第4節 推進体制に関する施策の取組状況


COLUMN 1

地方公共団体の主な取組

  地方公共団体は、基本法の規定により、国との役割分担を踏まえて、犯罪被害者等が被害を受けてから再び平穏な生活を取り戻すまでの間、途切れることなく支援などを行うという観点から、地域の実情に応じた、相談・情報の提供、医療サービスの提供、居住・雇用などの広範な施策を、自ら策定・実施することが求められている。
  犯罪被害者等の権利利益の保護が図られる社会の実現のためには、犯罪被害者等にとって身近な公的機関である地方公共団体の取組が重要となる。
  ここでは、平成18年度から19年7月末ころまでにおける地方公共団体の主な取組をいくつか紹介していく。

1 地方公共団体による基本計画の策定
  基本法は、地方公共団体に犯罪被害者等施策に関する基本的な計画を定める義務を課していない。これは地方公共団体が犯罪被害者等に有効な何らかの事業を実施すれば足りるという趣旨ではなく、各地域で総合的に施策を推進するための体制をどのように構築するかについて、各地域のニーズなど地域の実情を最も身近に把握している地方公共団体の判断に委ねるという趣旨によるものである。
  地方公共団体の中には基本法、国の基本計画の策定を受け総合的に施策を推進する観点から、自主的に計画などを策定して窓口部局を始め地方公共団体全体で犯罪被害者等の視点に立った施策の実施を図る団体が出てきている。

北海道犯罪被害者等支援基本計画の概要(ダイジェスト版)
北海道犯罪被害者等支援基本計画の概要(ダイジェスト版)
提供:北海道

  一例として北海道では、基本法や国の基本計画を受けて、平成19年3月に北海道犯罪被害者等支援基本計画が策定された。同計画の策定に当たっては、犯罪被害者等の支援に携わる関係者を構成委員とする「北海道犯罪被害者等支援基本計画(仮称)検討協議会」を設置するなどして検討が進められた。
  北海道のほかにも、宮城県、秋田県、千葉県、大阪府、岡山県、沖縄県が犯罪被害者等を対象とした基本計画か指針を策定している。また、茨城県、埼玉県、千葉県、神奈川県、新潟県、福井県、静岡県、三重県、滋賀県、京都府、兵庫県、島根県、広島県、京都市、広島市で、いわゆる、安全安心まちづくり計画やその他の計画・プランの中に犯罪被害者等施策を盛り込んでいる。今後こうした取組を行う団体がますます増えていくと見込まれる。

2 総合的対応窓口の設置
  犯罪被害者等が必要とする支援などは多岐にわたり、地域における関係機関・団体も多岐にわたっている。これまで、犯罪被害者等は各種支援制度について必要な情報を得ようとしても、そもそもどこに行けばよいか分からないという事態や、いわゆるたらい回し、関係機関・部署ごとに同じ内容を何度も始めから説明しなければならないなどの精神的・時間的負担を強いられることが少なくなかった。犯罪被害者等のニーズに応えるためには、その抱えている問題と要望を正確に把握し、それに応じた正確な情報提供や対応をすることが重要となる。
  基本計画は、内閣府において、犯罪被害者等に関する適切な情報提供などを行う総合的な対応窓口の設置などを地方公共団体に要請することとしており、これまで主管課室長会議を利用するなどしてその要請に努めてきた。基本計画の閣議決定から約1年半が経過した平成19年10月1日現在、28の地方公共団体が総合的対応窓口を設置し、犯罪被害者等からの相談に適切に対応している(犯罪被害者等施策に関する基礎資料 7.政府・地方公共団体の犯罪被害者等施策担当窓口一覧を参照)。
  一例として神奈川県では、犯罪被害者等施策の一つとして、平成19年6月1日、犯罪被害者等総合相談窓口を設置し、専門の相談員が県の犯罪被害者等施策全般に関する相談にワンストップで応じている。

神奈川県の犯罪被害者等総合相談窓口
神奈川県の犯罪被害者等総合相談窓口
提供:神奈川県

【相談日時】
  平日10時から16時まで   (土日、祝日、年末年始を除く。)
【相談方法】
  電 話 045-210-3530
  FAX 045-210-8954
  E-mail 神奈川県の犯罪被害者等支援ホームページから、相談用ホームメールを利用 http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/anzenansin/sien.html
  面 接 要電話予約
  所在地 〒231-8588 横浜市中区日本大通1神奈川県庁第二分庁舎1階 安全・安心まちづくりセンター内

3 地方公共団体における市町村との連携
  犯罪被害者等施策は、現在、主に都道府県か政令指定都市という単位で取り組んでいるところが多いが、今後、犯罪被害者等にとって最も身近な地方公共団体である市区町村の役割が非常に重要になってくると考えられる。
  秋田県、茨城県、群馬県、埼玉県、神奈川県、福井県、山梨県、長野県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、和歌山県、島根県、岡山県では、管下市町村を対象に、犯罪被害者等施策担当課長会議や研修会などを開催している。また、庁内職員対象の研修会や講演会に市町村職員が参加している例や、市町村に対し、広報啓発に活用できるパンフレットやリーフレットの配布、メールやメールマガジンの配信などを行っている例もある。

島根県の例 〈犯罪のない安全で安心なまちづくり市町村連絡会議〉
  犯罪のない安全で安心なまちづくり市町村連絡会議が平成19年7月4、5日の両日、県内2か所で開催され、市町村担当者や警察署担当者など延べ約60人が出席した。会議では、犯罪のない安全なまちづくり、県の犯罪被害者等に対する支援の取組について、島根県環境生活総務課安全安心スタッフや島根県警察本部から説明が行われた。内閣府からも職員を派遣して「犯罪被害者等施策並びに地方公共団体の責務について」の講演を行った。

会議の状況

会議の状況
会議の状況
提供:島根県

岡山県の例 〈岡山県市町村犯罪被害者等施策担当課長会議〉
  岡山県市町村犯罪被害者等施策担当課長会議が平成19年7月10日に岡山県運転免許センターにおいて開催され、県内の市町村担当課長・担当者、各警察署担当者など約80人が出席した。会議では、岡山県安全・安心まちづくり推進室や岡山県警察本部による取組状況についての説明、県内の犯罪被害者支援団体からその活動の紹介が行われた。内閣府からも職員を派遣し、「犯罪被害者等施策の現状及び市町村に求められる役割等について」の講演を行った。

会議の状況

会議の状況
会議の状況
提供:岡山県

4 特徴的な民間団体への支援
  地方公共団体の中には、あらかじめテーマを設定した上で民間団体などから、事業の提案を募集し、選考や選定された事業に対して援助を行う仕組みにより犯罪被害者団体などに財政的援助を行っている例がある。
<1> 岡山県の例
  岡山県備前県民局では、管内のボランティアグループ、市民活動団体、町内会などの地域団体、NPOなど、地域で活動する様々な団体との協働により、多様な県民ニーズや地域課題に応えるとともに、ボランティア・NPOなど地域活動の促進を図るため、重点テーマに沿った「協働事業」の提案を募集し、その中から協働することによって相乗効果が期待でき、先駆的で提案者の発想を生かした特色のあるものを選考して事業化を図る取組を推進している。
  この公募型協働事業に基づいて、平成18年7月から、NPO法人おかやま犯罪被害者サポート・ファミリーズが提案した事業「犯罪被害者等基本計画・具体化プロジェクト」が行われた。同事業では、犯罪被害者等や支援者団体、一般市民、専門職や行政職員の3者においてワーキンググループが作られ、NPO法人においては、ワーキンググループの運営、シンポジウムなどの企画実施、モデル事業の提案を行い、県民局においては、ワーキンググループへの参加や助言、広報、市町や県庁との調整を行った。協働事業としてワーキンググループ会合の実施(5回)、「自助グループ支援を考える」と題した連続講座(3回)、犯罪被害者週間におけるシンポジウムの開催を実施した。
<2> 大阪府の例
  大阪府では、犯罪被害者等に関する問題を社会全体で考え、ともに支えあう大阪の実現のために、犯罪被害当事者が自主的に行う取組に対して、大阪府犯罪被害者等支援社会づくり活動事業補助金を交付することとして、活動事業の募集を行った。
  対象となるのは、犯罪被害当事者により構成された団体・グループが自主的に行う犯罪被害者等支援社会の実現に向けた啓発活動であり、
○ 「大阪府犯罪被害者等支援のための取組指針」の基本的考え方を踏まえたもの
○ 犯罪被害者等に関する問題についての府民の関心を高め、理解を深めるもの
○ 広く犯罪被害者等への支援につながるもの
のいずれにも該当する事業である。
  平成19年6月から7月にかけて活動事業の募集を行ったところ、申請のあった以下の3事業が、本年度の「大阪府犯罪被害者等支援社会づくり活動事業」に選定された。

申請者 事業名 事業概要
少年犯罪被害当事者の会 シンポジウム「第9回WILL~もうひとつのこどもの日~」の開催 少年犯罪で殺された子どもたちを追悼し、残された家族の現状を広く社会に訴えるとともに、少年法について考えるシンポジウムを開催する。
全国犯罪被害者の会 関西集会 「全国犯罪被害者の会活動の記録(関西集会版)」(冊子)の作成 会のこれまでの活動をまとめた冊子を作成し、府内各市町村・関係団体などに配布することにより、犯罪被害者等を取り巻く問題について啓発する。
TAV交通死被害者の会 交通死被害者対策マニュアルなどの作成 交通犯罪被害者、家族のために会員自らの経験を基に、事故後の刑事裁判のプロセスなどの手続を記載したマニュアルや会の活動を紹介したリーフレットを作成し、被害者に対して早期段階での情報提供を行う。併せて、一般啓発用チラシを作成する。


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