第1部 犯罪被害者等のための施策と進捗状況

第2章 犯罪被害者等のための具体的施策



2 安全の確保(基本法第15条関係)

《基本計画策定以前からの施策で、基本計画策定後も引き続き実施する施策》

(1) 携帯用自動通報装置の整備

 警察において、被害者に対して再度危害が加えられることを未然に防止するため、携帯用自動通報装置を被害者に貸し出し、被害者の不安感の払拭や安全確保を図っている。

(2) 企業及び行政対象暴力対策の推進

 警察において、企業及び行政対象暴力事犯に対して、検挙の徹底、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)(以下「暴力団対策法」という。)の効果的な運用に努めるとともに、不当要求防止責任者講習等を実施することにより、企業及び行政対象暴力対策を積極的に推進し、被害者の保護、救済を図っている。

 企業対象暴力対策については、企業対象暴力事犯の取締りの徹底、暴力団対策法の効果的な運用のほか、不当要求防止責任者講習を実施するとともに、都道府県警察本部に「企業対象暴力対策本部」を設置して、

 ・企業からの暴力団、総会屋等に関する各種相談体制の充実

 ・企業、業界全体に対する指導

 ・総会屋等との関係遮断に関する広報啓発活動

 ・情報に応じた保護対策

等を積極的に行っている。

 行政対象暴力対策については、行政対象暴力事犯の取締りの徹底、暴力団対策法の効果的な運用のほか、不当要求防止責任者講習を実施するとともに、全国の地方公共団体に対して、暴力団等の不当要求に対する組織的な対応を規定する、いわゆるコンプライアンス条例・要綱等を制定するよう働きかけを行っている。平成18年4月1日現在、コンプライアンス条例・要綱等は、全国の地方公共団体の約90.1%において制定されている。

 また、行政機関等における組織的対応の強化を推進するため、平成15年7月以降、「行政対象暴力関係省庁等連絡会議」を3回にわたって開催し、関係省庁等が連携しながら、一体となって不当要求等に対する暴力団排除対策を推進していくこと等を申し合わせている。

 都道府県警察において、平成17年中、不当要求防止責任者講習を1,736回実施、合計6万8,085人が受講し、行政機関における責任者数は、平成17年末現在、9万1,118人となっている。

 既存の施策を引き続き推進した結果、平成17年中は、企業及び行政対象暴力事犯を530件検挙している。

(3) 詐欺等の再被害防止に係る広報啓発活動の推進

 警察において、詐欺等の被害者が同種の被害を受けることのないよう、例えば、悪質商法の多様な手口を紹介するなど、各種広報媒体を通じて広報啓発活動を実施している。

(4) 再被害防止のための被害者等に対する出所情報通知制度

 法務省において、平成13年10月1日より被害者等の保護(再被害防止)を図るための出所情報通知制度を実施している。

 刑事施設、地方更生保護委員会又は保護観察所は、警察が再被害防止措置上必要とする受刑者の釈放等に関する情報の通報要請を行った場合、その受刑者につき、犯罪の動機・態様及び組織的背景、加害者と被害者等との関係、加害者の言動その他の状況に照らし、警察に対する通報を行うのが相当であると認めるときは、受刑者の釈放等に関する情報(自由刑の執行終了による釈放予定、予定年月日及び帰住予定地、仮釈放による釈放、予定年月日及び指定帰住地等)を通報するとともに、警察においては、下記(11)の再被害防止措置を講じるとともに、その実施に当たり、警察によって把握した情報及び刑事施設等から通報を受けた情報について、提供の必要性を個別に判断した上で被害者等に対して教示している。

 また、被害者が加害者との接触回避等の措置を講じることにより再被害を避けることができるよう、被害者等が希望する場合には、上記と同様に検察官が相当と認めるときは、被害者等に対し、受刑者の釈放前に釈放予定に関する通知を行っている。

悪質商法イメージ 1

悪質商法イメージ 2

出典:警視庁ホームページ

通知の内容等は以下のとおりである。

 (1) 通知の内容

  ア 釈放予定時期

    原則として、月の上旬・中旬・下旬を通知することとするが、被害者等が転居その他加害者との接触回避等のための措置を講じるために不可欠である場合には、釈放予定日を通知する。

  イ 帰住先

    被害者等が転居その他加害者との接触回避等の措置を講じるために特に必要な場合で、帰住先が被害者等の住居地と同一都道府県内の場合は、市区町村名(ただし、必要不可欠な場合は、町字名)まで、帰住先が被害者等の住居地と異なる都道府県の場合は、都道府県名まで通知する。

 (2) 通知の時期

   被害者等が加害者との接触回避等のための措置を講じるのに必要な期間を考慮しながら、原則として、釈放予定の1~2か月前から数日前の間に通知する。

 本施策については、実施後4年余りしか経過していないが、各会議等において制度の趣旨等について周知を図り、実務担当者からも被害者等に対して案内をしていることから、通知件数も徐々に増加している。

 実施状況については、2―2―1表のとおりである。

▼2―2―1表 被害者等に対する出所情報通知状況

2―2―1表 被害者等に対する出所情報通知状況



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