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第1節 損害回復・経済的支援等への取組


コラム3:オウム真理教犯罪被害者等を救済するための給付金の支給に関する法律について


平成20年6月、地下鉄サリン事件等のオウム真理教による犯罪行為の被害者又はその遺族に対して国から給付金を支給することを内容とした「オウム真理教犯罪被害者等を救済するための給付金の支給に関する法律」案が第169回通常国会に議員立法として提出され、衆参両院の全会一致で可決・成立し、同年12月18日より施行されています。

ここでは、本法の概要、施行状況等について説明します。

第1 概要

1 趣旨

本法は、

○ 地下鉄サリン事件等の無差別大量の殺傷行為が悪質重大なテロリズムであり、これにより不特定多数の者が被った惨禍が未曾有のものであること

○ オウム真理教がテロ実行能力を形成する過程でこれに立ち向かった者やその家族が、教団の発展を阻害する者として殺傷行為等の犠牲となっていること

等を踏まえ、国において被害者等の救済を図ることがテロリズムと戦う我が国の姿勢を明らかにすることにかんがみ、これらの被害者等に対して給付金を支給するものです。

2 オウム真理教犯罪被害者等給付金

オウム真理教による対象犯罪行為(次の表のとおり)により、

○ 死亡した者の遺族

○ 障害が残った者(当該犯罪行為によらないで死亡したときは、その遺族)

○ 傷病を負った者(同上)

に対して、国からオウム真理教犯罪被害者等給付金が支給されます(法第2条第1項及び第3条第2項)。

〈対象犯罪行為〉

○ 国の統治機構を破壊する等の主義の下に行われた悪質かつ重大なテロ行為

・ 松本サリン事件(平成6年6月27日~28日にかけて発生)

・ 地下鉄サリン事件(平成7年3月20日発生)

○ オウム真理教がテロ実行能力を形成する過程でこれに立ち向かった方々が犠牲となったもの

・ 弁護士及びその妻子の殺害事件(平成元年11月4日発生)

・ サリンを使用した弁護士の殺人未遂事件(平成6年5月9日発生)

・ VX を使用した殺人未遂事件(平成6年12月2日発生)

・ VX を使用した殺人事件(平成6年12月12日発生)

・ VX を使用した殺人未遂事件(平成7年1月4日発生)

・ 公証人役場事務長の逮捕監禁致死事件(平成7年2月28日~3月1日発生)

3 給付金の額

被害者が受けた被害の類型に応じて、次の額が支給されます(法第5条第1項)。

<1> 死亡 2,000万円
<2> 障害 (注)  
イ 介護を要する障害(障害等級第1・2級で常時又は随時介護を要するもの) 3,000万円
ロ 重度の障害(同上第1~3級で、イ以外のもの) 2,000万円
ハ その他の障害(同上第4~14級) 500万円
<3> 傷病(死亡・障害をもたらすものを除く。)  
イ 重傷病(通院加療1月以上の傷病) 100万円
ロ 重傷病以外の傷病(通院加療1日以上1月未満の傷病) 10万円

(注)障害等級は、オウム犯罪被害者等を救済するための給付金の支給に関する法律施行規則(平成20年国家公安委員会規則第20号)の別表に定められています。

4 給付金の申請

給付金の支給を受けようとする者は、住所地を管轄する都道府県公安委員会に申請を行い、その公安委員会による裁定を受けなければなりません(法第6条第1項)。また、申請の受付は、各都道府県警察の本部又は警察署で行っていましたが、平成22年12月17日までで終了しました。ただし、やむを得ない理由により、この期間内に申請をすることができなかったときは、その理由のやんだ日から6月以内に限り、申請することができます(法第6条第3項)。

▼給付金支給までの流れ
給付金支給までの流れの図

第2 法の施行状況

1 申請・裁定・支給状況

平成23年3月31日現在、警察において把握している被害者等約6,600人のうち、約99%に対しこの制度について教示し、約92%から申請を受け付け、申請済みの被害者等の約99.6%に対して総額約29億9,000万円の給付金を支給しています。

▼被害類型別申請・裁定・支給状況(平成23年3月31日現在)
被害類型(給付額) 申請 裁定 支給
死亡(2,000万円) 25件 25件 25件
障害 要介護(3,000万円) 6件 6件 6件
重度(2,000万円) 5件 1件 1件
その他(500万円) 125件 125件 124件
傷病 重傷病(100万円) 1,258件 1,211件 1,208件
その他(10万円) 4,665件 4,702件 4,699件
合計 6,084件 6,078件
(うち不支給8件)
6,062件
(総額:299,080万円)

※1 申請、裁定、支給それぞれの件数の差は手続中であることによる。

※2 申請、裁定、支給については、それぞれ同一被害者の遺族申請3件を含む。

2 周知措置

(1) 各種広報の実施

警察庁において作成した広報用ポスターを市役所、町役場等の公共施設、協力いただいた民間施設等に広く掲示するとともに、広報用パンフレットを各都道府県警察の本部、警察署等の警察施設に備え付けることにより、本給付金の制度について周知しています。また、都道府県警察においては、パンフレット等を街頭で配布する、テレビ・ラジオのスポット広報を活用するなど、各種の広報活動を積極的に実施しました。

(2) 個別通知の実施

警察庁において、本法に基づき公務所等から提供を受けた被害者に関する資料に登載されている被害者又はその遺族に対して、本給付金の制度に関する案内文及び広報用パンフレットを郵送することにより、当該制度につき個別に通知したほか、外務省や各国大使館等の協力を得て、海外在住の被害者に対しても本給付金の制度教示を実施しました。

(3) 都道府県警察による申請の呼びかけ

おいて対象犯罪行為により死亡したとされている被害者の遺族及び障害が残ったとされている被害者に対して個別に訪問し、本給付金の制度について説明を行ったほか、申請期限1か月前の平成22年11月17日に全国410か所で、警察職員、被害者支援団体等約3,600人体制でチラシ配布等の一斉の広報キャンペーンを実施するなど、より多くの被害者等が本法により救済されるよう申請を呼びかけました。

チラシ配布の写真

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