第1部 犯罪被害者等のための施策と進捗状況

第2章 犯罪被害者等のための具体的施策



3 保護、捜査、公判等の過程における配慮等(基本法第19条関係)

《基本計画策定以前からの施策で、基本計画策定後も引き続き実施する施策》

(1) 交通事故捜査過程における被害者の負担軽減

 警察において、捜査過程における被害者に対する二次的被害を防止するため、事情聴取や被害者連絡等の実施に当たり、被害者の心情に配意した適切な対応に努めている。

 交通事故被害者の負担を軽減するため、被害者が処罰を望まず、悪質違反を伴わない軽傷事故に係る捜査書類の簡略化として、平成17年12月1日から、捜査書類簡略化対象事件の適用範囲を拡大して運用実施中であり、引き続き当該施策の適正な運用を図っていく。

 また、交通事故被害者等の事情聴取等に係る拘束時間の軽減等を図るため、事故多発交差点に交通事故自動記録装置を設置し、被害者の方が死亡し、又は、重体等で事情聴取ができない事故や当事者の言い分が食い違う事故に対し重点的に活用している。これまで全国に国費で724基設置しているが、今後も補助金による整備を進めていく予定である。

 さらに、捜査過程における被害者の二次的被害の防止・軽減を図るために、捜査に支障のない範囲での事故概要の説明等被害者等への対応に関するマニュアルを活用して、交通事故被害者等に対する適切な対応を推進している。

▼事情聴取する性犯罪捜査員

事情聴取する性犯罪捜査員 事情聴取室

事情聴取室

事情聴取する性犯罪捜査員 被害者対策用車両内

被害者対策用車両内


▼性犯罪捜査員の指定書交付式

性犯罪捜査員の指定書交付式

提供:警察庁

(2) 性犯罪捜査指導官等の設置

 警察において、被害者の精神的負担の軽減、性犯罪の被害の潜在化の防止を図るため、性犯罪捜査指導官等の設置を推進している。

 強姦、強制わいせつ等の性犯罪は、被害者の尊厳を踏みにじり、身体的のみならず精神的にも極めて重い被害を与える犯罪である。このため、警察では、従来から殺人、強盗等と並んで性犯罪を重要犯罪としてとらえ、その捜査に力を入れている。

 しかし、性犯罪の被害者は、精神的なショック、しゅう恥心から、警察に対する被害申告をためらうことも多く、また、捜査の過程における被害者に対する警察官の言動等によっては、被害者に二次的被害を与えかねず、そのことが、被害を潜在化させるとともに、ひいてはこうした潜在化が同様な被害を拡大させる要因ともなりかねないものとなっている。加えて、性犯罪を犯した者は、再び類似の事件を起こす傾向が強く、場合によっては更に殺人事件・傷害事件等の重大な事件に発展する危険性をはらんでいる。

 全国の都道府県警察の本部において、性犯罪捜査を担当する課への性犯罪捜査に精通した警視又は警部の階級にある警察官(性犯罪捜査指導官)の設置、同課の性犯罪捜査指導係への女性警察官の配置を図ること等により、性犯罪捜査に関する指導体制の拡充を行っている。平成18年4月1日現在、全国の都道府県警察本部の性犯罪捜査担当課において性犯罪捜査指導官が設置されており、同年7月には全国性犯罪捜査指導官等会議を開催し、性犯罪捜査指導係への女性警察官の配置の拡充等を指示した。

 また、性犯罪の被害者が捜査の過程において受ける精神的負担を少しでも緩和するためには、被害者の望む性別の警察官によって対応することが必要である。

 このため、各都道府県警察では、警察本部の性犯罪捜査指導係や警察署の性犯罪捜査を担当する係への女性の警察官の配置を進めるとともに、性犯罪が発生した場合に捜査に当たる性犯罪捜査員として女性の警察官を指定している。

 これらの女性の警察官は、被害者からの事情聴取を始め、証拠採取、証拠品の受領、病院等への付添い、捜査状況の連絡等性犯罪の被害者にかかわる様々な業務に従事している。

 平成18年4月1日現在、全国の性犯罪捜査指導係員は288名で、うち女性警察官128名が配置され、また、性犯罪指定捜査員として指定された女性警察官は、全国の都道府県において、5,369名である。

(3) 性犯罪捜査証拠採取セットの整備

 性犯罪の被害を受けた場合、その証拠となるものが被害者の身体や衣類に残されていることが多く、その痕跡が失われないよう、被害直後に証拠の採取や衣類の提出が必要となることがある。

 全国の都道府県警察において、性犯罪事件の認知後、証拠採取を行うに当たって、被害者の精神的負担の軽減を図るため、証拠採取に必要な用具や被害者の衣類を預かる際の着替え等をまとめた性犯罪捜査証拠採取セットを整備している。

 平成17、18年度は、同採取セットの購入費に対し、予算措置(補助金)を行った。

 また、平成18年7月に全国性犯罪捜査指導官等会議を開催し、同採取セットの整備等を指示する等、引き続き本施策の推進について指導するとともに、同セットの整備状況について把握することとしている。

 性犯罪捜査証拠採取セットは、平成16年4月1日現在、全国で2,435セット保有し、平成17年4月1日現在、全国で2,390セット、平成18年4月1日現在、全国で2,472セットそれぞれ保有している。

(4) 性犯罪被害者捜査用ダミー人形の整備

 性犯罪の被害を受けた場合、その証拠となるものが被害者の身体や衣類に残されていることが多く、その痕跡が失われないよう、被害直後に証拠の採取や衣類の提出が必要となることがある。

 全国の都道府県警察において、性犯罪事件の被害状況の再現を行う際、被害者の精神的負担の軽減を図るため、被害者の代わりとして使用する性犯罪被害者捜査用ダミー人形を整備している。

 また、平成18年7月に全国性犯罪捜査指導官等会議を開催し、性犯罪被害者捜査用ダミー人形の整備等を指示する等、引き続き、本施策の推進について指導するとともに、同ダミー人形の整備状況について把握することとしている。

 平成16年4月1日現在、性犯罪被害者捜査用ダミー人形は、全国で、1,195体、平成17年4月1日現在で、1,263体、平成18年4月1日現在、1,533体整備している。



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