地域における被害者支援の普及促進事業
犯罪被害者等が被害から回復し再び平穏な生活を営めるようになるためには、地域の関係機関・団体が連携協力を進めながら総合的な支援体制を築くことが必要であるとともに、地域社会全体の理解や配慮、協力も必要になります。そこで、内閣府において、全国的な被害者支援の充実を図るために、各地方公共団体が提案した企画により地域における被害者支援の普及促進事業(モデル事業)を実施し、同事業で得られたノウハウなどを広く普及啓発することとしています。
平成21年度に実施したモデル事業では、地方公共団体や地域の関係機関・団体と内閣府の連携協力の下、特定の層に向けた啓発や被害者支援に携わる方を対象とした取組などが行われました。
ここでは、そのうちの事例を紹介します。
1 「道立精神保健福祉センターとの連携による犯罪被害者等からの相談に関するスーパーバイズ事業」(北海道)
犯罪被害者等は求める支援は多岐に渡っており、様々な問題を抱えているため、相談内容が複雑であり、相談期間が長期にわたるケースもある上、その相談を受けるカウンセラー本人が相談の重さを実感したり、迷いを生じたりする場合もあります。
そこで、道立精神保健福祉センターと民間の犯罪被害者支援団体である社団法人北海道家庭生活総合カウンセリングセンターが連携し、札幌市内において精神保健福祉センター所長をスーパーバイザーとした事例検討会を3回実施しました。このほか、犯罪被害者等による基調講演などを内容とする研修会を実施し、犯罪被害者等からの相談を受けるカウンセラーのカウンセリング技術の向上及びバーンアウトの防止を図りました。
2 「犯罪被害者支援講演会~犯罪被害者を理解するために~」(茨城県)
犯罪被害者等は、治療のための通院や裁判への出廷などにより、やむを得ず欠勤する場合がありますが、事業主の無理解などにより、仕事を辞めざるを得なくなる場合が少なくないとの指摘がなされています。基本法17条は、地方公共団体に、事業主の理解を深める等の施策の実施を求めていることから、茨城県では茨城県企業防衛対策協議会等と連携し、地下鉄サリン事件被害者の会代表世話人である高橋シズヱさんと被害者精通弁護士を講師に迎えて、事業主に対する講演会を県内2箇所で開催し、被害者に対する配慮の必要性など意識の醸成を図りました。
出席した事業主からは、「企業・社会がバックアップする必要性を感じた」、「事業主自らが率先して支援する姿勢が大事」などの感想が寄せられました。
3 「犯罪被害者等理解促進プログラムの作成・活用」(神奈川県)
中高生を対象に、犯罪被害者等の置かれた状況等をわかりやすく教えるとともに、被害者にどう接するべきか、さらには、犯罪を起こさせないためにはどうしたらよいかについて主体的に考えてもらうため、犯罪被害者等理解促進プログラム(視聴覚教材及びパンフレット)を作成しました。
教材の作成に当たっては、県内の有識者からヒアリングを行ったほか、「生命のメッセージ展」を始め、全国3箇所の独自の啓発活動を調査しました。
21年度は県内の中学校、高校それぞれ1校ずつで教材を使用した授業を実施しました。22年度以降順次、県内の中学、高校において活用していく予定です。
本教材が有効に活用されることにより、犯罪被害者等への理解増進が図られ、また、防犯と一体となった被害者支援の気運が醸成されることが期待されます。
4 「ボランティア活動推進事業」(長野県)
長野県の県土は南北に長く、犯罪被害者支援センターのある長野市を中心とした北部に支援ボランティアが集中しているため、県の中・南部における被害者支援体制づくりが急務となっています。そこで、県民の犯罪被害者等に対する理解を深めるとともに、支援ボランティア登録の促進を図ることを目的として、県内3箇所において、全国犯罪被害者の会(あすの会)代表副幹事である松村恒夫さんほかを講師に迎えて講演会を開催しました。この講演会で興味を持っていただいた方には、地域における支援の担い手として活躍していただくため、さらに被害者支援に関する研修を行いました。
現在、この事業を契機に10名の方が引き続き研修を受講して、支援ボランティアを目指す予定です。