警察庁 National Police Agency

警察庁ホーム  >  犯罪被害者等施策  >  公表資料の紹介:犯罪被害者白書  >  平成24年版 犯罪被害者白書  >  コラム4 犯罪被害給付制度発足から30年を迎えて

[目次]  [戻る]  [次へ]

コラム4 犯罪被害給付制度発足から30年を迎えて

○ 警察の犯罪被害者等支援(犯罪被害給付制度発足後30年のあゆみ)

警察による犯罪被害者等支援施策は、犯罪被害給付制度による経済的援助から始まりました。

犯罪被害者への公的な経済的支援制度については、犯罪被害者の遺族を始めとする様々な方々がその実現に向けた努力をしてきましたが、こうした運動が大きな関心を呼ぶこととなったのは、昭和49年8月に発生した三菱重工ビル爆破事件以降です。何の罪もない方々が大きな被害を被ったこの事件においては、労働者災害補償保険制度に基づく給付を受ける方と、全くこうした給付が受けられない方の不均衡が生じる結果となりました。この事件をめぐり、犯罪被害給付制度の必要性が論議され、警察庁所管の法律として、昭和55年5月1日に「犯罪被害者等給付金支給法」が制定され、昭和56年1月1日から施行されることとなりました。

こうして、犯罪被害者に対する経済的支援が開始されましたが、我が国における被害者支援の大きな転機になったのが、平成3年に開催した「犯罪被害給付制度発足10周年記念シンポジウム」であり、同シンポジウムにおいて被害者の精神的援助の必要性が指摘されました。そして、平成7年3月に発生した地下鉄サリン事件を契機に、犯罪被害者の置かれた悲惨な状況が広く国民に認識されたことに伴い、被害者に対する総合的支援を求める社会的気運が急速に高まりました。特に、警察は、事件発生直後から被害者に接し、その後も密接に関わり合う機関であることから、被害の回復・軽減、再被害の防止など犯罪被害者支援施策の実施について、大きな役割を果たすことが求められたのです。こうした声を受け、警察庁では、平成8年2月、各種施策を総合的に推進するに当たっての基本方針を取りまとめた「被害者対策要綱」を制定し、これにより、被害者のための活動は、被害者の人権を守るという警察の本来の業務として明確に位置付けられることとなりました。さらに同年5月には、長官官房給与厚生課に犯罪被害者対策室(平成20年7月、「犯罪被害者支援室」に改称)を設置しました。

平成13年4月には、犯罪被害者等給付金支給法を抜本的に改正しました。本改正においては、警察本部長等の援助の措置、犯罪被害者等早期援助団体の指定など、犯罪被害者等の総合的支援に関する規定を設けたことから、法律の題名を「犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律」と改めました。また、重傷病給付金を新設したほか、障害給付金の支給対象となる障害等級の拡充や遺族給付金、障害給付金の給付基礎額の大幅な引上げを図るための法令の改正を行いました。さらに、警察本部長等の援助の措置の適切かつ有効な実施を図るため、国家公安委員会は、「警察本部長等による犯罪の被害者等に対する援助の実施に関する指針」を定め、平成14年4月から施行されました。

平成16年12月、犯罪被害者等基本法が成立し、平成17年12月、同法に基づき「犯罪被害者等基本計画」が閣議決定されるに至り、国を挙げて犯罪被害者等支援に取り組むための礎が構築されました。また、この基本計画に「犯罪被害給付制度における重傷病給付金の支給範囲等の拡大」が盛り込まれたことを受け、重傷病給付金の支給要件の拡充、支給対象期間の延長や、親族の間で行われた犯罪について支給制限の緩和を行う政令等の改正がなされ、平成18年4月から施行されました。

さらに、この基本計画に基づき開催された「経済的支援に関する検討会」などにおける「最終とりまとめ」を踏まえ、平成13年以来の大きな法令の改正を行い、平成20年4月に改正法が成立しました。本改正においては、まず、民間の団体の自主的な活動を促進するための規定を整備するなど、犯罪被害者等基本法の理念にのっとり、従来からの法の目的である犯罪被害等の早期の軽減に加えて、犯罪被害者等が再び平穏な生活を営むことができるよう支援することを目的とする措置について規定し、これに伴い、法律の題名を「犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律」と改めました。また、休業損害を考慮した重傷病給付金の額の加算、重度後遺障害者に対する障害給付金の額の引上げ、生計維持関係のある遺族に対する遺族給付金の引上げなど給付を拡充するための法令の改正を行いました。さらに、警察本部長等が行う犯罪被害者等に対する援助及び民間犯罪被害者等の支援団体の自主的な活動を促進するための措置に関して、適切かつ有効な実施を図るため、国家公安委員会は、「犯罪被害者等の支援に関する指針」を定め、同年10月から施行されました。

このように、警察の犯罪被害者等支援は時代の変化とともに、発展を遂げてきており、現在も、「第2次犯罪被害者等基本計画」などに則り、引き続き組織を挙げて、犯罪被害者等支援に取り組んでいます。

警察における被害者支援の経緯

○ 「全国被害者支援フォーラム 2011」の開催

重大な犯罪により心身に大きな被害を受けた犯罪被害者や遺族に対する途切れのない適切な支援が行われるよう、支援関係者の知見・技能の向上及び緊密な連携強化、さらには広く国民に犯罪被害者支援への理解と共感の気運を増進することを目的として、平成8年度から毎年、全国被害者支援フォーラムが開催されており、全国の民間被害者支援団体、被害者学研究者、弁護士、国・地方行政の関係者、ボランティアなど、約500名が参加する我が国最大の犯罪被害者支援に関する会議として回を重ねています。

平成23年は、平成4年3月、東京医科歯科大学難治疾患研究所内に、当時東京医科歯科大学教授であった山上晧氏(現在、認定特定非営利活動法人全国被害者支援ネットワーク理事長)が「犯罪被害者相談室」を設立し、我が国初めての民間被害者支援団体が誕生してから概ね20年、犯罪行為により不慮の死を遂げるなどした子弟などに対する奨学金の給与や支援金の支給事業等を行うことにより、犯罪被害者等支援に大きく貢献してきた犯罪被害救援基金設立から30年(昭和56年5月設立)、犯罪被害給付制度発足から30年(昭和56年5月設立)という大きな節目を迎えることとなりました。そこで、平成23年度のフォーラム「全国犯罪被害者支援フォーラム 2011」は、認定特定非営利活動法人全国被害者支援ネットワーク、日本被害者学会、公益財団法人犯罪被害救援基金及び警察庁の共催により、平成23年9月、「犯罪被害者支援の過去・現在・未来~民間被害者支援20年、犯罪被害救援基金・犯罪被害給付制度30年、第2次犯罪被害者等基本計画の策定を契機に今後の展望を拓く」をテーマとして、秋篠宮同妃両殿下のご臨席を仰ぐとともに、国家公安委員会委員長、日本弁護士連合会会長をご来賓に迎え、開催されました。

フォーラムでは、国内有識者による講演やアメリカ及び韓国から招いた心理療法士や検察官による講演のほか、被害者遺族の方々が、事件の概要、事件後に体験した精神的症状や苦痛、経済的問題、民間支援団体による支援の概要、現在の状況や心境、被害者支援に関する期待や要望についてそれぞれ述べ、被害者支援の過去・現在・今後の展望について討議するパネルディスカッション「犯罪被害者の歩み」などが行われました。

全国犯罪被害者支援フォーラム 2011
[目次]  [戻る]  [次へ]
警察庁 National Police Agency〒100-8974 東京都千代田区霞が関2丁目1番2号
電話番号 03-3581-0141(代表)