を途切れなく受けることができるよう(同条第3項)」講ぜられることが期待されている。

そのため,国,地方公共団体,日本司法支援センターその他の関係機関,犯罪被害者等の援助を行う民間の団体その他の関係する者は,犯罪被害者等のための施策が円滑に実施されるよう,「相互に連携を図りながら協力しなければならない(基本法第7条)」。そして,これを実現するために,各地方における支援体制の整備も進められてきたところである。

1 地方公共団体における窓口

(1) 確定・設置状況

内閣府においては,第1次基本計画及び第2次基本計画を通じて,犯罪被害者等施策に関する施策主管課の確定と,当該地方公共団体における犯罪被害者等に関する適切な情報提供を行う総合的な対応窓口(以下「総合的対応窓口」という。)の設置を地方公共団体に対して働きかけてきた。

ア 都道府県・政令指定都市における状況

都道府県・政令指定都市においては,既に平成24年4月1日時点において全ての地域において施策主管課の確定及び総合的窓口の設置がなされている。

なお,平成25年4月1日現在,都道府県・政令指定都市における犯罪被害者等施策主管課は,いずれも他の関連施策の担当課も兼務しており,例えば84%の犯罪被害者等施策主管課は,地域安全・安心(防犯)も兼ねている。そのほか,兼務の多い施策分野としては,多い順に交通安全69%,消費者24%,人権18%,男女共同参画16%等がある。いずれも重複する目標がうかがえる関連分野であり,課として兼務していない場合であるとしても,かかる分野を担当する他部局も含めた庁内での情報共有・連携が図られることが望ましい。

イ 市町村及び特別区における状況

市町村及び特別区(以下「市区町村」という。)における状況としては,平成25年4月1日現在,全国1,722市区町村中,1,643市区町村(約95%)において施策主管課が確定され,1,188市区町村(約69%)において総合的対応窓口が設置されている。

都道府県内の全ての市区町村において施策主管課及び総合的対応窓口双方が確定・設置されているのは,秋田,山形,栃木,群馬,新潟,富山,石川,福井,滋賀,京都,兵庫,和歌山,島根,岡山,山口,長崎,熊本,鹿児島の18地域である。傾向として,施策主管課を設けている率の方が高く,全ての市町村において施策主管課が設置されているにもかかわらず,総合的対応窓口の設置率は50%にも満たない地域も少なくない。

(2) 適切な対応のための取組

総合的対応窓口の設置は,犯罪被害者等が求める情報を得やすくするための取組ではあるが,犯罪被害者等がそれと明示せずとも,市区町村における住民届や国民健康保険等,実際に地域住民として訪れることとなる各種窓口において,無用な二次被害を与えず,適切な対応がなされていることが望ましい。

この観点から,都道府県・政令指定都市において,二次被害防止のためのマニュアルの備付けや市区町村職員も含め,各種窓口担当者に対する研修会の開催などの取組が行われている。

さらに,都道府県施策主管課において,他の部局や市区町村の施策主管課との連携のために,庁内連絡会議の開催,市区町村担当課長会議や市区町村の担当者に対する研修会の開催,都道府県独自のメールマガジンの発行などの取組が行われている。

2 内部・外部との連携の状況

(1) 「犯罪被害者支援ハンドブック(仮称)」の作成・活用の促進

地域における犯罪被害者等支援のネットワークを構築するためには,犯罪被害者等支援に携わる各関係部局,関係機関,団体等が,それぞれどのような支援を提供しているかなどについて,認識を共有している必要がある。このため,第2次基本計画においても,犯罪被害者等への支援を行う際の留意点や関係機関・団体等の支援内容や連絡先等をまとめた「犯罪被害者支援ハンドブック(仮称,以下「ハンドブック」という。)」の作成・活用が要請されているところである。

平成25年4月1日現在,47都道府県・政令指定都市においてハンドブックが作成されており,その内17都道府県・政令指定都市において,1回以上の改訂が行われている。また,作成に当たっては,制度改正等の反映を容易にするために差し替え式のファイル形式で作成したり,関係機関・団体の連絡先については毎年修正できるよう別冊にしたりするといった工夫を凝らしているところもある。

また,作成されたハンドブックは,関係部局や都道府県内の市区町村,関係機関・団体等に配布されるとともに,配布時に研修会を開催するなど,地域における犯罪被害者等支援のネットワーク構築に活用されている。

(2) 地域における関係諸機関・団体間の連携

地域における関係諸機関・団体間の連携については,第2次基本計画上,「警察において,法務省,文部科学省,厚生労働省及び国土交通省の協力を得て,各都道府県警察・警察署レベルで設置している知事部局,地方検察庁,弁護士会,医師会,臨床心理士会,犯罪被害者等の援助を行う民間の団体等をメンバーとする被害者支援連絡協議会及び被害者支援地域ネットワークについて,メンバー間の連携を図るとともに,相互の協力を強化し,生活,医療,裁判等多岐にわたる分野について,具体的な事案に応じた対応力の向上を図る」(第4-1-(10)施策番号154)など関係機関ごとに連携協力の充実・強化が掲げられている。

なお,「被害者支援連絡協議会」は,都道府県警察レベルでの関係機関・団体などの相互の連携を図る取組であり,「被害者支援地域ネットワーク」は,個々の事案において,犯罪被害者等の具体的なニーズを把握し,よりきめ細かな総合的支援を行うために,警察署を単位とした連絡体制である。

平成24年4月1日現在,被害者支援連絡協議会が47全都道府県において,被害者支援地域ネットワークが1,126(全警察署数1,174)設置されている。

内閣府において各都道府県施策主管課(被害者支援連絡協議会の構成メンバーとされている各都道府県知事部局)に対して,被害者支援連絡協議会の構成機関について調査を行ったところ,平成25年4月1日現在,都道府県警察及び施策主管課はもとより,地方検察庁,日本司法支援センター(法テラス),犯罪被害者支援団体が,全ての連絡協議会に共通する構成機関であった。児童相談所などの専門機関は,連絡協議会そのものというよりは,特定の犯罪被害者等に特化した分科会等の形で,別途連携が図られている場合もあり得る。保護観察所,臨床心理士会,弁護士会,医師会などについても大多数の連絡協議会に参加している様子がうかがえるが,精神保健福祉センター,福祉総合相談センター,教育委員会等の参加は部分的にとどまっている様子がうかがえる。

(3) 様々な連携体制構築への取組

連絡協議会のほかに,神奈川県では全国に先駆け,平成21年6月に県,警察,民間被害者支援団体の三者が一体となった「かながわ犯罪被害者サポートステーション」が開設されている。これに引き続き,埼玉県においても平成23年5月から県,警察,民間被害者支援団体の三者が,同一施設内に事務所を置き,窓口を一元化する取組を行っている。

さらに,地域によっては,性犯罪被害者,少年犯罪被害者,交通事故被害者等それぞれ固有の支援のニーズが認められる分野に特化した専門部会・分科会を上記連絡協議会等に設置したり,県や警察と県産婦人科医会等関係団体との間での協定締結や,大規模事故発生時における関係機関団体による支援体制の要領づくり,具体的な想定事例に基づいた支援シミュレーションの実施等,きめ細かな連携体制の構築を図っている。

内閣府においても,各地域の実情に応じた連携体制の構築,犯罪被害者等支援の広報啓発活動を支援するため,ワークショップ事業を進めているところ,平成24年度においては,福島県,神奈川県,大阪府において,性犯罪被害者支援の観点での連携体制強化について様々な事業を実施した。

(4) 民間犯罪被害者支援団体との連携・支援状況

上記のような連携体制の中で,関係諸機関が個別に提供している支援等に犯罪被害者等を「途切れることなく(基本法第3条第3項)」つなげる上で,民間の犯罪被害者支援団体の活動に負うところは大きい。もともと基本法に基づく国や地方公共団体の施策・取組に,民間から犯罪被害者等支援活動が先行してきたという経緯はもとより,社会への信頼を失った犯罪被害者等にとって,身近な人々の善意を感じることが回復の何よりもの手助けとなるためである。他方,民間犯罪被害者支援団体の活動は,これを担う個々人の努力に委ねられていることも大きく,団体間・地域間の差や,支援としての安定性に欠ける面も見受けられ,現在,民間支援団体においても,体制作りが進められているところである。

地方公共団体においても,平成25年4月1日現在,下記のように,様々な形で民間の犯罪被害者支援団体との連携を強める取組を進めている。

特に,民間被害者支援団体の財政基盤の安定の上で地方公共団体の果たしている役割は大きく,補助金や委託料等(各都道府県警察により措置されている予算を含む。)のほか,施設の事務所等としての無償又は低額での提供,研修会への講師の派遣・手配等の支援が見受けられた。

犯罪被害者支援団体との連携のための取組状況(平成24年度)

犯罪被害者支援団体への援助の状況(平成24年度)
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