第2節 精神的・身体的被害の回復・防止への取組


(16) 再被害の防止に資する教育の実施等

法務省において、矯正施設に収容されている加害者に対し、被害者感情を理解させるためのオリジナルビデオ教材などを活用した指導を実施している。平成18年度以降は、犯罪被害者等や支援団体の方々から被収容者に対し直接講話するゲストスピーカー制度を拡大するなど、「被害者の視点を取り入れた教育」の充実に努めており、刑事施設においては、「刑事収容施設及び被収容者等の処遇等に関する法律」の施行(同年5月)に伴い、必要な者には同教育を義務付けて実施している。

「被害者の視点を取り入れた教育」は、被収容者に対し、自らの犯罪と向き合い、犯した罪の大きさや犯罪被害者等の心情などを認識させ、犯罪被害者等に誠意を持って対応するとともに、再び罪を犯さない決意を固めさせることを目標としており、社会復帰後の犯罪被害者等への対応、再犯の防止などにいかされることが期待できる。

また、ストーカー事犯者、性犯罪事犯者などの保護観察対象者に対しては、事案に応じて、当該被害者への接近を禁止するなどの特別遵守事項を設定していることに加えて、「更生保護法」(平成19年法律第88号)の施行(平成20年6月)後は、性犯罪者については専門的処遇プログラムを受講することについての特別遵守事項も設定し、これを守るよう指導監督している。また、慰謝の措置や被害弁償に誠意を尽くすことなどの生活行動指針を設定し、それを守る努力をするよう指導監督している。

仮釈放等審理における意見等聴取制度の施行(平成19年12月)後は、犯罪被害者等から聴取した意見などを踏まえ、より一層適切に特別遵守事項を設定している。

保護観察対象者に対しては、再び罪を犯さない決意を固めさせるとともに、犯罪被害者等の意向に配慮しながら誠実に対応することを促すため、しょく罪指導のためのプログラムを策定し、平成19年3月から全国の保護観察所において、一定の重大な犯罪をした保護観察対象者に対し、以下のとおり個別指導を実施している。

〈1〉自己の犯罪行為を振り返らせ、犯した罪の重さを認識させる。

〈2〉犯罪被害者等の実情(気持ちや置かれた立場、被害の状況など)を理解させる。

〈3〉犯罪被害者等の立場で物事を考えさせ、また、犯罪被害者等に対して、謝罪、被害弁償などの責任があることを自覚させる。

〈4〉具体的なしょく罪計画を策定させる。

文部科学省において、非行などの問題を抱える青少年の立ち直り支援のための居場所づくりを行っており、その中で再被害の防止に資するよう、加害少年の立ち直りを支援している。平成19年度は、地域のボランティア団体、青少年団体、スポーツクラブなどと連携・協力し、社会奉仕活動や体験活動、スポーツ活動などを行うことができる継続的な活動の場が82か所構築された。20年度からは、非行など問題を抱える青少年の立ち直りを支援するため、新たな社会活動の場を開拓する取組や地域社会全体で立ち直りを支援する体制づくりに関する事業を実施していく。

また、児童虐待の防止にも資するよう、親が学習や体験を通じ、家庭教育に関する理解を深めることができるような子どもの発達段階に応じた子育て講座を開設している。


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