第2節 精神的・身体的被害の回復・防止への取組


(13) 再被害防止に向けた関係機関の連携の充実
  警察庁・厚生労働省において、配偶者などからの暴力(DV)・人身取引・児童虐待の被害者等の保護に関する、警察・婦人相談所・児童相談所の連携を一層充実させている。
  警察においては、配偶者暴力相談支援センターなど関係機関団体と連携した被害者支援を講ずるなど、配偶者からの暴力事案に対し、犯罪被害者等の立場に立った適切な対応を図っている。
  人身取引事犯の被害者については、その適正な保護がなされるよう関係機関・団体と連携を図るとともに、犯罪被害者等が人身取引の被害を訴えることを容易とするようリーフレット50万部を作成し、関係省庁、在京関係国大使館、関係国在外公館、NGOなどの犯罪被害者等の目に触れやすい場所に広く配布するなどした。また、平成18年12月、人身取引に関係する国の在京大使館・国際機関・NGOなどを集めてコンタクトポイント会議を開催し、人身取引被害者の発見・保護などに関する意見交換を行うなどした。さらに、人身取引事犯などの被害者となっている女性などの早期保護を図るため、警察庁の委託を受けた民間団体が、市民から匿名で事件情報の通報を受け、これを警察に提供して、捜査などに役立てる事業を、19年10月から実施予定である(「人身取引被害者の保護の状況」:http://www.npa.go.jp/safetylife/seikan34/20070216.pdf)。

リーフレット
提供:警察庁


  児童虐待の被害者については、街頭補導、少年相談など様々な活動の機会を通じ、児童虐待事案の早期発見と児童相談所などへの確実な通告に努めるとともに、都道府県知事・児童相談所長による児童の安全確認や一時保護、立入調査を円滑化するための援助を実施している。また、要保護児童対策地域協議会などへの積極的な参画など、学校、児童相談所などの関係機関との情報交換や連携強化に努めている。
  厚生労働省において、配偶者などからの暴力(DV)の被害者、人身取引の被害者等の保護に関しては、婦人相談所において、警察や児童相談所などの関係機関との連携が不可欠であることから、その充実を図っている。特に、DV被害者の保護と支援について、関係機関相互の共通認識・総合調整が必要不可欠であることから、連携を強化するためのネットワークの整備にかかる費用を補助している。
  具体的には、婦人相談所は、配偶者からの暴力被害者の相談、保護、自立支援において、警察や福祉事務所などの関係機関との連携を図るため、連絡会議や事例検討会議を開催するとともに、事例集や関係機関の役割などの内容を掲載したパンフレットを作成し、関係機関に配布している。
  なお、平成19年7月、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律の一部を改正する法律」(平成19年法律第113号)が成立し、市町村基本計画の策定の努力義務化、配偶者暴力相談支援センターの業務の充実、保護命令制度の拡充などが行われた(20年1月施行)。
  児童相談所においては、触法少年・ぐ犯少年の通告、棄児、迷子、虐待を受けた子どもなど要保護児童の通告などについて、警察と連携を図っている。
  警察庁・文部科学省において、警察と学校など関係機関の通報連絡体制の活用、児童虐待防止ネットワークの活用、加害少年やその保護者に対する指導などの一層の充実を図り、再被害の防止に努めている。
  警察においては、非行や犯罪被害など個々の少年の抱える問題行動に応じた的確な対応を行うため、学校、警察、児童相談所の担当者などから成る少年サポートチームを編成し、それぞれの専門分野に応じた役割分担の下、少年への指導・助言を行っている。平成18年度は、少年サポートチームの効果的な運用を図るため、文部科学省と合同で、都道府県警察、関係機関・団体の実務担当者に対する研修会を実施した。
  平成18年9月には、警察庁から都道府県警察に「児童の安全の確認及び安全の確保を最優先とした児童虐待への対応について」(通達)を発出し、児童の保護に向けた関係機関との連携の強化などについて指示している。
  文部科学省においては、各教育委員会に対し、学校警察連絡協議会などを通じ、学校と警察が連携し、児童生徒の問題行動に対応できるよう、会議の場や通知などで促しており、平成18年8月には、いじめを苦にした中学生の自殺などを受け、「少年非行、いじめなど問題行動等への対応の在り方に関する再点検について」(通知)において学校内外における生徒指導体制の再点検と点検結果を踏まえた適切な対応の徹底を図った。
  また、要保護児童などに関し、「要保護児童対策地域協議会設置・運営指針」を踏まえ、虐待を受けている子どもを始めとする要保護児童の適切な保護を図るための関係機関との適切な連携について教育委員会などへ周知している。

要保護児童の適切な保護を図るための関係機関との適切な連携
提供:警察庁


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