-
犯罪被害者等施策
-

警察庁ホーム > 犯罪被害者等施策 > もっと詳しく知りたい:犯罪被害者等施策推進会議等 > 犯罪被害者等基本計画検討会 > 第8回議事録


犯罪被害者等基本計画検討会(第8回)議事録


(開催要領)

日時:平成17年10月11日(火)14時00分~17時50分
場所:合同庁舎4号館4階共用第2特別会議室
出席者:
  座長代理山上 皓東京医科歯科大学難治疾患研究所教授
  構成員井上 正仁東京大学大学院法学政治学研究科教授
  同大久保 恵美子社団法人被害者支援都民センター事務局長
  同岡村 勲全国犯罪被害者の会代表幹事
  同小西 聖子武蔵野大学人間関係学部教授
  同山田 勝利弁護士
  同加地 隆治内閣府犯罪被害者等施策推進室長
  同片桐 裕警察庁長官官房総括審議官
  同三浦 守法務省大臣官房審議官
  同塩田 幸雄厚生労働省政策統括官(社会保障担当)
  同平山 芳昭国土交通省総合政策局次長
  代理出席下河内 司総務省自治行政局自治政策課長
  協力者板東 久美子文部科学省大臣官房審議官

※ 村田吉隆犯罪被害者等施策担当大臣は、犯罪被害者等基本計画検討会の招集者として出席。


(議事次第)

 1. 開会

 2. 村田大臣あいさつ

 3.基本計画案の検討について(1)
   ・基本方針、重点課題、計画期間
   ・推進体制(第23条関係を含む)
   ・損害回復・経済的支援等への取組(第12、13、16、17条関係)

 4 その他

 5.閉会

<附属資料> ※資料のリストが別ウィンドウで開きます。






○事務局(加地内閣府犯罪被害者等施策推進室長) それでは定刻でございますので、ただいまから第8回犯罪被害者等基本計画検討会を開催いたします。
 村田大臣は、現在、衆議院の本会議に出席をされていまして、本検討会へは遅れての出席となります。到着時にごあいさつをいただく予定でございます。
 本日も宮澤座長は体調を崩しておられますので、山上座長代理に司会をお願いしたいと思います。また、中島構成員及び久保構成員も都合により本日欠席されております。
 それから、構成員の異動がございましたのでご紹介をいたします。お手元の構成員名簿をご覧いただきたいと思います。法務省と厚生労働省の構成員が交代されました。法務省の三浦構成員、それから厚生労働省の塩田構成員でございます。
 それでは、座長代理、よろしくお願いします。

○山上座長代理 宮澤座長に代わりまして、本日の司会を務めさせていただきます。
 それではこれより議事に入ります。本日の検討課題等につき、事務局から説明をお願いします。

○事務局 それではご説明をいたします。第8回の検討会でございますが、基本計画案の検討のうち、次の3点についてご議論をいただきたいと考えております。まず1点は、「基本方針・重点課題・計画期間」でございます。2点目は、推進体制でございます。これは第23条の関係を含みます。それから3点目は、重点課題に係る具体的施策のうち、「損害回復・経済的支援等への取組」、これは第12、13、16及び17条の関係でございます。これら3点についてご議論をいただきたいと思います。これまでと同様に円滑な議事進行のために、事前に書面としてご提出をいただいておりますものにつきましては、口頭での説明を省略するようご協力をお願いいたします。
 それから、基本計画案の検討に入る前に、先般、実施をいたしました基本計画案(骨子)に対する国民からの意見募集の結果につきまして、簡単にご説明をさせていただきたいと思います。お手元に別置きをさせていただいております「国民からの意見募集結果について」という資料がございますが、これをご覧いただきたいと思います。資料の1枚目でございますが、国民からの意見募集の結果を取りまとめたものでございます。国民からの意見募集は、骨子の決定の後、骨子を内閣府のホームページに掲載をいたしまして、8月12日から9月5日までの間、広く国民から意見を募集いたしました。それと同時に、全国の9か所に内閣府の職員が出向きまして、被害者団体等から直接ご意見をいただいたところでございます。意見の提出の状況でございますけれども、個人の方から309名、それから犯罪被害者団体及び犯罪被害者支援団体から39団体、これらからご意見をいただいておりますし、そのほかに日弁連及び犯罪被害者等の権利を守る弁護士有志一同から寄せられた意見書等もございます。意見は極めて多数に上りましたけれども、骨子の内容に賛成するものが多くあるほか、反対の意見や新たな要望に当たるものも見られたところでございます。これらの意見の中から重複するもの、あるいは単なる賛成の意を表されたものなどを整理いたしますと、合計で451の意見に集約されたところでございます。今後は、基本計画検討会におきまして、この451のご意見を踏まえた検討を行っていただき、12月の閣議決定に向け、作業を進めていただきたいと考えております。
 また、先日、犯罪被害者団体と犯罪被害者支援団体から要望が寄せられたところでありまして、そのご報告をさせていただきます。その内容でございますが、4点ございます。1つは、以後の検討に委ねられた施策について検討期間を短縮してほしいというもの、2つは、被害補償に関する法律の制定、附帯私訴の導入をしてほしいというもの、3つは、裁判所においても犯罪被害者等施策の検討会を設置してほしいというもの、4つ目は、交通事犯につきまして独立した項目を立てるくらいの交通事犯についての施策を充実してほしいというものでございます。今後、こうしたご要望があったことを踏まえていただきまして、ご検討をお願いいたしたいと思います。

○山上座長代理 それでは最初に、基本計画案の基本方針・重点課題・計画期間についてご議論いただきます。事務局案の説明と、国民からの意見に対する内閣府の回答についてお願いします。

○事務局 それではご説明をいたします。基本計画案の基本方針・重点課題・計画期間につきましてご議論をいただきます前に、お手元にこれも別置きの資料といたしまして、「事務局案その二」という資料を置かせていただいております。この資料の作成に至りました手順につきまして、最初にご説明をさせていただきたいと思います。お手元のさらに別の資料で「犯罪被害者等基本計画第8回検討会配布資料」という資料がございますけれども、このうち内閣府資料1という資料がございます。これは先ほどご説明をいたしました国民からのご意見のうちで、第8回検討会における検討課題を取りまとめたものでございます。関係府省庁に対しまして内閣府資料1を配布いたしまして、これに対する考え方を提出していただいたところでございます。その後、国民からのご意見と、それから関係府省庁からの回答をもとに、内閣府資料1-2のとおり、事務局におきまして、「犯罪被害者等基本計画案試案(第8回検討会用事務局案)」を作成したところでございます。その後、各構成員の皆様に、この内閣府資料1-2を配布させていただきました。そして本日までにご意見をいただいたところでございます。それらのご意見でございますけれども、「犯罪被害者等基本計画第8回検討会配布資料」にそれぞれの構成員資料として綴じてございます。もっとも検討会の直前にいただいた資料もございますので、これにつきましては別置きにさせていただいております。そして、いただいたご意見をもとにいたしまして、先ほど冒頭に申しました別置きの「犯罪被害者等基本計画案試案その二(第8回検討会用事務局案に係る意見を踏まえた事務局案その二)」を作成いたしたところでございます。したがいまして、本日の検討会では、別置きにさせていただいております「犯罪被害者等基本計画案試案その二」の資料に基づきましてご議論いただければと思います。
 それから次に、別置きをしております「事務局案その二」のうち、最初の議題であります基本方針・重点課題・計画期間についてご説明をさせていただきます。別置きの2種類ある「事務局案その二」の資料をご覧いただきたいと思います。これらは、いわば基本計画案の総論に当たる部分でございます。本日、総論につきましての内容を確定するということは考えておりませんで、第10回までの具体的施策に関する検討の結果を踏まえまして改めて事務局案を作成し、第11回の検討会において再びご検討いただきまして、そこで内容を確定していただきたいと考えております。本日は、検討の進め方でありますとか、あるいは本日提示をしております事務局案の基本的な方向性でありますとか、あるいはその他お気づきの点についてご意見を賜りたいと考えております。
 なお、重点課題の説明部分のうちで今回提示をいたしましたのは、本日の3つ目の議題としてご議論いただきます「①損害回復・経済的支援等への取組」に関する部分のみでございます。その他の部分につきましては、それぞれ関係する基本的施策が検討されます第9回、または第10回の検討会におきまして逐次提示をさせていただく予定でございます。
 骨子では、総論部分の最後に記述をしております計画期間でございますが、これにつきましては、基本計画が達成しようとしている目的と密接な関係があると考えまして、基本計画策定の目的の末尾に記述をしております。この点につきましても、構成員の皆様のご意見を賜りたいと思います。
 それから、骨子の基本方針・重点課題・計画期間に対する国民からのご意見のうち、内閣府に関係するものについての内閣府の回答でございますが、内閣府資料1-3、の1ページから13ページまで記載をしているとおりでございまして、特に補足する事項はございません。
 なお、本日、ご欠席の久保構成員から総論部分についてご意見をいただいておりまして、これは「事務局案その二」でございますが、これの7ページ、8ページでございますけれどもご覧いただきたいと思います。7ページの中ほどから枠で囲っておる部分でございますが、それらにつきましての内閣府の考え方を今から申し上げたいと思います。
 まず、(一)の、事務局案全体にダブりがあると、それを整理すべし、ということでございますけれども、このご意見につきましては、それぞれの記述がございます箇所で説明を要する犯罪被害者等の置かれた状況を過不足なく表現しようとしたものでございまして、同じ状況についてのご説明ということで同じ表現を使っているということでございます。
 それから、(二)にご指摘をいただいております点でございますが、今後、事務局案をご議論いただきまして、基本計画検討会の案として取りまとめをしていっていただく過程で具体的なご意見をいただきながら、構成員の皆様にご議論をいただければと思っております。
 次のページの(三)の1)、これはただいま申し上げたとおり、今後、さらに具体的なご意見をいただき、ご議論いただければというふうに思います。2)でございますが、基本方針らしく全体として前向きな表現を心がけよということでございまして、これにつきましては、事務局案基本方針の記述をどういう考え方で記述したかということをここでご紹介させていただきたいと思います。すべての施策につきましては、基本法で規定されております基本理念等によって示されております犯罪被害者等の置かれた4つの代表的な状況、これらを具体的にイメージし、そしてその状況を打開し、犯罪被害者等の権利利益の保護を図るという視点を持ってすべての施策が策定、実施されるべきだという考え方に基づきまして、その記述の内容といたしましては、まず、それぞれ該当する基本法の基本理念を述べる、それからその次に、当該基本理念に関係をいたします犯罪被害者等の置かれた困難な状況を述べる、そして最後に、それを打開するという観点から、施策の実施者において目指すべき方向性や視点を述べる、こういう考え方で記述をいたしておるところでございます。また具体的なご議論をいただければと思います。3)の民間団体との連携等につきまして基本方針④に入れるべきというご意見でございますけれども、基本方針につきましてはただいま申し上げたような考え方で、すべての施策が目指すべき大きな方向性とか視点ということを示すということで記述をしております。したがって、基本法に規定されております基本理念あるいは第6条の国民の責務という規定から直接導かれるものについての記述ということで記載をさせていただいております。むしろご指摘の民間団体等との連携等につきましては、具体的施策の中身ということになりますので、重点課題の中で取り上げるべきではないかということで、今、事務局としてその具体的案の検討を行っておるところでございます。この久保構成員のご意見につきましてのご議論もしていただければというふうに思います。

○山上座長代理 国民からの意見に対する回答としては、警察庁と法務省からも事前に資料が提出されております。また、最高裁判所からご意見をいただいておりますので、補足することがあれば、順次、ご発言をお願いします。警察庁。

○片桐構成員(警察庁) 警察庁は特に補足事項はございません。

○山上座長代理 法務省、どうでしょうか。

○三浦構成員(法務省) 私の方も特に補足することはございません。

○山上座長代理 最高裁判所の方はいかがでしょうか。どうぞお願いします。

○最高裁判所(伊藤事務総局刑事局第2課長) 今、ご指摘いただいた点は最高裁意見と書いてございますけれども、我々が内閣府に提出させていただきました意見書におきましては、Ⅴの第1の1の現状認識についてと同様の問題があるということを述べさせていただいたということでございまして、要するに、「実効的な賠償を期待できないことがむしろ多い」という表現が必ずしも客観的なデータに基づくものではないので、もう少しやわらかい表現をとったらどうでしょうかと、これだけのことでございます。

○山上座長代理 それでは、ご意見のある構成員は、どうぞお願いします。

○小西構成員 この「実効的な賠償を期待できないことがむしろ多い」と……。

○山田構成員 資料番号を言っていただけますか。

○小西構成員 今、おっしゃった部分に関してですが、最高裁のご意見としても出ておりますし、ほかの、例えば法務省からのご意見としても出ていると思います。何か所か言及がありますので、すべて同じことであろうと思いますが、例えばこれについてと思われる岡村構成員、大久保構成員からのご意見もございますので伺いたいのですが、私の立場から申しますと、実際にどのくらいの実効のある賠償が行われているかということについて、もし資料があれば、やはりそれを出して議論するべきことでしょうし、もしその資料がないのであれば、少なくともそういうことを思っていらっしゃる方が実際にいることだけはわかっているわけですから、それに見合った形で表現することが必要だろうと思いますが、それについてどなたかお答えいただければというふうに思います。重ねて申しますと、「むしろ多い」というのがおかしいということを言うためには、少ないなり、あるいはこれだけであるということの議論がなければそういう主張はできないと思いますので、それについて何か資料がございますかという質問と思っていただいて結構です。

○山上座長代理 岡村構成員から追加の資料の提出があったと思いますが、それに関連して答えていただければと思います。

○大久保構成員 では、岡村構成員が、今、資料をご準備なさっているようですので、その前に、犯罪被害者支援の現場にいて通常的に被害者の方に接して思うことということで、最高裁の方から「むしろ多い」という表現は適していないというようなことですけれども、多くの被害者の人は、賠償を求めるためには、やはりそれなりの資力がなければなりませんし、反対に特に重罪を犯す殺人事件などの場合は、殺人事件の加害者から被害者が賠償を受けたなどという話はほとんど聞きません。それどころか人一人の命を奪っておいて、200万か300万円出すからこれ以上何も言うなという形で、何か民事を起こすんだったら、あるいはこれ以上何かを言うんだったらその2、300万さえも出さないからということで反対に脅されたりして苦しんでいる、また、民事を起こしたときにも、そのことによってさらなる被害を受けるのではないかということであきらめるという話がほとんどです。ここに「むしろ多い」ということがおかしいということであれば、重罪あるいは被告人、加害者たちがきちんと賠償しているという資料を出してこのように言っていただきたいと思いました。

○岡村構成員 私が本日出しました意見書があるんですが、その6ページに、法務省のつくられた「平成11年版犯罪白書」に載りました支払い状況が表になっております。

○山上座長代理 「犯罪被害者等基本計画案試案その二の重点課題に係る具体的施策に関する他庁からの意見について」として、岡村構成員の名前が出されております。それの6ページですか、お願いします。

○岡村構成員 それを見ますと、殺人罪等で全額支払いのあったのが6.6%、これは自発的に払ったのも、それからやいやい言ってやっと払ってもらったのもあります。そして今後払う予定だというのが3.8%ありますが、これは我々の体験では、後で払われた例は非常に少ないです。それから傷害罪では全額支払は18.2%ですね。この殺人というのは傷害致死と殺人と両方ですけれども、あとはわかりますように、強盗、強姦、強制わいせつとありますけれども、全額払われたのはこのようなパーセンテージでありまして、これは自発的に払われたという例は非常に少ないということです。しかも自発的に払われた殺人等においては6.6%ですけれども、人数からすれば500万円以下が2人です。それから1,000万円以下が1人です。そして3,000万円以下が1人、5,000万円以下が1人、1億円以下が1人、こういうような数でありまして、払われるのは極めて少ないというような事情でございます。だから自主的に払う弁償とかはありますけれども、これは本当に少ないです。大体、人を殺しておいて自主的に金を払うという人間は、そんなにいるものじゃありません。今後支払う予定というのは、よく判決をとる前に言うことですけれども、実際は払われないケースが多いんです。それは法務省自身が調べられた平成11年度の資料によるわけです。

○三浦構成員(法務省) 今、岡村構成員の方からご紹介のありました法務省の調査は、平成9年から11年にかけて法務総合研究所の方で、いわゆる実態調査ということでやったものを取りまとめたものの一部でございます。この賠償金支払い状況の関係で申しますと、全体の総数が1,065でございまして、全額支払い等々のパーセンテージは、岡村構成員の意見書に記載されているとおりでございますが、ご指摘のように、殺人のところは、この表にもあるようにかなり低い割合となっております。全体の総数だけで申しますと、今の1,065のうち全額支払いがあったというのが325で30.5%、それから一部支払いがあったが残りは支払いの見込みはないというのが110で10.3%、一部支払いがあり、残りも今後支払う予定であるというのが90で8.5%等々となっております。
 岡村構成員のご指摘にもあったように、これはどういう形で支払いがあったかというのは、任意の支払いなのか、あるいは勝訴判決を得て強制執行が行われたのかといった区別はしていないところでございまして、先ほどの最高裁のご意見の中にもあったように、要するに勝訴判決を受けても、なお損害賠償、損害の回復がされないのが通例かどうかということが本当なのかどうかという観点からすると、残念ながら必ずしもそこまで分解して調査をしたものではないということでございます。確かに特に重大事件を起こした者の場合に、資力がないということもあって、勝訴判決がなされてもそれに従って損害回復がなされるとは限らないことがしばしばあるというのはそうだろうと思われますが、恐らくそれ以外の犯罪、比較的軽い犯罪であるとかあるいは財産犯ではどうかということになると、もう少し調査をしてみないとわからないのかなという感じはしており、いわゆる民事訴訟で判決が確定したということを踏まえれば、任意の支払い以上のそれなりの回復の効果が得られる場合もそれなりの割合ではあるのかなというのが、私どもの感じとしてはあるということでございます。

○岡村構成員 私どもの示した表で業過致死が58.9%、業務上過失致死傷が32%。これは交通事故がほとんどなんですね。だから保険がかかっている。しかし、保険がかかっていても訴訟を起こさないと保険会社も払いません。簡単にこれだけだといってどんどん出す保険会社はあまりありません。ところが保険会社に対して訴訟を起こすというのは、被害者にとってはしんどいものですが、泣く泣くそれを了承していくと、こういうケースもあるわけなんです。私どもの実務上の感覚から言えば、通例といって差し支えないくらい取るのが難しいんです。これを取ることがしやすいと考えているとすると、そういう被害者側に立った実務をあまりやっておられないのかなと、失礼ながらそういう気がします。大変取るのに苦労するんです。

○山上座長代理 私もちょっと意見を言わせていただきますが、支援にかかわっている立場からの実感からすると、賠償がされる率というのはもっとはるかに低いはずだというふうに感じられるものです。ただ、ここで出る数字というのは、やはり交通業過、業務上過失致死傷などが入っていて、その賠償額の確定ができない、示談ができないために裁判になったという例などが数の例ではかなり多く入るものです。そういう保険とか、それから大きな企業がかかわっているようなものだとかなりの確率で支払いができるということであって、実際に個々の犯罪で苦しまれる方たちというのは、多くは殺人などの訴訟を起こしたところでほとんど期待できないという実態にあるのが事実なのだと思います。だから表現の仕方は多少配慮してもいいかもしれないけれども、実態そのものはやはりその実感に近いものがあるんだという表現の方が私はいいように感じるわけですけれども。

○岡村構成員 それから、私どもが犯罪白書から抜粋した表の一番下の業過傷というのがありますが、これは全部交通事故だそうです。それでも32%しか払われていないんですね。

○山上座長代理 どうぞ。

○井上構成員 実態が正確にどうであるかを議論し出すと、評価はかなり分かれるかもしれませんが、いずれにしても、これは表現の問題ですよね。ここはそういう指摘があるということで括っている部分ですので、そのような指摘があったということは、問題を指摘されている方も否定されないと思います。ですから、「むしろ多い」とか「むしろ通例だ」というところの表現がやや過剰ではないかというご趣旨だと思うのですが、問題は「むしろ」というのと「通例」と2つの言葉なのでしょう。そのうち「通例」というのは、私の感覚からしても、やや断定に過ぎるように思います。そういう指摘をされた方々としては、そのような例が多いというふうに受けとめられておられ、また実際にも多いのだろうと思うのですが、そういうことを指摘されているのは確かなので、「通例」という言葉を「多い」と改めてはどうでしょうか。また、「むしろ」というのも比較の言葉なので、端的に「多い」と指摘されているという表現でも、十分気持ちが伝わるのではないかというふうに思いますが、こちらの方はあまりこだわりません。しかし、「通例」というのは、やや行き過ぎた表現ではないかと、私の語感ですけれども、そのように思います。

○山上座長代理 ほかにご意見いかがですか。

○大久保構成員 私は被害者支援の現場にいますと、本当に幾ら民事裁判を起こしても、実際には払われないということがほとんどであるということを感じておりますので、「通例」とすっきりと書いていただいた方が、犯罪被害者が置かれている現状を皆さんに理解していただけるのではないかと、そのように感じています。

○岡村構成員 執行猶予の食い逃げというのもいっぱいあるんですよね。それは国の方では調査されていない。本当は最高裁に、示談することによって執行猶予をつけたその後の食い逃げがいかにあるかということを追跡調査していただきたいと思うんです。ぱっと居所をくらまして払わないというのは極めて多いんです。私もやはりこれは「むしろ通例である」という表現、これがやっぱり立法者の意思でもあったと思うんです。「通例」ということを書いてけしからぬというパブコメは、どこからも来ていないです。

○山上座長代理 ほかにどなたかご意見ございますか。

○小西構成員 私は、むしろ訴訟にかかわらない方たちの被害を見ているのですが、そういう方たちの中に、訴訟してもとれないことがわかっているので、もう訴訟はしないから医療的な治療だけで私はやりますという方が結構いらっしゃるんですね。そのことを考えますと、ここに出ているのでは正確にわからないというのであれば、そういう方たちの数もわからなければ本来のニーズというのはわからないわけで、そういう点では、むしろここにある数より多いんだと思う必要があるというのが私の意見です。そういう意味では、この表現より後退させる必要は何もないと考えています。

○井上構成員 実態論に踏み込んで議論するのは、問題点がずれると思うのですね。むしろ、こういう指摘があったということは事実なので、その指摘の内容をどう正確に表現するか、そういう問題だろうと思います。その意味で、私の語感はちょっと違っており、「通例」とまで言うのはやや行き過ぎではないかという感じを持ったということを申し上げているわけです。「むしろ多い」の方は、皆さんがそれでおかしくないということならば、それはそれで結構だと思います。

○岡村構成員 そして、もっとたくさん要求してもやむを得ず低くなると、低いところで妥協するということも多いんですよね。だからそれも損害回復の目的を達していないわけなんですよ。言いなりに出す人はいませんよ、必ず値切ってくる。だから損害の回復を果たせないということは、「通例」と言っていいはずなんです。

○大久保構成員 私もその表現の中では、「通例」。「むしろ多い」という言葉は後退させる必要は全くないと思いますので、このまま使っていただきたいと思います。

○三浦構成員(法務省) 質問というのも何なのですが、今、議論されているのは、重点課題に係る具体的施策の方ということでよろしいですね。先ほどの最高裁の方の出された意見との関連で、それでよろしいのですね。

○山上座長代理 そういうことです。

○三浦構成員(法務省) 訴訟を起こすのが非常に難しい方がたくさんいらっしゃるということもそうなのですが、具体的にその表現が記載されているのは、訴訟で勝訴判決を受けても賠償能力が欠けていたり云々ということで「損害回復の目的を果たせないことがむしろ通例」となっているので、要するに勝訴判決ということでまさに訴訟が確定した後の状態でさらにどうかという話です。そこまでいってなお「通例」というかどうかというのは、少なくとも先ほど申し上げたように、法務省の方で調査したときもそこまで分解して調査したわけではございませんけれども、もっと手前で任意で交渉している段階ですとか、あるいはそういうふうにとても言い出せない状態の被害者ですとか、そういうことも含めてなかなか損害回復ができないということとは、やや次元の違うことが記載されているのかなというふうに思っております。

○岡村構成員 この勝訴判決をとりましても、すんなりと執行できる場合は少ないですよ。まず隠すんですよ。偽装離婚しちゃって、奥さんの名義に財産を移す。そしてそれだけだとまた否認権行使の訴えが起こるかもしれないから、それをさらにまた第三者のところへ持っていくとか、いっぱいあります。あるいは預金通帳をおろしてしまうとか。だから保全をかけなきゃいけないけど、保全命令をかけるには金が要るということで、判決をとったからといって、判決をとれば、その判決どおりに加害者から金を取ったというふうに新聞に書かれたりして、「いいわね、子供を亡くしたけれども5,000万も1,000万も取れて」と言われる。だけど実際は取っていないんです、子供の名誉を回復するためにそれしか手段がないから泣く泣く訴訟をやっていて、それを今度新聞報道でみんなにそんなことを言われて嫌な思いをしている人がほとんどです。少年犯罪では特にそうです。まずとれないということを前提で考えないと、この被害者の救済はできないと思います。私どもは弁護士50年近くになりますけれども、取ったためしがありません、取れたためしがありません。不動産を競売しても抵当がついていたり、公正証書にいろいろつけられていたり、配当加入をされたり、いろいろな手、あの手、この手でやってこられるんですよ。それに対して、また金をかけていろいろな戦いを挑まなければいけないけれども、被害者はもうそういう気力がない。そういう実態をぜひ法務省も最高裁も理解していただきたい。本当に苦しい思いをして弁護士は戦っているんです。

○事務局 総論部分のご議論が各論の方に関連いたしまして、今、具体にご議論いただいているのは各論部分の箇所でございます。皆さん、その部分のご認識の誤解はないと思うのですが、念のために箇所を申し上げますと、通例というのは、「事務局案その二」の資料の4ページに、Ⅴ重点課題に係る具体的施策第1の1.の一番下の行の冒頭に「通例」という、この箇所の表現についてのご議論を今いただいております。これは先ほどの総論部分と関連するということでございまして、その関係についての法務省等からのご意見につきましては、8ページの下の欄、しかしながら云々という四角で囲ってある部分、それから9ページ、10ページに内閣府の意見を記載をさせていただいております。関連部分でございますので、引き続きご議論いただければと思います。

○岡村構成員 確かに実態をここで議論する場ではありませんが、実態を知らなければ言葉が出てこないと思いますので、私は実態についてお話をしておきました。山田構成員も弁護士でいらっしゃいますが、損害賠償請求で判決をとったならば、それですぐ回収できますか。

○山田構成員 一般論をここで発言するのはどうかと思いますので、今の岡村構成員からのご質問に対しては置いておきますけれども、この「通例」の今のくだりですね、これは確かに先ほど法務省の方からお話のあったとおり、訴訟が行われた場合にどうかということの論述の中の表現ですから、その場合、「通例」と言っていいのかなという感じは率直にあります。ただ、訴訟をしない・するという場合で、訴訟をする場合としない場合がどっちが多いのか、しない場合が圧倒的に多いんじゃないかなと、何もデータはありませんがそう思います。そうすると、一般的に、補償してもらえない、賠償してもらえない、結果的に得られないということが、そういう意味では「通例」だと思うんですね。ですから、一般的に言うならば、「損害回復の目的を果たせないことがむしろ通例」であるということでよろしいかと思いますが、訴訟の場合に限定した場合に、そこで正確性がなくなるかもしれないなと思っております。
 それからもう一つ、「むしろ多い」という表現は、これはどうかなと思っております。といいますのは、「むしろ多い」というのは、多いか少ないか、一見して少ないように見えるけれども、よく考えてみるとむしろ多いという場合の「むしろ」ですよね。だとすると、「むしろ多い」というのは不正確といいますか、犯罪被害者の方々から見ても大変ご不満ではなかろうかと思いますね。「むしろ通例」という場合の「むしろ」は、通例という意味合いが相当程度、100%に近いぐらいのことでありますから、「むしろ」という言葉が日本語として生きてくると思います。ですから、「通例」という場合と「多い」という場合で「むしろ」を使うか使わないかは差が出てくるということ。それから、訴訟による場合と訴訟によらざる場合とで違うのではないかと、使い分けて表現した方がいいのではなかろうかというふうに思います。

○山上座長代理 この点で私が感じますのは、やはり「むしろ通例」という言葉は少し問題があるかと感じるところがあるんですが、と申しますのは、やはり交通業過致死という事件ですと、裁判で確定すればかなりの率でちゃんと損害回復が命じられて、実現していますので、その数が実際の裁判の数の上ではかなり多いことを考えると、むしろ効果がないのが通例であるという表現は、こういうテーマに関しては少し抵抗が生まれるのはむしろ当然かという感じがします。被害者自身に実際の損害回復がほとんどされていないという実態はあるわけですけれども、少し表現の仕方をやはり慎重にした方がいいような気がいたします。

○岡村構成員 この基本法というのは、犯罪被害者を救済するために大きな立場でつくられたのであって、そんな言葉遊びみたいなことを一々やらなきゃいけないものなんでしょうか。そこのところが私はまず引っかかるんです。どうして言葉が正確でなければ先へ進めないのか、もっと重要なことがあるのではないかと私は思うんです。私は、ここで特に現状認識、これは立法者の意思が全政党満場一致で決まったということは、現状認識のもとに行われたんです。現状の認識がなくて法律ができるはずがありません。だからその立法者のつくった法律を実施しようとする場合には、その立法者の現状認識を十分理解しなければいけない。そしてまた、この検討会においては確かに被害体験を持つのは2人だけでありますけれども、犯罪被害者等施策推進準備室段階からかなりの方のヒアリングをされているわけですね。被害者団体、被害者、学識経験者、そういう方々からの大勢のヒアリングをされて、その成果も我々はもらって、恐らく自民党がやられたのももらわれたんでしょう、そういうようなことなんかでこういう現状認識というものが生まれてきたんです。私はこの表現で不満があるというのは、現状認識について、最後に「との指摘がある」と書かれている場合がある。これはおかしいんです。指摘があったことだけが現状認識であるというのは、私はおかしいと思います。十分に機能しているとは「言いがたい」という現状認識にとどめるべきで、指摘があったということは削除していただきたいと、私はそう思っております。そうしないと、指摘があったという事実だけを現状認識にするというのはおかしいと私は思っております。修文について文章を出す余裕がありませんでしたけれども、私は、ここの現状認識のところで難しいと。

○山上座長代理 議論が白熱しているんですけれども、立法者の意図のことがございましたが、村田大臣が途中でいらしたので、今のことも含めて一言お願いします。

○村田大臣 もう議論が核心に入っておりますので、多くは申しませんけれども、秋にいつの間にか入りまして、秋のパブリックコメント等を踏まえた議論が開始されたわけでございますが、構成員の皆様方には、それぞれ年末の基本計画を取りまとめるための最後の作業を一生懸命やっていただきたいなと思っております。
 我々政治家の方は、大騒ぎしているうちに夏休みも全くなくなりましたけれども、私自身もこの職に、地位にある限り一生懸命この計画をまとめるために作業に加わりたいというふうに思っております。ご苦労さまでございます。

○山上座長代理 それでは今の論議をそのまま進めさせていただきます。

○小西構成員 法務省からのご意見というか、ここの文書を読みますと、確かに下から4行目の「勝訴判決を受けても」というところにこの損害賠償のことがついていますから、そういうご意見になるんだろうと、それにも不満がありますが、あると思います。
  ただ、損害回復経済的支援というのは非常に大事な法律の柱で、かつ今まで被害者がそういうことを言ったときには、それは損害賠償があるだろうというふうに言われてきたので、損害賠償が実はできないんだ、実際にできていないんだということを言うことはとても大事なことなんですね。だからここはやっぱりこの法律の基本にかかわってくるところで、勝訴の場合はそうではないというデータもやっぱり今の話では十分ではないと思いますけれども、もしそこがわからないとしても、訴訟できない人も含めて、この今までの損害賠償では十分ではないことがはっきりしているからこそそうなっているわけですから、要するに、今、法務省が言われている意見に関しては、それは別に切り取って、最後のところの損害賠償の目的を果たせないことがむしろ通例である、あるいは通例であるということに関しては、独立して立てるような文書にしていただいたらどうかというのが、今、思うことです。つまり、上の方から含めて、損害賠償ができない人もいる、それから、してもほとんどだめな人たちもいる。例えば殺人事件の遺族の方なんかは、私の知っている限りでもほとんどだれも受けていません。少なくとも接している人たちは全員そう思っているわけです。確かに勝訴したケースで幾つというのは日本でデータがありませんから、データがないこと自体もやっぱり日本の被害者対策の不備だと思いますけれども、そこを譲るとしても、最後の損害回復の目的が果たせていないことについては、この検討会の一つの結論としておいてもいいのではないかというふうに考えます。

○事務局 今までのご議論を伺っていまして、この総論部分の重点課題①の関連で、今、各論部分の方へ入っているんですが、先ほど法務省からのご意見で、重点課題①の方は、これは勝訴判決の場合に限られていない記述でございます。ということになれば、もし総論部分の方については問題がないということであれば、このご議論の焦点はまさに各論部分の第12条関係になってまいりますので、ご議論の進め方の便宜上、総論部分については、この表現で一応仮置きでよろしいということであれば、残りの総論部分についての必要なご議論をしていただいた後に、後刻、各論のご議論をしていただく際に、再度、ご議論いただければというふうに思いますが、いかがでしょうか。

○岡村構成員 それともう一ついいですか。ここの部分ですけれども、下から6行目、「加害者の所在等の情報が不足していることなど」と切れておりますが、情報が不足していること、その次に非常に重要なのは、被害者が住所を知られることに対する不安と、これが訴訟を起こさない非常に大きな要素になっております。

○事務局 すみません、今、ご指摘のところも第12条関係の具体的な問題でございますので、ただいまご提案をしましたように、まず、この総論部分の方をご議論いただいて、それから後刻、具体的な各論部分をご議論いただきますので、その際にまたご指摘いただければと思います。

○山上座長代理 総論のところで重点課題の損害賠償の問題に入っちゃっているんですが、その点は後で改めて触れることとして、そのほかの点で総論の部分で何かご意見がございましたら。

○大久保構成員 そうしましたら、基本方針④のところの「国民の総意を形成しながら展開されること」の部分ですが、少しご意見だけお伝えさせていただきたいと思います。「国民一人一人が犯罪被害者等のことをよく理解し、配慮し、尊厳を尊重して支えることが健全な社会の証である。」の後に、「犯罪被害者等の居場所は、地域社会の中にあるので云々」と書いてありますが、ぜひここの部分の中に、犯罪被害者は、被害に遭ってもその後もその地域で暮らし続けるということが、被害者の回復のためにも、また国民の総意を得るためにも必要であるというような文言を適切な形でぜひ入れていただければと思いました。

○山上座長代理 その意味の背景といいますか、恐らくその地域で住みづらくなるとか、そういう問題を含めてということでしょうか。

○大久保構成員 そうです。犯罪被害者は、どちらかといいますと、加害者、被害者が同じ地域にいますと、被害者は何も悪いこともしていないのに、なぜかその地域にいられなくなって、転々と引っ越しを繰り返して、そして何年か経った後、何で自分は悪いこともしていないのに人の目を逃れて見ず知らずのところに行かなければいけないんだろうか、あるいは亡くなった家族が育った大切な家をなぜ手放さなければいけなかったんだろうかというように、ふと何年もたって我に返ったとき、やはりまたそこで被害者の回復は止まってしまいますので、被害に遭っても偏見や中傷を受けることなくその地域に住み続けるということが被害者の回復には一番大切なことだと思いますので、そのあたりのところを入れていただきたいと思います。

○山上座長代理 よろしいですか、では、こちらは事務局で検討させていただきます。

○大久保構成員 これは本当に言葉で。

○山上座長代理 そのほかにどなたか何かございますでしょうか。

○山田構成員 細かなことで恐縮なんですけれども、1ページの本文の上から2行目で、「人が被害者となった刑法犯の認知件数は」とあるのですけれども、「人が被害者となった」というのはどういう意味なんでしょうか。人身という意味じゃないのですよね。窃盗でも人が被害者になったという、ちょっと揚げ足をとるわけじゃないですけれどもわかりづらかったものですから、「犯罪等は後を絶たず、刑法犯の認知件数は」でいいのかなと、そういう意味なのかなと思うので、ちょっとわかりませんのでお尋ねする次第です。これは、経済犯は除くという意味ではないでしょう。

○事務局 ただいまのご質問の点でございますけれども、これは例えば財産犯が除かれているということではございません。入っております。要するに被害者がおられる犯罪ということでございます。

○山田構成員 何か入っていると紛らわしくありませんか、細かなことですからお任せしますけれども。

○井上構成員 あまりこだわるつもりはないのですけれども、この数字が刑法犯全体の認知件数であるとすると、刑法犯の中には、厳密に言うと、いわゆる被害者なき犯罪というものも含まれているので、単に「刑法犯の認知件数は」とするのでもいいのではないでしょうか。

○事務局 再度ここは確認をして、後刻、回答させていただきたいと思います。

○岡村構成員 ここのところを私たちも議論したんですが、被害者のある刑法犯というふうにしたらわかりやすいんじゃないだろうかと、こういうふうに思いました。

○井上構成員 そうすると、数がこれでいいかということになってくるのではないでしょうか。

○山田構成員 被害者がある刑法犯と被害者がない刑法犯があるんですか。

○岡村構成員 通貨偽造なんか。

○山田構成員 そういう趣旨ですか。

○岡村構成員 通貨偽造とか麻薬とかね。

○山田構成員 それはここではそういう意味で書かれているのですか。それは被害者のあるという意味で書かれている刑法犯の数なのですか。

○山上座長代理 そういう意味だと思いますね。

○岡村構成員 そういうことですよ。窃盗とか詐欺とか、それから生命身体とか、いわゆる被害者が人間になっているということであって、通貨偽造とか麻薬とか、そういうふうなものは外されているわけでしょう、というふうに私は理解したんですが。

○事務局 今、確認をいたしました。おっしゃるとおり、人が被害者となった一般刑法犯の認知件数ということでございます。それに業過致死傷と危険運転致死傷を加えているという数字でございます。

○三浦構成員(法務省) 最終的に数字はチェックの問題ですので、正確にカウントしていただければよろしいかと思いますが、今、最後に触れられた交通事故に係る危険運転致死傷及び業過致死傷を含むというと、恐らく被害者のある犯罪という意味でいえば、当然それらは入っているのではないかという疑問が1点と、それから逆に交通事故に係るこれこれを含むと書くと、交通事故にかからない業過致死傷の事件も当然入るべき数字でしょうから、その辺の数字をある意味で正確にしていただければ、事務的で結構でございますけれども、その点だけよろしくお願いいたします。

○事務局 数字は、いずれにいたしましてもきちっと正確なものにするということで確認をいたしますけれども、ここであえて「危険運転致死傷及び業務上過失致死傷を含む」と記述しておりますのは、これは交通事故に遭われた被害者の方々からのいろいろなご要望とか疑問点、ご意見の中に、こういうものがあるんですね。1つは、刑法犯には道路上の交通事故に係る危険運転致死傷及び業務上過失致死傷が含まれるにもかかわらず、これら交通事故にかかわる犯罪の被害者というのは、他の犯罪による被害者と異なる扱いを受けているので、交通事犯もまた犯罪であり、その犯罪被害者等であることを基本法等で明らかにしてほしいというようなご指摘もございました。それから、交通事犯の犯罪被害者等は、基本計画の対象とそもそもなっているんですかというような疑問もあるんですね。ですから、そういうご要望とか疑問点にお答えするという意味でも、あえて記述をしているということでございます。

○山上座長代理 よろしいでしょうか。

○大久保構成員 ちょうど1ページ目のことが出ましたので、1ページ目で少し気がついたことをお願いいたします。上から17行目に、「それらに劣らぬ重大な精神的被害を負うとともに、再被害云々」とありますが、ここの部分の「精神的被害」を「二次的被害」に改めるということは無理でしょうか。なぜかといいますと、犯罪被害に遭った後、精神的な面だけではなくて、いろいろなパブコメの中からもいろいろ意見も出ていましたように、その後、犯罪被害者たちは、例えば周囲の無理解にあったり、家庭が崩壊したり、仕事を失ったりというような二次的被害を多く受けることがあると思いますので、ここを「二次的被害」という言葉にしていただけると、その後の2行目に、「新たな精神的被害を受けたり」という言葉で、その精神的ということがダブらないでも済みますし、広く理解をしていただけるような言葉に変えることができるのではないかと思いますので、お願いいたします。
 それと、先ほど引っ越しをせざるを得なくなることがあるので、そこに住み続けることが被害者のためになるということをお話ししましたが、その話の前に、加害者が同じ地域にいる場合ということで一つの例として出しましたが、必ずしも加害者、被害者が同じ地域にいなくても中傷を受けたりということで引っ越しせざるを得なくなる被害者がたくさんいるということを申しつけたいと思いますので、お願いいたします。

○山田構成員 今のところの初めの「精神的被害」は二次的被害ではないですよね、その犯罪そのものによる被害ですから、これはいじらない方がいいんじゃないですか。後の方の「新たな被害」のところ、「新たな」というよりも使い慣れているというかなじみやすい「二次的」という言葉を使ってもよろしいのかもしれません。また、一番最後の「副次的」というのも、これも「二次的」という方が強いインパクトがあるのかなという感じはいたします。ですから、一段目の「精神的被害」という文言には「二次的」という形容句をつけない方がよろしいかと思いますが、どうでしょうか。

○山上座長代理 そうですね。目に見える被害に加え、目に見えないという意味での精神的という、そういう対比をしてるので、ここの言葉の方が落ち着きがいいかもしれません。後の方は、むしろ新たなものですから「二次的被害」とすれば。

○事務局 今、ご指摘いただいている点は、事務局案では一応書き分けたというつもりでございます。ご指摘があった「劣らぬ重大な精神的被害を負う」というのは犯罪から直接受ける被害、それから、その2行後に、例えば「時には配慮に欠けた対応による新たな精神的被害」、それからさらに4行ほど下がりまして、「さらには、周囲の好奇の目、誤解に基づく中傷云々」といったところでは二次的被害ということで、書き分けたつもりでございます。

○大久保構成員 どちらかといいますと、二次的被害という言葉が社会一般にも最近広まっているように感じますので、どこかにその文言を入れていただければと思います。

○三浦構成員(法務省) 今、議論されている段落の中で、細かい話ですし、ご批判をまたいただいてしまうかもしれませんけれども、捜査、公判の過程で犯罪被害者の方がいろいろな意味で負担を負ったり、あるいはときには配慮に欠けた対応というものに遭うということ自体を否定するつもりはございませんし、いろいろなご批判を受けていることもございますので、そのことを否定するつもりはないんですが、ただ、「犯罪等によってゆがめられた正義と秩序を回復するための捜査、公判等の過程において」というふうに捜査、公判の目的を改めて掲げた上でこのように記載されると、捜査、公判に従事する者にとっては、もちろんいろいろな過程でご苦労をおかけしているのは認識しつつも、まさに正義と秩序を回復するためにいろいろな努力をしていることで、いろいろな意味で被害者の方の支えになったりすることもあるのではないかというふうにこちらとしては思っているところがございますので、やや一方的に書かれている、言い過ぎやしないかという感じがいたしますので、何らかの表現の工夫なり何なりできないものなのかなという感じがしたところでございます。

○山田構成員 それから、言葉じりばかりでちょっと恐縮な感じもするんですけれども、この1ページの上から4行目の「毎年これだけの認知件数があるということは、一生の間犯罪被害者等とならずに過ごすことのほうが困難であるといえよう。」とありますけれども、1年間で326万件という数字を見ると、そういうものかなという感じもしなくはないんですが、そうだとすると、ここにいらっしゃる方も必ず一生に一度は犯罪被害に遭う、そうですかね、現実の問題として。これはこの総論部分で、恐らくこういった意見書というものがかなり世間に出ますよね、それで外国の方も含めて様々な方がご覧になるわけですけれども、とっても犯罪大国で、一生のうち必ずとは言わないけれども、相当の確率で被害に遭うかのごとき印象のこの表現は正しければやむを得ませんが、そうなんでしょうかと思いましたので、後ほどで結構ですが、ご検討いただけたらと思います。

○山上座長代理 窃盗なんかも加えたらかなり広がる。率が高いように感じるんですが。

○山田構成員 ちょっと殴られるとか、そういったものも含めればあるんですかね。

○小西構成員 あまりここにこだわってもと思うんですが、300万件のこの数え方で言うなら当然あり得ますよね。実はここに書いてなくて、後ろの方に書いてあるからいいと思っているんですけれども、被害者等の中には、認知件数に入っていない方もここでは対象になっているわけですね。例えば性被害なんかを入れたら、女性の7、8割の被害が、例えば電車の中の痴漢なんかを入れたらそういう被害があって、多分ちゃんと手を挙げてもらえばこの中もかなりの被害があると思うんですよね。議論するつもりじゃないんですけれども、ここはそういう限られた前文だということの前提のもとに書いていただくしかないというふうに思っています。ただ、犯罪被害はすごくたくさんあることは、山田構成員にも知ってもらいたいなと思います。

○山田構成員 それはいいんですけれども、別にちょっとそうやって申し上げておいたんで、そうだなと思われれば適当に直していただいて、直さなくても結構です。

○大久保構成員 日本人の場合は、今まで日本は安全だと言われてきていますので、多くの人が自分はまず被害者にはならないと、そう思っている方が多いんですけれども、調査の結果でも7、8割の方が犯罪被害に遭うかもしれないという意識もあるという結果も出ているようですので、ここはこのように書いておいた方が他人事と思わず、やはりきちんと読んでもらえるかと思いますので、入れておいた方がいいと思います。

○井上構成員 ちょっと別のことですが。このⅠ、「策定の目的」というところの前に何か文章が置かれるのでしょうか。それとも、これが全体の最初の文章なのですか。

○事務局 これが最初の文章ということで考えております。

○井上構成員 そうだとすると、最初に「犯罪等」というのがいきなり出てくるわけですが、これでは、普通の人が読んだらわからないと思うのです。つまり「犯罪」だけではなく、「等」が付いていて、それは厳密な意味での犯罪には該当しないけれども、非行だとかその他、犯罪の周辺にあるものを含むという趣旨だと思うのですが、この辺はもし明示できるなら、最初にはっきり書いておいて、それから後は「等」でくくるということにした方がいいのではないでしょうか。

○山田構成員 私もそうです。定義が条文にありますよね、だからそこを持ってきておいた方がいいのではないかなと思いました。

○山上座長代理 幾つか要望が字句修文についてありましたけれども、これは最終段階ではないので、これを意見として残して、この次の文書に生かすということでよろしいですかね。そういうことでこの総論部分はよろしいでしょうか。

○事務局 それでは、今、座長代理からお話がありましたように、この総論につきましては、今日ご議論いただいたこと、それからこれからもいろいろとご意見をいただく中で、最終的には第11回の基本計画検討会で内容を固めていただきたいと考えております。これまで骨子を取りまとめてきていただいたわけでございますけれども、それと同様にこの基本計画案の作成に当たりましては、検討会でのご議論を経た上で、検討会の総論ということでつくり上げていただきたいというふうに考えておるからでございます。
 今回は、総論部分についてお示しをしてから非常に期間がなくて、十分お読みいただいた上でのご意見をお寄せいただくということが難しかったかもわかりませんけれども、今後、改めて事務局案を作成し、第11回の検討会で再度ご議論をいただきたいと思っておりますので、構成員の皆様におかれましては、具体的な修正案ですとか、あるいは具体的な対案ですとかをぜひお出しいただきまして、それらをもとに第11回の検討会で議論をしていただいて、検討会としての総論という形で取りまとめていただければと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたしたいと思います。

○山上座長代理 ただいま内閣府の構成員からご意見がありましたけれども、他の構成員からもご意見がございましたら。よろしければ、内閣府の構成員からの提案のとおりといたします。
 次に、推進体制についてご議論いただきたいと思います。事務局案の説明と、国民からの意見に対する内閣府の回答についてお願いします。

○事務局 では、まず事務局案についてのご説明をさせていただきたいと思います。別置きの「事務局案その二」のうち、この各論の方でございます。この資料の1ページから3ページをご覧いただきたいと思います。骨子では、推進体制は重点課題の後に記述をしておりましたけれども、推進体制というのは、すべての施策を実施する際に、各府省庁が留意すべき事項等を規定するというものでございますので、重点課題に係る具体的施策に先立って記述する方がいいのではないかと、その方が適切ではないかというふうに考えまして、すべての施策等の基本となります「Ⅰ基本計画策定の目的、Ⅱ基本方針、Ⅲ重点課題」に引き続いて記述するということといたしております。骨子のとおり、推進体制を「重点課題に係る具体的施策」の後に記述するべきだというご意見もあろうかと思いますが、構成員の皆様のご意見をいただきたいと思います。
 それから次に、推進体制に対する国民からのご意見のうち、内閣府に関係するものについての内閣府回答は、内閣府資料1-3の14ページから19ページまで記載のとおりでございます。特に補足事項はございません。

○山上座長代理 この推進体制の内容に関しては、他の関係省庁からも国民の意見に対する回答として事前に資料が提出されております。補足することがあればご発言ください。警察庁、いかがでしょうか。

○片桐構成員(警察庁) 特にございません。

○山上座長代理 法務省、いかがでしょうか。

○三浦構成員(法務省) 特にございません。

○山上座長代理 総務省はどうでしょうか。

○下河内構成員代理(総務省) ございません。

○山上座長代理 それから、文部科学省はいかがでしょうか。

○文部科学省(板東大臣官房審議官) ございません。

○山上座長代理 厚生労働省は。

○塩田構成員(厚生労働省) ございません。

○山上座長代理 国土交通省は。

○平山構成員(国土交通省) ございません。

○山上座長代理 それではご意見のある構成員は、どうぞお願いします。よろしいですか。事務局から何かございますか。

○事務局 よろしければ、事務局案としてお示しをさせていただきました「事務局案その二」の1ページから3ページのとおりとさせていただければと思います。

○山上座長代理 では、ご意見がなければ、そのとおりにさせていただきます。暫時休憩とさせていただきます。10分間ということでお願いします。

○山上座長代理 それではよろしいでしょうか、時間になりましたので。  最後の議題であります「損害回復、経済的支援等への取組、第12条関係、損害賠償の請求についての援助等、第13条関係、給付金の支給に関する制度の充実等、第16条関係、居住の安定、第17条関係、雇用の安定」についてご議論いただきます。事務局案の説明と、国民からの意見に対する内閣府の回答についてお願いします。

○事務局 それでは、まず事務局案についてご説明をいたします。別置きの「事務局案その二」のうち、4ページから26ページをご覧いただきたいと思います。まず、現状認識でございますけれども、これまでの検討会でのご議論を踏まえまして、内容を見直しております。
 それから、その他の変更事項でございますけれども、全体で8点ほどございます。第1点といたしましては、法律名は正式名称に改めました。そして法律番号を追加いたしております。2つ目は、表現の適正化、これはいわゆる平仄を合わせたということでございます。それから、3つ目の変更事項といたしましては、複数箇所に再掲をしている施策がございます。この再掲される施策が最初に出てきたところにつきましても、再掲である旨、他の箇所にもあるという旨の記載を追加しております。4点目でございますが、新規施策を追加いたしております。これはパブコメ等の結果を踏まえまして、各省庁で新たな施策あるいは前向きな施策として出していただいたものを追加いたしております。5つ目は、表記、表題が付されていなかった施策がございました。これに新たな表題を付した上で掲載場所を整理いたしております。読まれる方がわかりやすいようにというような観点からの整理でございます。それから、6つ目に、他の重点課題に掲載されている施策で、掲載場所の移動と再掲すべき施策といったものがございまして、そういったものを整理をいたしております。それから、7番目に、略称を使っておりましたところを正式名称にしております。(財)を財団法人というふうに記載するなどの訂正でございます。それから最後、8つ目でございますが、骨子が決定されました後で状況が変化した、ある施策が検討段階だったものが確定したとか、そういった状況変化がございましたので、それに応じた修正をいたしております。現状認識とその他の施策関係の変更事項は以上でございます。
 次に、損害回復・経済的支援に対する国民からのご意見のうち、内閣府関係のものにつきましては、耳が青枠の内閣府資料1-3の10ページから13ページまで記載をいたしております。特に補足事項はございません。
 なお、本日欠席をされています中島構成員から、基本法第13条の関係でご意見をいただいております。これは、「事務局案その二」の資料の18ページをご覧いただきたいと思います。18ページの(3)の表題、「経済的支援を手厚くするための制度のあるべき姿及び財源に関する検討並びに施策の実施」という項目と、それから文中に、「経済的支援を手厚く」という表現がございます。これにつきまして、中島構成員からは、被害者援助団体からの指摘のとおりに、「十分に行うための制度」と変更することが望ましいというご意見をいただいております。事務局といたしましては、結論から申しますと、現在の案のとおりとしたいというふうに考えておりますけれども、理由といたしましては、十分な経済的支援といたしました場合には、経済的支援の十分さについて、これは多分に主観的な価値判断によって、また個々の犯罪被害者等の状況に応じてその意味するところというのは大きく異なるというようなことが1点でございます。それから、何をもって十分とするのかというのは政府として判断することは大変難しいと、かえって必ずしも方向性が定まらないということが2点。そういったことから、まずは現状よりも手厚いものとするという方向性を示した上で、検討のための会におきまして、可能な限り手厚くしていくための検討を行っていくとする方が適当ではないかというふうに考えておりまして、現在の案のままとしたいというふうに考えております。
 それから、もう一つご意見をいただいておりまして、基本法第16条の関係でございます。「事務局案その二」の資料の23ページ、カという項目がございますが、この中に「中期的な居住の確保について」という記述がございます。ここの「中期的」の文字を外す方がいいのではないかというご意見をいただいております。これにつきまして、事務局といたしましては、やはり現在のままの案にする方がよろしいのではないかというふうに考えております。理由でございますけれども、居住の安定につきましては、これまでの検討会のご議論におきまして、緊急避難の必要性、被害直後の保護、それから長期的な居住の安定という2つの段階とともに、長期的な住居に行き着くまでの支援といたしまして、被害直後の一時保護に加えて生活の一定の立て直しができるまでの期間に着目した施策が必要だという、その必要性について特に強調されたわけでございまして、この観点からご指摘の施策も盛り込まれているということでございます。もし、この中期的の文字を外すとするならば、これは長期の居住の安定ということを意味することになるわけでございますけれども、これについては、例えば国土交通省におきまして公営住宅の優先入居あるいは単身入居を可能とする制度の新設が検討されておりますけれども、これと同じことになるというふうに考えられる、こういったことから、現在の案のままにしたいというふうに考えております。この点も含めてご意見をいただければと思います。

○山上座長代理 損害回復と経済的支援等への取組に関しては、他の関係省庁からも国民からの意見に対する回答として事前に資料が提出されております。補足することがあれば、ご発言ください。警察庁、いかがでしょうか。

○片桐構成員(警察庁) ご要望いただいた件については、ペーパーでお答え申し上げておりまして、特に補足することはございません。

○山上座長代理 法務省はいかがでしょうか。

○三浦構成員(法務省) 私どももペーパーで意見を提出させていただいたところでございます。1点だけ申し添えれば、先ほどの損害回復、損害賠償に関する現状認識のところにつきましては、先ほどの議論の点は別にしまして、第1段落などにやや断定的といいますか、もう少しいろいろな様々な被害者の方がいらっしゃるということがわかるような形で表現を工夫した方がいいのではないかというような点も意見に記載してございます。そのほかの点は記載したとおりでございます。

○山上座長代理 厚生労働省はどうでしょうか。

○塩田構成員(厚生労働省) 結構です。

○山上座長代理 よろしいですか。では、国土交通省はよろしいですか。

○平山構成員(国土交通省) はい。

○山上座長代理 最高裁判所は何かございますか。

○最高裁判所(伊藤課長) 資料9で出しているとおりでございます。

○山上座長代理 それでは、事務局から何か補足はありませんか。

○事務局 それでは補足をさせていただきますと、基本法の第13条の関係でございますけれども、犯罪被害者等の方からこういうご意見をいただいております。「被害者に対する損害賠償が適切に措置されるように、自賠責請求と任意保険請求が存在する保険賠償制度を国が管理する自賠責保険に一本化し、対人無制限などを充実してほしい」というご意見でございます。この点についての国土交通省のお考えをお聞かせいただければと思います。
  それから、別置きの「事務局案その二」でございますけれども、この24ページから26ページをご覧いただきたいんですが、これは基本法第17条の関係でございます。これも、こういうご要望がございました。「事業主等の理解の増進につきましては、被害者が職場の問題について相談でき、事業主へ被害者の状況を説明したり、理解を求めたりする調整を行ってくれる公的相談窓口も必要」というご要望でございまして、この点につきましては厚生労働省と事務局との間でやりとりをいたしましたけれども、内閣府の考え方とあわせて記載をいたしております。この点についてもご意見があればお聞かせいただきたいと思います。

○山上座長代理 まず、国土交通省からお願いします。

○平山構成員(国土交通省) 国土交通省でございますが、自賠責と任意保険の一元化というご要望、ご意見だと思いますが、ご存じのとおり、自賠責保険は、今すべての自動車ユーザーに義務づけられているわけでございまして、その観点から保険の内容も同一となっております。当然被害者に確実にある程度基本的な部分の補償が得られるという仕組みになっておりまして、保険会社もこの部分では利潤を得られないという仕組みになっておりまして、その分保険料水準もかなり低い水準に抑えられているというのが現状でございます。一方、任意保険でございますが、これは保険の内容を自由にある程度選べる、当然ながら生命の場合もありますし、車の補償とかいろいろなものを組み合わせて、任意保険を契約できるわけで、どういうのを選ぶか、そのかわり保険料をどこまで払うかということも保険をかける方の方で選択ができるということでできているメリットもあるわけでございます。仮に一本化して、ある程度補償を厚くしようとすることになりますと、逆にかなり保険料自体の水準も上がるということを前提に考えなければいけませんし、自動車を持っておられるすべての方、今かなりの数になるわけでございまして、その方々の負担との関係を考えますと、今の制度を維持する方がメリットが多いんではないかと国土交通省としては考えております。

○山上座長代理 では、引き続き厚生労働省からお願いいたします。

○塩田構成員(厚生労働省) 今のご指摘のあった問題の前に、先ほど話題になった住宅の問題について、ちょっとお話をしておきたいと思いますが、住宅、住まいの問題というのは、実は犯罪被害者の方々のケースでも非常に重要なテーマだと思いますが、実は厚生労働省が抱えている、例えば障害を持つ方々とか、あるいは精神疾患の方々、病院から地域へとか、施設から地域へと大きな流れの施策が転換していまして、そういう中で住まいの確保をどうするかというのは非常に重要なテーマだと思います。これは厚生労働省だけで解決できない問題ですので、国土交通省と一緒になって取り組んでいます。短期と中期と長期と3つあるという話ですが、3つそれぞれのステージに応じて、対策、犯罪被害者に限らず、格段に発展させる段階にきているという認識で国土交通省と取り組んでいますので、そういう一般施策の中でも、多分何らかの前進を図れると思っております。
 それから、ご指摘がありました犯罪被害者の関係の方々の雇用の相談コーナーでの対応ということでありますけれども、これはご案内のとおりですが、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律ということで、いろいろな相談を受け付けているということでありますので、そういう総合的な労働相談コーナーで犯罪被害者の方々に関したことについて、そういう相談を受け付けて、よく聞いて、関係のところに話をつなぐ、事業主にちゃんと話をつないでいくということは当然の責務だと思っていますけれども、法律の制度自身が話し合いで解決を促すというところに制約がありまして、事業主に対して何々をしなさいとか、強制をするまでの制度になっていませんので、調整する窓口のような書きぶりだと若干過大の期待、現行制度以上の役割をやろうということになりますと、ちょっと制度全体のあり方の検討も必要ですので、書きぶりについては、よく事務局とよく相談させていただきたいと思います。

○山上座長代理 それでは、ご意見のある構成員はどうぞ。先ほど損害賠償の問題も論議が途中でとどまっておりますけれども、それに関することでも。

○岡村構成員 先ほど、ちょっと各論に入り過ぎたというふうな多少ありましたが、4ページのところからでよろしいでしょうか。ここで、下から6行目のところで、「情報が不足しているなど」となっておりますけれども、不足していること、それから被害者が住所を知られることが不安であることと、こういう言葉を入れていただきたいのですが。住所を知られることが不安である。

○山上座長代理 それでよろしいですね。ご意見ございますかどなたか、これに関して。

○井上構成員 住所だけでよろしいのですか。住所を知られることがもちろん最も心配なのだろうとは思うのですが、ほかのいろいろな個人情報についてもそうではないでしょうか。

○岡村構成員 もちろんそうですよね。

○井上構成員 そうすると、住所「等」とした方がいいかなという感じがします。

○岡村構成員 住所だけでなくて、どこに勤めているかということも配慮が必要だね。

○井上構成員 それによって接触の可能性が出てくるということをおそれているわけですよね。

○岡村構成員 おっしゃるとおりです。

○小西構成員 パブコメでも多分あったと思うんですけれども、性暴力の被害者の場合に、民事を起こしたときに、名前を書かれることについて躊躇して、そういう話を聞くと、もうしないという人は確かにたくさんいるんですね。ですから、今、井上構成員が言われたように、個人情報について開示しないとできないという条件があるためにできない人がいるということで、井上構成員が言われたような形でよろしいのではないかと思います。

○山上座長代理 個人情報を知られることを避けたいということを、この住所という表現だけでよろしいかどうかですが。

○岡村構成員 そうですね、私も確かにおっしゃっているとおり……。

○井上構成員 ですから、「住所等」とすればよいのではないかと思います。

○岡村構成員 内閣府のつくられたパブコメを私どもちょっと表にしてみたんですけれども、この円形の表のところを見ますと、民事訴訟への住所の不記載というのがやはり14通ございます。全体から見ても、そのような割合になると思います。

○最高裁判所(河本事務総局審議官室参事官) 従前より民事裁判においての訴状への住所記載、これをするといわゆるお礼参りなどのおそれがあって、民事上の責任追及を躊躇する結果になるということで、少なくとも住所の記載自体どうにかならないのかというご指摘ございました。法規上、訴訟当事者の特定とか、管轄の観点から、住所の記載が要件とされているわけでありますが、確かに訴状に住所等を記載すると、これを手がかりといたしまして、加害者が被害者の居どころを確知しまして危害を加えるおそれがある。これは定型的にあるわけでございまして、これが訴訟追行を非常に躊躇させるということは全くそのとおりでございます。
 そこで、今後加害者が被害者の居どころを突きとめて危害のおそれがあるというようなことがあるような場合には、その旨、裁判所の窓口の方にお伝えいただければ、訴状に実際の住所を記載することを厳格に求めることはしないというようにいたしました。この旨、全国の裁判所に早急に、かつ十分に周知したいというふうに思っております。

○岡村構成員 ありがとうございます。本当の住所を記載しなくて、いわゆる仮住所みたいなものは書くことにはなる。

○最高裁判所(河本参事官) 名前としてはどうかわかりませんが、例えば代理人がついている場合には、弁護士事務所の所在地もありましょうし、場合によっては、ある公的機関のご了承が得られれば、その公的機関でも良い。その場合は、その公的機関と裁判所の間で十分連絡体制をとらなきゃいけません。あともう一つ、管轄の関係で、裁判所と原告だけの間で、住居所等を確認させていただくということはございますが、それはもちろん送達等はされません。

○岡村構成員 それはいつごろから実施されるのですか。

○最高裁判所(河本参事官) できれば、もう本当に明日にでもと思っておりますけれども、全国に裁判所ございますものですから、あまり混乱のない形で、また時期を明示してやらせていただきたいと思います。

○岡村構成員 どうもありがとうございます。

○山上座長代理 どうもありがとうございました。ここへ、先ほどおっしゃられたような、被害者が住所を知られることに不安があるからというのは、やはりここへ入れておきますね。

○岡村構成員 そうですね。

○山上座長代理 では、特にご意見がなければそうさせていただきます。ほかにどなたかご意見ございましたら。

○岡村構成員 ついでですけれども、現状認識のところで、先ほど申しましたような最後のところで、「との指摘があった」という、この指摘が現状認識になるのはおかしいと思いますので、「言いがたい」と言い切ってもらったらいかがかと思うんですが。

○井上構成員 その点については、骨子を一応こういう形でまとめたわけですので、そこに遡って議論するとなると大変なことになります。「との指摘がある」という表現は各所に出てくるので、その一つ一つについて、この検討会ないし推進会議、そしてさらには、最終的には閣議ということになると思いますが、それを現状認識として確認するということになると、かなり大ごとであり、構成員の中から、そこは違うのではないかという意見が少なからず出てくると思うのですね。私自身も、そう思うところがないわけではない。ですから、この段階で、そこまで遡ってやることが得策かは疑問で、むしろ、被害者の方々から、あるいは被害者の方々だけではないかもしれませんが、そういうご指摘があり、それを前提にして、以下の施策を考えたということにして、施策をどういうふうにやっていくかの方に重点を置く方が私は重要ではないかと思うのです。「指摘がある。」というのを全部削ってしまうということになると、もっと根本に遡った議論をしないといけなくなると思いますので、私はそのご提案には反対です。

○岡村構成員 法務省が現状認識という言葉がまずいというご意見がありましたので、それに誘発されて私も申し上げたので、法務省が現状認識でいいということになれば、このままでも結構でございます。

○大塲構成員代理(法務省) 今、井上構成員の方からのご指摘のとおりだと思っています。これが「指摘がある」ということで、ほかの課題についても占めているところですので、そのような意味での現状認識ということであれば、タイトルが「現状認識」ということでもよろしいかと思います。

○岡村構成員 では、相討ちということにしましょうか。

○大塲構成員代理(法務省) 前半部分で議論のあったところなのですけれども、4ページの「むしろ通例であって」のところであります。先ほども議論あったところですけれども、この文脈でいきますと、訴訟の中での話をしている。「訴訟で勝訴判決を受けての云々」と、こういうことになっておりまして、なおかつどういった罪種であるかという限定も特になされていないということからしますと、殺人罪における損害賠償請求はもちろんありますし、業過についても含まれているものというふうに考えられます。先ほど岡村構成員からもご指摘がありましたように、保険会社等の関係もありますので、そういったケースでは、業過の事件の場合では勝訴判決が得られれば、それなりに損害賠償を受けることはできるのだろう、損害回復を受けることはできるのだろうというケースが少なからずあるのではないか。そうしますと、全体として見て、損害回復の目的を果たせないことが「むしろ通例であって」というのは、言い過ぎではないのかなというふうに思っております。

○岡村構成員 実刑判決になったときなんかも、これは取りに行けないんですよね。

○山上座長代理 実際に損害回復の目的が果たせないことが極めて多いことは確かなので、極めて多いというような表現ではまずいでしょうか。殺人なんかでは大部分がそうですし、例外的にそういう保険がかかっていて、そういう事例は違いますけれども。そういう表現であれば通例とすると、統計の個々を見ていくと、通例と言うだけの根拠が問題にされてしまうような気がします。極めて多いのは実態としては確かだと思うんですが。

○大塲構成員代理(法務省) 要するに、分母に何を求めるかということに尽きるのではないかと思います。先ほど申しましたように、業務上過失致死、あるいは致死傷における損害賠償請求訴訟、それの結論がどうだったのか、勝訴判決を得たときに損害回復を得たのかどうか。そういったものも含めると、分母としては相当広くとらえているのではないかと思うのですが。そういった部分の中で、相当多いと言えるのかというと、それは疑問であると、そのように考えているのですけれども。それは、岡村構成員の方で指摘いただいた犯罪白書の数字を引用していただいておりますけれども、全体として見ると「相当多い」というふうに言えるのかというと、ちょっとパーセントはすぐ出てきませんけれども、そんなに全体から見ると少ないとは言えないのではないかと思います。少なくても損害回復は得られないケースが相当多いということは言えないのではないかと思いますが。

○山上座長代理 統計上の問題であるのでしょうけれども、ただ私たちが支援にかかわる被害者の方たちで民事訴訟を起こして損害を賠償してもらっているのは、ほとんどいないという実感があるものですから、分母を特定しないで「極めて多い」という実態だけを伝えるという形であれば、果たせないのが「通例」というような厳しい表現でないので、あるいは折り合える点になるかなというふうに考えていますが、もしご意見あればどうぞ。

○大久保構成員 官僚の皆さんが十分であると考えるパーセントというのは、どのパーセントを指すのでしょうか。例えばこの白書の中で業過であってさえも全額支払われたのが58.9%ですね。普通の人は交通被害であれば100%の人が補償されているというふうに考えがちですけれども、この数字だけを見ますと、やはり本当にたとえ民事を起こしたにしても、きちんと全額払ってもらえない人もいるのだということを感じるのですが、何%あれば通例という言葉を使わないで済むとお考えなのでしょうか。

○山上座長代理 では、ご答弁お願いします。

○大塲構成員代理(法務省) 特に、役人として何%ということは思っているわけではありませんけれども、それがむしろ通例であるというふうに言い切れるかどうかということについて違和感があると申し上げているところです。

○岡村構成員 私は、こんなことで検討会が時間を費やさなければいけないのかという、そういう気がします。被害者がそう思っているから通例と言ったからと言って、基本法の根本が変わるという問題ではないですよね。何か厳密でなければ後が始まらないと考えるのは考え過ぎで、もう少しおおらかにやっていいのではないかと私は思っています。

○事務局 現状認識というのは、やはり具体的施策のすべての背景になるというか、根拠になる、この基本計画検討会としての現状認識でございますので、やはりそこが根本的に基本計画検討会の中で意見の一致を見ていないということになると、これはやはり根本が揺らいでしまうということにもなりかねないとも思いますので、ここはやはりご議論をお願いしたいと思います。

○小西構成員 ここも含めてなのですけれども、この後の法務省のご意見として、一部には今度は軽い犯罪被害が入らないように見えるのでそれはおかしい、というようなご指摘があるのですけれども、すごく変な理屈だと思います。当然そういうものは全部入るように議論してきましたが、むしろそうでないのは、今までの施策の方であって、例えば犯給法にしても、日本は三桁の人にしか支給していないわけで、そういうことを変えようとしてやってきているところで、どこかで分母のことを言い、どこかでは、むしろ全体のことだと言うというのは、本当に作文のレベルの話であって、じゃあこれで何をしようか、何がしたいかということに関して、あまりにも理解がないように思えます。しかも、ここは先ほど相討ちというのがありましたけれども、「指摘がある」で合意しているところなのですから、もう少し本当に多分これだけ被害者の方々、それから被害者に近い者がみんな言うのは、本当にこういうケースで困っているからなんですね。それについて、指摘があることを書くだけなのですから、もう少し被害者の意見というのは入ってもいいのではないか。そうでないと、これから多分経済的補償というのは一番根幹になることですし、これから議論していくことですよね、どういうふうにやっていくかというのを。それについてのこの会の決意というのが伝わらないと思いますけれども。

○村田大臣 法務省が「損害回復の目的が果たせないことがむしろ通例であって」との事務局案の記述にこだわるのは、要するに、この案だと裁判を行うことが無意味ということにつながりかねないから、それで抵抗感があるということですか。

○大塲構成員代理(法務省) そういう気持ちがあってということではないのですけれども、ここは全体のいわば前文的な位置づけになるわけですね、各論が出てくる前の。そういうものについては、できるだけ客観的に書いた方がいいのではないか。もちろん会議体としての意思というのをあらわすということも必要ですけれども、そこはある程度客観的なこととして書いた方がいいのではないかという思いがありまして、率直に意見を言わせていただいております。

○村田大臣 裁判で勝訴判決を得ても、加害者に資力がなかったり、逃亡されたりして損害回復が果たせなかったという事例について定量的なデータがあれば、もう一度教えてくれませんか。

○大塲構成員代理(法務省) 法務省から出した資料ではなく、岡村構成員の方から出された資料が皆さんに共通してお手元にございますので、恐縮ですが、それを見ていただきますと、岡村構成員が提出されている10月11日付けの意見の6ページのところで、これは平成11年版犯罪白書の一部から抜いていただいたものでありまして、罪名によって全額支払いのパーセント、あるいは一部支払い等について記載されていると、こういうものであります。

○村田大臣 罪種によっては加害者側からある程度損害賠償がなされているとの主張を後退させたくないということであれば、事務局案の記述において、被害者が損害賠償の目的を果たせない理由として、そもそも訴訟まで至らないケースも多数あることを加筆したらいかがですか。現在の事務局案ですと、「損害回復が果たせないことがむしろ通例」との記述が、訴訟の結果についての記述に限定されているから抵抗があるんでしょう。この記述の対象範囲を拡大したら、現在の事務局案の表現が生きることになるかもしれないので、文書を修正したらどうか。

○事務局 それが、先ほど総論部分①というのは、その訴訟と関係ない記述でございます。ただ、ここも第12条での記述については、訴訟で勝訴判決が出たとしてもなおという、そういう犯罪被害者等の方々が置かれている立場というものを記述したいということで、こういう記述にしております。

○村田大臣 それであれば、加害者からの全額支払いの割合が一番多い「業務上過失致死」等を除いた表現にしたらどうですか。どの罪種においても被害者はひどい状態におかれていますが、特に殺人や傷害などのケースに焦点を充てた記述にして、裁判により勝訴判決を得ても「損害回復を果たせないことが通例」という現在の事務局案の記述を生かしたらいかがでしょうか。

○山上座長代理 そういうふうに、例外、むしろ保険制度が整備されているような交通被害と、それから企業がかかわってくるような、これも交通被害ですけれども、こういうところを除けば、むしろ例外的で、そうすれば例外的でむしろ果たせないのが通例であるという言葉は残す。そういう言葉を入れれば残せるというように思いますが。

○井上構成員 せっかくの大臣のご提案なのですけれども、そう書いてしまうと、そこの部分は問題がないように受け取られかねないので、そこも。

○村田大臣 いや、それは言葉を補足したら良いのです。「交通被害」の分野にも問題があるけれども、その他の罪種については、なお一層被害者の損害回復の状況がひどいというニュアンスで書けばよろしい。

○井上構成員 思いつきですけれども、村田大臣が最初に言われたことを反映させるとしますと、原文では文章をぶつぶつと切っていますが、全部をつなげる。「多くの困難に直面するため・・・少なくなく」とずっと続けてしまえば分母が広がることになるようにも思います。そうでなく、後ろの文章を生かすとすれば、果たせない「場合」が――「極めて」とまで言っていいかどうか問題はありますが――「相当多い」、あるいは、「場合が多い」とすることも考えられる。そうすれば、かなり抵抗感はなくなるのではないでしょうか。

○大塲構成員代理(法務省) ちょっと数字的なものが手元にないので大変恐縮で、場合によっては後で、また犯罪白書の抜き刷り等を出してもいいのですが、この岡村構成員が提出していただいた犯罪白書の引用を罪名の全体で見ますと、先ほども法務省から口頭で言ったかもしれませんが、「全額支払いがあった」、これが30.5%。「一部支払いがあり、残りも今後支払われる予定である」、8.5%。「全く支払いはないが、今後支払われる予定である」、3.1%となっていまして、足すと40%ちょっと超えるぐらいなんですね。そうすると、6割が払われていないということにはなるわけであります、4割が支払われている、あるいは支払われるであろう、そういった数字を前提としたときに「通例である」というのは言い過ぎではないかというようなことであります。皆様のお手元に資料が届くように、後日提出することはできます。

○岡村構成員 業過、これはほとんどが交通事故ですから、これは保険で払われます。これも訴訟を起こしたり、大変に苦労した結果ではありますが、この犯罪被害者等基本法で一番重視しなければいけないのは、生命身体犯だと思います。生命身体犯が一番重要だから、犯給法もその2つだけに限っているわけです。犯罪白書を見ますと、傷害致死を含めた殺人で6.6%、傷害では、これは示談のできるような軽い傷害も入れて18.2%。この2つを見て、やはり殺人を主に見てもらいたいと思います。そして、その金額も非常に低額なのですよ。殺人犯で賠償金を全額払った者は6.6%です。これは、人数にして6人です。その6人のうちで500万円以下が2名、1,000万以下が1名、3,000万以下が1名、5,000万円以下が1名、1億以下が1名と、こういう数字になっています。6.6%も払われていると思われるかもしれませんが、中身は非常に小さい数字なんですね。先ほど大久保構成員がおっしゃった納得されるパーセンテージというのは、役所はどういうふうにお考えになられるのとかということは、私もやはりそう思います。

○山田構成員 多いとか少ないとかいう表現は相対的なものでして、例えば死亡率なんかですと、20%でも10%でも極めて高い死亡率だということになりますよね。離婚率も相当高いなということになると思います。しかし、それが「通例だ」という言葉を使った場合には、それは事実を表現した言葉ではない、現状をあらわした言葉ではないと思います。役所では何%だったら通例と言うのかという、ちょっと無理な、難しい質問がございましたけれども、やはり8割9割ないと「通例」というのは使わないというのは、日本語として常識といいますか、そういうふうに考えられるのではないかと思うんですね。そうすると、いずれにしても「通例」という言葉を用いるのは不適切であると。ですから、「極めて多い」とか「相当程度に多い」とかいう表現であればよろしいのではないかと。ちなみに、私は「相当程度に多い」ぐらいが落ち着きがあるのではなかろうかと思っております。

○岡村構成員 殺人だけで見ると94%いって。

○山田構成員 殺人だけではないのではないですか。

○岡村構成員 傷害でも82%いっている。

○小西構成員 岡村構成員にちょっと質問なのですが、もしもう少し分量を増やして、殺人と傷害などについて例示して、あるいは生命身体犯について例示して出して、その後で全体について「相当多い」というような書き方ではどうですか。例えば6人しかいないとここに書くことはいけないのですか。実際に困っている人たちのことは、やはり何かちゃんと書いた方がいいけれども、今の議論だと何か切りがない。

○大久保構成員 まさに犯罪被害者は、民事を起こしても絵にかいた餅で実際にとれない。では、実際にどうやってとればいいのかというと、今度探偵社を雇わなければいけない。それにもお金がかかって、実際問題としてできないというようなことで苦しんでいる人がたくさんいます。皆さん諦めざるを得ない状況にありますので、やはりここは少し強いと思える形であっても、そういう形で苦しんでいる生命身体犯の人たちがいるということは、やはり書いていただきたいと思います。

○山上座長代理 ちょっと私の考えていたことは、ここのところの表現というのは、やはり「通例である」という言葉を生かすとすれば、井上構成員が言われたように、もっと訴えられない人とか、あらゆるものを含めて全体を分母にすれば、むしろ「通例である」という言葉をそのまま使えるだろうと、そういうことで、前からの文章をつなぐような表現にすることも一つの案だと思います。それから、もしここを2つに切るとすれば、やはり「そういう場合が極めて多い」という表現であれば、有罪判決で勝訴しながら、しかし平均で5、6割も、ほとんどそういう補償が得られないということで「極めて多い」ことにもなります。だから「極めて多い」という表現だったら抵抗がないのではないだろうかと思うのですけれども。

○岡村構成員 私たちの会の話を聞きますと、勝訴判決をとって、かえってマイナスだったという人が圧倒的です。弁護士費用があった、3年もかかった、何年も何回も法廷へ行った、そしてコピー代もかかった。勝訴判決イコールそれ自体が経済的にはマイナスであると、そういう人の方が圧倒的ですよ、そこはご理解いただきたい。泥棒に追い銭になっていると、ほとんどの者が言っているのです。

○事務局 よろしいでしょうか。いろいろご議論をいただいてきたのですけれども、いろいろ案をお出しいただいたと思います。訴訟の場合に、勝訴の場合に限定しないで記述したらどうかという案もございましたし、それから罪種を限定して書けばどうかという案もございました。それらをお聞きしまして、改めてもう一つの案として提案させていただきたいと思っておりましたのは、先ほど井上構成員もお話になりましたけれども、ここの「通例である」というところに、相当構成員の皆さんの抵抗感がある。「通例」と言いますと、もうほとんどの場合という意味になりますと、そこの表現については、改めて「多い」そこは「極めて多い」なのか、「相当程度多い」なのか、単に「多い」のかというご議論はまたあろうかと思いますが、そういう形にした上で、そこで切った上で、「こうしたことから、現在の損害賠償制度が犯罪被害者等のために十分に機能しているとは言いがたいとの指摘がある」というような形でつないでいけば、損害回復の目的が果たされていないということが多いということについては、皆さんの認識は一致されているのではないかと思いますので、そういった案はいかがかということを改めてご提案申し上げたいと思いますが、いかがでしょうか。

○岡村構成員 ここに「むしろ」があるから、通例を弱めるために「むしろ」を書いたのかなと思っていたのですがね。「むしろ通例である」と書いてあるから、この「むしろ」があるために「通例」を弱められたのだなと、そう思って私は読んだんですけれどもね。ここばかりでもいけないから。

○村田大臣 一言だけ申し上げますと、裁判で勝訴判決を得ても資料中に記載のある程度しか損害賠償が得られないことは大きな問題であるとの認識を私は有しています。一般の国民は、被害者が裁判で勝訴判決を得たら損害賠償はほとんど支払われていると考えています。実際には被害者に対して損害賠償がなされていないケースが多いことを前提に、何らかの制度の手直しが必要であるとの認識で、現在、事務局案の現状認識の記述について適切な案がないか事務局とも相談をしながら、今この基本計画検討会で検討をしているわけです。
  常識的に考えて3割であろうが7割であろうが損害賠償が支払われていないことについて、かなり問題意識を持たなければいけないと思います。基本計画案は、このような問題意識を前提として制度の改善を行うという積極的な記述にすることが重要であり、この検討会でも、そのような認識を持っていただきたいと思います。

○山上座長代理 よろしいでしょうか。事務局で、この最後の発言を踏まえて文案を考えさせていただきます。

○岡村構成員 大企業を相手にやった場合はとれるでしょうけれどもね。

○井上構成員 岡村構成員、お気持ちはもう十分わかっていますので、さっき事務局の方から提案があったような形で修文案をつくってもらって、それを見せていただいて、それでいいかどうかというのをもう一度議論するということでいいのではないでしょうか。話を前に進めなければ、8時、9時まで議論しなければならないことになってしまいますので。

○山上座長代理 そのほかにご意見ございますか。5ページから現状認識について、各構成員からいろいろ修正を求める意見等が上げられておりますけれども、それに関連してでも、どなたかご意見ございましたら。

○岡村構成員 12ページにいっていいでしょうか。

○山上座長代理 どうぞ。

○岡村構成員 私どもの意見書で出しましたが、「附帯私訴、損害賠償命令それから没収・追徴を利用して刑事手続の成果を利用し」と、こういうことになっておりました。そこのところですけれども、損害賠償命令というのは、これは実際は罰金の一種であって、裁判所が被害者の腹ぐあい、懐ぐあいを見て、幾らぐらい被害者に出せというけれども、実質は国がとるかわりの罰金にすぎないというのです。被害者の被害回復には役にたたない。しかも、賠償命令を払わすことによって執行猶予をつけると、こういう方面に利用されて不満があって、極めて小さい事件でないと、外国では、アメリカでも使われていないと聞いております。だから、この損害賠償命令というのを過大に評価されて、これによって例えば附帯私訴をなしにしろとされると、私どもは大変困るわけです。
  それから、没収・追徴というのがありますけれども、これも刺し殺された包丁を没収したところで、それを換価してもどれだけの被害弁償になるのかというと、これもならないと。今言われている没収・追徴は、12条と関係のない没収・追徴ですね、よく言われているのは組織犯罪等におけるものです。だから、12条に言う損害賠償請求と刑事手続との関連を求めるとすれば、附帯私訴しかないと思います。その意味で、私は損害賠償命令というようなもので、私も以前主張しましたが、後でいろいろ調べてみると、損害賠償命令というのは外国においても、もう少額のものにだけしか行われないので罰金的なものであると言われておりますので、賠償命令は落としていただきたいと思います。
 とにかく没収については、生命身体犯については、今言ったように役に立たないと思いますけれども、財産犯については没収・追徴というのは意味があるかもしれないので、損害賠償命令は落としていただきたいと思っております。ただ、今議論されている没収・追徴制度、これは全然12条とは関係のない没収・追徴制度であるということはっきりとさせていただきたいと思います。

○井上構成員 よろしいですか。岡村構成員のペーパーをようやく昨日になってプリントアウトして読ませていただいたので、私自身のペーパーはお出しすることができなかったのですが、意見を述べさせていただきます。岡村構成員のペーパーは精読させていただき、ご指摘の点は理解したつもりですけれども、私の理解するところでは、この前まとめた骨子の該当部分の趣旨は、特定の国の特定の制度を前提にして、それを採用するかしないかとか、あるいはそれを採用してほかのものは一切排除をするとか、そういったことを予定するものではなく、あくまで、我が国にふさわしい制度を基本法の趣旨に沿って整備することを考えていこうというものだと受け取っています。没収・追徴を利用した損害賠償や損害賠償命令というものも、その一つの参考例として挙げられているにすぎない。附帯私訴が挙げられているのも同様であって、そのような趣旨で骨子に記載されたものと私は理解し、そういう理解のもとに骨子に賛成しました。そういう意味からしますと、これからふさわしいものを考えていこうとするときに、この段階で、いろいろな可能性を排除してしまう、閉ざしてしまうだけの理由はないし、またそうするのは得策でもないと考えるので、原案どおりでよろしいのではないかと思います。
 ついでに、ご指摘の点について若干補足させていただきますと、没収・追徴を利用した制度につきましては、確かにご指摘のとおり、それによってカバーできるのは限られた範囲の被害者であります。それでカバーできるのは、財産犯等、没収・追徴ができるものに限られるということはそのとおりであり、特に今触れられた、今回法制審議会の方で採択された制度は、組織犯罪対策法の枠内のみの話です。それはそうなのですが、しかし、そのような没収・追徴を利用した損害回復の制度を他の犯罪についても設ける方向で拡大していくということは、一つの可能性として考えられ、現に財産犯などによって財産上の被害を受けて困っている被害者がいるわけですから、それによって救済を図っていくというのも、それはそれで、岡本構成員も認められておられるように、意味のあることだと思うのです。カバーする範囲が限られているからといって、そのような可能性を、この段階で排除する理由はないのではないか。そのような方策をとったからといって、ほかの制度は一切とらないでよいという前提には立っていないはずですから。 もう一つ、損害賠償命令についても、確かに外国の具体的な制度やその運用には、ご指摘のような欠点があるのかもしれませんが、可能性として考えられるのは、そのような特定の国にある制度に限られるわけではなく、例えば、懲役や禁固、罰金といった既存の刑罰と並びの刑罰というふうに位置づけないで、そういった本刑に付加的な処分ないし付加刑として損害賠償命令の制度を作り、そこに被害者の損害を回復するという機能を盛り込んでいくということは十分考えられるように思います。そういう制度にすれば、岡村構成員が言われている、刑事司法は被害者のためにもあるのだというお考えに、むしろ沿うものとなるかもしれない。私自身として、今の段階で、それに賛成と言えるところまで考えが至っているわけではありませんが、これから検討していく上で、そういうことも一案としてあり得るのではないか、そういう趣旨を生かすような適用の基準だとか、制度枠組みにしていくということも、あるいは可能かもしれないというふうに思います。そういうことを考えますと、この段階でその可能性を排除してしまうのは適当ではないと思います。
 他方、附帯私訴については、私自身の意見はもう既に申し上げたとおりなので繰り返しませんが、幾つかの問題点が指摘されており、私自身もそこのところをまだ納得できておりません。もちろん、その可能性を排除したわけではなく、それも一つの案として、そういうモデルをも参考にしながらふさわしいものをつくっていく、そういう趣旨で骨子がまとめられたと理解していますので、もとのままにしておくのが私はよいと考えます。その方が、今後建設的に議論していくためにはよいと思っております。

○大塲構成員代理(法務省) 今の点について、今日出しました法務省からのペーパーの2ページの下の部分、「損害賠償請求についての援助等」といったところにコメントしたとおりであります。2ページの下のところから書かれているとおりでございます。いろいろな附帯私訴、損害賠償請求制度、いろいろな形で外国であるわけですけれども、骨子に出ておりますような「我が国にふさわしい制度」というもので、これから検討していくということを考えておりますので、原案のように損害賠償命令というのも残していただきたいと思います。

○山上座長代理 よろしいでしょうか。

○事務局 今までのご議論の中で、まだご議論をしていただいていないのが、資料7ページで法務省から出ております意見、それから8ページの中段の、やはり法務省からの意見、それから9ページの関係、「通例」の部分についてはご議論いただきましたけれども、このあたりご議論がまだでございますが、ご議論いただければと思います。

○大塲構成員代理(法務省) 法務省から意見を出しておりますので若干補足いたしまして、なおかつ意見として、このような文章であればどうかということで申し上げたいと思いますが、6ページの最後のところで、「思いがけない犯罪等云々」というところでありますけれども、ここに指摘した趣旨は、あくまでも論理的に紛れのない文章にしたいということでありまして、もちろん基本法の精神にはのっているつもりでおります。要は、ちょっと文章を直すとすると、「多くの犯罪被害者等は思いがけない云々」とありますので、「多くの」というのを削りまして、「犯罪被害者等は思いがけない犯罪等により生命を奪われ、健康な体を損なわれ、かけがえのない財産を奪われており、場合によっては」というのを入れて「多大な損害を被り、経済的に困窮するケースもある」、「奪われており、場合によっては」というのを入れて「多大な損害を被り、経済的に困窮するケースもある」、こういうようなものでどうかということも考えおります。

○小西構成員 すみません、先ほどここのことをちょっと言ったので、ついでにお話しさせていただきます。基本的に「多くの」というのがついているところの問題だと思うので、今の提案ですが「場合によっては」ではなくて、これも多い少ないの問題になりますけれども、「困窮する人が少なくない」と入れていただきたいと思います。特例ではなくて、絶対数としてはかなりあるわけなので、私としてはそう提案したいと思います。

○山上座長代理 私も意見を言わせていただきますが、やはりここでは比率の問題を言っているわけではなくて、比率は比率であるんでしょうけれども、実際に我々が接する中では、現実に多くの被害者がこういうことで困っていることは事実ですので、だからそれは「多くの犯罪被害者は」という言い方は、その比率の問題は前段階のこととして、その後でこの事実はあるので、こういう表現で差し支えないのではないかというように私は感じますが。

○岡村構成員 多くの犯罪被害者が被害を受けているということは、基本法の考え方自体もそうなんですよね。だから、「犯罪被害者等の多くは、これまで権利が尊重されたとは言いがたいばかりか十分な支援を受けられない」と、ちゃんとこういう表現になっているわけなのです。だから、「多く」は入れてよろしいではありませんか。そして、さほど重大ではない、被害者が対象外にされているということは、先ほど小西構成員もおっしゃいましたけれども、私はこんなに裏から横から眺めすかす必要があるのかなという気がします。

○山上座長代理 それでよろしければ、次の問題に入りますが。

○大久保構成員 実は、平成13年に被害者支援都民センターで交通犯罪に遭った方あるいは殺人ですとか傷害の事件に遭った方たちが、どういうことを求めているのかということを調査したことがあります。それは被害者学会に報告しましたし、検討会の2回目か3回目かで、その資料も出させていただきました。そのとき感じたのは、実は例えば交通犯罪であれば、先ほど交通業過の場合は保険会社が入るので支払われる率が高いというお話もありましたが、確かにそうです。そうであっても、実は年をとればとるほど交通被害者であっても、経済的にも困るというような結果も出ていました。ということは、そのときだけのことではなくて、犯罪被害者の苦しみは一生涯にわたるので、仕事も続けられなくなるというような場合も多いということも、そこから言うことができるかと思いますので、やはりこれは「多くの犯罪被害者を」ということを入れましても、決して経済的に困窮していない犯罪被害者は、これから述べられる施策の対象外であるというような印象を与えかねないものにならないかと思います。

○山上座長代理 よろしければ、次に法務省資料7ページの下にあります、「その損害の金銭的回復は、犯罪被害者等が自ら行う加害者の不法行為を原因とする損害賠償の請求にかかっているという部分について、加害者から自主的に被害弁償及び慰謝料等の支払いがなされることもあるが、その点が捨象され、あたかも被害者自身が要求しなければ一切弁償を受けることができないかのような誤解を与える表現」と、こういう指摘が法務省からあります。

○岡村構成員 これは、こういうことでは加害者に対して失礼であるというお考えで書かれたのですか。

○山上座長代理 それは法務省への質問ですか。

○岡村構成員 ええ。

○大塲構成員代理(法務省) 加害者が、自主的に損害賠償だとか慰謝料の支払いをする場合、しない場合というのは両方あるであろうということから、そこのところは、例えば加害者が自主的に損害弁償だとか慰謝料の支払いをしない場合というような意味で、場合によってはそういった言葉を入れて、その損害の金銭的回復は、犯罪被害者等が自ら行う加害者の云々と、こういうふうなことを明記した方がいいのではないかと思って意見を述べておりますが。

○岡村構成員 ここまで加害者を大事にして、加害者のことを思いやって、この基本計画がつくられなければいけないものだろうかということをもともと思います。そんなに自発的に払ってくれる加害者がいたとしても、それはおれば結構なことですが、そのことをわざわざ触れてあげる必要はないのではないだろうかと。これは犯罪被害者の基本法であり、基本計画ですから、そういう善意の加害者が来ることは大歓迎ですけれども、それを一々頭に入れながら文章化していかなきゃいけないと、こういうものでしょうか。どうも私は、大変失礼ですけれども、何か反対のための反対だなというような気がする。これは被害者のための基本計画だから、被害者の立場でずっと一貫しておけばいいので、どうしても加害者のことが必要なら加害者基本法というのを別につくればいいと思います。

○山上座長代理 私も、基本的には岡村構成員と同じように感じるのですが、やはり論理的に厳密さということで言って余分なことをたくさん書いていくと、本来大切なことが薄まってしまうというような感じがあって、木を見て森を見ないような、本来の目的からずれていくような感じがするので、やはりこういう厳密さにこだわり過ぎない、こういうところはいいのではないだろうかと、そうしなくていいんじゃないかというふうに私は感じますけれども。

○大塲構成員代理(法務省) 何度もすみませんが、例えば先ほども言いましたように、「加害者が自主的に損害弁償及び慰謝料の支払いをしない場合」で続けるということで、事実を正しく書いているのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。岡村構成員が言われるように、加害者が自主的に支払いをする場合を殊さらに取り上げているのではなくて、そういった支払いをしない場合、その損害の回復、金銭的回復は云々と、こういうことですので、これはいわば客観的なことを書いているというような認識なのですが。加害者のことを、自主的に払う加害者のことを褒めているとか何とか、そういう気持ちはさらさらありません。

○山上座長代理 しかし、現実には自発的に十分な賠償をする加害者というのは極めてまれなわけですから、あえてそこを触れる意味はないのではないだろうかと感じますが。

○井上構成員 法務省も加害者のことを考えて言っているのではなくて、正確に表現した方がよいという趣旨だと思いますが、例えば、「場合」としないで「しない限り」とすれば、正確であると同時に、数としては例外だというニュアンスがでるのではないでしょうか。あるいは別の可能性として、今思いついたのですが、損害の金銭的回復は、「制度としては」請求にかかっているとするのはいかがでしょうか。自主的にやるのは制度ではありませんので、正確を期するとすれば、そういう書きぶりでもよいかなと思います。「しない限り」くらいでもいいかなという感じはしますが。

○大塲構成員代理(法務省) 井上構成員から「しない限り」というのでどうかということですが、法務省としてはそれでよろしいかと思います。

○小西構成員 ここは現状認識の部分ですから、どういう制度が正しいかということを書くところではなくて、多くの場合、その損害賠償をしなくてはいけない状態にあるということを書くべきところですよね。それが100%であるという書きぶりに何か問題があるというならわかりますけれども、制度的に正しいということを書いても、ここでは何の意味もないのではないかと思います。そういう点では、何か妥協するとしたら100%ではないこと、例えばそれが「多い」とか「ほとんどである」とか、そういう言葉を入れることはできるかもしれませんけれども、制度の説明となってしまうような言葉を入れる場所ではないのではないかと思います。

○大塲構成員代理(法務省) ここの1文目が経済的に困窮するというようなことがあって、2文目というのが、やや1文目、2文目と非常に技術的になるのですが、2文目というのは今どういう制度があるのですかと、こういうところではないでしょうか。それが十分かどうかはまた別としてということの流れではないかと思いますが。

○小西構成員 私は、そういうふうには読めませんでしたが。

○井上構成員 よろしいですか。先ほどかなり時間を使って議論したところが、現実には十分機能していないということを言おうとする部分で、その前の部分は、どういう方法があるのかについて書いていると、私は読んだのですが、そうではないのでしょうか。

○小西構成員 すみません、頭から読むと、さっきの「多く」のところが問題になっていたということは、ここも既に現状認識なんですよね。ですから、このパラグラフ全体が犯罪被害者の困窮についての現状認識であると私は認識しておりました。

○井上構成員 両様に読めますね。小西構成員の案を入れるとすると、その「損害の」というところに「多くの場合」とかという言葉を入れれば、事実としてそうだというニュアンスは出ますよね。

○小西構成員 そうですね。

○井上構成員 そうですよね。

○山上座長代理 「損害の金銭的回復は、多くの場合、犯罪被害者等が自ら行う損害賠償の請求にかかっている」という、そういう書き方、意見でしたか。

○小西構成員 そうですね。ただ、最初の文章がまだ確定していないと思いますが、さっき「多くの」のままでとおっしゃっていましたから、全く同じ文章になると変かもしれません。そこは事務局の方でお考え願えればと。これは私の意見です。

○山上座長代理 その線でよろしいでしょうか。法務省、どうでしょう。

○事務局 確認ですが、今までのご議論で、加害者から自主的に被害弁償等の支払いが「なされない限り」という修正意見が、先ほど井上構成員からございました。非常に例外的というニュアンスも出しながらとの修正案がありましたが、そういった方向の取りまとめで意見の一致が見られるならば、事務局としてそういう方向での整理をさせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○岡村構成員 検討会ではそういうことになっても、一般の被害者がそれを読んでみると、そんないい加害者がおればお目にかかりたいというような気になるので、いたとしても私は触れない方が非常に素直に、被害者は基本計画を読むと思いますよ。そういうふうにいろいろ例外をつくったりして書かれた基本計画というのは、冷たいと思いますよね。そこまでしなければならないという必然があればだけれども、言葉だけ入れて何も生まれないことになって、しかも薄まるという感じになるんですね。ここばかりこだわっていても、本質的なところではありませんから。

○村田大臣 いいですか。法務省の意見ですが、加害者が自主的に支払いをしない限り被害者が損害賠償を得られないのは当然であって、当たり前のことを記述しても意味がないと思います。この検討会では、基本計画案については、法律論ではなく、今後講じるべき施策を議論しているわけだから、細かな記述を書き分けることに如何なる意味があるのかを考えるべきでしょう。 犯罪被害者等基本法は議員立法であり、この法律を制定した国会議員のの意思を尊重して、具体的な施策を講じていくために基本計画案の作成作業をスタートとしたわけであり、法的・論理的に厳格な記述を追及してもあまり意味がありません。 立法府の考えを尊重し、それをスタートとして考えないと、今後基本計画案を与党と調整する際に問題点を指摘されることになると思います。

○大塲構成員代理(法務省) ありがとうございます。村田大臣からのご指摘、まさにそのとおりだと思っております。ただ、私どもの理解とすると、立法はもちろん議員立法を出していただいて、これからの基本計画というのが最終的に閣議決定まで行くということが、この基本法で予定されているものですから、つい習性でといいますか、厳格な、あるいは読んで間違いのない文章を目指すべきではないか、そういった観点から意見を言わさせていただいているということでして、もちろんその基本法がどんな形でできたかとか、どういう精神が込められているかということはわかっているつもりであります。ただ、今のお話、そのとおりだと思っておりますので、改めて、ご指摘いただきありがとうございました。

○村田大臣 要するに「加害者が十分に払ってくれない場合は」という記述を挿入することにどのような意味があるのかを考えるべきだと思います。これは当たり前のことなので、この記述を追加しない方が適切との岡村構成員の意見に賛成します。

○大久保構成員 村田大臣、どうもありがとうございます。本当に心強いお言葉を聞かせていただいてありがたいと思います。そもそもこれは犯罪被害者等基本法で、本当にたくさんの被害者の気持ちを込めて、そして議員の皆さんがつくってくださったものです。犯罪被害者等基本法の中に「加害者から自主的に云々」と入るということだけで、きっと犯罪被害者はこれを読んだときに、どんなにか関係機関や国に対する失望感を大きくするのではないかと思います。あくまで犯罪被害者の視点に立って、そしてまとめ上げていっていただきたいと、そのように強くお願いいたします。

○岡村構成員 確かに大臣がおっしゃったように、その言葉が入ることによって、加害者に大変な迷惑をかけるということになれば、これは考えなければいけませんけれども、迷惑がかからない法律であり、非常に議員の先生方もずっとご関心をお持ちであられる問題ですので、加害者のことには触れないですらっと行かれた方が。政策においては確かにおっしゃるとおり、差は出てくるわけではありませんよ。

○村田大臣 「加害者が十分に払ってくれない場合は」は、損害回復を得られないというのは当たり前の話であり、この記述を追加するとの意見は言い過ぎではないかと思います。 他方、先ほど議論となった「通例である」との記述についてはデータを見てもニュアンスが強すぎると思います。一番重要なことは基本計画事務局案の「現在の損害賠償制度が犯罪被害者等のために十分機能していない」という部分であり、それより前の部分は判断の前提となる事実であります。この「通例である」との記述については意味が弱まらない程度に正確な表現にした方がいいと思います。
 犯罪被害者等基本法は議員立法であり、基本計画案が閣議決定までに骨抜きになっていたのでは政府の信用がなくなるので、できるだけ踏み込んだ記述となるよう各構成員にもご協力をお願いしたい。基本計画案は閣議決定の後、政府が講じる措置の基礎となるわけであり、政府部内の検討作業が失速しないような記述にしなければならないと考えます。

○大塲構成員代理(法務省) それでは、7ページから8ページにかけての法務省の主張は、皆さんの多数のご意見がおありのようですので、それでいこうかと思います。

○山上座長代理 確認ですけれども、今のところは、「金銭的回復は犯罪被害者等云々にかかっている」という表現で、一つの案として「多くの場合」という言葉をつけてという意見もありましたが、どちらでいくのがよろしいでしょうか。原案でよろしいですか。

○大塲構成員代理(法務省) 原案で結構です。

○山上座長代理 では、そういうことにさせていただきます。それから、この「損害賠償の請求は」というのは、これは指摘のとおり、内閣府の検討である。そういうことですね。ちょっと説明してください。

○事務局 8ページの中ほどの四角で囲ってある部分でございますが、特にご異論がなければ、法務省ご指摘のとおりとしたいと思います。この損害賠償の請求の制度本来の趣旨を、誤解を受けないようにというご趣旨だと思いますので、事務局としては法務省意見のとおりとしてはどうかというふうに考えた次第でございます。

○山上座長代理 これについては、よろしいでしょうか。よろしければ、次の8ページの後段。

○岡村構成員 8ページの中ごろ、「損害賠償の請求は」で、「この不法行為に基づく損害賠償請求は、あくまでも不法行為による金銭的な損害の回復を図るためのものであって、その中に不法行為の全容解明や被害者の名誉回復等があるとしても、請求の過程における事実上の効果に過ぎない」という記述がありますね。つまり、金銭請求だけであって、名誉回復とか全体、全容を知りたいとか、そういうことは損害賠償の請求の中には入らないということになっているわけですよ。ところが、片や刑事訴訟はどうであるかというと、公の秩序維持のためにやるのであって、被害者の名誉回復とか被害者の利益のためにやるのではないといって、自分のための訴訟ではないと、刑事訴訟でもはねられている。そして、民事で訴訟を起こすと、それは金をとるだけのことであって、お前たちの名誉回復のためでも何でもないということを言われる。一体、被害者はどうすればいいんだということになるのですよ。これでいきますと、何にも救済の手がない。私は民事訴訟の中にも、これは民事罰的なものがあると思います。小野清一郎先生の附帯私訴に関する論文の中にもありますが、附帯私訴ゆえんのものは、単に審判の便宜ということ及び被害者として労を少なくして、その賠償を為さしむるという以外に、犯人をして容易にその民事上の責任を逃れしめられないという目的でなければならないと。そして、刑事については一般予防的なものでなければいけないということを言われているのですよね。だから、民事が純然と金銭回復だけを目的とするものであって、それ以外のものは一切、反射的利益であるとされてしまうと。被害者は刑事でも救われない、民事でも救われない、では実力でやるかということになってしまう。だから、あまりこのようにきちっと割り切れない。もう少し、被害者のためにも民事訴訟はあるとしていただきたいと思います。これは、後でまた刑事訴訟についてお願いすることはあると思いますけれども、このように冷たくされますと、金のためのこと以外は何も言えないことになってしまう。だから、原案では「損害賠償の請求は、金銭的な回復を図るためのというだけでなくて、当該犯罪にかかる事件の全容を把握し、犯罪被害者等の名誉を回復するとともに、加害者に謝罪や反省を求める機会としての重要な意味を持っている」と、こう書いてくださっているのですが、これはぜひ私は復活していただきたいと、このとおりにしていただきたいと思っております。そうしないと、刑事で突っ張ねられ、民事で突っ張ねられ、被害者は行き場がありません。これでは被害者の尊厳は守られない。

○井上構成員 また折衷案のようなものですが、法務省と岡村構成員、両方にお聞きしたいのですが、こういうのではいかがですか。「損害賠償の請求は、金銭的な回復を図るためのものであるが、これに加えて、・・・機会としても重要な意味を有している」とする。あるいは「機会としての重要な意味をも有している」とするのでもよいかと思います。「指摘がある」という言葉は削ります。つまり、制度本来の目的としてそう言えるかということにこだわられるというのはそれなりにわかりますが、それに加えて、そういう意味をも持っているということにすれば、制度の趣旨なのか、そういう意味を実際上持っているということなのか、両方あわせ飲むような表現ですけれども、良いように思うのですが。

○岡村構成員 やはり、この法務省のご意見の。

○井上構成員 前段だけとって。

○岡村構成員 前段。折衷案がここは既に出ていますね。「ただし、この1文は、その趣旨を維持して残すとすれば」という、これ以下ということですか。

○山上座長代理 これに加えてですね。

○井上構成員 いや、さらに強めて、「図るためのものであるが、これに加えて・・・機会としての重要な意味をも有している」あるいは「機会としても重要な意味を有している」とするということです。ここで言っている「ためのものであるが」というのは、いわば枕言葉であって、後ろの方の「重要な意味を有している」というところが重要なので、それが岡村構成員のお考えの趣旨だと思うのですよね。そこはそのとおりに残します。「図るためのものというだけでなく云々」とすると、制度本来の趣旨として、そういうものであるということまで意味するように受け取られるおそれがあるので、制度本来は金銭的な回復を図るためのものなのだけれども、それだけではなくて、名誉を回復したり全容を解明したり、原因を把握したりする機会としても重要な意味を有していると、そういうふうに書けばよいのではないかと思うのですが。

○山上座長代理 それは、法務省のこの意見の中に、下に折衷案として書いている……。

○岡村構成員 下にある。

○井上構成員 そうですか。

○事務局 いえ、違います。「指摘がある」が除かれますから。

○井上構成員 「指摘がある」という言葉も除いた方がいいのではないかということです。

○岡村構成員 「指摘がある」という、ここをとって。

○井上構成員 「有している」と言い切るということです。「機会としても」か、あるいは「機会として重要な意味をも」とするか、どちらでもいいですが、どちらかというと、「機会としても」の方がよいですかね。

○山上座長代理 「機会としても」ですね。

○岡村構成員 わかりました。

○山上座長代理 それでよろしいでしょうか。
  それでは次のところで、「「しかしながら」以下の文章は、原案に戻すべきである」という部分について、修正あるいは指摘が非常に複雑な書き方をされているものですから、少しわかりづらいかもしれませんが、何かご意見、ご指摘ございましたら。最初に法務省で指摘されているのは、その修文案の「訴訟になると、高い費用と多くの労力・時間を要すること」というような、こういう表現がその中ごろに書いていますが、犯罪被害者等が常に高い費用と多くの労力・時間を要すること云々、直面しているとの誤解を招くということでこういう表現は取り下げた方がいいということであるかと思いますが。
 これに関して、法務省の方で何かご意見は、特に……。

○三浦構成員(法務省) ここは、先ほどの例の「通例」部分で若干議論のあったところですが、私どもの方で9ページに書いてございます修文の案は、見え消しがややわかりにくい、読みにくいかもしれませんが、もちろんこれが一つの案ということでありまして、ほかにも書きようはあるのかもしれませんし、また総論のところの重点課題でも損害回復・経済的支援等への取組について同じようなことを記述した部分もございますので、それをまた参考にして書き直すという案もあるのかなという感じがしておりますが、とりあえず私どもの方で、こういう9ページの真ん中辺から下の方に書いたような形で直してはいかがかということで提示させていただいたものでございます。

○事務局 事務局の意見ですが、9ページの「上記意見に対する内閣府意見」というところで記載しておりますとおり、従来の骨子の段階の案から、さらにこのように書き加えたということは、今までの基本計画検討会等のご議論を踏まえて、さらに被害者の置かれている状況というものをわかりやすく、突っ込んで記載をしていこうということで変更したものでございます。この部分につきましても、9ページの内閣府意見で記載しておりますとおり、損害賠償の請求を行ったり訴訟を行ったりする上でいろいろな困難があるということについて、まだまだ一般の方のご認識が十分ではないのではないかということで、こういう表現で提示をしているというものでございます。
 一方、法務省の方からは、常にそういう状態に直面をしているというような誤解を招くのではないかというご指摘がございます。高い費用と多くの労力、時間を要する、あるいは訴訟に関する知識がない、独力では証拠が十分に得られない云々というような状況に常に直面しているというような誤解を招くのではないかというご議論がありましたので、それについては、この検討会の場でご議論いただきたいと思います。

○山上座長代理 ご意見ございましたら、どうぞ。「常に直面している」ということではないのでしょうけれども、その訴訟のことに伴う、こういういろいろな困難なことを考えたら、早い時期にあきらめてしまう人はたくさんいること、それも困難と考えれば、この原案はそのままでも、あるいはいいのではないだろうかという気は、私はしますけれども。どなたかご意見ございましたら。

○事務局 事務局案と法務省の案とで違いがどこにあるのかと申しますと、4ページの下から5行目で、「犯罪被害者等は、損害賠償請求をする上で多くの困難に直面する」と記載しておるのが事務局案でございまして、それに対して法務省案としては、「常に直面しているかどうか」という誤解を与えるので、そこのところは「直面しているとの指摘がある」という修文案になっております。

○岡村構成員 これは、困難に直面しないで訴訟を起こす人はいませんよ。訴訟は、みんな大変です。日本人が訴訟を起こすということは、訴訟沙汰にするということだけで、よっぽどの覚悟が要るんですよ。だから、これは法務省の方は訴訟慣れしていらっしゃるから大したことではないと思われるかもしれませんが、一般の人は、日本では訴訟を起こしただけでつまはじきされますからね。訴訟を起こすことで、怖い男だと。訴訟を起こすことだけで悪人になるという風潮がまだあるんですよ。だから、これは困難ですよ。

○山上座長代理 ご意見ありませんか。山田構成員。

○山田構成員 前来、若干ニュアンスの相違程度であって、どちらでもよろしいかなと思っておりますが、先ほど大臣が言われたところに沿って考えますと、結論的に私は原案でいいのではないかなと思っております。「常に」と読めば読めますが、そうでもないでしょうし、それから9ページの方の青字の方に書かれているように、「の理由により」とか「指摘がある」とか「と考えられる」とか「ありえ」というところにしますと、相当程度やはりトーンが弱まりますよね。ですから、これは特に、この青い文字のところは客観的なデータに基づくとか、そういうことでもないので、強いか弱いかのイントネーションの問題であるとするならば、原案でよろしいのではないかという感じがいたしますが、どうでしょうか。

○山上座長代理 よろしければ……。

○村田大臣 これは、だけれども「通例」とかとるでしょう。

○山田構成員 原案とは、先ほどの議論を踏まえた上での、後の原案ですけれどもね。

○大久保構成員 私も、原案に戻していただいた方が、この基本法ができたその精神にのっとると思いますので、原案でお願いしたいと思います。

○井上構成員 原案とは、どの原案を指すのですか。

○大久保構成員 内閣府の。

○山田構成員 原案というのは、誤解されているようですが、4ページの赤字の修正が施されている案で、先ほどの「通例」のところを直した、その案ということです。

○井上構成員 ほかのところは結構なのですが、この賠償を「殊更」拒まれ、というのは、表現としては適切ではないように思いますね。表現だけの問題ですが。ここの趣旨は、賠償を拒むのではなくて、強制執行逃れをするということですよね。自ら賠償するわけではなくて、とられないようにするということですから、何かそれに適した言葉に改めていただければと思います。ただ表現の問題だけで」、ここは法務省の指摘するとおりだと思います。

○山上座長代理 あと、17ページの最後のところで、岡村構成員が出された意見がございますが、これはまだここで論議されていませんので、ご意見ございましたらお願いします。

○事務局 よろしいでしょうか。事務局の意見を申し上げたいと思うのですが、17ページの岡村構成員のご意見は、この犯罪被害者等の要望にかかる施策の①に、これは犯罪被害者団体等からのご要望を列記しているところ、これに「『被害に遭う以前の生活水準まで近づけるための』という文言を加えるべき」というご指摘でございます。被害者の方々からは非常に多くのご要望、ご意見がありまして、それを大くくりの表題として整理をしたものでございます。岡村構成員のご意見のように、より具体的な内容を含めていくということになりますと、他のものについても、どんどんこれは具体的なものを加えていかないといけなくなるのかということで、これは歯止めが効かなくなるということで、ここは大括りの表題として事務局案のとおりとさせていただければというふうに思います。
 それと、その関連で18ページの下の、施策の方に「被害に遭う以前の生活水準に近づけるための」という文言を加えるべきということでございますが、これは19ページの内閣府意見として記載のとおりでございまして、今までの検討会で意見の一致を見たものは、どこまでの経済的支援を行うべきかも含めて、検討のための会で検討するということで意見の一致を見ておりますので、一定の水準までというような内容までの意見の一致を見ていないということで、ここは従来の案のとおりとさせていただければということでございます。

○岡村構成員 外国の制度からとったわけですが、結構です。それと、検討のための会でいろいろなこととか、財源について言及されているところがありますね。財源というのは、これはどういう意味で使われているのでしょうか。財源を検討するということが、いろいろなところで使われるのだけれども。

○事務局 これは、いろいろな被害者等の方々からの経済的な支援のご要望をどういう範囲で支援をしていくべきかということを議論いたしますけれども、当然、例えば損害の補償制度を新たに設けるべきということでありますとか、あるいは従来の犯罪被害給付金等についても額をさらに大きくするべきだとか、いろいろな経済的な支援のご要望というものがございます。それらをどの範囲までやるべきなのかと。と同時に、この「財源も」といいますのは、従来の予算の範囲とか、それではもう当然賄いきれないというものにもなるのではないかということで、あわせて支援の内容と同時に、その裏づけとなる財源というものをどうするんだという検討も必要だということで、この両者を検討のための会で検討すると、こういう趣旨でございます。

○岡村構成員 つまり、予算も考えるということで、ガソリン税からもってこいとか何からもってこいとか、そういう意味での財源じゃないですね。

○事務局 具体的にどこからというのは、今の段階ではもちろん申し上げられませんけれども、その既存の施策に充当されている予算をさらに超えた、新しい犯罪被害者等の方々への支援のための必要な財源をどこから持ってくるんだということも、当然検討の範囲に入ります。

○岡村構成員 どこからというのは、例えば罰金からだとか過料からだとか反則金からだとか、そういうことまでも入るのですか。

○事務局 現に罰金を充当すべしとか、いろいろなご意見、ご要望が寄せられております。そういったものも踏まえつつ、どういう財源を確保すべきなのかということも含めて検討をしていく、こういうことで意見の一致が見られたということです。

○岡村構成員 すると、予算と考える方が、むしろよろしいですね。財源というと、よく消費税からだとか何だとかという、具体的な徴収する税金を頭に入れて財源は何にするかということは、よく新聞などには出ますので、そんなことまでやらされるのかなと思っているのですが、そうではなくて、新しい事業をやるからどれだけのお金がかかるかという、予算的な面もここで検討すると、こういうことですか。罰金ももちろん入れようということにはなったり、要求したりするかもしれませんが。つまり、財源がないからやれませんと言われるのが我々一番たまらないと思うので、必要な金は必要な金なのだと。それは財務省に成りかわって、財源はこれだよと、こういってあてがわれると事業は行われなくなると、こういうことを心配しての質問なのです。

○事務局 まさに、新しい施策を行う、あるいは従来の施策をさらに充実して実施をしていくということになりますと、そのために必要な予算というか財源というか、それはともかくといたしまして、それが当然必要になってまいるわけですから、その検討についても行うということでございまして、まさにお金がないからできないということのないようにしようという趣旨でございます。

○岡村構成員 何から幾ら取ってくると、そういう意味での財源ではないんですね。もっと広いということですね。

○村田大臣 予算措置でいいのですよ。

○岡村構成員 予算措置ということですよね。

○村田大臣 それは財源がないよと言われることは必定なのだけれども。

○岡村構成員 よく財源の奪い合いなんて。

○村田大臣 予算措置ということです。

○岡村構成員 わかりました。

○山上座長代理 それでは、よろしいですね。意見は出尽くしたかと思います。これまでの議論を踏まえて、事務局から意見をお願いします。

○事務局 それでは、ご議論いただきましたことを踏まえて、次のとおり修正案を事務局で整理をし、次回の検討会に提出をさせていただきたいと思いますが、その確認をさせていただきたいと思います。
 まず6ページでございますが、下の段の「多くの犯罪被害者等は、思いがけない犯罪等により」云々という部分でございますけれども、ここは事務局案のとおりとさせていただきます。
 それから、7ページの一番下の四角で囲ってある、「その損害の金銭的回復は、犯罪被害者等が自ら行う加害者の不法行為を原因とする損害賠償の請求にかかっている。」云々というところですが、ここにつきましても事務局案のとおりとさせていただきます。
  それから、その次の8ページの中ほどの四角で囲ってある部分ですが、ここにつきましては、この四角で囲ってあります下から3行目の中ほどから「損害賠償の請求は・・・これに加えて・・・機会としても重要な意味を有している」ということで修正をさせていただきたいと思います。
 それから、8ページの下の四角で囲ってある「しかしながら、」以降云々につきましては、「通例である」という表現につきましては「多い」ということで、今日のご議論を踏まえて修正案を事務局として作成をし、次回の検討会までにお示しさせていただきたいと思います。それから、「殊さらに」という表現についても、検討の上、修正案をお示しをさせていただきたいと思います。
 それから、11ページは、岡村構成員のご意見の関係で、ここは「住所等」ということで整理をさせていただきたいと思います。
 それから12ページでございますが、これは原案どおりということにさせていただきたいと思います。
 それから、17ページの法務省からの意見でございますが、これは7ページの部分と同じでございますので、それと同様とさせていただきます。
 25ページと26ページの厚生労働省の関係ですが、基本的にア、イと整理しております施策を新たにつけ加えるということで整理をさせていただきますが、そこの「イ」で記載しております「調整」という文言につきましては、調整をさせていただきたいと思います。

○山上座長代理 ただいまの意見に、構成員の皆様から意見がございましたら。

○大久保構成員 先ほどの通例の前に「多い」―「通例」じゃなくて「多い」と変えるということでしたが、初めの討論の中には「極めて多い」とするという案が出ていたかと思いますが、どちらか。これからお決めになるわけでしょうか。

○事務局 「極めて」と、「相当に」と、幾つかありましたが……。

○井上構成員 お考えいただいて、修文案を示してもらうということだった。まだ決めたわけではありません。

○山上座長代理 ご決定いただいて。

○事務局 では、事務局案をお示しをして、またご意見をいただければと思います。

○山上座長代理 ほかによろしいでしょうか。

○大久保構成員 何か法務省の方が気を悪くしたらと思うと、ちょっと何か言うのもどきどきしてしまうのですが、第7回までの検討会において相互に出し合った意見よりも、この第8回からは、なぜか何となくトーンダウンしたような気がしてならないんですね。法務省の方で何か基本法に対する考え方で変化があったのでしょうか。その点をぜひ教えていただきたいと思います。

○三浦構成員(法務省) よろしいですか。私どもとしましては、これまでの考え方、態度と変えたところもございませんし、何か変えようということで議論をしているところは全くございません。本日あるいは今回の会議に向けて出させていただいた意見、字句のいろいろな表現ぶり等で違和感の強い部分があったかもしれませんが、こちらの考え方としましては、あくまでもこういう大事な基本計画をまとめるに当たって、できるだけ多くの方がご覧になって誤解が少なくなるように、あるいはある程度、客観的なといいますか、それなりの裏づけを持った形で記載をした方がいいのではないかということで述べたものであります。やや役人くさい指摘なり言い方もあったかもしれませんが、基本的に基本法に基づいて、様々な施策を進めていくということ自体は全く変わっておりません。主として現状認識というところの書き方として、いろいろな見方があるものですから、できるだけ人に誤解が少なくなるように考えてはいかがかという趣旨で、ちょっと細々としたことを書かせていただいたということで、ご理解いただければと思います。

○大久保構成員 では、今までどおり積極的に、精力的に取り組んでいただけるというふうにお答えをいただいたと思いますので、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。

○山上座長代理 それでは、ほかになければ、事務局からの提案のとおりといたしたいと思います。最後に、村田大臣から一言お願いいたします。

○村田大臣 いや、特にありませんが、今日も大変長い時間になりまして、いつもながらのことで、ご熱心なご討議をいただきまして、ありがとうございました。

○山上座長代理 ありがとうございました。事務局から連絡事項があれば、お願いします。

○事務局 それでは、連絡事項を申し上げたいと思います。本日ご議論をいただいたもののうち、1つ目の基本方針・重点課題・計画期間、総論部分でございますけれども、これにつきましては、第11回の検討会に改めて事務局案をお示ししたいと思っております。したがいまして、それまでの間に構成員の皆様からは、具体的な修正案あるいは対案などをいただければと思います。よろしくお願いいたします。
 それから、推進体制、これは23条の関係を含みます。それと重点課題にかかる具体的施策のうち、損害回復・経済的支援等への取組の関係につきましては、事務局におきまして、先ほど確認をさせていただきました内容で、基本計画案(1)として取りまとめをいたしまして、次回の第9回検討会までに構成員の皆様にお示しをいたします。
  次回の検討会は、10月25日(火)、午後2時から午後4時半までを予定をいたしております。よろしくお願いいたします。

○山上座長代理 それでは、これをもって第8回検討会を終わります。長時間にわたり、ありがとうございました。


▲ このページの上へ


警察庁ホーム > 犯罪被害者等施策 > もっと詳しく知りたい:犯罪被害者等施策推進会議等 > 犯罪被害者等基本計画検討会 > 第8回議事録