<< 前頁   [目次]   次頁 >>

3.犯罪被害者等基本計画 (平成17年12月27日閣議決定)

2.調査研究の推進等(基本法第21条関係)

[現状認識]

犯罪被害者等に対する適切な支援のためには、犯罪被害者等の心理、置かれている状況を正確に理解することはもとより、犯罪被害者等の心身の健康を回復させるための方法等に関する専門的知識・技能が求められる。しかるに、犯罪被害者等の支援に携わる者たちについて、熱意はあっても必要な知識・技能が不足し、適切な支援ができない場合があるとの指摘がある。犯罪被害者等の支援に携わる者が共有し、修得すべき知識・技能に関する調査研究を進めることや諸外国における犯罪被害者等のための施策に関する情報を収集すること等が必要であり、そうした調査研究や情報収集等の成果を活用して人材の養成等を行っていく必要がある。

[基本法が求める基本的施策]

基本法第21条は、国及び地方公共団体に対し、犯罪被害者等に対し専門的知識に基づく適切な支援を行うことができるようにするための施策として、

・心理的外傷その他犯罪被害者等が犯罪等により心身に受ける影響及び犯罪被害者等の心身の健康を回復させるための方法等に関する調査研究の推進

・国の内外の情報の収集、整理及び活用

・犯罪被害者等の支援に係る人材の養成及び資質の向上

・その他の必要な施策

を講ずることとしている。

[犯罪被害者等の要望に係る施策]

犯罪被害者団体等からは、

《1》 PTSDに関する調査研究及び専門家の養成

《2》 その他人材の養成等

《3》 犯罪被害実態等に関する調査研究の充実

《4》 犯罪被害者等支援に関する研究・教育・研修を行う国公立の「犯罪被害者総合支援センター」の設立

に関する種々の要望が寄せられている。

[今後講じていく施策]

(1) 重症PTSD症例に関するデータ蓄積及び治療法等の研究

文部科学省において、平成17年度の科学技術振興調整費「重要課題解決型研究等の推進」プログラムにおける課題「犯罪・テロ防止に資する先端科学技術」の中で新規採択した「犯罪、行動異常、犯罪被害者の現象、原因と治療、予防の研究」における犯罪被害による重症PTSD症例に関するデータ蓄積及び治療法等の研究成果を得、犯罪被害者等支援の実践への活用を目指していく。【文部科学省】

(2) 犯罪被害者の精神健康の状況とその回復に関する研究

厚生労働省において、犯罪被害者の精神健康についての実態とニーズの調査、医療場面における犯罪被害者の実態の調査、重度PTSDなど持続的な精神的後遺症を持つものの治療法の研究、地域における犯罪被害者に対する支援のモデルの研究などを継続的に行い、その研究成果を得、高度な犯罪被害者等支援が行える専門家育成や地域での対応の向上に活用していく。【厚生労働省】

(3) 犯罪被害者等の状況把握等のための継続的調査の実施

内閣府において、警察庁、法務省及び厚生労働省並びに犯罪被害者団体等の協力を得て、犯罪被害類型別、被害者との関係別に、犯罪被害者等の置かれた状況や当該状況の経過等を把握するため、犯罪被害類型等ごとに、一定の周期で継続的な調査を行う。【内閣府】

(4) 配偶者に該当しない交際相手等からの暴力に関する調査の実施

内閣府において、平成11年度以降実施している女性に対する暴力による被害の実態把握に関する調査の中で、平成17年度に、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(平成13年法律第31号)における配偶者に該当しない交際相手等からの暴力についても、調査を実施する。【内閣府】

(5) 警察庁における犯罪被害の実態等についての継続的調査研究

警察庁において、犯罪被害の実態等についての調査研究を継続的に実施し、警察の行う被害者支援の更なる充実に活かしていく。【警察庁】

(6) 法務省における「犯罪被害実態調査」の調査方法に関する検討

法務省において、これまでに行った「犯罪被害実態調査」と同種の調査を継続的に実施する方向で検討するとともに、性的暴行被害等についてより一層精緻な数値を得られるよう調査方法の検討を早期に行い、その結果を同調査に反映する。【法務省】

(7) 脳死及び臓器移植に関する犯罪被害者等への配慮

厚生労働省において、臓器提供者(交通事故被害者を含む。)の家族に特有な心理的な問題等について、「脳死下での臓器提供事例に係る検証会議」の下に設置された「ドナー家族の心情把握等作業班」により、現状把握に努める。【厚生労働省】

(8) 犯罪被害者等支援のコーディネーター等の育成の在り方についての検討

犯罪被害者等支援のコーディネーターや専門的チームの育成の在り方について、各地域における犯罪被害者等支援に係る諸機関・団体等の連携・協力の促進に関して設置する検討のための会において、どの関係機関・団体等を起点としても必要な情報提供、支援等を途切れることなく受けることのできる体制作りと併せて検討する。【内閣府・警察庁・総務省・法務省・文部科学省・厚生労働省・国土交通省】(再掲:第4、1.(4))

(9) 警察における被害者支援に携わる職員等への研修の充実

警察において、《1》採用時及び上位の階級又は職に昇任した際に行われる犯罪被害者等支援に関する基礎的な研修、《2》被害者支援担当部署に配置された職員に対する犯罪被害者等支援の実践的技能を修得させるための臨床心理士によるロールプレイ方式による演習等を含む専門的な研修、《3》カウンセリング業務に従事する職員等に対する基礎的な教育及び実践的・専門的な教育等の充実を図っていく。【警察庁】

(10) 犯罪等による被害を受けた児童の継続的な支援を行う警察職員の技能修得

警察において、犯罪等による被害を受けた児童の継続的な支援を行う少年補導職員、少年相談専門職員について、講習・研修等により、カウンセリングの技法等必要な専門技術等を修得できるよう努めるとともに、専門的能力を備えた者の配置に努めていく。【警察庁】

(11) 法務省における犯罪被害者等支援に関する職員研修の充実等

ア 法務省において、検察官に対し、児童や女性の犯罪被害者等と接する上での留意点等を熟知した専門家等による講義を実施し、児童及び女性に対する配慮に関する科目の内容の一層の充実を図っていく。【法務省】再掲:第2、3.(1)エ及び第3、1.(18)

イ 法務省において、検察官、検察事務官に対する各種研修の機会における「犯罪被害者支援」等のテーマによる講義の実施、犯罪被害者等早期援助団体への検察官の派遣、矯正施設職員に対する犯罪被害者団体等の関係者を招へいしての講義等の実施、更生保護官署職員に対する被害者支援の実務家等による講義、地方検察庁に配置されている被害者支援員を対象とする研修における犯罪被害者等に関する諸問題についての講義・講演及び討議の実施など、職員の犯罪被害者等への適切な対応を確実にするための教育・研修等の充実を図る。【法務省】(再掲:第2、3.(1)イ)

(12) 日本司法支援センターが蓄積した情報やノウハウの提供

日本司法支援センターにおいて、犯罪被害者等支援業務の実施を通じて日本司法支援センターが蓄積した情報やノウハウについて、研修や講習を通じて犯罪被害者等支援に携わる関係者に提供していく。【法務省】

(13) 学校における相談対応能力の向上等

文部科学省において、学校の教職員が犯罪被害者等である児童生徒の相談等に的確に対応できるよう、犯罪等の被害に関する研修等を通じ教職員の指導力の向上に努めるとともに、スクールカウンセラーや「子どもと親の相談員」の配置など教育相談体制の充実等に取り組んでいく。【文部科学省】(再掲:第4、1.(17)及び第5、1.(15)ア

(14) 臨床心理士による犯罪被害者等に対する支援活動についての調査研究の実施

文部科学省において、犯罪等による被害への精神的支援の重要性を踏まえ、財団法人日本臨床心理士資格認定協会に委嘱している「臨床心理士の資質向上に関する調査研究」において、犯罪被害者等に対する支援活動についての調査研究を実施する。【文部科学省】

(15) 虐待を受けた子どもの保護等に携わる者の研修の充実

厚生労働省において、虐待を受けた子どもの保護及び自立の支援を専門的知識に基づき適切に行うことができるよう、児童相談所及び児童福祉施設等関係機関の職員、市町村職員及び保健機関等の職員の資質の向上等を図るための研修の充実を図っていく。【厚生労働省】

(16) 民間の団体の研修に対する支援

警察、法務省、文部科学省、厚生労働省及び国土交通省において犯罪被害者等の援助を行う民間の団体に対し、それらの団体が実施するボランティア等の養成・研修への講師の派遣等の支援に努めていく。【警察庁・法務省・文部科学省・厚生労働省・国土交通省】


<< 前頁   [目次]   次頁 >>