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コラム3 地方公共団体における犯罪被害者等施策の取組 岡山県下における被害者支援条例の広がり

岡山県内では、平成24年3月末までに県及び県下27市町村の全てにおいて犯罪被害者等の支援に特化した条例が制定されており、同年4月には県内すべての自治体において施行されました。県・市町村が連携したこうした取組は全国でも初めてのことです。

1 条例制定の経緯

岡山県での被害者支援の本格的な取組は、平成18年4月に知事部局に総合相談窓口を設置したことにはじまり、平成19年3月に県の取り組むべき施策をとりまとめた「岡山県犯罪被害者等の支援に関する取組指針」を策定し、総合的かつ計画的に施策を実施してきました。その後、刑事裁判における被害者参加制度や裁判員制度が発足するなど、犯罪被害者等を取り巻く環境が大きく変化した状況を受け、条例制定についての検討を続けた結果、社会全体で犯罪被害者等の支援を推進していくためには、行政機関における取組だけではなく、県民や事業者なども含めた県民総ぐるみで、犯罪被害者等の置かれる立場やその支援の重要性を理解し、適切な支援を実施していくことが必要であるとして、平成23年3月に犯罪被害者等の支援に特化した県条例を制定し、同年4月からの施行に至りました。

また、県内の市町村では、県庁所在地であり政令指定都市でもある岡山市が平成21年1月から条例の必要性や支援施策について検討を進めていましたが、民間支援団体からの要望や市議会での議論を踏まえ、平成22年12月に全国の政令指定都市としては初めて、また県内の自治体の中でも最も早く条例を制定しました。更に、この間、民間支援団体は、総社市へ同様の要望活動を行うとともに、県の市長会や町村会にも働きかけ、賛同を得るなかで県下全市町村における条例制定の気運が高まりました。

市町村担当課長会議
市町村担当課長会議

こうして、平成23年4月から岡山県、岡山市、総社市において、同時に支援条例が施行され、総社市では、被害者に対し経済的支援を行うための支援金に関する条例も施行されました。また、これらの動きに呼応して、平成23年の6月以降、県内のその他の市町村でも相次いで条例が制定され、その結果、平成24年3月末には、全国的にも初めて、県内全ての自治体で被害者支援のための条例の制定が実現したのです。

このような全県的な条例制定の背景には、現実の被害者救済を通じ、一般的な行政部門における支援の重要性を実感していた民間支援団体の地道な活動と、それを積極的に後押しした県警察の協力がありました。

2 現在の取組

平成23年度には、こうした行政での気運の高まりを全県的に波及させ、県民の方々の犯罪被害者等に対する理解をより一層深めるため、県と警察、教育委員会が共催し、内閣府の協力も得て、「犯罪被害者等支援 県民のつどい」を開催したほか、社会全体で犯罪被害者等の支援を推進する気運を醸成するため、犯罪被害者週間を中心に、民間支援団体と協力して各種の啓発事業を実施しました。また、市町村や県警察、被害者支援に関する専門家等との連絡会議等を通じ、途切れのない支援を実施できるよう連携強化にも努めているところです。

加えて、県下全市町村での条例制定や総合相談窓口の設置により、今後、行政機関等において被害者等と接する機会の増加が予想されることから、不用意な言動等による二次的被害を生じさせないよう、行政職員の資質向上を目指して職員研修会を実施しました。この研修会では、県・市町村で犯罪被害者等の施策を担当する職員のみならず、各種相談や手続き等で直接住民の方と接する機会のある窓口対応の職員のほか、ハローワークや税務署など国の行政機関や年金事務所など初めて「犯罪被害者」という言葉に触れる職員等の幅広い参加が得られ、行政機関における理解の輪を広げています。

また、県条例には、被害者等への配慮や支援に関する企業等の事業者の責務についても定めていることから、知事部局において企業等が参加する会議等の場を通じ、犯罪被害回復のための休暇制度の周知を図るとともに、県警察においては、国の地域活性化交付金(住民生活に光をそそぐ交付金)を活用し、犯罪被害者の置かれる状況や雇用の安定等について、民間支援団体が直接、事業者を訪問して意識啓発を働きかける取組も実施しています。

更に、若い世代への理解を促進する取組として、県と警察、教育委員会、民間支援団体の協働により、犯罪被害者遺族等が中学校や高等学校などに赴き、自らの体験談等を通じて、子どもたちに命の大切さや規範意識等を語り継ぐ「心と命の教育活動」に全国的にも最も早くから取り組んでいるところであり、平成23年度においても19校、延べ約9,200名に、またこれまでの累計で延べ約42,500名の子どもたちを対象に啓発を図ってきたところです。

犯罪被害者等支援 県民のつどい
犯罪被害者等支援 県民のつどい
犯罪被害者週間啓発パネル展示
犯罪被害者週間啓発パネル展示
犯罪被害者等施策関係職員研修会
犯罪被害者等施策関係職員研修会
心と命の教育活動
心と命の教育活動

3 今後の展開

このように条例制定やそれを契機とした取組は県下で少しずつ前進しているところですが、一方で、医療機関等と被害者支援に当たる関係機関との連携・協力や、性犯罪被害者に対する負担の軽減など、依然としてその課題は少なくありません。また、犯罪被害者等の問題は、凶悪な事件によって一部の人々だけ起こりうる特別なものではなく、現実に岡山県内で毎年100人以上の死者をもたらす交通事故も含め、地域に暮らす誰もが被害者等となる可能性を持っていること等を県民の皆さん一人ひとりに伝えていくことが今後も必要となります。

現在、県下で一斉に条例が施行されていますが、その取組はまだ緒に就いたばかりであり、この被害者支援の気運を条例制定だけで終わらせることなく、実際に犯罪被害に遭われた方に真に実質的な援助が及ぶことが何よりも重要です。

岡山県では、県条例と併せて平成23年3月に策定した「第二次岡山県犯罪被害者等の支援に関する取組指針」に基づき、具体的な施策を実施していくこととしており、幅広い啓発活動や子どもたちに命の大切さを伝える教育活動、民間支援団体や関係機関等と連携した途切れのない対応等これまでに実施してきた取組を今後とも地道にかつ着実に実施するとともに、新たな課題等に対しても適切に対応していきます。

県下の自治体における条例制定の広がりがまさにそうであったように、犯罪被害者等への一連の取組が実を結び、一つのムーブメントとして県下に輪が広がるよう、引き続き、県・県警察・市町村や関係機関が連携の上、県民総ぐるみの取組を推進し、誰もが安全で安心して暮らせる岡山県づくりを目指していきます。

岡山県犯罪被害者等支援条例
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