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3.犯罪被害者等基本計画 (平成17年12月27日閣議決定)

2.安全の確保(基本法第15条関係)

[現状認識]

犯罪被害者等が再び危害を加えられることに不安を抱くのは、暴力団員によるいわゆる「お礼参り」や、児童虐待、ストーカー行為、配偶者等による暴力(DV)の反復などのいわば典型的な場合に限られるものではない。暴力的(攻撃的)な性格の犯罪等により被害を受けた場合、犯罪被害者等の多くが、再び危害を加えられることに対し深刻な不安を抱いている。また、実際に再被害を受けた事案も存在する。再被害を防止することは当然であるが、再被害に対する不安は、被害申告を躊躇させる原因ともなるなど犯罪被害者等の大きな負担となっており、不安を解消する取組が必要であるとの指摘がある。

[基本法が求める基本的施策]

基本法第15条は、国及び地方公共団体に対し、犯罪被害者等が更なる犯罪等により被害を受けることを防止し、その安全を確保するため、

・一時保護、施設への入所による保護

・防犯に係る指導

・犯罪被害者等がその被害に係る刑事に関する手続に証人等として関与する場合における特別の措置

・犯罪被害者等に係る個人情報の適切な取扱いの確保

・その他の必要な施策

を講ずることとしている。

[犯罪被害者等の要望に係る施策]

犯罪被害者団体等からは、

《1》 刑務所出所及び少年院出院の際の住所、矯正の程度等犯罪被害者等が求める情報の開示

《2》 刑事手続における被害者の氏名・住所の原則非公開

《3》 加害者が逮捕されるまでの間、危険を回避するための犯罪被害者等専用シェルターの確保

《4》 再被害防止のための省庁間の連絡制度の充実

《5》 その他再被害を防止し、安全を確保するための取組の充実

に関する種々の要望が寄せられている。

[今後講じていく施策]

(1) 加害者に関する情報提供の拡充

ア 法務省において、再被害防止のため、警察の要請に応じ、刑事施設、地方更生保護委員会及び保護観察所が警察に対して行う釈放予定、帰住予定地及び仮出獄中の特異動向等の情報提供、再度の加害行為のおそれを覚知した検察官、刑事施設、地方更生保護委員会及び保護観察所による警察への当該情報の連絡について、関係者に周知徹底させ、一層円滑な連携を図っていく。【警察庁・法務省】(再掲:第3、1.(19))

イ 法務省において、加害者の仮出獄の時期、自由刑の執行終了による釈放予定時期、釈放後の住所についての情報を適切に提供していくほか、さらに、更生保護官署が、保護司との協働態勢の下、犯罪被害者等に対し、加害者の収容先、加害者の処遇に関する情報、加害者の釈放予定等を含む刑事裁判終了後の加害者に関する情報を提供できるよう、更生保護官署に被害者支援専任の担当者を配置することを含め、検討を行い、2年以内を目途に必要な施策を実施する。【法務省】(再掲:第3、1.(20))

ウ 警察において、子どもを対象とする暴力的性犯罪の再犯防止を図るため、法務省からそれらの前歴者の出所情報の提供を受け、出所後の居住状況等の定期的な確認を含めた対策に努める。【警察庁】

(2) 犯罪被害者等に関する情報の保護

ア 法務省において、証拠開示の際に証人等の住居等が関係者に知られることがないよう求める制度について、また、性犯罪の被害者等について公開の法廷では仮名を用いる運用がなされていることについて周知を徹底させるとともに、検察官等の意識を向上させる。【法務省】

イ 法務省において、性犯罪等の被害者について、一定の場合に、《1》起訴状朗読の際、被害者の氏名等を朗読しないこととするなど、公開の法廷において被害者の氏名等を明らかにしないようにする制度、《2》検察官又は弁護人が、証拠開示の際に、相手方に対して、被害者の氏名等が関係者に知られないようにすることを求めることができる制度の導入に向けた検討を行い、2年以内を目途に結論を出し、その結論に従った施策を実施する。【法務省】

ウ 総務省において、「住民基本台帳の閲覧制度等のあり方に関する検討会」の報告書(平成17年10月20日)を踏まえ、犯罪被害者等の保護の観点も含め住民基本台帳の閲覧制度等の抜本的見直しを行う。【総務省】

エ 警察による被害者の実名発表、匿名発表については、犯罪被害者等の匿名発表を望む意見と、マスコミによる報道の自由、国民の知る権利を理由とする実名発表に対する要望を踏まえ、プライバシーの保護、発表することの公益性等の事情を総合的に勘案しつつ、個別具体的な案件ごとに適切な発表内容となるよう配慮していく。【警察庁】(再掲:第5、1.(16))

(3) 一時保護所の環境改善等

ア 厚生労働省において、児童相談所及び婦人相談所による一時保護や婦人保護施設及び民間シェルター等への一時保護委託の実施について適正な運用に努める。【厚生労働省】(再掲:第1、3.(2)ア)

イ 厚生労働省において、「子ども・子育て応援プラン」(平成16年12月24日少子化社会対策会議決定)により、平成21年度までに、虐待を受けた子どもと非行児童の混合処遇を改善すること等の個別対応できる一時保護所の環境改善を実施する。【厚生労働省】(再掲:第1、3.(2)イ)

ウ 厚生労働省において、児童相談所及び婦人相談所による一時保護の現状や配偶者等からの暴力(DV)被害者及び人身取引被害者の一時保護委託先である民間シェルターにおける一時保護委託の状況に関する必要な調査を行い、1年以内を目途に結論を出し、必要な施策を実施する。【厚生労働省】(再掲:第1、3.(2)ウ)

(4) 被害直後の保護及び再被害の危険回避のための施設に関する検討

児童虐待、配偶者等からの暴力(DV)、人身取引以外の犯罪等による被害者に対する被害直後の保護及び再被害の危険回避のための施設について、犯罪被害者等に対する経済的支援制度に関して設置する検討のための会において、社会保障・福祉制度全体の中における犯罪被害者等に対する経済的支援制度のあるべき姿や財源と併せて検討する。【内閣府・警察庁・法務省・厚生労働省】(再掲:第1、3.(2)オ)

(5) 警察における再被害防止措置の推進

警察において、同じ加害者により再び危害を加えられるおそれのある犯罪被害者等を「再被害防止対象者」に指定し、防犯指導・警戒等を実施して行っている再被害防止の措置を推進する。【警察庁】

(6) 警察における保護対策の推進

警察において、暴力団等から危害を被るおそれのある者を「保護対象者」に指定して、危害行為の未然防止の措置を推進する。【警察庁】

(7) 保釈に関しての犯罪被害者等に対する安全への配慮の充実

法務省において、加害者の保釈に関し、検察官が、犯罪被害者等から事情を聴くなどによりその安全確保を考慮して裁判所に意見を提出するよう、適切な対応に努めていく。【法務省】(再掲:第3、1.(6))

(8) 再被害防止に向けた関係機関の連携の充実

ア 警察庁及び厚生労働省において、配偶者等からの暴力(DV)の被害者、人身取引の被害者、児童虐待の被害者等の保護に関する警察、婦人相談所及び児童相談所等の連携について、現状に対する犯罪被害者等の意見・要望を踏まえ、一層充実していく。【警察庁・厚生労働省】

イ 警察庁及び文部科学省において、警察と学校等関係機関の通報連絡体制の活用、児童虐待防止ネットワークの活用、加害少年やその保護者に対する指導等の一層の充実を図り、再被害の防止に努める。【警察庁・文部科学省】

(9) 児童虐待の防止、早期発見・早期対応のための体制整備等

ア 警察において、子どもの死亡例に関する適切な検視等の実施に資する教育、児童虐待の発見に資する指導・教育、児童の保護等を行う職員に対する虐待を受けた児童の特性等に関する教育等職員の児童虐待に関する知識・技能の向上に努める。【警察庁】

イ 文部科学省において、学校教育関係者など、職務上虐待を受けている子どもを発見しやすい立場にある者が、虐待発見時に適切に対応できるよう、通告義務の周知徹底を図るなど、早期発見・早期対応のための体制の整備に努める。【文部科学省】

ウ 文部科学省において、平成17年度に、学校等における児童虐待防止に向けた取組を推進するため、国内外の先進的取組事例を収集・分析する。【文部科学省】

エ 厚生労働省において、児童虐待の早期発見に資するため、児童相談所を中心とした多種多様な関係機関の連携による取組について、全国の好事例を収集し、周知徹底を図る。【厚生労働省】

(10) 児童虐待防止のために行う児童の死亡事例等の検証の実施

厚生労働省において、児童虐待防止のため、社会保障審議会児童部会の下に設置された「児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会」での児童の死亡事例等の検証を引き続き行っていく。【厚生労働省】

(11) 児童虐待・配偶者等からの暴力(DV)の早期発見のための医療施設における取組の促進

厚生労働省において、医療施設における児童虐待や配偶者等からの暴力(DV)の早期発見のための取組を促進するための施策を検討し、1年以内を目途に結論を出し、当該施策を実施する。【厚生労働省】

(12) 再被害の防止に資する教育の実施等

ア 法務省において、矯正施設に収容されている加害者に対し、被害者の心情等を理解させるため、「被害者の視点を取り入れた教育」の内容の一層の充実を図り、再被害の防止に資する。【法務省】(再掲:第3、1.(24)ア)

イ 法務省において、仮釈放に際し、地方更生保護委員会が、事案に応じた犯罪被害者等の安全確保に必要な遵守事項の適切な設定に努め、保護観察所が、当該遵守事項を遵守させるための加害者に対する指導監督を徹底していく。【法務省】(再掲:第3、1.(26))

ウ 法務省において、犯罪被害者等の意向等に配慮し、謝罪及び被害弁償に向けた保護観察処遇における効果的なしょく罪指導を徹底していく。【法務省】(再掲:第3、1.(24)ウ)

エ 文部科学省において、非行少年等の立ち直り支援を行う中で、再被害の防止に資するよう、加害少年の立ち直りを図っていく。【文部科学省】

オ 文部科学省において、様々な機会を活用して全国的に開設して行う子育てに関する学習講座の中で、児童虐待の防止に資するよう、親等の学習支援を充実する。【文部科学省】


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