我が国における犯罪被害者等施策の経緯等 -年次報告書の第1回の作成に当たって-

はじめに


 平成16年12月、犯罪被害者等が直面している困難な状況を踏まえ、これを打開し、その権利利益の保護を図るべく、犯罪被害者等のための施策に府省庁横断的に取り組み、総合的かつ計画的に推進していく基本構想を示した「犯罪被害者等基本法(平成16年法律第161号)」(以下「基本法」という。)が制定された。同法に基づき、政府が総合的かつ長期的に講ずべき犯罪被害者等のための施策の大綱として、「犯罪被害者等基本計画」(以下「基本計画」という。)が、平成17年12月に閣議決定され、我が国における犯罪被害者等のための施策は、総合的な取組に向けてその第一歩を踏み出した。

 犯罪被害者等のための施策については、従来、警察庁、法務省その他の関係省庁による施策が実施されていたが、これらの施策は、個別の省庁が時々の課題に対処して行ってきたものであり、犯罪被害者等の有する広範かつ多様なニーズの全般に応え得ていたわけではなかった。

 基本法の制定及び基本計画の策定は、高まりを見せていた犯罪被害者等からの声に応えたものであり、これにより、我が国の犯罪被害者等施策は、初めて、府省庁横断的に総合的かつ長期的な取組として行われることとなったのである。

 以下では、基本法、基本計画が定められた意義や犯罪被害者等施策の重要性の理解に資するため、基本法制定以前の我が国の犯罪被害者等のための取組について概観するとともに、犯罪被害者等の置かれていた状況・ニーズ、それを受けて制定・策定された基本法及び基本計画の概要について、述べることとする。



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