日時: | 平成21年7月21日(火)10時00分~12時25分 | |
場所: | 中央合同庁舎4号館4階 共用第2特別会議室 | |
出席者: | ||
議長 | 山上 皓 | 特定非営利活動法人全国被害者支援ネットワーク理事長 |
大久保 恵美子 | (社)被害者支援都民センター理事 | |
小西 聖子 | 武蔵野大学人間関係学部教授 | |
瀬川 晃 | 同志社大学法学部教授 | |
中島 聡美 | 国立精神・神経センター精神保健研究所 成人精神保健部犯罪被害者等支援研究室長 | |
松村 恒夫 | 全国犯罪被害者の会(あすの会)副代表幹事 | |
山田 勝利 | 弁護士 | |
殿川 一郎 | 内閣府犯罪被害者等施策推進室長 | |
坂口 正芳 | 警察庁長官官房総括審議官 | |
代理 | 関 博之 | 総務省大臣官房企画課長 |
甲斐 行夫 | 法務省大臣官房審議官 | |
土屋 定之 | 文部科学省大臣官房総括審議官 | |
代理 | 度山 徹 | 厚生労働省社会保障担当参事官室政策企画官 |
代理 | 三善 由幸 | 国土交通省住宅局住宅政策課課長補佐 |
オブザーバー | 河本 雅也 | 最高裁判所刑事局第二課長 |
浅香 竜太 | 最高裁判所家庭局第二課長 | |
布川 裕子 | 内閣府男女共同参画局暴力対策担当補佐 |
(議事内容)
○内閣府 それでは、ただいまから「第6回基本計画推進専門委員等会議」を開催 いたします。○山上議長 それでは、司会を務めさせていただきます。
本日は、野田犯罪被害者等施策担当大臣に御出席いただいておりますので、ごあいさつをいただきます。
○野田担当大臣 皆様、おはようございます。山上議長を初め皆様方には、本日もお忙しい中、6回目ということでありますけれども、御参集いただきまして本当にありがとうございます。
昨年12月、前回の会議に出席予定だったのですけれども、所要で参加できなかったことを深くおわびするとともに、その間も皆様方の御尽力をいただきまして、基本計画に盛り込まれているいろいろな主な施策が非常に迅速に進められていることについて伺っておりまして、心から敬意を表する次第であります。
今日の会議も、この基本計画の進捗状況等を引き続き検証していただくことになっているそうですが、最近では、例の時効の見直しも法務大臣から話が出てございまして、そういうことについても関係省庁からの報告があるやに聞いています。
私自身も、犯罪被害者の施策に関わるのは、この大臣をいただいて1年近くになるわけですけれども、他の主要な施策に比べて皆様方の熱意で、精神的にも、またお金の面においてもいろいろなことが随分展開されてきたということは本当にすばらしいことだと思いますが、私のところに届く被害者の声は、まだまだなのだ、もっと頑張ってほしいという声をいただいておりまして、さらにまた皆様方には御活 躍を賜りたいと思っております。
今日は、1つだけ、ちょっと個人的なことになるかもしれませんけれども、最近、内閣府を悩ませている私の思いの一つに、裁判員制度が始まります。性犯罪被害者については、強姦致傷は重要な犯罪ということで、ほかの犯罪同様、裁判員の方に見ていただくというか、決めていただく話になってくるのですが、実はそれにコミットしている各種団体。たまたま参議院には、参議院議員をやっている弁護士さんからも、実際、自分が今、関わっているということで非常な懸念が挙がってきています。
それで、私自身は裁判員制度とかけ離れた国会議員なので、もう一度内閣府にも 頼んだし、私自身もつたないながらもその議論の経過を調べたのですけれども、メインストリームは犯罪者というか加害者であり、また弁護士さんであり、裁判官であり、またそこに来る裁判員の人たちのことは随分熱心に語られていたけれども、実際に犯罪の被害に遭った人たちのポジションというと、とりわけ性犯罪被害につきましてはさらりと流されてしまっているのではないかということで、にわかに現実味を帯びる中、今日は女性の委員も多いのですけれども、これは非常に特殊性のある犯罪で、被害者は100%女性という、男性には恐らく経験し得ないことであろうと思います。
私自身も実際の被害者の手記とかを読みましたけれども、自分がこうなったらどうかと思ったときに、かなりシビアな被害であるということはもう明らかでありますので、こういうところは裁判員制度の中で実は欠落していた部分ではないか。せっかく犯罪被害者施策という新しい顔ができた中で、こういうところでも是非御検討いただきたいと思っています。法務大臣にも申し上げました。ただ、裁判員制度をとりあえず始めたい。いろいろ言い出すと切りがないということなので、今はちょっと我慢させられている状況にありますけれども、本当にこれが犯罪被害者のためのものになるかどうかというのは、立ちどまっても問題ないと思います。
新聞をちらっと見たら、さいたま地裁で暴力団の事案があって、これを裁判員がやってしまうと御礼参りをされて大変なことになるのではないか。裁判員の立場に立つとこういう動きが出てくるのに、何で被害者の立場ではこういう声が上がってこないのかという矛盾を私は感じているのです。私は、まだ犯罪被害者の施策に対して素人です。先生方のように長年のキャリアがあるわけではないので、底浅い考え方かもしれませんけれども、そういうことも踏まえて、犯罪被害者が第二の被害をこうむらないための裁判員制度であってほしいと願っております。
今日、実は解散することになりまして、遺言みたいになってしまうのですけれども、とても私は重要なことだと思っているのです。そういうことなので、ぜひよろしくお願いします。後半は紙に書いていないことをしゃべってしまったので、申しわけありませんが、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
○山上議長 野田大臣、ありがとうございました。
○山上議長 先ほどの室長の話にもありましたとおり、本年度の委員改選に伴って構成員の変更がありました。
岡村勲あすの会代表幹事が退任され、新たに松村恒夫あすの会副代表幹事に専門委員に御就任いただきましたので、松村委員、一言ごあいさつをお願いいたします。
○松村構成員 あすの会副代表幹事の松村でございます。岡村代表にかわりまして、今回務めさせていただくことになりました。
今までも内閣府で国民意識調査とか被害者類型別調査の分析委員としてやらせていただきましたけれども、また全く新しい分野に挑戦することになりました。岡村代表だけではなくて、あすの会の顧問弁護団の先生方、それから会員の意見を代表して反映させていけたらいいなと思っております。よろしくお願いいたします。
○山上議長 ありがとうございました。
それでは、議事を進めさせていただきます。
本日は、「犯罪被害者等基本計画の進捗状況について」は、事前に有識者構成員からいただいた御質問等について各省庁から説明をいただきます。関係省庁の説明が一通り終わりました後、質疑応答を行います。
その後、犯罪被害者等基本計画を契機として措置された被害者参加制度、犯罪被害者給付制度の拡充について、運用状況の検証を行いたいと思います。
まず、法務省から被害者参加制度について説明を聴取した後、質疑応答、意見交換を行います。
その後、警察庁から犯罪被害者給付制度の運用状況等について説明を聴取し、質疑応答、意見交換を行います。
最後に、犯罪被害者等基本計画に盛り込まれている事項ではありませんが、犯罪被害者の方々からの要望を受けて検討を始められたということで、我々も承知しておく必要があるかと思いますので、法務省から「凶悪・重大犯罪の公訴時効のあり方の検討状況について」御説明をいただきます。
それでは、内閣府犯罪被害者等施策推進室からよろしくお願いします。
○内閣府 それでは、内閣府から御説明させていただきます。
資料でございますけれども、以後、各省庁からの説明はこういう横長の、上にブルーのラインのある資料がお配りしてあるかと思います。これによりまして、それぞれ御意見、御質問を各省庁別に編冊しておりますので、最初、内閣府が出てまいります。以下、これに沿って説明いたしますが、その前に、この資料に関して一部 修正がございますので、御連絡させていただきます。
3ページ目、一番最初に出ている委員からの質問、意見等で、個別のテーマ以外の部分、一番厚い部分ですが、それの3ページ目、内閣府(男女局)の中の2番目の質問、性暴力云々の部分は、法務省等への質問ということで、男女局関係ではありませんので削除していただきたいと思います。
それでは、内閣府の回答を説明させていただきます。1ページをお願いいたします。内閣府の関係、全部で19の質問があり、時間の関係もございますので、それぞれ関連する質問と思われるものをまとめて適宜回答させていただきます。したがって、この回答ぶりで趣旨が明確でないというお気づきの点があれば、後ほどの質疑応答の時間でまた御指摘いただければ改めてお答えさせていただきたいと存じます。
まず、No.1と2の関係を説明させていただきます。これは、地方交付税措置等 に関係する御質問等でございます。
この地方交付税の要望につきましては、内閣府から総務省に要望しました結果、平成20年度から都道府県について認められておりまして、内容は犯罪被害対策の企画立案や相談業務に要する経費などでございます。地方交付税措置の説明については、後ほど総務省からも御説明があろうかと思いますけれども、この措置を踏まえて、それぞれ都道府県で具体的な予算措置をして執行されることになりますが、最終的に予算措置をどうするかは都道府県の判断ということでございますので、この交付税措置された措置がそのまま当然のように予算措置がされて執行されるものではないということです。
具体的にどうなっているかは、御質問もあるように、それぞれの都道府県の予算状況を調べないとわからないわけですけれども、私どもの方としては、予算措置状況全般を把握しておりませんので、そこをストレートにお答えすることはできませんが、現在、地方公共団体でのいろいろな犯罪施策については一定の把握をしておりますし、また今般、改めての調査も別途しております。したがって、そういった調査結果がまとまれば、この御質問への具体的な一部回答にもなろうかと思いますので、おおむね10月ごろになろうかと思いますけれども、その調査結果については委員の皆様にも参考に送付させていただきたいと考えております。
続きまして、問3、問4の関係でありますが、ここは国による民間団体への財政的援助等の関連の施策についてでございます。警察庁等、ほかの省庁からも後ほど御説明があろうかと思いますが、内閣府の関係でのお答えをさせていただきたいと思います。
内閣府では、民間団体に対する直接的な財政援助というのは行っておりませんが、内閣府が地方公共団体と連携して行っている啓発モデル事業におきまして、民間支援団体の相談員向けの研修事業などを行っております。
それから、民間被害者支援団体における研修カリキュラムモデル案というものを作成して配布いたしております。また、内閣府で作成した啓発用DVDや、その他さまざまな調査研究の結果なども民間団体の皆様に御提供させていただいているところでございまして、こういった事業によりまして間接的に財政支援的なことにもなっている面はあろうかと存じます。
それから、地方公共団体が民間団体の財政的支援をどうやっているかについては、最新の状況について、先ほど申し上げたとおり、現在調査をして、その中にそういった項目を入れておりますので、後刻まとめてお送りさせていただきたいと思っております。
なお、地域で活動している民間団体に対する援助というものについては、基本的にはそれぞれの地方公共団体と地域で取り組んでいただくものと思っておりますけれども、御案内のとおり、地方の財政状況等も厳しいということで、一般的に申し上げれば、なかなか各地方公共団体においても民間団体を直接財政的に支援するということは難しいのではないか。また、そういった事業に対する支援ということについても、緊急性等がかなり厳しく吟味されているというのが現状ではないかと思われます。したがって、私どもとしても、そういった状況を改めて調査いたしまして、今後、そういう厳しい状況の中で、民間団体に対する財政的援助の問題については、今の状況の調査結果も踏まえて検討していきたいと考えております。
それから、問5でございますが、全国的な傘団体への援助ということでございます。
問いの中の具体的な認定制度につきましては、全国被害者支援ネットワークで検討が進められていると承知いたしております。現時点では、内閣府の方に具体的にこういうことでの協力という形でいただいておりませんけれども、当然のことながら、私どもの方としては具体的にこの事業が進む中で、可能な限りの協力をさせていただきたいと思っております。
なお、平成19年11月にこういった問題について、支援のための連携に関する検討会の最終とりまとめがございますけれども、その中で認定制度の導入等がまとめられておりまして、国においても必要な支援を行うということで、先ほどちょっと申し上げましたけれども、私どもの方でも平成20年度に研修カリキュラムモデル案を作成し、そしてDVD教材というのを現在行っておるということがございますので、こういったものが少しでも御協力になればと思っているところでございます。
それから、問6、国による財政的援助に関する施策の関係でございまして、この中で具体的に研修センターをつくるといったことの検討の御要請というものが述べられております。
これにつきましては、民間団体の活動については、公的機関では難しい、きめ細かなで柔軟性に富んだ支援というものがもともと期待されているということで、そういう中で民間のいろいろな相談体制というものも充実することが期待されているわけですけれども、ある程度の官と民の役割分担といいましょうか、そういう考え方からいたしますと、国の方でセンターをつくって責任を持って民間団体のスタッフの研修を行うということには、やや疑問があるのではないかと思います。
それから、これはある意味では言わずもがなのことになりますけれども、行財政改革等の観点からいいますと、新たに政府の中にこういう組織や施設を設けて事業を実施するということを議論しようとしますと、かなり高いハードルがあるとも思います。したがって、現段階におきましては、国によって全国研修センターを設置すること自体は困難ではないかと考えます。ただし、民間団体のされる研修への協力として、講師の紹介、職員の講師としての派遣、会場の提供等、できる範囲のことは可能な限りの協力をしていきたいと考えております。
それから、7番、8番、9番でございます。これは、犯罪被害者あるいは犯罪被害者支援を行う民間の活動を財政的に援助するための、いわゆる基金の設立についての状況はどうか、そういうことを検討してほしいという趣旨の御意見等でございますが、まずこれにつきましては、現在の基本計画のもとで示されておりますのは、この関係は、1つは犯罪被害者自身に対する経済的支援のあり方を議論した検討会におきまして、こういうとりまとめがなされました。すなわち、公的な救済の対象とならない犯罪被害者等であって、個別の事情に照らし、何らかの救済の手を差し伸べないと基本法の趣旨を全うできないと思われる特別な理由のある者に対しては、社会連帯、共助の精神に基づき、民間の浄財による基金において、一定の指針のもとに給付を行うような仕組みを構築されるべきであるというとりまとめがなされました。この中に、民間の浄財による基金というくだりがございます。
これにつきましては、私どもとしてもとりまとめではっきりと構築されるべきだという指摘がされておりますので、民間のということではありますけれども、関係省庁とも御相談し、御協力もお願いしながら、これは後ほど警察庁の方から御説明があろうかと思いますけれども、既存の基金になりますけれども、財団法人犯罪被害救援基金において、今、申し上げましたような趣旨の支援金支給事業が今年から新たに開始されたということがございます。私どもとしては、これは一つの検討会の結果を踏まえた前進ではないかと思っております。これは既存の基金を活用したわけですけれども、今後の基金の運用状況を見て、またこれから見直し等が必要であれば検討していくということになろうかと思います。
それから、今のは被害者へ直接経済的支援を行うという観点ですけれども、もう一つ、民間団体のさまざまな支援活動を財政的に支援、支えるための基金ということについてが、なおあろうかと思いますが、これにつきましては先ほどの問3と4のところでも申し上げたように、民間団体への財政的援助というもの、あるいは民間団体の財政事情というものの実態がもちろん前提にあって、その上での援助のあり方という問題がございますけれども、そういう中で、私どもとしてはまずは現在のいろいろな支援というものをする。そして、民間浄財が集まるようないろいろな取り組みを国、地方公共団体もするというスキームになっておりますので、それの努力をしながら、先ほど来申し上げているように、現在の実情の調査結果も踏まえて、今後、民間団体への財政援助のあり方が議論になるのだろうと思います。まずは、そういった現状での努力と議論というものがあるべきではないかと考えております。
続きまして、問10、11、12でございます。ここは、それぞれ地方公共団体でのいろいろな取り組み状況等を説明願いたいということでございます。
まず、条例についてでございますけれども、これにつきましても先ほど来と同じようなことで恐縮でございますけれども、現在、最新の状況については調査を実施しておりまして、その中でお答えできるようにしていきたいと思っておりますが、この4月に各都道府県に照会したところでは、犯罪被害者支援に特化した条例を持つのは、宮城県と神奈川県の2県でございます。それから、安全まちづくり条例など、他の防犯などの目的とあわせてといいますか、そういう条例の中で犯罪被害者支援の項目が盛り込まれている条例につきましては、岩手、福島、茨城、埼玉、千葉、新潟、岐阜、愛知、京都、兵庫、和歌山、鳥取、島根、香川、沖縄の16府県でございます。市町村につきましては、十分把握しておりませんので、先ほど来の調査の結果で御報告させていただきたいと思います。
それから、総合的対応窓口の設置状況については、これについても現在調査をかけておりますので、その結果を踏まえて御報告させていただきたいと存じます。
続きまして、問13と14の部分でございます。犯罪被害者支援ハンドブック・モデル案の状況ということでございます。
これにつきましては、昨年度にハンドブック・モデル案そのものは完成いたしまして、関係の皆様のところに配付させていただいておりますが、これに基づく事業としまして、本年6月から内閣府の支援事業ということで、7県において県版の犯罪被害者支援ハンドブックの作成を始めたところでございます。これは、内閣府で支援しながらやるという形にしておりますが、そのほか山形や岡山などで、既にモデル案を参考に独自に作成した県もございます。この状況についても地方公共団体の調査の項目に入れておりますので、詳しいことはさらにフォローしていきたいと考えております。
続きまして、15、16、17でございます。広報・啓発の取り組み等のあり方なり進捗状況ということでございます。
広報・啓発事業につきましては、実は犯罪被害施策だけに限らず、いろいろな広報・啓発事業について、全面的にということではないのでしょうけれども、その一部の事業について、自民党なり民主党などでむだだということで見直すべきだという指摘がされているという問題もございます。確かにこういった事業については、効果が目に見えるような形であらわれて、そういうものを示すということはなかなか難しい面もございます。
内閣府では、御案内のとおり犯罪被害者週間において国民の集い事業を行っておりまして、東京で中央大会、何か所かの地方で地方大会を行っております。その都度、いろいろなポスターを掲示したり、また地方では幅広く一般の皆さんに御参加いただけるようにということで、プログラムにコンサートを盛り込むなどの工夫をしておりますが、一般の方が関心を持って参加してくれることはそう多くはないというのが現状であろうかと思います。また、地方公共団体と共催して犯罪被害者等の講演要請を受け付けるような支援の事業も行っております。そういう取り組みについては、より効果的な事業の推進ということで引き続き努力していきたいと考えております。
それから、ちょっと具体的な御指摘で、業者任せ云々という御批判もいただいておりますが、私どもとしても、業者の皆さんには極力少ない費用で効率的に事業をやってもらうということなのですけれども、要するに事務的な作業などはそういう形でお願いすることになりますけれども、行事の内容とか企画立案そのものは、あくまでも役所の方で、あるいは有識者の皆さんの意見を踏まえて行うということで、いわゆる業者任せということにならないように引き続き努力していきたいと思っております。
それから、民間助成団体などへの働きかけという部分がございました。これにつきましては、具体的には日本財団などのことかと存じますけれども、当室がそちらの財団の方からヒアリングなどを受けたことがございますが、そういう際には民間支援団体の果たしている役割の重要性、事業の重要性ということについて説明を常々しているところでございます。
それから、問18、被害者支援ネットワークの募金活動への協力ということでございます。
これにつきましては、私どもも民間浄財の活用ということで、大きな意味でいろいろな御協力をこれまでもしているつもりでございます。今後ともその辺は十分努力していかなければいけませんけれども、こういう個別の御要望でございますので、これにつきまして関係部局との調整も必要でございますので、また具体的な内容を聞かせていただいて検討させていただきたいと存じます。
それから、私の方からのとりあえず最後になりますけれども、振り込め詐欺余剰金の使い道をどう考えているかという金融庁への御質問でございますが、金融庁がこの会議の構成員でないので、文書回答をいただいておりますので、私の方でそれを読み上げさせていただきます。
振り込め詐欺救済法に基づき、振り込め詐欺等の被害者に分配されなかった残余金については、振り込め詐欺救済法第20条において犯罪被害者等の支援の充実のために支出するとされているところであり、残余金の発生状況、発生の見込みや関係者(議員立法の提出者や有識者)の御意見を踏まえつつ、その支出内容、方法について検討してまいりたいという回答がございました。
この問題につきましては、当室としても、今の答えの中にもありましたように、この議員立法でできた法律によって犯罪被害者等の支援の充実のために支出するということでございますので、そういった趣旨を前提とすれば、当然具体的に検討される場合には、犯罪被害者なり支援団体の意見が反映される、あるいは私ども施策を担当する立場からも意見を申し上げるべきものだろうと思っておりまして、我々としても必要な情報収集なり連携なりをとっていくようにしたいと考えているところでございます。とりあえず、私の方からは以上でございます。
○内閣府 次は、内閣府男女共同参画局の方から説明させていただきます。
資料の3ページ、1番の御質問に対してでございますけれども、問いの一番最後の部分です。
「DVと児童虐待が一緒になされているような場合では、母親からの通告は困難と思われる。児童相談所と配偶者暴力相談機関との連携はどのようになっているのか」という中島専門委員からの御質問に対しまして回答させていただきます。
配偶者暴力防止法に基づき定められております、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策に関する基本的な方針には、被害者支援に当たりまして関係機関との連携のあり方が細かく定められております。
その中で、配偶者暴力相談支援センターへの通報の内容から、児童虐待に当たると思われる場合には、児童虐待防止法に基づきまして、支援センターから市町村、都道府県の設置する福祉事務所、または児童相談所に通告を行うことが必要である旨が規定されております。
また、被害者支援や子どもに対する援助に際しまして、児童相談所と十分な連携を図るように記述されているところでございます。
また、関係機関との連絡協議会の設置とか関連する地域ネットワークの活用等を促進しているところでございます。以上です。
○山上議長 どうもありがとうございました。次に、警察庁から御説明をお願いします。
○警察庁 警察庁でございます。いただきました御質問のうち犯給制度の問題につきましては、後ほど犯罪被害者給付制度の運用状況等の御説明を申し上げる中で、あわせてお答えしたいと思います。
それでは、当庁関係の御質問、まず1、2、3の性犯罪被害者の保護、支援についての御質問でございます。
まず、山上専門委員の御質問がございました性犯罪被害者が加害者側からの威圧で告訴の取り下げを迫られる事態についてどれぐらいあるかということでございますが、これは詳しく把握しておりませんけれども、当方としましても性犯罪の被害者が大変な負担を負っていることにつきましては、特に配慮すべきものと認識しております。
そこで、警察におきましては、専門の研修を受け、性犯罪捜査員として指定されました女性警察官による事情聴取など、被害者の心情に配意した捜査活動。
2点目としまして、事件発生時における迅速、適切な診断、治療、証拠採取や女性医師による診断などを行うための産婦人科医会とのネットワークの構築。
3点目としまして、性犯罪被害を原因とする妊娠とか性感染症の防止等に対しまして、被害者の身体的・精神的負担の軽減を図るための緊急避難などに要する経費の公的負担といったことを実施しております。
引き続き、性犯罪被害者の確保、負担の軽減のため、これらの活動を推進してまいりたいと思っております。
次に、One stop centerについてでありますが、本年3月、当庁から担当官を韓国に派遣しまして現地を視察し、その先進的な活動の状況を全国の都道府県警察に紹介したところであります。
また、小西委員からは、性犯罪被害者に特化した枠組みの検討に関する御意見がございました。警察における性犯罪被害者支援の更なる充実につきましては、韓国のワンストップセンターの取り組みも踏まえつつ、今後検討してまいりたいと考えております。
次に、御質問事項の4、5、6、7、8、民間被害者支援団体への財政的援助の関係でございます。
これにつきましては、警察庁資料4の資料1「国による民間被害者支援団体に対する財政的援助」という青い資料を見ていただきまして、右上に当たります民間被害者支援団体に対する相談業務の委託に要する経費、左下にあります民間被害者支援団体に対する直接支援業務の委託に要する経費、右下の民間被害者支援団体に対する被害者支援に関する理解の増進等に係る業務の委託に要する経費、これを警察庁が都道府県警察費補助金として予算措置しております。
これは、あくまでも国における積算上の話でありますが、1団体当たりどれくらいの財政的援助が可能かとなりますと、この制度をフルに活用した場合に、まず相談業務の委託として、早期援助団体に対しましては約500万円、広報・啓発費として220万円、直接支援業務委託として、早期援助団体であれば約400万円が措置される計算になります。これを合計しますと、早期援助団体は総額1,120万円弱、それと非指定でも約660万円となります。
こういった補助金に応じました各都道府県での措置状況ですが、平成18年度は全国で総額約2,900万円であったものが、平成21年度におきましては総額約1億2,000万円に拡充されております。とはいえ、まだ各都道府県警察、それぞれの予算措置状況においては、先ほど申し上げたような国の積算上の額にはまだ達していないところがほとんどでございます。警察庁としましては、引き続きこれらの予算が十分措置されるよう、都道府県警察を指導してまいりたいと思っております。
また一方で、これらの都道府県警察費補助金は、事業を委託するための経費でありますので、委託先の民間団体が現実に事業を実施してくれる体制、能力が整っていることが必要になります。そういった意味で、民間被害者支援団体におかれましても、そのためのいろいろな準備、御努力が必要になりますので、その点につきましてはどうかよろしくお願いしたいと思います。
また、山上先生からは、全国被害者支援ネットワーク及び各加盟団体が展開しようと準備している募金活動の施策に関する要望をいただいております。
警察庁としましても、活動内容を踏まえまして、可能なことにつきましては協力してまいりたいと考えております。
次に、御質問事項の9番、民間被害者支援団体への財政的援助の関係でございます。
全国被害者支援ネットワークへの援助とか犯罪被害相談員等の認定制度への協力等につきまして、大久保委員から御質問いただいております。
先ほどの資料1の中の左上の民間被害者支援団体等に対する活動支援に要する経費が、全国被害者支援ネットワークへの財政的援助の予算措置になります。具体的には、このネットワークが主催されます研修会等、事業に関する経費につきまして援助しております。
また、ネットワークで御検討されています犯罪被害相談員等認定制度の導入に関しましては、警察庁からは各種の助言を行いますとともに、認定に関する研修への講師の派遣等の協力や支援等を行ってまいりたいと考えております。
次に、御質問事項の10、11、民間被害者支援団体との連携につきまして中島専門委員から御質問いただいております。
平成18年当時、民間被害者支援団体は全国に42団体ありました。そのうち犯罪被害者等早期援助団体は9団体でございました。現在では、すべての都道府県に団体が設立されまして、このうち23団体が早期援助団体として指定されております。
また、早期援助団体に対する警察からの情報提供も、平成20年中は前年から約100件増加した392件となりました。先ほどの警察庁資料の中の資料3「民間被害者支援団体の活動状況」は、全国の民間被害者支援団体の平成20年中の活動状況をとりまとめたものです。これらの活動すべてが早期支援というわけではありませんが、前年と比較しますと、相談件数が約1万5,900件から約1万6,800件へと約1,000件増加しております。
また、警察・裁判所等の付き添いの数は、約730件から約1,450件へと約2倍になっております。
また、病院への付き添いの数も166件から210件へと増加しております。民間団体の体制が充実されつつある中で、警察との連携も強化されつつありまして、これらのことが民間団体の活動実績の増加という形であらわれているのではないかと考えております。
次に、御質問事項12番、広報・啓発活動や民間団体の自主的活動活発化のための方策として大久保委員から御質問いただいております。
まず、広報・啓発活動につきましては、警察庁におきましては、先ほども財政的援助のところで申し上げましたように、民間団体の各種広報・啓発活動の企画立案など、民間被害者支援団体に対する被害者支援に関する理解の増進等に係る業務委託に要する経費につきまして、都道府県警察費補助金で予算措置しております。
また、各都道府県警察では、民間団体と連携して各種講演会とかシンポジウムなどの開催や、さまざまな広報媒体を通じまして犯罪被害者等が置かれている実態、警察や関係機関、民間などが取り組んでいます犯罪被害者支援についての広報・啓発活動を行っています。
更に、平成20年度からは、社会全体で被害者を支え、被害者も加害者も出さないまちづくり事業に要する経費を措置しまして、中高生を対象とした命の授業、大学生を対象とした講義や社会参加活動の促進などのモデル事業を各地で展開し、社会全体で被害者を支える気運を醸成するための活動を実施しております。
また、民間助成団体からの助成金につきましても、民間被害者支援団体の財政基盤の充実に重要な役割を果たすものと考えております。それにつきましては、警察庁におきまして財団法人JKA、これは昔の日本自転車振興会であります。それと、財団法人社会安全研究財団、ひまわり基金等の各種民間助成団体に対しまして、民間被害者支援団体を推薦するなどして助成の働きかけを行っておりますほか、各都道府県警察におきましても、管内の民間助成団体への働きかけを行い、民間被害者支援団体の助成金を獲得している例も見られました。
今後も引き続き、民間被害者支援団体の財政基盤の充実のための協力を行ってまいりたいと考えております。
次に、御質問事項13番、被害者の匿名・実名発表につきまして松村専門委員から御質問いただいております。
警察庁では、各都道府県警察における事件、事故の発表に関する統計をとっておりませんので、お尋ねの件数についてお答えするのは困難であります。いずれにしましても、警察においては従来から、事件、事故の発表に当たっては、犯罪被害者等基本計画に盛り込まれておりますとおり、犯罪被害者等の匿名発表を望む意見と、マスコミによる報道の自由、国民の知る権利を理由とする実名発表に対する要望を踏まえまして、プライバシーの保護、それと発表することの公益性等の事情を総合的に勘案しつつ、個別具体的な案件ごとに適切な発表内容を行うように努めるとともに、実名発表、匿名発表に関する被害者等関係者の要望につきましても、可能な限り尊重するように努めてまいりたいと考えております。
次に、14番、全国研修センターの人材育成につきまして山上専門委員から御要望いただいております。
警察庁におきましても、被害者支援のための人材育成は非常に重要な課題と考えておりまして、引き続きその推進方策につきまして具体的に検討していく必要があると考えております。当庁からは以上でございます。
○山上議長 ありがとうございました。次に、総務省から御説明をお願いします。
○総務省 総務省です。私ども、資料3の6ページに3点の御質問をいただいております。
まず1点目でございますが、地方交付税措置について御質問でございます。
私ども、先ほど内閣府の説明でもございましたように、平成20年度より地方交付税措置を講じておりまして、都道府県に地域の実情に則していろいろな対策を行っていただこうということで、その経費を見積もりまして、標準団体は計算上、人口170万人の団体ですが、1,200万円程度の交付税措置を行ってきております。
具体的には、どのような事業に対して充当されているのかという点につきましては、基本的には実質的に都道府県の方で御判断いただいている話でありますので、先ほど内閣府の方でも調査されているということでございますので、連携をとって出させていただきたいと思っております。
あわせまして、2番目の御質問で、効率が悪いという御指摘もございました。
特に、この御質問の中で後段の地方交付税措置につきまして、これは御案内のように、私ども地方交付税で計算して、それを公表しておりますが、それを受けまして、都道府県の方で地域の実情を踏まえて御検討いただいて、主体的に予算措置を講じていただくという仕組みの流れになっております。そういう意味では、都道府県の方の判断というのも1つ入るという意味で、このような御指摘があるのではないかと思いますが、形を変えますれば、都道府県の方も主体的にこの問題について取り組むということを要請するという面がございます。そういう面で、私どもとしましては引き続き関係省庁の皆様とも連絡をとりながら、こういう交付税の措置につきまして引き続き対応し、また都道府県にもその旨の周知をしていきたいと思っているところであります。
いずれにしましても、いろいろな調査をしていただいておりますので、それを見て私どもも対応を検討していくことになろうかと思います。
それから、3番目でございますが、募金箱の話は先ほど2省庁さんからもお話がありましたが、内閣府を初め、私どもの方も連絡をとらせていただきまして検討していきたいと思っております。以上です。
○山上議長 ありがとうございました。次に、法務省から御説明をお願いいたします。
○法務省 法務省でございます。順番に沿って御説明いたします。
1番と2番は、損害賠償命令制度についてのお尋ねでございます。
損害賠償命令制度につきましては、検察官は基本的に直接関与しておりませんので、後ほど最高裁の方からも御説明があると思いますから、そちらに譲りたいと思いますが、おおむね順調に運用されているようにお聞きいたしております。
次に、3番の更生保護法における意見等聴取制度及び心情等伝達制度の運用状況等についてのお尋ねでございます。
平成20年の1年間を見ますと、意見等聴取制度においては212件の聴取をしたと聞いております。これは、申出を受理して聴取しなかったことはないと聞いております。
それから、心情等伝達制度は、同じ20年で61件の伝達をしたと聞いております。これも伝達しなかったことはないということでございます。
それから、被害者からの相談状況でございますが、837件の相談支援を行ったと聞いております。これも平成20年の1年間でございます。徐々に増える傾向にあると聞いていますが、その内容につきましては、更生保護における施策の利用についてお問い合わせを受ける、あるいは加害者に対する謝罪等の指導を求めるものなど、様々なものとなっている現状でございます。
次に、4番の矯正官署職員、更生保護官署職員に対する研修でございます。
矯正、保護とも、それぞれかなりの力を入れて被害者関係の研修をしている状況でございます。詳しく申し上げるとたくさんあって長くなるのですが、かいつまんで申しますと、例えば矯正施設に勤務する職員につきましては、新規採用職員とか初級幹部要員に対して実施する研修の中で、科目として「犯罪被害者の視点」というものを設けるようにしております。
また、上級幹部要員を対象とする研修におきまして、犯罪被害者団体などの関係者を講師に招いて研修を行っております。
それから、刑事施設の改善指導担当者に対して、「被害者の視点」を取り入れた教育を行う上での課題について理解を深めさせる研修を行っている状況でございます。
それから、保護関係でございますが、更生保護官署職員に対する研修につきましても、犯罪被害者の方と接する職員に対する研修とか処遇部門の職員を対象とする研修におきまして、更生保護における犯罪被害者等施策に関する講義、あるいは犯罪被害者支援団体の関係者、有識者による被害者支援に関する講義などを実施していると聞いております。
次に、5番、法テラスの被害者支援の運用状況についてでございます。
日本司法支援センターにおいて精通弁護士を御紹介しておりますが、その件数は、平成19年度が590件、平成20年度が696件となっております。
それから、国選被害者参加弁護士制度もスタートしておりますが、現在のところ1,800名以上の弁護士さんに契約弁護士となっていただいております。
それから、制度が開始された平成20年12月からでございますが、今年5月末までの6か月間で、被害者参加人が国選被害者参加弁護士の選定を請求した件数が45件となっていると聞いています。被害者参加の関係は後ほど申し上げますけれども、ちなみに同じ6か月では、被害者参加事件数は224件でございますので、そのうちの45件で国選弁護士の請求がなされているということでございます。
次に、6番の財政的援助の関係でございますが、日本司法支援センターの予算について、一部を民間の援助者の方に回すことができないかというお話でございます。
こちらの業務というのが、国からの委託を受けて被疑者・被害者の国選弁護人の選任、国選被害者参加弁護士の選定やこれらの報酬費用の支払いに関する業務を行っているところでございまして、こういった委託費は委託された業務以外に流用というのはなかなかできないということでございますので、これを民間団体への助成金として支給するのは難しいかと思っております。民間団体に対する財政的援助の問題というのは、先ほど来、各省庁から出ておりますが、全体として検討されるべきものであろうかと思っております。
次に、7番の、これもちょっと違った形の公費支出の問題でございます。日弁連から日本司法支援センターに被害者援助業務の委託がされているけれども、これを公費支出を検討されてはいかがかというお話でございます。
この点につきましては、経済的支援に関する検討会で犯罪被害者の支援のあり方について検討されてきたところでございますが、国費でどの範囲で、どこまで負担していくのかということに直接関わってまいりますので、慎重に判断しなければならないと思っております。
告訴の手続とか法廷への付添い等ということにつきましては、警察とか検察庁でもある程度御説明する、あるいは付添いを実際行うということもやっておりますので、弁護士の専門的知見を活用するという意味では、ちょっと性格が違うものも入ってきているように思います。
その次に、8番以下、性犯罪被害者関係の御質問が続いております。8番は、性犯罪被害者について、加害者から威迫を受けて告訴を取り下げるような事態が生じているのではないかというお尋ねでございます。
当局におきまして、そういった事態がどの程度生じているかということは統計的になかなか分からないことでございますが、捜査段階あるいは公判段階におきましては、被害者の方に何か加害者側から不当な働きかけ等がもしあれば、すぐに連絡してくださいということを言っておりまして、そういったことで御相談があることもあろうと思います。他方で、加害者側の弁護士さんに直接的な形で被害者の方の住所あるいは連絡先をお知らせしないという取り扱いもしております。
むしろ加害者の弁護士さんからは、示談をしたいけれども、連絡先が分からないとなかなかできないので、教えてもらいたいという申し入れがなされるぐらいでございます。そういったときに被害者の方に事情を御説明して、弁護士さんにお伝えして良いのかどうかということをお聞きして、了解を取った上でお知らせするという取扱いをしているところでございます。そういったことで、加害者から不当な威迫を受けて告訴を嫌々取り下げさせられるということがないように十分注意しなければならないと思っているところでございます。
それから、9番、10番が裁判員制度との関係で、性犯罪被害者をどのようにして保護するかという問題を提出されております。
まず、問題になっているのは、裁判員の選任手続でございます。そこで、裁判員候補者にいろいろ御質問して、この事件との関わり合いがないかどうかということを確かめて、不公平な裁判をするおそれがないかどうかを確認する手続をとるわけでございます。裁判所における選任手続については、また後ほど最高裁の方からも御説明されると思いますけれども、そういった選任手続の場でも性犯罪被害者等、特にプライバシーの保護を要する方の事件については、裁判員候補者の方にお伝えする情報についても必要最小限の範囲に絞るという取扱いをされるように工夫されていると聞いております。
私どもで直接的に申し上げられるのは、検察の対応ということになります。裁判所は裁判所でかなりの留意をされるようにお聞きしておりますが、検察庁におきましては、性犯罪事犯で特に注意を要する事件である場合には、事前に裁判員候補者の名簿は裁判所からいただけるわけでございますので、被害者の方に裁判員候補者の氏名を教示いたしまして、被害者の関係者、知り合いの方等が入っていないかどうか確認をしていただいて、もしそういった方がいらして、それで不公平な裁判をするおそれがあるということであれば、検察官の方から裁判所に対して、特定の裁判員候補者に対する不選任の請求を行うという方法も採り得ると考えておりまして、そういったやり方で対処していきたいと考えております。
それから、11番が刑事裁判になった場合の問題について、安心して参加できるようにすべきであるという御質問でございます。
御指摘の点は誠にごもっともでございまして、これまで何度か法改正がされておりますけれども、証人として出廷する場合には、付添人がそばにいていただく、遮へいの措置を採る、ビデオリンクの措置を採って法廷の外で証言していただくという制度が整備されております。
また、被害者参加制度で被害者の方が参加される場合にも、付添いとか遮へいの措置を採ることができるとなっております。
制度的には、今、申し上げたところでございますが、検察官において事前に被害者参加人の方によく御説明するというのが非常に重要なところでございまして、どういう手段が採り得るのか、これからどういうふうになるのか、どういう手続が行われて、どういうことがあり得るのかということをよく御説明して、不安が生じないように配慮する必要があろうかと思っております。
また、プライバシーの関係では、被害者の氏名を公開の法廷で明らかにすると、またそれでプライバシーが害されるということもあり得ますので、被害者の氏名や被害者を特定することになる事項を秘匿するという決定を裁判所で行っていただいて、起訴状の朗読とか訴訟手続の中で被害者の氏名などがみだりに述べられないようにするという措置も採ることができるようにしております。
それから、12番は先ほど申し上げたところでございます。
それから、13番の募金箱の設置につきましては、先ほども内閣府でしたか、お話があったかと思いますが、これは個別にお話がありましたら、どういったものが可能なのか、個別の要望あるいは状況を踏まえた上で検討させていただきたいと思っております。法務省からは以上でございます。
○山上議長 ありがとうございました。次に文部科学省から御説明をお願いします。
○文部科学省 文部科学省でございます。
最初の御質問で法科大学院における教育に関してでございますが、法科大学院につきましては、その教育課程の編成に4つの柱、すなわち法律の基本科目、2つ目として法律実務基礎科目、3つ目として基礎法学・隣接科目、4つ目として展開先端科目のすべてにわたって授業科目を開設するとともに、学生の授業科目の履修がいずれかに過度に偏ることのないよう配慮することを告示で定めておるところでございます。
これを受けまして、各法科大学院におきましては、その自主的な判断により、それぞれの創意工夫に基づく多様な授業科目を展開しておるという実態でございます。
お尋ねの犯罪被害者に関してでございますが、例えば犯罪被害者支援実務の面から、犯罪被害者の権利について総合的に考察する授業科目を設置するとか、あるいは犯罪被害者の利益や尊厳の回復を実現し得る司法制度の設計運用を考察する授業科目が開設されるということで、各法科大学院で授業科目が行われております。
文部科学省といたしましては、犯罪被害者に対する理解の向上を含めまして、真に国民の期待と信頼にこたえ得る法曹養成に向けて、各法科大学院が自ら掲げる教育理念、目的に基づいて、多様で特色のある教育を展開していくことを期待しておるところでございます。
2つ目の御質問でございますが、犯罪被害者への適切な対応についての医学教育ということのお尋ねでございます。
これにつきましては、医学教育の中におきまして、精神医学、医学心理学、また司法精神医学などの精神医学系統の授業科目で取扱いが行われておるところでござ います。
学習内容等につきましては、各大学によりさまざまという状況でございまして、例えば千葉大学におきましては、不安障害、ストレス関連障害といった形で取扱われておるところでございます。
このほか、司法精神医学、あるいは地域、家庭、職場における精神保健福祉、あるいは児童・青年期の精神障害といった形でそれぞれの大学の中で行われておるところでございます。
更に文部科学省といたしましては、医学部関係者の間で犯罪被害者などの対応あるいは理解が深まるよう、この面における教育の重要性につきまして、医学部長会議とか病院長会議におきまして周知を図っておるところでございます。
3点目、本年4月にありました、大阪市西淀川区における小学校4年生の女子児童が虐待により死亡し、死体が遺棄されるという大変痛ましい事故に関連しての御質問でございます。
本事件につきまして、文部科学省といたしましては、当該女子児童から虐待をうかがわせるような発言があったにもかかわらず、結果的に事件を防げなかったということから、学校の対応は必ずしも十分とは言えず、児童虐待の確証がないにしても、早期発見の観点から、児童相談所などへの相談、通告を検討するなどの対応が必要であったと考えておるところでございます。
私どもといたしましては、子どもが1日のうちの長い時間を過ごす場であるところの学校が、児童虐待の早期発見あるいは早期対応において果たす役割が大きいという認識を持って、これまで取り組んできておるところでございますが、例えば児童虐待防止等に関する法律の施行にあわせまして、その時点では、各都道府県教育委員会等に対しまして、児童虐待の早期発見あるいは虐待に係る通告といった学校などの果たすべき役割についての周知を図ってきておるところでございます。
このほか、各種法律等の整備の都度、通知等により、その周知徹底を図ってきておるところでございますが、特に児童虐待防止に関する取り組みにつきましては、平成18年に通知を出しまして、学校の教職員は職務上、児童虐待を発見しやすい立場にあることから、その早期発見、対応に努める必要があること。あるいは、児童虐待の疑いがある場合には、確証がないときであっても、早期発見の観点から児童相談所などへの関係機関への連絡、相談をすることを示しておるところでございます。
これを受けまして、各教育委員会におきましては、児童虐待防止のための対応マニュアルなどを作成するなど、それぞれ学校等において取り組みを行っておるところでございます。
御質問いただいた本事件以降のことでございますが、今年5月には学校等における児童虐待の早期発見、通告、関係機関との連携、虐待を受けた子どもへの対応等についての教職員の意識啓発、あるいは対応スキルの向上ということを目的にいたしまして、教職員用研修教材、「児童虐待防止と学校」というタイトルを付けてございますが、このCD-ROMを都道府県あるいは政令指定都市教育委員会あてに配付しておるところでございます。
私ども文部科学省といたしまして、児童虐待問題については社会全体で取り組むべき課題という認識の中、こういう児童虐待の早期発見、虐待を受けた児童の適切な保護を図るため、引き続き教育委員会、学校関係者などに対しまして、児童相談所などへの関係機関との連携を進めるなど適切な対応を図るよう促してまいりたいと考えておるところでございます。
4点目でございますが、募金箱の設置等につきましては、内閣府を初め、各省庁から御答弁あったとおりでございます。私ども、関係機関とよく連絡させていただいて対処させていただきたいと考えておるところでございます。以上でございます。
○山上議長 ありがとうございました。次に、厚生労働省から御説明をお願いします。
○厚生労働省 厚生労働省でございます。
まず、被害回復のための休暇制度ということで御質問をいただいております。
昨年、7,000社にアンケート調査をいたしまして、回収はおよそ3分の1程度。「導入済み」と答えた企業が1社、「導入予定」と答えた会社が67社、回答があった企業の3%程度という結果でございました。それから、「導入の予定がない」と答えた企業においても、例えば「既存の病気休暇とか特別休暇などで対応するという企業」が4割あったのが実情でございます。
休暇制度というのは、産休とか年次休暇を除いては、基本的に労使で調整していただいて、それぞれの企業ごとに必要な休暇をつくるというのが基本的な仕組みですので、私どもとしては、そういった環境整備を今後とも進めていきたい。このアンケートも、実態を調べるとともに、アンケートに回答することそのものが一つの意識啓発というつもりでやっているということでございます。
2点目、内閣府、文部科学省からもお話ございましたけれども、児童虐待の件で、私の方からは特にDVと児童虐待の連携のケースについてお話申し上げたいと思います。
虐待で死亡事例が起こりますと、関係機関の方で検証というものをしていただくことになっております。それを御報告いただいた後、国の方でも審議会において特別の委員会をつくりまして、検証をまとめるということをやっておりまして、これまで大体5回位やっております。このケースについては、まだ大阪の方で検証中と いうことなので報告が上がってきておりませんが、これまでの検証事例の中では、やはりこういったケースについて連携が不十分であったという指摘を受けた事例もございます。
具体的に申し上げますと、少なくともDVが児童の目前で行われること自体が、児童に特別身体的な危害が及んでいなくても、これは十分に、それ自体で児童虐待であり、さまざまな心理的な影響が考えられるということでありまして、そういったある種の心理的な虐待に対するケアというものも考えなければいけない状況でございます。
実例もいろいろ聞きますと、例えば小さな県などで児童相談所と女性相談所の組織が統合されているところにおいては、DVのケースで子どもがいるということについては、すべてのケースについて児童相談所の方のケースで対応することも行われているという話は聞いたことがあるのですが、一方で、児童へのケアというものも、DVの悪化につながらないように、さまざまな配慮のもとで行わなければいけないので、児童虐待の通告件数そのものが増えている中で、対応がなかなかとれないといった声も聞くところでございます。
関係機関の連携という意味では、市町村に要保護児童対策の連絡協議会というものをつくっていただくことになっていて、設置自体はかなりの市町村で進んできたと思いますけれども、単に幾ら連携しろといっても、それで子どもの命が救えるわけではないので、やはり個別のケースについて、どれだけ関係者が連携して対応できるかというところがかぎとなると考えております。
せっかくつくった協議会がきちんと機能するように、関係者の研修というものを進めていかなければいけないと思っておりまして、そのプログラムの開発などを進めているという状況を御報告させていただきます。
3点目、診療報酬の関係でございます。
PTSDの対応に関することだと思いますが、医療費が国全体で30兆円、さまざまな診療について関わっております。しかも診療報酬をめぐる状況は、18年度はマイナス改定でございましたし、それから20年度は本体はわずかにプラスということですが、いずれにしても政策的にある診療が大事だからといって、そこに重点配分するような改定財源が少ない中で、全体としては大変苦労しておる状況の中で、限られた範囲でございますけれども、何とか工夫ができないかということで、20年度に実施されました診療報酬改定におきましては、通院で行う精神療法について、特に30分を超える診療の評価の充実ということをメリハリをつける形で実施したということでございます。
まだまだ現場の方では不十分だという御指摘があるかもしれませんけれども、引き続き2年に一度、診療報酬改定を行っておりますので、累次の診療報酬改定の中で努力してまいりたいと思います。
4点目、保健・医療・福祉関係者の教育、ちょっと漠然とした御質問でございますけれども、犯罪被害者の施策の一番関わりの深いところは、特に心理的なケアの部分だと思います。今日は中島先生もお見えですけれども、PTSD精神療法の専門研修などを、医療関係者あるいは臨床心理に携わっていらっしゃる先生方について行ってきているところでございます。
あるいは、児童虐待の関係では、思春期の精神保健対策の専門研修会というものもやってきておりまして、一昨年は全体合せまして430人、昨年度は310人、これまで8年間行ってまいりまして、延べ5,500人ぐらいの関係者の方がこの研修を受講しておられるということでございます。勿論、人間は入れかわってまいりますので、この研修は今後とも継続して進めていきたいと思っております。
最後の民間団体に対する財政的援助に関する施策ということでございますが、私見になりますが、恐らくこういった御要望はいろいろな活動の中で多いのだと思います。それぞれ何かいろいろなやり方で工夫されてやっておられると思いますので、どういうやり方が考えられるのかということについて御相談していくということではないかと思います。以上でございます。
○山上議長 ありがとうございました。次に、国土交通省から御説明をお願いいたします。
○国土交通省 国土交通省住宅政策課でございます。まず初めにお断りさせていただきますが、本日、当課課長の中島が出席して御説明させていただく予定でございましたけれども、緊急の案件がございました関係で、私の方から代理で御説明させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
1点目、公営住宅への優先入居につきまして御質問をいただいております。
犯罪被害者等の公営住宅の入居につきましては、犯罪被害者等基本法を踏まえまして、平成17年12月に地方公共団体に対しまして、「犯罪被害者等の公営住宅への入居について」という通知を発出いたしまして、地方公共団体の判断によって、犯罪被害者等につきましては公営住宅への優先入居や目的外使用が可能であるという ことにつきまして周知させていただいたところでございます。
また、DV被害者の方々につきましては、優先入居、目的外使用のほか、公営住宅法施行令、政令を改正いたしまして、通常は公営住宅の入居者の方々につきましては、2人以上の世帯の方々というものが原則となっておりますところを、単身入居が可能となるように、政令改正によりまして同居親族要件と言われております要件の緩和を行ったところでございます。
優先入居による入居戸数につきまして、若干のデータを申し上げますと、平成19年10月1日時点と平成20年12月1日時点の比較を行いますと、255戸から391戸に増加しておりまして、施策は着実に浸透していると、僣越ながら私ども評価しているところでございます。
また、地方公共団体のことでございますが、各事業主体におきましても、公営住宅への入居に関する情報を募集パンフレットやホームページ、犯罪被害者の手引きへ掲載を行いまして、犯罪被害者へ情報提供を行っておりまして、関係機関と連携を図るなど対応を図っております。
しかしながら、取り組み状況は地域によって差が生じているところもございますことから、各事業主体におきまして当該施策が適正に活用されますよう、今後とも機会をとらえまして実施済みの事業主体の事例を紹介するなどを通じまして施策の推進に努めていきたいと考えております。1問目については以上でございます。
2点目、募金活動等の御協力へのお話でございますが、内閣府を初めとして各省庁からお話がございましたとおり、実際の具体的な事案などについて御相談いただいた上で検討させていただきたいと思っております。国土交通省からは以上でございます。
○山上議長 ありがとうございました。次に、最高裁判所から御説明をお願いします。
○最高裁 最高裁判所刑事局でございます。御質問のありました1から8までについてお答えいたします。
まず、刑事裁判に関する1ないし3、5ないし8の御質問に対してお答えいたします。
損害賠償命令については、1番から3番までの間で、中島委員、松村委員から御質問いただいております。
状況について御説明いたします。損害賠償命令制度につきましては、今年5月31日までに69件の申立てがありました。そのうち5月31日までには31件が既済、既に事件としては終わった状態になっております。この既済事件を罪名別の割合で申し上げますと、傷害が16件、強制わいせつが8件、強姦致死傷を含みます強姦が5件、傷害致死が1件、強盗致傷が1件となっております。
これらの合計であります既済事件31件のうち、双方に代理人が付いた事件は12件でございます。被害者の方、申立人のみに代理人が付いた事件は9件、相手方、被告人だけに代理人が付いた事件は2件でございます。
損害賠償命令制度については、施行後、それほど時がまだたっておりません。既済となったものがまだ31件というところでございまして、その大きな傾向はわかりませんが、現在のところ、実務上大きな問題が生じたという事例は聞いておりません。報道等によりますと、例えば「自分で民事裁判を起こすような時間やパワーはとてもなかった。この制度ならやってみようかと思えた」というものや、「犯罪事実を立証する必要がないため、負担は圧倒的に軽い」というもの、「簡易・迅速に結論が出る上、民事裁判のために刑事事件の記録を取り寄せる手間がなくなり、メリットは大きい」といった、いずれもかなりメリットが大きい、負担が軽くなったという利用者の方の感想があるところでございます。
次に、性犯罪被害者の保護について、特に裁判員裁判における保護についてお話しします。ここでは、大久保委員、小西委員、山田委員、山上議長の方から御質問のありました、裁判員制度における性犯罪被害者の保護について一括して御説明申し上げます。
これまで実際に裁判員等の選任手続が行われた事件は、まだございません。しかしながら、裁判官の間では、実は制度実施の数年前から、性犯罪事件等の裁判員等選任手続における被害者特定情報の取扱いについて、どのようにしていけばいいのかということについて、現場の裁判官の方から活発な問題提起がなされ、かなり突っ込んだ議論がなされてきたところでございます。その議論の成果につきましては、例えば今年3月、判例タイムズから「模擬裁判の成果と課題」といった形で公刊されておりまして、その中でもかなりのページ数が割かれているところでございます。
今までの議論の状況について、かいつまんで御説明申し上げます。性犯罪事件で被害者特定事項を公開の法廷で明らかにしない旨の決定がされ、またはその旨の決 定をするのが相当な事件の選任手続においては、裁判員としての不適格事由の該当性の判断をする必要性と、一方で被害者のプライバシー保護の必要性の双方の観点から、裁判所において特定事項をどうやって提供するのか、どの程度提供するのかといったことを慎重に検討し、その情報とか対象者を必要不可欠なものに限定するということによって対処することになると思われます。
実際、今、各地方から上がってきている工夫例について簡単に御紹介申し上げますと、具体的には、被害者氏名の開示が必要だと判断される場合にも、事案によっては事件概要の説明においては開示しない。また、ぎりぎり説明するときにおいても、被害者の年齢、性別、住居地――住居地というのは、例えば東京都○○区在住といった限度での情報提供でとどめるなどして、個別質問など、対象者を限定した場で被害者の氏名を開示することが考えられると思います。
また、こちらからの提供だけではなくて、例えば候補者の側から思い当たる名前や住所、その他特定事項を言ってもらった上、必要があれば検察官に確認するといった方法も考えられます。このような方法のほか、先ほど法務省さんの方から御紹介のありました、2日前に名簿の開示を受けた検察官や弁護人において、被害者と候補者の関係の有無を判断するための手段として、候補者の氏名を被害者に伝えるといったこともあり得るところでございます。こういったさまざまな工夫により、できるだけ候補者に被害者特定事項を知らせずに関係の有無を判断するということを考えております。
先ほど、ちょっとオリエンテーションに触れました。オリエンテーションといいますのは、裁判員の候補者の方々にこの事件はこういうものですよと説明する場でありますけれども、そこでも勿論、被害者個人の名前を公開しないと同時に、「今後、場合によって皆様の方で被害者の方がだれだれだということがわかることがあるかもしれません。ただ、そのような方の情報については、決して口外しないようにしてください。」と求めると同時に、勿論この手続の間に筆記しないようにしてくださいとお願いすることも考えられます。
いずれにせよ、性犯罪の事件が一番典型ではございますが、裁判員裁判が重大事件を扱うことになりますと、かなりの方々のプライバシーを扱うということになると思います。裁判官を含めまして、法曹三者、当事者のプライバシーということを十分考えた上で、国民の司法参加を十全たるものにしたいと、このように考えております。以上でございます。
○最高裁 引き続き、中島委員の方から少年審判の傍聴制度について御質問いただいておりますので、家庭局から御説明申し上げます。
平成20年12月15日から今年5月31日までの5か月半の速報値でございますが、36 件について傍聴が実施されました。そして、68人の被害者等の方が傍聴しています。罪名別でみますと、多い順に、傷害致死が13件、自動車運転過失致死傷を含む自動車運転過失致死が9件、傷害が8件、危険運転致死傷が2件、殺人、強盗殺人、強盗致死、重過失致死がそれぞれ1件でございます。
少年審判の傍聴制度についても、同様にそれほどまだ件数が多うございませんので、すべてを把握できているわけではございませんが、現在のところ、実務上大きな問題は生じていないと聞いています。
被害者の方々の感想についてもすべてを把握しているわけではございませんが、報道によれば、非行の動機や態様がわかってよかったという感想が述べられているとのことです。最高裁からの説明は以上でございます。
○山上議長 御説明いただいた省庁の皆様、ありがとうございました。個々の質問に大変丁寧に御回答いただきました。
これより質疑及び自由討議に入りますが、進行が遅れておりますので、少し簡潔にお願いしたいと思います。御質問ございましたらどうぞ。大久保さん。
○大久保構成員 それでは、幾つかの御質問と、お願いをさせていただいてもよろしいでしょうか。
まず、内閣府の方についてですけれども、ネットワークの方で認定制度等も行うということで、先ほど具体的な可能な限りの支援を行うつもりということを殿川室長さんの方からお話がございましたのでお願いしたいのですけれども、実はこの認定制度を決めるに当たりましても、ネットワークの中で検討会を開いたりする際の交通費あるいは謝金等につきましても、予算的に全くございませんので、その辺りの金銭的な支援を是非お願いできれば、この認定制度も何とか進めていけるのではないかと思っております。
それと、先ほど矯正関係等、職員の方々への研修ということで、実際にどのような研修が行われているのかという説明は十分理解させていただきました。私が知りたかったのは、それを行うことによって、犯罪者が犯罪をまた犯して、被害者が再被害を受けることがない防止までつながっているかどうか、もしおわかりになればお聞かせ願いたいと思いました。
それと、文部科学省の法科大学院に関連いたしましては、それぞれの法科大学院 がそれらの理念に基づいて行っているということをおっしゃいましたが、先ほど医学系教育につきましては、理解が深まるよう周知を図っているとおっしゃってくださいました。法科大学院につきましても、是非理解が深まるよう周知していただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
それと、厚生労働省の方から保健・医療・福祉関係者への教育のところで、どうしても犯罪被害者への支援といいますと、心理的なケアということが社会一般的な理解として大きいのだと思いますが、犯罪被害者の方が被害から回復するときには、生活再建支援も心理的な支援と同時に、車の両輪のように必要なのです。ただ、残念ながら社会福祉の関係者の方々に関しましては、被害者が置かれている現状、どのような支援が必要なのか、今後どうしていけばいいのかという辺り、全く御存じない方が大変多いということを聞いておりますので、その辺りのところへも是非周知していただきたいと思いました。
それと、国土交通省の方にお願いしたいことですが、先ほど施策の推進についてこれからも進めていきたいとおっしゃってくださいましたが、被害に遭いながら、何年間も公的住宅に入れないという方が現にいらっしゃいます。それと同時に、せっかくあっせんしていただきましても、例えばそこに入るためには自分自身でお風呂の釜を買って入らなければいけないという現状があるわけなのです。これは、多分古い住宅をあっせんされた場合に起きてくる事象かと思いますが、被害者の方が自腹を切って風呂釜まで買って、そしてそこは1年ぐらいすれば出なければいけない。そういう状況の中で、決して使い勝手はよくないわけです。安心してそこに住めるような住宅提供をお願いしたいと思います。
○山上議長 要望ということで、それぞれの省庁の担当の方、今後御検討いただければと思います。
質問が1つ、これは法務省の矯正に関して、もしお答えできることがあればお願いいたします。
○法務省 お尋ねのありました点は、職員に対する研修と、その教育を受けた職員が犯人側に対して種々働きかけをして、それが再犯防止にどう役立っていくかというお話で、若干間接の間接みたいな話ですので、どれだけの効果があったかと言われると、ちょっとお答えに窮してしまうわけでございます。
私がお聞きしているところでは、受刑者などに被害者の視点を取り入れた教育というのを今もやっているように聞いておりますけれども、それによって被害者の人がこういう気持ちでいたのかということが分かったという感想を述べている人がいると聞いておりますので、それなりの効果は上がっているのではないかと思います。
○大久保構成員 もし統計的にそういうものが出ましたら、また教えていただきたいと思います。
○山上議長 時間の進行がございますが、あと是非という方がございましたら。はい、小西さん、お願いします。
○小西構成員 ただいまの性犯罪に関する裁判員制度の問題ですが、野田大臣がああいうふうに発言されて非常に心強く思いましたけれども、例えば今、ちょうど新聞で話題になっていますが、暴力団関係のときには、裁判官がある程度裁量を持って裁判員を適用しないことができるとなっているわけですが、もしそうだとしたら 、基本的には制度設計のときに被害者からの視点が足りなかったのだと思うのです。そういう裁量があるのであれば、今の段階で被害者に対してそういう裁量をすることはできないのでしょうかという質問です。
○山上議長 どうぞ。
○最高裁 我々は制度を立案する方ではありませんけれども、今の条文を見ただけでは、性犯罪の事件について除外することはできないと考えています。裁判員に対して何らかの危害が加えられる場合には除外できるという条文があるのですが、そのような条文はないようですので、今の段階では、今ここで御紹介したような、候補者や裁判員の方になるべく配慮を求めるやり方しかないのかなと思って解釈を進めています。
○山上議長 法務省の方で何かありますでしょうか。
○法務省 裁判所の方からお話があったのと同様でございますが、今の法律関係でいえば、性犯罪を理由として除外する仕組みはございません。あとは、立法的に何かやり得るのかということでございますが、そこはいろいろな考え方があろうかと思いますので、慎重な検討が必要かと思います。
裁判員制度の趣旨は、裁判員の方に入っていただいて常識的な感覚を反映していただくということであり、そのことと、ここに裁判員がいるから嫌なのだというのとは、なかなか相いれない部分があるので、そこをどう整理するのかというのは難しい問題かと思っております。
○小西構成員 なるべく短くします。
結局問題は、プライバシー保護の問題と、裁判の中における2次被害の問題と両方あると思います。現在の法律では、なかなか難しい。むしろ私が、もしこれが法律上変えていけるなら、裁判官が個別に判断した方がいいと思うのは、性犯罪被害者の方にもいろいろな立場の方があり得るからです。この法律の基本方針が身近なものにするということはわかっています。それで、難しいことがあるのもわかっていますけれども、恐らく大多数の方はとても嫌な気持ちがするし、2次被害が起こるだろうと考えてお話ししました。以上です。
○山田構成員 よろしゅうございますか。
○山上議長 はい。
○山田構成員 今の点に関連してですけれども、先ほど東京都○○区という表現で、できるだけ特定しないように御配慮いただけるということで、そういった工夫をしていただきたいと思うのですが、地方に行きますとかなり問題になるでしょうね。そこのところは非常に悩ましいことだろうと思います。今この場で、時間のないところで結論がとても出ることではないのですが、地方の場合をよく御研究いただきたいということです。
それから、裁判員制度との関係で出ておりますが、裁判員となって裁判が始まってからのことよりも、むしろ裁判員候補者数十名を呼んで選定するときに、守秘義務がないということで今と同じことなのですけれども、非常に問題になろうかと思うということです。
もう一つ、現場でどうかということをお聞きしたいと思っているのですが、女性弁護士が性犯罪との関係で少ないということがあるのか。もちろん、これは弁護士会の方で察知し、あるいは対応すべきこととは思うのですが、現場ということになりますとなかなかわかりかねますので、法務省辺りでそこら辺のとらえているところがあるでしょうか。女性弁護士の数。法テラス辺りからどんなふうな情報が入っているのかということがありますので、お尋ねしたいと思います。
○山上議長 どうぞ、法務省から。
○法務省 女性弁護士の配置ということについては、今、手元にデータがございませんので、また分かりましたら御連絡するようにいたします。
○山上議長 時間が余りありませんので、あとお一人1題で限定してどなたか。瀬川先生、どうぞ。
○瀬川構成員 先ほど少年審判の傍聴のことをお聞きしたのですけれども、被害者側からの観点が主なものだったと思うのですけれども、この問題は少年との対応という相互関係がありますので、少年側というか、付添人側も含めてですけれども、何らかの要望というか、不満というか、そういうものは出ていないかどうか、この点いかがでしょうか。
○山上議長 お願いいたします。
○最高裁 最高裁家庭局でございます。
御質問いただいた件につきましては、すべてを把握してございませんし、付添人サイドからは異なる見方があり得るところですが、傍聴を実施した裁判所の担当者からは、被害者の傍聴があったことで少年の内省が深まったようだという話を聞いたことがございます。以上でございます。
○山上議長 ほかにどなたか。松村委員、お願いします。
○松村構成員 広報啓発活動で、昨年も参加したのですけれども、例の犯罪被害者週間の集会のあり方。大久保さんからも言われていますけれども、業者任せということで非常に丸投げの感じがするのです。確かに関係者が多いということもありますけれども、一般の人が参加するだけではなくて、例えば被害者も講師で行ったりするわけです。そういうときの対応が非常に悪い。二度と行くものかと私も言われていますので、その辺は配慮していただきたいと思います。以上、要望です。
○山上議長 それでは、予定の時間を過ぎておりますので、次の議題に入らせていただきたいと思います。
次の議事であります「被害者参加制度の運用状況等について」。これからの説明は大変申しわけございませんが、簡潔によろしくお願いいたします。法務省からお願いします。
○法務省 法務省でございます。被害者参加制度の関係、資料をお配りしておりますが、最初の1ページ目が運用状況でございます。
かいつまんで申し上げますが、被害者参加制度は、御承知のように平成20年12月1日から施行されております。本年5月末現在、6か月たった時点での状況はペーパーに記載したとおりでございます。参加申出の件数が224件、人数が350名ということになっております。
それから、罪名別で見ますと、ここに記載したとおりで、自動車運転過失致死傷が109件、傷害が36件などとなっております。また、申出人数の内訳は、本人が70名、配偶者が37名等となっております。
2番の参加許可されたのが206件、321名となっています。申出件数が224に対して206と、若干減っているわけですが、この差は、主に5月末時点で申出はされたけれども、裁判所の許可決定がまだ下りていないということによるのではないかと思っております。このほかに、申出はしたけれども、許可がなされなかった、あるいは申出はしたけれども、取り下げられた、許可された後に取り消されたというものが若干件数、1けた台でございますが、あると聞いております。
全体の件数、対象事件の全件数が、正確な統計を持っておりませんが、数年前で年間2万件弱と聞いております。今お示しした件数は、半年に直すと約1万件弱。最近は若干件数が減っていますので、1万より割り込んでいるのではないかと思いますが、そのうち224件、350名ということですので、大体2%から3%ぐらいではないかと思っています。
検察庁におきましては、対象事件で被害者の方からお話をお聞きすると、こういう制度がありますよという御説明をなるべく丁寧にするようにしていますし、また被害者用のパンフレット、御覧になった方もいらっしゃるかと思いますが、こういったパンフレットを用意しておりまして、お渡しするようにしております。細かくどういうことができるのか、被害者参加もこういうことができますと書いてありますので、説明するようにしております。
説明はしたけれども、自分はそういうものはいいですとおっしゃる方も実際にいらっしゃったと聞いておりますので、必ずしも知らなくて参加しなかったということなのかどうかは、ちょっとこちらも分からない状況でございます。
次に、3、4、5、6でございますが、被害者参加が許可された場合に、公判期日への出席、証人尋問、被告人質問あるいは意見陳述ということができることになっております。件数は、ここに記載したとおりでございまして、134件、31件、89 件、63件等々となっております。
全般的に申しますと、被害者参加制度は半年で200件余りという数に上っておりまして、現場からは、全般的にはおおむね順調に運用されていると聞いております。
報道されました1件、被告人側が暴言を吐いたという事件がありました。これは、正確に言うと被害者参加の場面ではなくて、被害者が証人尋問を受けるということで法廷に行かれた。そこで被告人が横から暴言を吐いたという事件でございます。
これにつきましては、確かその後、被告人を裁判所の方で退廷させたと聞いています。それから、検察庁の方では、被告人の行為について、脅迫罪で別途起訴をした。有罪判決が得られたと聞いております。
被害者の方あるいは御遺族の方で被害者参加を御利用された方の感想について、何かアンケート調査をやっているわけではございませんので、詳しく承知しているわけではありませんけれども、多くの方はこれまで裁判、捜査等を通じて疑問に思っていたことでありますとか、本当に被告人が反省しているのかという不満を持っていたことについて、直接被告人に質問することができたとか、そういった感想を お持ちの方がいらしたということで、肯定的な評価をしていただいていると聞いております。
検察庁におきましては、先ほどのパンフレットを含めて、よく御説明する。また、実際に参加していただくという段になりますと、検察官とのコミュニケーションというのが非常に大事になってまいりますので、よく話をして被害者の方が安心して参加できるように努めるという努力をしているところでございます。全部の質問に答え切れておりませんけれども、とりあえず御説明させていただきました。
○山上議長 ありがとうございました。御質問、御意見、余り時間がありませんけれども、是非という方があれば。山田委員。
○山田構成員 224件ということですけれども、そのうち国選弁護人が選定されたのが、先ほどの御説明で45件というのがございました。これは多いのか少ないのかということなのですけれども、どのぐらいの方が申請、申し出たけれども、実際に認められたのが45件であるのか。
といいますのは、資産要件としまして、資力要件としまして、150万円以下というのがございますね。150万円以下の人でないと選定を受けられないというところがどんなものかということがあると思います。この辺についての情報はございますでしょうか、お尋ねしたいと思います。
○山上議長 法務省、お願いいたします。
○法務省 お話のありましたように、国選弁護士さんが選任されたのが45件あるわけですが、申し出たけれども、付けてもらえなかった件数については、ちょっと私ども、把握しておりませんので、そもそもあったのかなかったのか分かりません。
○最高裁 裁判所の方でも、今、先生がお尋ねになったような観点での情報は収集しておりません。
○山田構成員 資産が150万円以下というのが厳しいのではないかと思います。預貯金が150万円以下でないとだめですよ。そのために外されてしまったということになると、せっかくの制度が広がらなくなるというのは、犯罪被害者の方々にとっても狭き門になってしまうのではないかと思いますので、ちょっとお尋ねしました 。
今後とも、継続するうちに統計などをおとりいただいて、検討していただければと思います。
○山上議長 ほかに。大久保委員、どうぞ。
○大久保構成員 1つだけ。今、山田委員の質問に関連いたしまして教えていただきたいのですけれども、法テラスを通じました被害者国選弁護人ですけれども、被害者支援に関連した精通弁護士がなるとなっていますが、現実的には一体どなたが精通弁護士となるのか。2回以上、被害者支援の研修を受けた方がなれると聞いておりますけれども、被害者支援の現場におきましては、その精通弁護士と言われる弁護士さんにかなりの2次被害を受けたということをよく聞きますので、その辺りの対策を考えていらっしゃるのかどうなのか、現状はどうなのかということを簡単に教えていただければと思います。
○山上議長 法務省、お願いいたします。
○法務省 精通弁護士につきましては、平成18年当時で1,135人でありましたのが、平成21年7月で1,648人ということで、かなり人数が増えているところでございます。
法テラス側では、精通弁護士につきましては、各地の弁護士会から推薦を受けて登録するということになっております。また、そういった2次被害を受けるようなことがあるようでございましたら、そこは弁護士会ともよく御相談して、そういう ことのないように努力しなければいけないと思っておりますが、具体的にどういう状況かというところまで、今、把握しておりませんので、留意していきたいと思っております。
○山上議長 それでは、次に「犯罪被害給付制度等」につきまして、警察庁から御説明をお願いいたします。
○警察庁 それでは、犯罪被害給付制度の運用状況と、財団法人犯罪被害救援基金において昨年12月から実施しました犯罪被害者等に対する支援金支給事業、それと昨年12月から施行されましたオウム真理教犯罪被害者救済法の施行状況の3点につきまして御説明します。
警察庁資料5からになります。時間もございますので、数字はこちらの資料に譲りながら御説明申し上げます。
まず、犯罪被害給付制度の運用状況ですが、資料5の数字を見ていただければと思います。申請でございますが、平成20年度中は462人の被害者から申請を受けております。これに対して裁定が407人でありまして、このうち支給裁定されたのが388人、不支給が19人になります。総額で9億700万円の給付金を支給する裁定になっております。
なお、平均裁定期間は9.8か月ということで、大変申しわけないのですが、対前年度比プラス1.8か月となっております。これにつきましては、大久保委員の方から支給に時間がかかるのではないかという御指摘がございました。警察としましても、できる限り迅速に裁定するというのが被害者の救済という観点から当然でございまして、早期になされるように、また仮給付が可能な事案につきましては、その積極的な運用がなされるように引き続き都道府県警察を指導してまいりたいと思います。ただ、複雑な事案等々もございますので、若干期間が必要になる場合もありますが、いずれにしましても、なるべく早く裁定できるように努力してまいりたいと思います。
なお、被害直後の当座の資金につきましては、貸付金や見舞金の制度による対応を是非お願いしたいと思います。これにつきましては、条例を制定されて実施されておりますので、こういったものの活用をお願いできればと思っております。
それと、1件当たりの平均支給裁定額等は、それぞれの区分ごとに若干凸凹がございますが、資料に載っております。最高額につきましても、この表のとおりであります。
なお、遺族給付金の最高額であります1,784万円につきましては、改正後の制度が適用されたものでございます。
また、改正後の制度が適用されました遺族給付金の平均支給裁定額は約1,288万円になります。ちなみに、改正後の制度が適用されない遺族給付金の平均支給額は約401万5,000円でございます。
不支給裁定につきましては、先ほど申しましたように19人になります。また、支給裁定の388人のうち、約4分の1に当たります98人が当該犯罪行為を誘発する行為とか当該犯罪被害を受ける原因となった不注意、不適切行為により帰責事由がある等の理由によりまして減額されております。
次に、これは資料6になります。改正が施行された後、平成20年7月からの運用状況について御説明いたします。
今回の法改正で、平成20年7月1日以降に発生した犯罪被害につきましては、改正された制度が適用になります。先ほど申しました462人のうち51人が新しい制度、つまり平成20年7月以降に発生した犯罪になります。51人のうち遺族給付金が39人、重傷給付金が10人、傷害給付金が2人となっております。このうち遺族給付金5人に対して、20年度中に支給裁定がされております。
これにつきましては、松村委員の方から制度改正後1年の運用状況についての御質問をいただいております。資料6が改正後1年間における状況になっております。1人当たりの平均支給額等も大幅に増加する状況になっております。
最後になりますが、大久保委員の方から都道府県ごとの裁定件数がわかればということでございます。これは件数が少ないものですから、個人の特定がされてしまうおそれがありますので、一般に公表することは難しいと思います。検討します被害者に対しましては、警察や民間団体が個々に制度を紹介する等、サポートすることで対応させていただければと考えております。以上が犯罪被害給付制度の運用状況でございます。
次に、財団法人犯罪被害救援基金によります支援金支給事業であります。これは資料7になります。
経済的支援に関する検討会の最終とりまとめでは、公的な経済的支援制度による救済の対象になりませんけれども、何らかの救済の手を差し伸べないと基本法の趣旨を全うできないという特別な理由がある者を救済するための仕組みの構築が求められています。これに対しまして、昨年4月に内閣府の方から警察庁に対しまして、既存の基金であります犯罪被害救援基金の活用ができないかという具体的な検討が求められたものでございます。こういったことを踏まえまして必要な準備を行いまして、平成20年12月16日に事業開始となりました。
事業の概要につきましては、お手元の資料のとおりであります。つまり、犯罪被害給付制度等の公的制度では救済の対象にならないような事案でありましても、個別の事由に照らしまして特別な救済が必要ということにつきましては、申請に基づきまして支援金を支給するということでございます。これにつきましては、100万円から500万円の100万円刻みの定額でございまして、被害者の事情等を勘案しまして基金が定めることとしております。支給対象目標もここに掲げております。
なお、制度改正によりまして、一番下の申請期間につきましては特例が創設されましたので、平成20年7月より前に発覚したものに限られることになっております。今のところ、実際の適用例はございませんけれども、引き続き検討をいただきながら、私どもとしてはこういった制度につきまして、被害者の方々にも御紹介する形で対応していきたいと思っております。
最後に、オウム真理教犯罪被害者救済法の施行状況であります。これは資料8になります。
これは、平成20年6月18日に議員立法で成立しまして、20年12月18日に施行されました。この法律は、ここに書いてありますように、地下鉄サリン事件等のオウム真理教によります犯罪行為の被害者等に対しまして、死亡した方の御遺族には2,000万円、障害が残った方には、その障害の程度に応じて500万円から3,000万円、傷病を負った方には10万円から100万円を支給するとなっております。
当庁では、被害者約6,600人を把握しておりますが、その約92%に当たります約 6,070人の方に対しまして制度を案内するパンフレットを個別に送付しております。また、把握している被害者の約63%の人から申請を受け付けまして、そのうち約62%の方に給付金を既に支給しております。
なお、死亡した被害者の遺族、要介護障害が残った被害者につきましては、すべて支給を終えております。
警察庁からの説明は以上でございますが、引き続きまして各種制度の適切な運用に努めてまいりたいと考えております。以上でございます。
○山上議長 ありがとうございます。質問はおありかと思いますが、時間の都合により、まず次の議題に進んで、法務省から御説明いただいた後でまとめて御質問いただこうと思います。法務省より「凶悪・重大犯罪の公訴時効のあり方の検討状況 について」の御説明をお願いいたします。
○法務省 それでは、公訴時効の問題について御説明させていただきます。法務省の資料を見ていただければと思います。
この問題につきまして、大臣の指示がございまして、今年1月から法務省内で検討を始めました。省内で勉強会をつくりまして、かなり細かい検討作業を進めてきております。資料が経緯を示す形になるのですが、最初に載せているのが3月31日付けの「当面の検討結果の取りまとめ」というものです。これはいわば中間取りまとめでございまして、結論というよりは、現在の公訴時効制度がどうなっているか、あるいは主な論点にどのようなものがあるのか、どういうことが考えられるのかということをまとめたものでございます。
これが20ページほどございまして、その次に「当面の検討結果の取りまとめ(概要)」と書いている2枚紙のものがございます。右肩に資料2と書いているものでございます。これは今のものをまとめたものです。
2枚めくっていただいて、資料3「公訴時効制度について」でございます。これは、今の公訴時効制度がどのような内容になっているかということをかいつまんで記載したものでございます。
時効制度の趣旨につきまして、1に記載しておりますけれども、米印で、<1> 時間 の経過による有罪・無罪の証拠の散逸、<2> 時間の経過による刑罰要求の希薄化、<3> 事実状態の尊重といったことが一般に挙げられているところでございます。
2.公訴時効期間は、各種法定刑の段階によって時効期間が定められております。例えば死刑に当たる罪については25年、無期刑に当たる罪については15年等々となっております。なお、この「当たる罪」というのは、法定刑にそういう刑が掲げられているという趣旨でございます。
なお、近時の法改正として、平成16年の刑法等改正で時効期間の延長がなされております。例えば死刑に当たる罪については、以前は15年でございましたけれども、施行が17年1月1日ですが、それ以降は25年ということで延ばされている状況にあります。
めくっていただきますと資料4と書いていますが、これは各国の時効制度を簡単に取りまとめたものでございます。また御覧いただきたいと思います。
3月末に中間取りまとめをした後は、被害者団体や日弁連等関係機関などからヒアリングを実施いたしました。中身について、また更に検討を重ねて、先週金曜日に公表いたしました。これがその次のもので、7月15日付けの日付が入っていますが、「制度の見直しの方向性」と題する文書で、資料5でございます。これもちょっと長くなっておりますが、21ページ分ございます。
その後に1枚紙で資料6「意見募集結果(概要)」というものがございます。この検討に当たって、更にパブリックコメントを行って各層からの御意見をちょうだいいたしました。記載しておりますのは、341件の意見が寄せられたうちの代表的な意見の例ということでございます。詳しくは、省略させていただきます。
先週金曜日に公表したところ、基本的な方向性についてですが、少し戻っていただいて資料5の20ページ、一番下の結論の部分に「見直しの方向性」という項目がございます。これが最終結論でございますが、簡単に紹介させていただきます。
以上の検討のとおり、凶悪・重大犯罪の公訴時効については、以下の方向で見直しをするのが相当と考えられる。
<1> 人の生命という最も重要な個人的法益を奪った殺人罪などの重大な生命侵害犯について、その中で特に法定刑の重い罪の公訴時効を廃止し、それ以外の罪についても公訴時効期間を延長する方向で見直すのが相当である。もっとも、廃止延長の対象犯罪の範囲、延長する場合の具体的年数などの方策の詳細や、廃止する場合に捜査を行うにつき時間的制限がなくなることにより生ずる問題への対応等については更に検討を要する。
それから、<2> 刑の時効。刑の時効と申しますのは、刑罰が確定した場合に、その判決をどれまでの期間、執行できるかというものでございます。例えば懲役10年の判決が言い渡されて、普通はすぐそのまま刑務所に入れて執行するわけですが、例えば脱獄してどこかへ行ってしまった、あるいは在宅事件で収監できずに長期間たったときに、刑の時効が問題になるわけですが、これにつきましては公訴時効との関係上、公訴時効の見直しの内容に整合するよう見直すことが相当である。
<3> は、遡及適用の可否の問題でございます。上記の見直し策を現に時効が進行中の事件に対して適用することは憲法上許されるのではないかと考えられるが、その当否を含め、更に慎重に検討する必要があるという内容になっております。
平成16年改正のときは、法改正をした後の事件から新しい時効制度を適用するということにしたわけですが、現在の被害者団体の御意見等々からすると、現に時効が進行中の事件についても適用することが必要ではないかという声もかなり寄せられております。これにつきましては、憲法上、行為のときより不利益な変更をすることがどこまで許されるのかというかなり難しい問題がございまして、鋭意検討したわけですが、ここでの結論は、憲法上は許されるのではないかと思われる。ただ、立法政策の問題としてどうかということもありますので、ここは更に検討する必要があるのではないかということでございます。
当面、大まかな検討結果を取りまとめたところでございまして、事はかなり細かい部分にも渡り得ることでございますので、今後は法制審議会での御議論なども踏まえて検討しなければいけないのではないかと考えているところでございます。以上でございます。
○山上議長 どうもありがとうございました。ただいま警察庁から犯罪被害給付制度等の運用状況についての御説明と、それから法務省より凶悪・重大犯罪の公訴時効のあり方についての検討状況について御説明がありましたが、これに関しての質問、御意見等ございましたらどうぞ。松村委員。
○松村構成員 先ほどの被害者参加制度についてなのですけれども、非常に評判はいいというお話だったのですけれども、残念ながら私どものところへは、参加制度を使って参加させていただいたけれども、非常に問題があったという事例も結構来ているのです。例えば加害者、被告人の弁護士からいろいろ言われたとかありますので、そういう問題点も是非拾い出して、今後検討していただきたいと思っています。これは要望事項です。
○山上議長 そのほかにどなたか御意見、御要望、御質問等ございましたら。瀬川委員、どうぞ。
○瀬川構成員 時効の問題ですけれども、これは法律家の怠慢といいますか、被害者側の御意見によって、我々は法的な安定性ということを重視してこれまで議論してきたと思います。そういう意味で非常に風穴があいた問題だと思います。いろいろな問題がまだこれからあると思うのですけれども、前向きにといいますか、そういう感じで検討していただければありがたいと思います。以上です。
○山上議長 よろしいでしょうか。それでは、その他の議題ということで内閣府からお願いします。
○内閣府 それでは、その他といたしておりますけれども、私の方から今後のこの専門委員等会議の開催等に関連しまして1点御報告させていただきたいと思います。
それは、現在の犯罪被害者等基本計画の運用期間が迫っているといいますか、平成22年度末で終わりになります。その後をどうするかといいますか、その基本計画の見直しということでございます。
この基本計画、今、申し上げましたように、平成22年度末、歴年で申しますと平成23年3月末までとされております。今から期間を見ますと1年半ぐらいあるのですけれども、基本計画をつくったときの検討の経緯等々を踏まえますと、この基本計画の見直しをするに際しても、ある程度まとまった期間をとって検討する必要があるのではないかと思っております。それがアバウトな言い方になりますけれども、1年ぐらい、そういうことを前提にいろいろ御議論していただくべきという感じがいたしております。
そういたしますと、私ども事務局といたしましては、まずは現在の基本計画の運用状況ということで、この委員会でもいろいろ検証等していただいているわけですけれども、そういったものを踏まえながら、改めて犯罪被害者の団体なり支援団体の方々から、現状、これから基本計画を見直すとすればどういったところが論点になるのか、いろいろな御要望等々をヒアリングを行いまして、また関係省庁の皆さんとも連絡をとりながら基本計画の見直しに当たっての事務局としての論点なりを整理しておく必要があるのかなということを思っております。
したがって、今年末、12月ぐらいをめどに次回の専門委員等会議を開催いたしまして、その段階で基本計画の見直しを念頭にどう進めていくのか、正式に先生方に御議論の上、御決定いただいて、お願いしたいと今、私ども事務局の方では思っております。
念のためでございますけれども、この基本計画推進専門委員等会議で、恐らく基本計画の見直しの案なり素案なりを御検討いただく、そしてつくっていただくことになると思っておりまして、そういった段取りを次回以降、お願いしたいと思っておりますので、現段階ではあくまでもまだ事務局の方のイメージでございますけれども、そういったことを改めて御相談させていただこうと思っておりますので、引き続きよろしくお願い申し上げます。以上でございます。
○山上議長 ただいまの御説明に御質問等、御意見ございますか。よろしいですか。
○山上議長 それでは、これをもちまして第6回基本計画推進専門委員等会議を終わります。本日は、長時間にわたり精力的に御議論いただきましてありがとうございました。