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第2次犯罪被害者等基本計画(平成23年3月25日閣議決定)


第2 精神的・身体的被害の回復・防止への取組

〔犯罪被害者団体・犯罪被害者支援団体からの要望〕

犯罪被害者団体・犯罪被害者支援団体からは

<1> PTSD 治療、カウンセリング等の利用促進のための体制作り

<2> カウンセリング費用の公費負担

<3> 健康保険利用時における誓約書等の提出を不要とすること

<4> 配偶者等からの暴力被害者の安全確保の強化等に関する要望が寄せられている。


〔今後講じていく施策〕
1 保健医療サービス及び福祉サービスの提供 (基本法第14条関係)

(1)「PTSD 対策に係る専門家の養成研修会」の内容の充実等

厚生労働省において、厚生労働科学研究において行われている、医療現場における犯罪被害等による精神疾患の実態調査及び犯罪被害者等に関する対応ガイドラインの作成を踏まえ、「PTSD 対策に係る専門家の養成研修会」の実践的な内容の充実を図る。また、同研修会などを通じて、犯罪被害者等の精神的被害について、医療・福祉関係者に対する啓発を更に推進する。【厚生労働省】

(2)PTSD 治療の可能な医療機関についての情報提供

厚生労働省において、医療機能情報提供制度によりPTSD など各疾病の治療に対応可能な医療機関を検索することができることの周知を図る。【厚生労働省】

(3)犯罪被害者等への適切な対応に資する医学教育の促進

文部科学省において、医学部関係者が参加する各種会議での要請や「医学教育モデル・コア・カリキュラム」(※4)等を通じて、医学部においてPTSD 等の精神的被害に関する知識・技能及び犯罪被害者等への理解を深める教育を推進する。また、厚生労働省において、医学部卒業後の初期研修のプログラム責任者や指導医に対する講習会等を通じて、医学部卒業生の精神疾患に対する初期対応と治療の実際への理解を促進する。【文部科学省】【厚生労働省】

(4)精神保健福祉センターに対する犯罪被害者等支援業務についての理解促進

厚生労働省において、精神保健福祉センターにおいて犯罪被害者等に対する心の健康回復のための支援が適切に行われるよう、精神保健福祉センター長会議において必要に応じて犯罪被害者等に関する議題を取り上げる。【厚生労働省】

(5)PTSD の診断及び治療に係る医療保険適用の範囲の拡大

PTSD の診断及び治療に係る医療保険適用の範囲の拡大については、有効性・安全性に関する科学的評価が得られたものについて、診療報酬改定時に必要に応じて措置を講ずる。【厚生労働省】

(6)地域格差のない迅速かつ適切な救急医療の提供

厚生労働省において、地域格差なく迅速かつ適切な救急医療が提供されるよう、初期、二次、三次の救急医療体制の整備を図るとともに、総務省と連携し、メディカルコントロール体制(※5)の充実強化を図る。【厚生労働省】

(7)救急医療に連動した精神的ケアのための体制整備

厚生労働省において、救急医療における犯罪被害者等の精神的ケアに対応するため、救急医療体制における精神科医との適切な連携体制の確保を図る。【厚生労働省】

(8)交通事故による重度後遺障害者に対する医療の充実等

交通事故による重度後遺障害者数が依然として高い水準で推移していることを踏まえ、これらの者が質の高い治療・看護を受けられる機会の拡充を図るとともに、被害者の実態把握に努める。【国土交通省】

(9)高次脳機能障害者への支援の充実

厚生労働省において、高次脳機能障害が障害者自立支援法(平成17年法律第123号)に基づくサービスの対象であるという更なる周知を行う。また、患者・家族からの相談への対応や普及啓発等を行う「高次脳機能障害支援普及事業」を実施する。【厚生労働省】

(10)思春期精神保健の専門家の養成

厚生労働省において、平成13年度から実施している医師、看護師、保健師、精神保健福祉士、児童相談員などを対象とした思春期精神保健の専門家の養成研修を継続して実施し、思春期精神保健の専門家を養成するとともに、児童虐待や配偶者等からの暴力の被害者の心理と治療・対応についての研修を実施する。【厚生労働省】

(11)少年被害者のための治療等の専門家の養成、体制整備及び施設の増強に資する施策の実施

厚生労働省において、少年被害者の被害について、犯罪被害者等に特有の対応を要する面があることを踏まえ、全国的に治療又は保護を行う専門家が不足し、そのための体制及び施設が十分ではないことを前提に、現状に関する必要な調査を行い、その上で、少年被害者が利用しやすく、地域的な隔たりなく十分な治療・配慮を受けられ、また、十分な期間保護が受けられるようにするため、児童精神科医等専門家の適正な配置や連携体制の整備及び施設の増強に資する施策を実施するとともに、専門の医療機関等についての情報提供を行う。【厚生労働省】

(12)警察における性犯罪被害者に対するカウンセリングの充実

警察庁において、性犯罪被害者の精神的被害回復に資するため、警察部内のカウンセリング専門職員の活用や、警察部外カウンセラー・精神科医へのカウンセリング委嘱制度の運用が一層効果的なものになるよう、都道府県警察を指導する。【警察庁】

(13)性犯罪被害者に対する緊急避妊に関する情報提供

厚生労働省において、性犯罪被害者を含め、緊急避妊を必要とする者が緊急避妊の方法等に関する情報を得られるよう、保健所や「女性健康支援センター」等による情報提供を図る。【厚生労働省】(再掲:第4,1.(3))

(14)医療機関における性犯罪被害者への対応の体制の整備

厚生労働省において、内閣府、警察庁及び文部科学省の協力を得て、性犯罪被害者対応マニュアル等を活用するなどして、医療関係者を対象とした啓発等を実施し、医療機関における性犯罪被害者への対応体制の整備を図る。【厚生労働省】(再掲:第4,1.(4))

(15)性犯罪被害者対応における看護師等の活用

厚生労働省において、内閣府、警察庁及び文部科学省の協力を得て、医療機関に対して、性犯罪に関する専門的知識・技能を備えた看護師、助産師等の活用について啓発を推進する。【厚生労働省】(再掲:第4,1.(5))

(16)ワンストップ支援センターの設置促進

性犯罪被害者のためのワンストップ支援センター(医師による心身の治療、医療従事者・民間支援員・弁護士・臨床心理士等による支援、警察官による事情聴取等の実施が可能なセンター。以下本項において「ワンストップ支援センター」という。)の設置を促進するため、以下の施策を推進する。(再掲:第4,1.(7))

ア 内閣府において、ワンストップ支援センターを運営している民間団体及び厚生労働省、警察庁、法務省、文部科学省等の協力を得て、「ワンストップ支援センターの開設・運営の手引(仮称)」を作成し、犯罪被害者支援団体、医療機関、地方公共団体、警察等に配布する。【内閣府】

イ 警察庁において、平成22年度に実施した性犯罪被害者対応拠点モデル事業の検証を行い、その結果を関係省庁及び犯罪被害者支援団体に提供する。【警察庁】

ウ 厚生労働省において、医療機関に対してワンストップ支援センターについての啓発を行うほか、犯罪被害者支援団体、地方公共団体、医師等医療関係者等から、ワンストップ支援センター開設に向けた相談があった場合には、協力が可能な医療機関の情報を収集し、当該犯罪被害者支援団体等に提供する。【厚生労働省】

エ 厚生労働省において、医療機能情報提供制度における登録内容にワンストップ支援センターが施設内に設置されているかどうかを加える。【厚生労働省】

(17)犯罪被害者等に関する専門的知識・技能を有する臨床心理士の養成等

内閣府において、財団法人日本臨床心理士資格認定協会及び一般社団法人日本臨床心理士会に働きかけ、犯罪被害者等に関する専門的な知識・技能を有する臨床心理士の養成及び研修の実施を促進する。【内閣府】

(18)犯罪被害者に係る司法関連の医学知識と技術について精通した医療関係者の在り方及びその養成のための施策の実施

厚生労働省において、「PTSD 対策に係る専門家の養成研修会」の中で犯罪被害者のメンタルヘルスに関する研修を実施する。また、関係機関である国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所においても「犯罪被害者メンタルヘルス研修」を継続的に実施する。【厚生労働省】

(19)検察官等に対する研修の充実

法務省において、検察官等が犯罪被害者等の支援に精通するための研修等の充実を図る。【法務省】

(20)法科大学院における教育による犯罪被害者等への理解の向上の促進

文部科学省において、各法科大学院が、自らの教育理念に基づき多様で特色のある教育を展開していく中で、犯罪被害者等に対する理解の向上を含め、真に国民の期待と信頼に応え得る法曹の養成に努めるよう促す。【文部科学省】

(21)児童虐待に対する夜間・休日対応の充実等

厚生労働省において、平成16年の児童福祉法(昭和22年法律第164号)の一部改正に伴い、次の施策を実施する。

ア 児童相談所の夜間・休日における連絡や相談対応の充実、児童相談所の市町村に対する支援の充実に努める。【厚生労働省】

イ 夜間対応等の体制整備や児童虐待に対する医療ケアの重要性に鑑み、地域の医療機関との協力、連携体制を充実する。【厚生労働省】

(22)少年被害者の保護に関する学校及び児童相談所等の連携の充実

文部科学省及び厚生労働省において、少年被害者の保護に関し、要保護児童対策地域協議会を活用するなど、学校と児童相談所等少年被害者の保護に資する関係機関との連携を充実する。【文部科学省】【厚生労働省】

(23)少年被害者に対する学校におけるカウンセリング体制の充実等

ア 文部科学省において、少年被害者を含む児童生徒の心のケアに資するよう、スクールカウンセラーの適正な配置や資質の向上、「子どもと親の相談員」の配置など、学校におけるカウンセリング体制を充実させるとともに、少年被害者を含む児童生徒に対し、個々の状況に応じた必要な学習支援を促進する。【文部科学省】

イ 文部科学省において、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーを始め学校の教職員が一体となって、関係機関や地域の人材と連携しつつ、犯罪被害者等である児童生徒の相談等に的確に対応できるよう、犯罪等の被害に関する教職員やスクールカウンセラー等に対する研修を支援するとともに、各学校における取組を促進する。【文部科学省】

ウ 文部科学省において、犯罪被害者等である児童生徒に対する心のケアについても、大学の教職課程におけるカウンセリングに関する教育及び教員に対するカウンセリングに関する研修内容に含めるなどその内容の充実を図るよう促す。【文部科学省】(再掲:第5,1.(15)イ)

(24)被害少年が受ける精神的打撃軽減のための継続的支援の推進

警察において、被害少年(※6)が受ける精神的打撃の軽減を図るため、保護者の同意を得た上で、カウンセリングの実施、関係者への助言、犯罪被害者等早期援助団体を始めとする民間被害者支援団体への紹介等の継続的な支援を推進する。【警察庁】

(25)里親制度の充実

厚生労働省において、少年被害者の保護に資するよう、里親支援機関事業による里親の支援等により、里親制度の充実を図る。【厚生労働省】

(26)少年被害者の相談・治療のための専門家・施設等の周知

厚生労働省において、少年被害者の被害に対する相談・治療等を行う専門家、医療施設その他の施設等を把握し、警察とも連携してその周知に努める。【厚生労働省】

(27)犯罪被害者等に対する医療機関に関する情報の周知

厚生労働省において、犯罪被害者等が利用しやすいように、医療機関の情報を周知させるとともに、関係機関において、当該情報を共有し、適時適切に犯罪被害者等に提供する。【厚生労働省】

(28)犯罪被害者等の受診情報等の適正な取扱い

ア 厚生労働省において、犯罪被害者等の受診情報が医療機関や保険者から流出しないよう、個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)に基づき、医療機関や保険者に対して適切に対応する。【厚生労働省】

イ 金融庁において、犯罪被害者等の保健医療に関する情報を始めとする個人情報の取扱いに関し、損害保険会社に問題があると認められる場合には、保険業法(平成7年法律第105号)に基づき、保険会社に対する検査・監督において適切な対応をする。【金融庁】


2 安全の確保(基本法第15条関係)

(1)加害者に関する情報提供の拡充

ア 法務省において、再被害防止のため、警察の要請に応じ、刑事施設、地方更生保護委員会及び保護観察所が警察に対して行う釈放予定、帰住予定地及び仮釈放中の特異動向等の情報提供、再度の加害行為のおそれを覚知した検察官、刑事施設、地方更生保護委員会及び保護観察所による警察への当該情報の連絡について、関係者に周知徹底させ、一層円滑な連携を図る。【警察庁】【法務省】(再掲:第3,1.(21))

イ 警察において、子どもを対象とする暴力的性犯罪の再犯防止を図るため、法務省からそれらの前歴者の出所情報の提供を受け、出所後の居住状況等の定期的な確認を含めた対策に努める。【警察庁】

(2)判決確定、保護処分決定後の加害者に関する情報提供拡充の検討及び施策の実施

法務省において、加害者の受刑中の処遇状況に関する事項、仮釈放又は刑の執行終了による釈放に関する事項及びこれに準ずる事項、仮釈放審理に関する事項並びに保護観察中の処遇状況等に関する事項について、また、保護観察処分及び少年院送致処分を受けた加害少年についても、少年院における処遇状況等に関する事項、仮退院審理に関する事項及び保護観察中の処遇状況等に関する事項について、適切に情報提供を行うとともに、被害者等通知制度の更なる充実について、通知制度の運用状況や加害者の改善更生、個人のプライバシーの問題などを総合的に考慮しつつ検討を行い、3年以内を目途に結論を出し、必要な施策を実施する。【法務省】(再掲:第3,1.(22))

(3)犯罪被害者等に関する情報の保護

ア 法務省において、証拠開示の際に証人等の住居等が関係者に知られることがないよう求める制度について、また、性犯罪の被害者等について公開の法廷では仮名を用いる運用がなされていることについて周知を徹底させるとともに、検察官等の意識を向上させる。【法務省】

イ 警察による被害者の実名発表、匿名発表については、犯罪被害者等の匿名発表を望む意見と、マスコミによる報道の自由、国民の知る権利を理由とする実名発表に対する要望を踏まえ、プライバシーの保護、発表することの公益性等の事情を総合的に勘案しつつ、個別具体的な案件ごとに適切な発表内容となるよう配慮する。【警察庁】(再掲:第5,1.(16))

(4)一時保護場所の環境改善等

ア 厚生労働省において、児童相談所及び婦人相談所による一時保護や婦人保護施設及び民間シェルター等への一時保護委託の実施について適正な運用に努める。【厚生労働省】(再掲:第1,3.(2)ア)

イ 厚生労働省において、「子ども・子育てビジョン」(平成22年1月29日閣議決定)により、平成26年度までに、個別対応できる児童相談所一時保護所の環境改善を実施する。【厚生労働省】(再掲:第1,3.(2)イ)

(5)警察における再被害防止措置の推進

警察において、同じ加害者により再び危害を加えられるおそれのある犯罪被害者等を「再被害防止対象者」に指定するとともに、加害者を収容している刑事施設等と密接に連携を図り、防犯指導・警戒等の再被害防止の措置を推進する。【警察庁】

(6)警察における保護対策の推進

警察において、けん銃発砲や被害者・証人等に対する報復等の暴力団犯罪により危害を被るおそれのある者や関連施設等を予測し、広範囲に保護対象者を指定するとともに必要な装備資機材を関連施設に配備するなどにより保護対策を実施し、危害行為の未然防止の措置を推進する。【警察庁】

(7)保釈に関しての犯罪被害者等に対する安全への配慮の充実

法務省において、加害者の保釈申請がなされた場合には、事案に応じ、改めて犯罪被害者等に連絡して事情聴取するなどして、裁判所に提出する検察官意見に犯罪被害者等の意見を適切に反映させるとともに、保釈申請に対する結果について犯罪被害者等に連絡するなど、犯罪被害者等の安全確保により一層配慮するように努める。【法務省】(再掲:第3,1.(8))

(8)配偶者等からの暴力被害者の安全確保の強化についての検討及び施策の実施

保護命令制度の実態とそれを取り巻く状況を分析するなど、配偶者等からの暴力の被害者の安全確保策を強化することについて検討し、3年以内を目途に結論を出し、必要な施策を実施する。【内閣府】【警察庁】【法務省】【厚生労働省】

(9)再被害防止に向けた関係機関の連携の充実

ア 警察庁及び厚生労働省において、配偶者等からの暴力の被害者、人身取引の被害者、児童虐待の被害者等の保護に関する警察、婦人相談所及び児童相談所等の連携について、現状に対する犯罪被害者等の意見・要望を踏まえ、一層充実させる。【警察庁】【厚生労働省】

イ 警察庁及び文部科学省において、警察と学校等関係機関の通報連絡体制の活用、児童虐待防止ネットワークの活用、加害少年やその保護者に対する指導等の一層の充実を図り、再被害の防止に努める。【警察庁】【文部科学省】

(10)児童虐待の防止、早期発見・早期対応のための体制整備等

ア 警察において、子どもの死亡例に関する適切な検視等の実施に資する教育、児童虐待の発見に資する指導・教育、児童の保護等を行う職員に対する虐待を受けた児童の特性等に関する教育等職員の児童虐待に関する知識・技能の向上に努める。【警察庁】

イ 文部科学省において、学校教育関係者など、職務上虐待を受けている子どもを発見しやすい立場にある者が、虐待発見時に適切に対応できるよう、通告義務の周知徹底を図るとともに、教育機関等から福祉部門への定期的な情報提供及び、学校・教育委員会への的確な対応を促し、教師用研修教材の活用や、児童相談所職員との合同研修への参加を促すなど、早期発見・早期対応のための体制の整備に努める。【文部科学省】

ウ 厚生労働省において、児童虐待の早期発見・早期対応に資するため、全国児童相談所所長会議等を通じ、児童相談所の体制の強化、児童相談所を中心とした多種多様な関係機関の連携及び児童虐待の防止に関する地域住民の理解向上への取組を促すとともに、全国の好事例を収集し、周知徹底を図る。【厚生労働省】

(11)児童虐待防止のために行う児童の死亡事例等の検証の実施

厚生労働省において、児童虐待防止のため、社会保障審議会児童部会の下に設置された「児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会」での児童の死亡事例等の検証を行う。【厚生労働省】

(12)再被害の防止に資する教育の実施等

ア 法務省において、犯罪被害者等の心情等を理解させるための「被害者の視点を取り入れた教育」について、犯罪被害者等や犯罪被害者支援団体の意見を踏まえながら、検討会を開催するなどして、矯正施設における受刑者等に対する改善指導・矯正教育等の充実に努める。また、家庭裁判所、検察庁等から矯正施設に送付される資料の中に犯罪被害者等の心情等が記載されている場合には、同資料を被収容者に対する指導に有効活用するよう努める。【法務省】(再掲:第3,1.(24)ア)

イ 法務省において、仮釈放に際し、地方更生保護委員会が、事案に応じた犯罪被害者等の安全確保に必要な遵守事項の適切な設定に努め、保護観察所が、当該遵守事項を遵守させるための加害者に対する指導監督を徹底する。【法務省】(再掲:第3,1.(26))

ウ 法務省において、犯罪被害者等の意向等に配慮し、謝罪及び被害弁償に向けた保護観察処遇における効果的なしょく罪指導を徹底する。【法務省】

エ 文部科学省において、児童虐待の防止に資するよう、地域人材や専門家等で構成する家庭教育支援チームによる家庭教育に関する取組を広く推進し、情報や学習機会の提供、相談対応の充実、家庭と地域とのつながりづくりや学校との連携等の地域の活動を支援する。【文部科学省】


3 保護、捜査、公判等の過程における配慮等 (基本法第19条関係)

(1)職員等に対する研修の充実等

ア 警察において、採用時及び上位の階級又は職に昇任した際に行われる教育、専門的知識を必要とする職務に従事する実務担当者に対する教育、被害者・遺族等を招請して行う講演会、被害者支援室担当者による各警察署に対する巡回教育、犯罪被害者等支援の体験記の配布、犯罪被害者等早期援助団体を始めとする民間被害者支援団体等との連携要領についての教育、性犯罪被害者への支援要領についての教育等、職員の犯罪被害者等への適切な対応を確実にするための教育等の充実を図り、職員の対応の改善を進める。【警察庁】

イ 法務省において、検察官、検察事務官に対する各種研修の機会における「犯罪被害者支援」等のテーマによる講義の実施、犯罪被害者等早期援助団体への検察官の派遣、矯正施設職員に対する犯罪被害者団体等の関係者を招へいしての講義等の実施、更生保護官署職員に対する犯罪被害者等支援の実務家による講義等の実施、検察庁に配置されている被害者支援員を対象とする研修における犯罪被害者等に関する諸問題についての講義等の実施など、職員の犯罪被害者等への適切な対応を確実にするための教育・研修等の充実を図り、職員の対応の改善に努める。【法務省】(再掲:第4,2.(9)イ)

ウ 法務省において、検察幹部が犯罪被害者等の心情等に理解を深めることに資するためのセミナーの実施や、検察官に市民感覚を学ばせるため、公益的活動を行う民間団体や民間企業に一定期間派遣する研修を実施するなどし、職員の対応の改善に努める。【法務省】

エ 法務省において、検察官に対する研修の中で、児童や女性の犯罪被害者等と接する上での留意点等を熟知した専門家等による講義を実施し、児童及び女性に対する配慮に関する科目の内容の一層の充実を図る。【法務省】(再掲:第3,1.(20)及び第4,2.(9)ア)

オ 法務省において、副検事に対する研修の中で、交通事件の留意点等を熟知した専門家等による講義を行うとともに、被害者及び被害者遺族の立場等への理解を深めるための機会を設けるなど、交通事件をテーマにした科目の内容について一層の充実を図る。【法務省】(再掲:第3,1.(17))

カ 厚生労働省において、平成8年度から実施している医師、看護師、保健師及び精神保健福祉士などを対象とした「PTSD 対策に係る専門家の養成研修会」において、医療現場における犯罪被害等による精神疾患の実態調査及び犯罪被害者等に関する対応ガイドラインの作成を踏まえ、より実践的研修にするなど内容の充実を図り、同研修会などを通じて、犯罪被害者等の精神的被害について、保健・医療・福祉関係者に対する啓発を更に推進する。また、平成13年度から実施している医師、看護師、保健師、精神保健福祉士などを対象とした思春期精神保健の専門家の養成研修の活用を含め、犯罪被害者等の相談、治療、保護等を行う施設の職員の犯罪被害者等への適切な対応を確実にするための研修等を実施する。【厚生労働省】

キ 「看護の質の向上と確保に関する検討会」における「中間取りまとめ」(平成21年3月)に基づき、平成21年4月より「看護の教育の内容と方法に関する検討会」において、基礎教育の内容・方法等の一層の充実に向け検討を行う。【厚生労働省】

ク 厚生労働省において、民生委員に対し、犯罪被害者等への適切な対応を確実にするための守秘義務の遵守等について指導を実施する。【厚生労働省】

ケ 厚生労働省において、公的シェルターにおける犯罪被害者等への適切な対応を確実にするための研修及び啓発の充実を図る。また、婦人保護施設における性犯罪被害者支援の現状についての実態を把握しつつ、全国婦人保護施設長連絡協議会や全国婦人保護施設指導員研究会の場を活用して職員の専門的な資質向上を図っていくとともに、都道府県が実施する婦人相談所や婦人保護施設の職員、婦人相談員等を対象とした研修の取組を促進する。【厚生労働省】

(2)女性警察官の配置等

警察において、警察本部や警察署の性犯罪捜査を担当する係への女性警察官の配置及び実務能力の向上、事情聴取における相談室や被害者支援用車両の活用、産婦人科医会や犯罪被害者等早期援助団体を始めとする民間被害者支援団体等とのネットワークの構築による連携強化等に努め、性犯罪被害者の心情に配慮した対応を図る。【警察庁】

(3)ビデオリンク等の措置の適切な運用

法務省において、ビデオリンク等の犯罪被害者等の保護のための措置について周知徹底を図り、一層適正に運用されるよう努める。【法務省】

(4)警察における犯罪被害者等のための施設の改善

警察において、これまでに整備された被害者専用の事情聴取室の活用のほか、被害者支援用車両の整備を進めるなど、施設等の改善に努める。【警察庁】

(5)検察庁における犯罪被害者等のための待合室の設置

法務省において、庁舎の建て替えを予定している検察庁では、被害者専用待合室を設置し、それ以外の検察庁については、スペースの有無、設置場所等を勘案しつつ、専用待合室の設置について検討する。【法務省】


※4 各大学のカリキュラム改革に資するよう、平成13年3月に文部科学省の「医学・歯学教育の在り方に関する調査研究協力者会議」において、すべての医学生が卒業までに最低限習得すべき教育内容をガイドラインとして示したもの。

※5 救急現場から医療機関に搬送されるまでの間において、救急救命士等が行う救急医療活動について、医師による指示、指導・助言、事後検証を行い、その質を保障する体制。

※6 「被害少年」とは、犯罪その他少年の健全な育成を阻害する行為により被害を受けた少年(20歳未満)をいう。(少年警察活動規則(平成14年国家公安委員会規則第20号)第2条第7号)


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