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第1章 特集「地域における被害者支援の広がり」

犯罪被害者等基本法(以下「基本法」という。)は,「国民の誰もが犯罪被害者等となる可能性が高まっている今こそ,犯罪被害者等の視点に立った施策を講じ,その権利利益の保護が図られる社会の実現に向けた新たな一歩を踏み出さなければならない(基本法前文)」として,平成16年12月に制定された。

その後,基本法及び平成17年12月に策定された犯罪被害者等基本計画(以下「第1次基本計画」という。)の下,また現在は,第2次犯罪被害者等基本計画(平成23年3月閣議決定。以下「第2次基本計画」という。)に沿って,関係府省において,各種施策を実施してきているところである。

加えて,国との適切な役割分担を踏まえて,「その地域の状況に応じた施策を策定し,及び実施する責務を有する(基本法第5条)」地方公共団体においても,犯罪被害者等施策に特化した条例・指針等の制定,施策担当部局の設置,犯罪被害者等への総合的対応窓口の設置その他具体的施策の実施など,その取組を広げてきている。

そして,現実の犯罪被害者等が再び平穏な生活を営むことができるようになるためには,当該犯罪被害者等が,各種支援制度の情報を適切な時期に得て,適切な支援提供主体へ円滑につながることができるよう,国,地方公共団体,関係機関等の連携体制の構築についても,進められてきているところである。

他方,国や地方公共団体が今後さらに犯罪被害者等施策を実施・推進していく上でも,「支援」する問題としてだけではなく,仮に自らが犯罪被害に遭った場合の備えの問題として犯罪被害者等施策についての国民の関心を深めることが望ましく,本特集においては,各地域における被害者支援の現状について紹介する。

1節 理解の増進等への取組状況

国民の理解と協力がなければ,何よりも,犯罪被害者等の日々の生活にとって一番支えとなるはずの,身近な周囲の人からの尊重や配慮が期待できない。また,かかる状況においては,国や地方公共団体が実施する犯罪被害者等施策の効果も十分に発揮されないと考えられる。

そのため,「国及び地方公共団体は,教育活動,広報活動等を通じて,犯罪被害者等が置かれている状況,犯罪被害者等の名誉又は生活の平穏への配慮の重要性等について国民の理解を求めるよう必要な施策を講ずるもの(基本法第20条)」とされている。また,これを実現すべく,第2次基本計画において,「V 重点課題に係る具体的施策―第5 国民の理解の増進と配慮・協力の確保への取組」として,28の施策が掲げられている。

犯罪被害者週間ポスター

(1) 内閣府における犯罪被害者等の置かれた状況等について国民理解の増進を図るための啓発事業の実施

内閣府において,犯罪被害者週間にあわせ,東京のほか,長野県,長崎県,大阪市及び岡山県(開催順)において啓発事業を開催し,その結果を内閣府犯罪被害者等施策ホームページに掲載するとともに,報告書として関係機関へ配布した。

また,地方自治体と共催した「ワークショップ事業」としても,それぞれの事業の趣旨に沿った啓発事業を実施した。

長野大会
長崎大会
大阪大会
岡山大会

(2) 地方公共団体における犯罪被害者等の置かれた状況等への理解の増進を図るための啓発事業の実施

内閣府において,地方公共団体職員研修の場などを通じ,地方公共団体に対し,犯罪被害者等への理解の増進を図るための啓発事業を実施するよう要請しているところ,第1次基本計画下で各施策が開始された平成18年度に,独自に講演会やシンポジウムを企画した都道府県・政令指定都市は7地域にとどまっていたが,平成24年度には40地域まで増加している。

啓発活動の取組としては,従来,講演会・シンポジウムを開催することが中心だったが,近年,様々な分野での啓発月間・週間も増えている中,そもそも「犯罪被害者」をテーマとする講演会・シンポジウムに来場していただくまでの関心を高める広報活動や,講演会の場や形に限定されない啓発活動の在り方も問われている。その観点では,プロサッカーリーグ戦会場でのブース出展(埼玉県),犯罪被害者等や犯罪被害者支援団体と連携して市町村庁舎を巡回するパネル展の開催(栃木県),県立図書館での啓発展示(岡山県,熊本県),JRや地下鉄等の車内や駅での啓発キャンペーン・広告等(岩手県,埼玉県,静岡県,横浜市,大阪府・大阪市・堺市),市民向けボランティア入門講座等の開講(名古屋市)等,各地の工夫が見られた。

年度ごとの講演会・シンポジウムの開催状況
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