3.犯罪被害者等基本計画 (平成17年12月27日閣議決定)

3.居住の安定(基本法第16条関係)

[現状認識]

犯罪被害者等の中には、自宅が事件現場となったことによって物理的に居住困難な状況になったり、耐え難い精神的な苦痛を受けることで居住ができなくなったり、その他犯罪等による被害に起因する様々な要因により引越を余儀なくされる者が少なくない。また、配偶者等からの暴力(DV)のように、保護の観点から自宅以外に居住場所を求める必要のある場合もある。そうした犯罪被害者等にとって、再び平穏な生活を営むことができるようになるためには、安定した新たな居住先の確保が不可欠であるが、犯罪等による被害によってもたらされた経済的困窮などともあいまって、困難であるとの指摘がある。

[基本法が求める基本的施策]

基本法第16条は、国及び地方公共団体に対し、犯罪等により従前の住居に居住することが困難となった犯罪被害者等の居住の安定を図るための施策として、

・公営住宅(公営住宅法(昭和26年法律第193号)

第2条第2号に規定する公営住宅をいう。)への入居における特別の配慮

・その他の必要な施策

を講ずることとしている。

[犯罪被害者等の要望に係る施策]

犯罪被害者団体等からは、

《1》 公営住宅への優先入居

《2》 犯罪被害者等が被害直後に緊急入所してとりあえずの衣食住の確保や介護が受けられる場所及び生活の立て直しを図るための中期的(3年から5年程度)な居住環境の整備

に関する種々の要望が寄せられている。

[今後講じていく施策]

(1) 公営住宅への優先入居等

ア 国土交通省において、犯罪被害者等が事件現場になった自宅に住めないなどの事情がある場合には、公営住宅の同居親族要件の緩和等により、単身入居を可能とすることや、管理主体の判断で公営住宅への優先入居ができることを明確にするよう検討し、平成17年度中にも所要の措置を講ずる。【国土交通省】

イ 独立行政法人都市再生機構において、機構賃貸住宅における犯罪被害者等の入居優遇措置について、公営住宅への優先入居に関する検討結果を踏まえ、必要性について検討する。【国土交通省】

ウ 国土交通省において、公営住宅への入居に関する犯罪被害者等への情報提供を警察庁及び法務省と十分連携して行う。【国土交通省】

(2) 被害直後及び中期的な居住場所の確保

ア 厚生労働省において、児童相談所及び婦人相談所による一時保護や婦人保護施設及び民間シェルター等への一時保護委託の実施について適正な運用に努める。【厚生労働省】(再掲:第2、2.(3)ア)

イ 厚生労働省において、「子ども・子育て応援プラン」(平成16年12月24日少子化社会対策会議決定)により、平成21年度までに、虐待を受けた子どもと非行児童の混合処遇を改善すること等の個別対応できる一時保護所の環境改善を実施する。【厚生労働省】(再掲:第2、2.(3)イ)

ウ 厚生労働省において、児童相談所及び婦人相談所による一時保護の現状や配偶者等からの暴力(DV)被害者及び人身取引被害者の一時保護委託先である民間シェルターにおける一時保護委託の状況に関する必要な調査を行い、1年以内を目途に結論を出し、必要な施策を実施する。【厚生労働省】(再掲:第2、2.(3)ウ)

エ 厚生労働省において、一時保護から地域における自立した生活へとつながるよう、婦人保護施設及び母子生活支援施設の機能強化を図ることなどにより、入所者に対する日常生活支援の充実に努める。【厚生労働省】

オ 児童虐待、配偶者等からの暴力(DV)、人身取引以外の犯罪等による被害者に対する被害直後の保護及び再被害の危険回避のための施設について、犯罪被害者等に対する経済的支援制度に関して設置する検討のための会において、社会保障・福祉制度全体の中における犯罪被害者等に対する経済的支援制度のあるべき姿や財源と併せて検討する。【内閣府・警察庁・法務省・厚生労働省】(再掲:第2、2.(4))

カ 犯罪被害者等の生活の立て直しを図るための中期的な居住の確保について、犯罪被害者等に対する経済的支援制度に関して設置する検討のための会において、社会保障・福祉制度全体の中における犯罪被害者等に対する経済的支援制度のあるべき姿や財源と併せて検討する。【内閣府・警察庁・法務省・厚生労働省】


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