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犯罪被害者等施策
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犯罪被害者等基本計画検討会(第3回)議事録


(開催要領)

日時:平成17年6月6日(月)14時00分~19時25分
場所:内閣府本府庁舎3階特別会議室
出席者:
  座長宮澤 浩一慶応義塾大学名誉教授
  座長代理山上 皓東京医科歯科大学難治疾患研究所教授
  構成員井上 正仁東京大学大学院法学政治学研究科教授
  同大久保 恵美子社団法人被害者支援都民センター事務局長
  同岡村 勲全国犯罪被害者の会代表幹事
  同久保 潔読売新聞東京本社論説委員兼編集委員
  同小西 聖子武蔵野大学人間関係学部教授
  同中島 聡美国立精神・神経センター精神保健研究所成人精神保健部成人精神保健研究室長
  同山田 勝利弁護士
  同加地 隆治内閣府犯罪被害者等施策推進室長
  同片桐 裕警察庁長官官房総括審議官
  同河村 博法務省大臣官房審議官
  同太田 俊明厚生労働省政策統括官(労働担当)
  同平田 憲一郎国土交通省総合政策局次長
  代理出席下河内 司総務省自治行政局自治政策課長
  協力者板東 久美子文部科学省大臣官房審議官

※ 村田吉隆犯罪被害者等施策担当大臣は、犯罪被害者等基本計画検討会の招集者として出席。

(議事次第)

 1. 開会

 2. 村田大臣あいさつ

 3.骨子案(2:損害回復・経済的支援への取組について)について

 4.骨子案の検討について(3)
  ・ 精神的・身体的被害の回復・防止への取組について

 5.その他

 6.閉会

<附属資料> ※資料のリストが別ウィンドウで開きます。





○事務局(加地内閣府犯罪被害者等施策推進室長) それでは、皆様おそろいでございますので、ただいまから第3回犯罪被害者等基本計画検討会を開催いたします。  村田大臣からごあいさつをいただきます。

○村田大臣 第3回が本日になりますが、前回「損害回復・経済的支援への取組」の議論をいたしまして、この点に関します骨子案について、まず冒頭、皆さん方に議論をしていただきまして、それからスタートすると、こういうことでございます。
 それから、その後で、いよいよ経済的な支援とか損害回復という問題だけではなくて、次の課題であります「精神的・身体的被害の回復・防止への取組」に関する施策について、皆さん方に議論をお願いをいたしたいと思います。
 基本法におきましても、まず第19条におきまして、刑事手続における適切な対応、その他の配慮を通じてさらなる精神的被害を受けることを回避するということが規定されておりますし、また第14条において、既に受けている心身への影響から回復できるよう適切な保健医療サービス等の提供が規定されておるわけでございます。そういう観点から、被害の再発防止についての施策もあわせて第15条において講ずるべしと、こういうふうに書いてございますので、そういう3つの条文に書いております精神的被害、あるいは身体的被害の回復・防止への施策につきまして、本日は議論をしていただきたいと思います。
 本日も大変お忙しい中、構成員の皆さん方にはお集まりをいただきまして、まことにありがとうございました。それでは、座長、ひとつよろしくお願いいたします。

○事務局 ありがとうございました。それでは、宮澤座長に司会を交代いたします。

○宮澤座長 それでは、これより第3回犯罪被害者等基本計画検討会を始めたいと思います。
 最初に、厚生労働省から代理出席を許してほしいと、こういうお申し出がございますので、その点、ご確認させていただきたいと思います。

○岡村構成員 その前に座長、ちょっと私、検討会の進め方について少し意見があるんですけれども。

○宮澤座長 どうぞ、簡潔にお願いします。

○岡村構成員 第2回の検討会で村田大臣が、犯罪被害者等基本法は、これは大変な法律であると。役所にも義務を課するものであるし、従来の発想じゃいけないというご発言が特にございました。私は感銘深くこれを受けたんですけれども、この基本法は、今まで犯罪被害者等の権利が尊重されず、被害者に苦しみを与えたことを反省した上で、被害者の声に耳を傾けて、被害者の視点に立った施策を講じて権利保護を図らなければならないと前文でうたってあるわけでありまして、また目的のところや理念のところも、被害者の権利の保護とか尊厳とか、尊厳にふさわしい処遇を受ける権利を有すると、こういうふうに書かれておりますので、あくまでもこれを被害者の声を聞く、被害者の立場に立って物を考えるという観点から議論されるべきものであると思うんですけれども、前回の議論を聞いておりますと、必ずしも私はそういう情熱は感じることができませんでした。
 例えば法務省は、保護法の運用によって被害者の保護ができるというふうな立場しかとっていないで、被害者に新たな権利を与えるというところまで言っておりません。また、検討会は、犯罪被害者のための施策に関する基本計画、法律の第8条1項の草案づくりでありますが、犯罪被害者のための施策とはどういうものかということが第2条3項に書いてあります。それを見ると、「犯罪被害者のための施策」とは、「犯罪被害者がその受けた被害を回復し、又は軽減し、再び平穏な生活を営むことができるよう支援し、」その次です、「犯罪被害者等がその被害に係る刑事に関する手続に適切に関与する」、これが我々のつくろうとしている犯罪被害者のための施策の基本計画なんです。その辺が抜けた議論がされているんじゃないかと思うんです。そして、基本的施策の第12条には、当該損害賠償請求について、その被害に係る刑事に関する手続との有機的な連携を図るための制度の拡充等必要な施策を講ずるものとすると定められておりまして、これが附帯私訴も視野に入っている、どういう附帯私訴をつくるかは別として、視野に入っていると言わざるを得ません。
 また、第18条には、被害者等が刑事手続への参加の機会を拡充するための制度の整備と、こういうふうになっておりまして、これも訴訟参加の検討が含まれていると書いてあります。また、第18条には、刑事に関する手続への参加の機会を拡充する制度の中には、訴訟参加の検討も、これはちょっと二重になりましたが、含まれていると、こう思っております。
 私どもは、実は署名運動をやって全国に55万7,215人の署名を集めて総理大臣に提出しました。これは、附帯私訴、訴訟参加、被害者のための刑事司法を求めるものでありまして、この55万というのは、私たちの会員だけでなく、全国の会員が参加して集めたものであります。これが犯罪被害者の声であります。
 そして、骨子案の2の事務局案は、附帯私訴とか損害賠償等、損害賠償の請求に関し検察官の立証を得る成果を利用することによりとなっておりますが、立証は検察官だけがするものでもなく、裁判官が職権ですることもあり、また被告人側の立証の結果も使用しなければならないこともあります。また、将来、訴訟参加が実現すれば、参加人の立証の成果も使用することになるのであります。したがって、私どもは事務局案はあまりにも狭くて、刑事手続を利用することによりと改めるべきだとしたのでありますが、これは全部基本法の精神にのっとっているものだと私は思っております。
 そして、この被害者の声に耳を傾ける、被害者の視点に立った観点からすれば、この要望書の要望の趣旨を最大限尊重していただきたい。これが基本法の精神でもあると思います。また、最高裁は、傍聴について被害者の名誉、恐怖心の払拭、精神的圧迫等を考慮して犯罪被害者と他の傍聴者との間に遮蔽することは、被害者の尊厳を守り、それにふさわしい処遇をすることであると我々は考えているんですけれども、これも裁判所はそうすることを嫌がっているわけです。これも基本法の求めるところに反すると思います。傍聴人は被害者の顔を見たくて来るわけではなく、遮蔽が傍聴の自由を阻害することはあり得ません。基本計画の策定はあくまでも従来の制度、理論を見直して、被害者の立場から新しい制度をつくろうとするものでありますから、現状がこうだ、今の日本の理論はこうだというところからだけで議論すべきではないということで、これはその点を、村田大臣の発言もそのように私ども理解している次第でございます。
 そしてまた、国民に信頼される司法ということを盛んに言いますけれども、犯罪被害者は現行の司法制度、特に刑事司法制度に対して大きな不満を抱いております。犯罪被害者が信頼しない司法をどうして国民が信頼すると言えるでしょうか。刑事司法との接点のある国民は、被害者等だけでありまして、その被害者等が信頼しない司法を国民が信頼する司法ということはできない。この観点もお忘れなく、情熱を持って私は議論を進めていただきたいと、そういうふうに思います。

○宮澤座長 他の構成員のご意見を承りたいと思いますが。

○大久保構成員 私も、今、岡村構成員の私からお話しくださいましたようなことを実は前回2回の会議ではとても強く感じました。この犯罪被害者等基本法は、今まで本当に数え切れないほどの被害者の犠牲の上に立ってようやくできたものです。できるに当たりましても、保岡前法務大臣は、世界一立派な基本法にしましょうと力を込めておっしゃってくださいました。それでも、実際にこちらの方に出てお話を聞いていますと、被害者の要望を取り入れた施策を充実させるとか、制度をつくる、あるいは必要な法律をつくるというような視点はあまり情熱としては感じられることができないわけです。そして、今ある制度を何とかこね回して、それでおさめてしまえばいいのではないか、そういうように考えていろいろな資料も出されてくるように感じてなりません。どうぞ魂のこもった被害者の基本計画をしっかりとつくり上げるため、本当に精いっぱい皆さんのお力を出していただきたいと思うわけです。被害者から出された要望をどのようにすれば入れることができるのかという視点でしっかりと考えていっていただきたい。そうでなければ、今まで無残にも殺されていった被害者、あるいは今も苦しんでいる被害者、遺族たちはこれから先、日本の社会や国に対して誰一人信頼感を持つことができなくなってしまうと思います。
 今、こういう機会ですので、どうぞ私たちの子供や孫が安心して住める日本の社会をつくるためにも、今精いっぱいの力を皆さんに出してつくり上げていってほしい、そのように切に願っております。

○宮澤座長 ありがとうございました。ほかの構成員の方のご意見、いかがでしょうか。はい、どうぞ。

○井上構成員 今お二人から申されたことのうち、被害者の方のお考えやお気持ちを最大限尊重するということは、私どもも当然、この会に参加する以上は認識をし、そういう覚悟で来ているわけです。ただ、基本法を読みましても、岡村構成員が触れられたところで、「適切に」関与するとか、制度の「拡充等必要な施策を講じる」というふうに書かれており、そのことから見ても、方策の具体的なあり方についてはいろいろな考え方があり得るように思うのですね。その点ついても、岡村構成員等が提案なさっているのをそのまま受け容れろ、そのまま実現しろと言われるのでは、この検討会で議論する意味はほとんどなくて、最初から結論が決まっているということにもなろうかと思うのですね。
 私は、そういうふうには受けとめていなくて、この基本法の趣旨を具体的にどういう制度に結びつけていくのかについては、いろいろなアイデアがあり、また、ご提案についても、この前も何人かの方から指摘がありましたように、問題がないわけではないので、そういう問題が本当にあるのかどうか、これからさらに検討しなければいけないと思います。そういうこともあるので、大きな制度をつくるかどうかというときには、やはり慎重な検討が必要だと考えております。
 その際に、今お二人から、既存の制度あるいは既存の理論とか考え方をあくまで大前提にし、それは、動かないものとして、一部をいじるだけで対応しようとしているのではないかというご指摘がありましたが、私は必ずしもそうは考えておらず、今の制度や基本的な考え方自体も先ほどのような趣旨から見直してみる必要はあるだろうと思っています。ただ、今日まで、そういう基本的な考え方とか制度が採られていることには、それはそれで、それなりの理由があるわけですから、そのことも踏まえて、どういうふうに考え直していけばよいのか、あるいは、そうすることはやはり無理なのか、そういう点をさらに検討しなければならない。そういう趣旨で、この前、私自身は申し上げた次第です。自由に議論をするという場であるはずなのに、最初から結論は決まっているんだというふうにおっしゃられると、どうも私などはここに参加している意味がないのではないか、そういうふうに感じました。

○岡村構成員 今のは誤解があるように思います。
 私どもは、参加法案をつくりましたけれども、丸飲みしろと言っておりません。附帯私訴をつくるにはどういうふうに工夫してやればいいのかというような工夫もしないで、頭から附帯私訴だからだめであると、損害賠償命令だからだめであるというふうに頭からおっしゃらないようにしていただきたいということなんです。じゃあつくるにはどうすればいいでしょうかとかというふうな議論が全くなくて、否定的な議論が多いのでは私ども疑問を感じる次第です。決して丸飲みしろと言っているわけではありません。

○山田構成員 前回、附帯私訴に消極的な立場をとった者といたしまして、一言だけ。
 おおむね井上構成員のおっしゃられたことに同感でございますけれども、やはり私もこの基本法の精神を十分に酌んで、被害者の立場というものを十分に酌んで、さあこれから被害者のためにと、そのためにここに集まっているということには変わりないと思うんですね。
 しかし、だからと言って、ほかの制度との兼ね合いというものも考えなくてはならないことは現実だろうと思います。今まで被告人の人権ばかり言っていたというご批判がありまして、しかし、じゃあこれからは被告人の人権は無視してもいいというご意見ではもちろんないと思うんですね。ですから、その兼ね合い、バランスというものを考えるというのが現実的な問題だろうと思います。そうしますと、この基本法の精神を酌みつつ、その中でどのような手段をとったらいいのかというのは非常に重要だろうと思いますので、私はそのように考えて発言したものであります。決して初めからこうだと言ったのではなくて、「附帯私訴はいけないと頭から」とおっしゃられましたけれども、やはり比較考量をして、附帯私訴についてはいかがなものかなということを申し上げたつもりでございます。
 なお、この検討会におきましては、今後ともこのように姿勢で臨みたいと思っております。

○宮澤座長 もう既に15分ほど時間がたったわけでありますけれども、さらに何かご発言、ご意見があれば、どうぞよろしくお願いします。

○山上構成員 熱意が欠けていてとかそういう批判があったんですけれども、そういうことをちょっと省庁の回答の中に感じるときもあります。ただ、私はやはり被害者支援の問題も、10年、20年という歴史があってここまでようやく来て、ここで一気にすべてが達成されるということではない。今、当面数年でできるベストの政策は何かという視点で、ある程度妥協をしながら、省庁でできる限りのことをしていただくという、その線を探していただくことが大事なんじゃないかというように感じております。

○宮澤座長 どうでしょうか。まだご発言、要求がございますれば、それは座長としてお許しいたしますけれども、やはり前回のように午後7時近くまでというのは今日は避けたいと思いますので、ぜひご協力賜りたいと思います。
 もしよろしければ、本日検討すべき課題その他について事務局のご説明を賜りたいと思います。

○事務局 本日、第3回の検討会でございますけれども、2つございます。
 1つは、前回議論が行われました「損害回復・経済的支援への取組」の骨子案のご確認をいただきたいと思います。もう1つは、課題でございます「精神的・身体的被害の回復・防止への取組」についてご議論いただきたいと思います。基本法の条文では、第14、15、19条の関係となります。
 なお、前回の検討会、予定時間を大幅に超過いたしました。このことにつきましてお詫びを申し上げます。その点を踏まえまして、今回は各条文ごとに大ぐくりにご議論をいただこうというふうに考えております。同時に、事前に書面として提出をいただいているものにつきましては、口頭でのご説明を省略することとしていただきたいというふうに思いますので、ご協力をお願いいたしたいと思います。

○宮澤座長 ありがとうございました。そのような進め方でよろしいでしょうか。もしよろしければ、前回の議論をまとめた骨子案について事務局より説明をお願いいたします。

○事務局 それでは、お手元の犯罪被害者等基本計画骨子案(2)の資料1をご覧いただきたいと思います。  この資料は、骨子案に対する構成員の皆様からのご意見を赤字で、それから事務局の考え方を青字で書き加えております。既に配布をさせていただいたものでございます。
 それから、この資料に続きまして、構成員の皆様からいただきましたご意見につきましても添付しておりますので、そちらもご参照の上、ご議論をいただきたいと思います。
 なお、この資料を作成・配布させていただいた後で、再意見ということでいただいておりますので、それにつきましては、若干説明をさせていただきたいというふうに思います。
 お手元に井上構成員、それから先ほど法務省の方からも再修正意見が出ました。これは資料1の2ページの「今後講じていく施策」(1)に関するご意見でございまして、これから2年以内を目途に検討していくその例示といたしまして、附帯私訴、損害賠償命令のほかに、没収・追徴を利用した損害回復という例示を入れてはどうかというご意見でございます。これは、当初から法務省の方からもご意見として出ておりました。これにつきまして、井上構成員のペーパーの(2)の4行目当たりでしょうか、今回の基本計画により援助等を拡充しようとしている対象は「殺人事件の遺族や性犯罪被害者など精神的に重い負担に苦しむ犯罪被害者等」に限られるものとは理解しておりませんし、そのように限るのは適切であるとも考えませんというくだりがございます。私どもの方も、まさに基本計画の対象というのは、殺人事件あるいは性犯罪被害者など精神的に重い負担に苦しむ犯罪被害者に限られるとは考えておりません。ただ、この検察官の立証の成果を利用する制度についての検討におきましては、やはり財産犯だけということになってしまっては、これはここの必要な検討がなされたということにはならないんじゃないかというふうに考えるわけでございます。まさにこのご要望の根底にあるのは、殺人事件の遺族あるいは性犯罪被害者など精神的に重い負担に苦しむ犯罪被害者等の負担を軽減するということでございますので、その例示としては、やはり財産犯被害者に限定される没収・追徴を利用した損害回復というのは適切ではないのではないかというふうに考えております。
 なお、この没収・追徴を利用した損害回復につきましての検討はなされないわけではなく、法務省の方から、当初より積極的な検討についてのご意見を出していただいておりましたので、また骨子案の中でも、別途1年以内に結論を出すということでご検討いただくということにしておりますので、こういった検討についても別途やっていただければどうかというふうに考える次第でございます。
 それからもう一つ、厚生労働省の方から再意見が出されております。まず、お手元の厚生労働省からの再意見の1ページでございますけれども、医療保険利用の利便性確保についての再意見ですが、「厚生労働省において、警察庁の協力を得て、犯罪被害者等において医療保険の利用ができないといったケースがないか実態を把握した上で、1年以内を目途に結論を出し、必要な措置を講じる。」に修正されたいという再意見が出ております。これにつきましては、3点、確認的にお尋ねしたいと思います。
 1点目は、医療保険がスムーズに使えない理由の一つといたしまして、個人情報が会社等に漏れてしまうという問題が指摘をされておりましたけれども、そういう指摘につきましての調査というのは行わないという意味合いなのかどうかという点が1点でございます。
 2点目は、当初案で「調査」としておりましたけれども、「実態を把握」というふうになっておりますけれども、そういうふうに改められた理由は何かということでございます。
 それから3点目は、「必要な措置を講じる」とされておりますが、これは「施策を実施する」から「措置を講じる」に改められたわけですけれども、その理由についてお尋ねをしたいと思います。
 それから、厚生労働省の再意見の2ページでございますけれども、これは、被害直後及び中期的な居住場所の確保についての再意見でございまして、やはりこれは厚生労働省では行わないというご意見になっているわけでございます。これにつきましては、前回の検討会で私からまとめの提案をさせていただいたわけですが、そのときの認識といたしましては、厚生労働省から児童相談所や婦人相談所の一時保護を引き続き行っていくというご説明がありました。一方、それでは十分ではないという複数の意見が出ていたわけでございます。それを踏まえまして、被害直後に保護される場所としての居住の確保について必要な調査を行い、必要な施策を講じていくという必要があるという議論であったというふうに理解していたわけでございます。
 それから、中期的に住んで今後の生活の立て直しができる居住環境の整備ということでございますけれども、これにつきましても、単に公営住宅の優先入居等で住む場所を確保するということを意味するものではなくて、費用面ですとか、あるいは安全面、ともに保護をされると、保護という性格、そういう保護される場所として犯罪被害者等に居住する場所を提供するということを意味しているというふうに理解したわけでございます。したがって、一時的ではない中期的な保護施設のあり方について調査をした上で、必要な施策を検討するという議論であったというふうに承知をしているところでございます。これは、まさに以上のような調査は厚生労働省において実施することが相当であるというふうに考えているわけであります。
 なお、中期的な居住の確保につきましては、2月のヒアリングをさせていただいた際に、大久保構成員の方からご意見として出されております。できれば大久保構成員から、中期的な居住の確保という意味合いが単に公営住宅の優先入居等を意味するものなのか、あるいは保護という性格のものなのかということはご確認させていただければと思う次第でございます。
 それから、厚生労働省の再意見の4ページでございますが、被害回復のための休暇制度導入の是非ということでございまして、この中では、裁判とか捜査のための休暇を必要とすることが多いのだから、そういった制度の中で検討されるべきという再意見が出されておるわけですけれども、まさにこれは犯罪被害に遭った労働者につきまして、年次有給休暇制度とは別の特別な休業制度を設けるべきかどうかということでありまして、まさに労働行政といいますか、労働政策であるということで、厚生労働省の方で調査の上、必要な検討を行い、施策を講じていただきたいというふうに思っております。原案どおりといたしたいということでございます。
 それと、厚生労働省の再意見の中で、小西構成員のご発言について、これは中期的な居住の、先ほどの居住の安定の再意見の2ページの関係のところで、下から3行目、さらに小西構成員から云々ということがありますが、これにつきましては、本日、小西構成員の方からそういった趣旨の発言のない旨のペーパーが提出されておりますので、皆様のお手元にお配りをいたしております。

○宮澤座長 ただいまの点について、お答えがいただければと思いますが。

○太田構成員(厚生労働省) まず、1点目の医療保険利用の利便性確保でございますけれども、これはいろいろな議論がございまして、制度的にはかなり利便性の確保はされているわけでございますけれども、ただ、実態面から見るといろいろ不便な面が多いというようなご意見もございましたので、私どもも、そういうものを踏まえて利便性の確保について必要な施策を実施していくという点につきましては、そこに書いてあるとおりやっていきたいと思っております。ただ、前回もご発言申し上げましたけれども、実態把握において、私どもでは犯罪被害者という観点でとらえているわけではございませんので、やはり犯罪被害者全体がどういう不便を持っているのかという点につきましては、むしろ警察庁の方がよく情報をお持ちですので、警察庁で調査をしていただいて、その結果、私どももそれをいただいて検討したいということでこういう意見を申し上げたものでございます。
 それから、2点目の居住の安定でございますけれども、児童相談所なり婦人相談所の取組につきましてご説明申し上げましたし、必ずしもそれは十分ではないということもございましたので、私どもそういった形での今後とも適正な運用に努めるということにつきましては、別段、全く異論はございません。ただ、中期的な居住の確保について、厚生労働省でやるべしという議論はなかったのではないかというふうに考えているところでございまして、児童相談所、児童なり婦人の虐待の問題について実態把握というのはともかくとして、犯罪被害者全体の生活の問題の中期的な居住について、厚生労働省がすべてやるというのは所掌からしてなかなか難しいのではないかと。決してそういう全体的な中期的な居住の確保についての調査が必要ないとかということを申し上げているわけではないんですが、私どもで犯罪被害者の実態を全部把握しているわけではございませんので、その調査を全部厚生労働省でやるというのはなかなか難しいのではないかということで意見を申し上げたところでございます。それから、小西構成員につきましては再意見が出ておりますので、その点はその再意見に基づいて修正をさせていただきます。
 それから、3点目でございますけれども、これはまさに私ども年休制度を持っておりますので、その運用の中でできる範囲のことは本当に努力いたしますが、犯罪被害者が犯罪被害を回復していく上での休暇制度全体となると、これは労働者という観点よりも、むしろ犯罪被害者が裁判なり捜査によって自分の被害をどうやって回復していくかと、そういう観点から検討する方が適当ではないかということで、まさに犯罪被害者の権利利益の保護をしている、あるいは被害の損害の回復とか軽減を本来の業務としている内閣府なり警察庁が主体となって制度的な検討を行う方が適当ではないかということでございます。
 例えば、そこの5ページの方に書いておりますけれども、裁判員休暇につきましても、これは労働者という観点もあるわけでございますけれども、これは裁判員制度の枠組み、その全体の中で議論が行われたということでございますので、この被害回復のための休暇制度というのも犯罪被害者全体をどうやって救済するかという観点から議論するのが適当ではないかということで意見を出したものでございます。

○宮澤座長 ありがとうございました。今、関係ある省庁の間の議論でありましたけれども、そういうものからは関わりのないというか、独立したというか、冷静に考えられるというか、そういう方々のコメントをいただければと思いますが、どうぞ構成員の方々の積極的なご発言をお願いします。どうぞ。

○中島構成員 ただいまの厚生労働省の基本法の骨子に関するご意見に関してですが、私どもが要望していることと厚生労働省のご理解の間にちょっと差があるのではないかというふうに若干感じた次第でございます。
 例えば、利便性確保のところはよろしいのですが、雇用の安定につきまして、「内閣府、警察庁、厚生労働省において」というところで、犯罪被害者のことは厚生労働省では把握できないので、ここから厚生労働省ということは省いていただきたいというお話があったのですが、犯罪被害者全体について厚生労働省一つで調査してほしいということではないと思います。厚生労働省のできる調査、例えば、今現在、病院において犯罪被害者がどのような処遇を受けているのか、あるいは個々の企業において犯罪被害者のための休暇について配慮がなされているのかどうかについてかと思います。そしてまた、その結果が出たときに、病院であれ、個々の労働環境であれ、それを提言するのは厚生労働省の役割でございますので、全部するべきと言っているわけではないので、名前を省くということにつきましては、実際に運用されるに当たり様々な支障が出るかと思いますので、そのようにご解釈いただき、厚生労働省の名前を残していただくというふうにご検討いただければ幸いかと存じます。

○小西構成員 今、厚生労働省からご返答いただいたわけですけれども、直後のシェルターに関して、私は中心的に述べたつもりではあったので、その中期シェルターについては、もし大久保構成員のご意見があれば伺いたいと思います。
 そのことについて言わなかったのは、むしろ厚生労働省のこの前のご見解について、ある意味ではちょっとがっかりしたというか、現状のままの児童相談所と女性の一時保護所についての答弁だけで犯罪被害者のシェルターについての議論が足りるような形での答弁がなされたことに関して、あきれてしまったので、それについての議論が本格的にできなかったということだと、それは認識していただきたいと思います。
 一つお願いしたいことは、具体的にそれではそのようなシェルターに、実際に今犯罪被害者と言えるような人がどれくらい入っているのか、それから利用されているとしたらどのような利用をされているのか、もう少し、こういうふうにおっしゃるのであれば、それについて資料を出していただきたいと思います。
 それから、この前、私の申し上げた「直後のシェルター」については、これはむしろ警察にお願いしたことだったんですけれども、ここのところがなぜ中期シェルターの話と一緒にされてしまったのか私はわかりません。ただ、こういう形でお答えをいただくということは、厚生労働省の方で犯罪被害者の実態をあまりにも御存知ないのではないかというふうに考えています。構成員の中の犯罪被害者の実態を知っている人たちにこの問題について聞いてみたんですけれども、私の発言をこういう形で受けとられた方は誰もいらっしゃいませんでした。そういう点では、これまでの政策をただ切って出してきて、それでオーケーという形に、ぜひ今日もお考えにならないように、それをお願い申し上げたいと思います。

○久保構成員 14条のところで申し上げようと思ったんですけれども、今お話がありますので、関連で厚生労働省に対してちょっとお話ししたいと思うんですが、今、皆さんがおっしゃったように、医療とか福祉政策というのは事柄の性格上、全国民を対象にした一般的な幅広い政策であるというのは理解できるんですけれども、しかし、前回、今回と話を拝聴しておりますと、こういう制度があるんだというようには、あるいは福祉にはこういうものが用意されているんだというふうな一般論の段階でとどまっているような印象を非常に受けるわけですね。
 そこで、こういう制度が犯罪被害者にどんな形でどこまで利用されているのかという実態を踏まえた上での議論をいただければと思うわけですね。その上で、例えば現行の制度の運用とか工夫によって、被害者の要望にどこまで応え得るのかと、あるいは足りない部分はどういうふうな法制をまた新たに用意しなきゃいけないのかと、そういった前向きの議論というんですか、そういうものをお聞かせ願えればというふうに思います。

○大久保構成員 それと、先ほどから中期的シェルター、あるいは中期住宅でしょうか、その話が出ていましたので、これを出した理由を少しお話しさせていただきたいと思います。
 ただ、今まで出てきた中でも、私は一つ足りないと思っているものがあります。それは、厚生労働省の方が、直後は、例えば虐待ですとかDVの場合はシェルターがある。確かにそれはありますので承知しております。しかし、そこに入れるのは犯罪被害に遭って、自宅が血だらけになって、そこに住めなくなった人がそこに入れるわけではないですね。ですから、犯罪被害に遭った、殺人ですとか強盗、そういうような被害者の方が入れる直後のシェルター的なものは今ないと思いますで、ぜひそれは創設をしていただきたいと思っております。
 中期的な住宅がなぜ必要なのかといいますと、犯罪被害者が被害に遭ってから、これからの自分の人生が考えられるようになるのには、大体3年から5年はかかります。国土交通省さんの方で、犯罪被害に遭った方が優先的に公営住宅に入れる、その制度をつくっていただいたということはとてもありがたいことで、感謝をしております。ただ、そこに入っているときにも家賃、それとか職を失ったような場合、どのように生活をしていくのかというようなところがまだ細かく決められてはおりませんので、ただ、そこの部分はどこの省庁が担うのかということは、私としましてもこことは言えませんので、住宅は国土交通省かもしれませんが、その他の支援、例えば時々生活状況を見に行く、あるいは健康管理をするということになりますと、それはまた厚生労働省さんの方にぜひお願いしたいことですし、1か所の省庁だけでできるということではなくて、皆さんの知恵を出し合って、中期的な住宅に入って、そこからまた新たな生活ができるような犯罪被害者の支援というものを考えていただきたいということで、この中期的という言葉を出しております。

○宮澤座長 ありがとうございました。今までの議論をお聞きになって、それとは違う角度がもしございましたら。

○山上構成員 第13条関係の医療保険利用のことに関してもちょっと意見があるんですけれども、犯罪被害者、例えば大やけどを負って多額の医療費がかかったようなケースで、第三者行為であるからとして保険事務の担当者から多額の返金を要求されたり、病院から何百万と支払いを要求され続けたというケースは何件か知っておりますので、私が知っているだけでもそのぐらいあるので、全国にはかなりそういう医療費の問題で被害者が困られた例があるだろうと思うんです。そういう把握は、別に厚生労働省が犯罪被害者全体の医療費の問題を把握しなくてもいいんですけれども、病院でそういうふうに被害者は大変苦しんで、担当者も困られた例というのはたくさんあると思うので、そういうことはそちらで調査していただけるといいんじゃないだろうか。その解決法の一つの端緒になるんじゃないだろうかというふうに思います。

○平田構成員(国土交通省) 前回、私の方から居住の安定の確保というところで公共賃貸住宅のインフォメーションの提供をさせていただいている。犯罪被害者の方の円滑な住居の住み替えにも活用できるというようなお話をさせていただいた結果、内閣府の資料の11ページの一番上の「イ」を見ていただきますと、「公営住宅への入居に関する犯罪被害者等への情報提供を警察庁及び法務省と十分連携をして行う【国土交通省】」、こう書いてあるんですが、私どもの趣旨は、こういったような情報の提供を積極的に行うということは非常に重要だというふうに思っております。犯罪被害者への支援という観点から、まず必要な情報をワンストップでいろいろ入手ができた方が、犯罪被害者の方も非常に利便性が増すといいますか、ベターだというふうに思っておりまして、こういうワンストップで入手することができるような仕組みを構築した上で、各種情報を提供するということを、先ほど来お話が出ておりますが、前向きの姿勢で政府全体の施策として明確にすることが必要なのではないかと、こういうような趣旨で意見を出させていただいております。
 内閣府の方から伝わってきておりますところでは、7月の上旬に開催される第5回目の検討会で、基本法の11条の「相談及び情報の提供等」という柱建てがございますが、ここでいろいろ議論がなされるということを伺っております。したがって、現段階において内閣府の方のお示しがなされた暫定案というよりも、今私が申し上げているようなワンストップ化を含む情報提供のあり方について、7月の上旬の検討会の場でしっかり議論いただいて、その結果を踏まえた上で骨子案の取扱いを検討するべきではないだろうかというのが私どものポジションでございます。
 したがいまして、暫定案とした上で原案のとおりとしたいというご提示がございましたけれども、この点につきましては、もうちょっと前向きに考えた方がよろしいのではないでしょうかというご意見を申し上げさせていただいて、留保させていただきたい、こういうところでございます。

○片桐構成員(警察庁) 役所同士であまり議論するのも何なんですけれども、第1点目で、当初の厚生労働省の案は、「警察庁の調査を踏まえ」となっていたのを「警察庁の協力を得て」に変えていただいた。これはやはり施策に責任を持つ官庁は調査にも責任を持つべきだろうと。ただ、我々は協力はいたしましょうということでこのように申し上げたつもりだったんですけれども、今のご発言だと、また「警察庁の調査を踏まえ」とおっしゃったので、また元に戻ってしまったのかなという感じがしたんですけれども、そうではないということなんですね。

○太田構成員(厚生労働省) そういうことではございません。私どもで調査できることは当然調査したいと思いますが、犯罪被害者全体になりますと、私どもで調査できない部分もございますので、警察庁の調査を踏まえてということで、協力をいただいてということでございます。
 それから、16条の関係も、例えば犯罪被害者の被害直後というか、児童虐待とか女性の被害直後の問題について、今の施策で決して十分であると思っているわけではございませんので、さらに施策の充実が必要だと思っていますので、その調査を行って、必要な施策を実施するということについては、決して異論があるわけではなくて、前向きに考えたいと思っておりますけれども、ただ、犯罪被害者の中長期の居住も含めて全部厚生労働省でやるというのはなかなか難しいので、それぞれの関係各省が連携して、持ち場持ち場で総合的に考える必要があるのではないかということでございます。
 それから、休暇制度も、先ほどお話がございましたように、例えば病院とか我々で把握できるものは把握をしたいと思いますけれども、むしろ裁判とか捜査となると我々では把握できないところがありますので、それぞれ所管のところで把握していただくのがいいのではないかということで、厚生労働省だけでこういう休暇制度の導入というのはなかなか難しいのではないかと。むしろ休暇制度の導入という全体のことになりますと、我々、持ち場持ち場で協力はいたしますけれども、犯罪被害者の救済なり、被害回復をどうするのかという観点から所管のところで検討し、それぞれ協力するのが適当ではないかということを申し上げたわけでございます。

○事務局 それでは、内閣府の方からちょっと今までのご議論を踏まえて提言をさせていただきたいと思います。まず、厚生労働省の再意見の資料の1ページのところで、先ほどちょっと確認させていただいた原案との表現の違いについてのご説明はなかったのですが、もし、特に意味合いといいますか、それがなければ、原案に戻して骨子案とすればどうかということでございます。
 それから、2ページで、16条の関係、この「中期的な」ということでございますが、先ほど大久保構成員からお聞きいたしましたところ、中期ということにつきましては、これからの人生を考える3年から5年、公営住宅に入ったとしても、例えば家賃とか職を失った場合の支援という、そういう意味合いであるというお話がありました。

○大久保構成員 それと、日常生活支援も入ります。

○事務局 ということになりますと、前回、これは推進会議の下に検討のための会を設けて、社会保障制度、あるいは福祉制度全体の中で犯罪被害者の方々に対する経済的な支援はどうあるべきかということを検討するという、資料1の中の8ページの(4)でありますが、この中で議論をするということでいかがでしょうか。したがって、この16条関係の中から中期的な居住の確保というのは、それで場所の確保という点からしますと、国土交通省の方で公営住宅の優先入居という検討を17年度中に行っていただくということになっておりますので、場所の確保という点ではそちらの方へ、そして、経済的支援、日常支援も含めたそういう問題については、ここの資料1の8ページの推進会議の下に置きます有識者、それから内閣府、警察庁、法務省及び厚生労働省からなる検討のための会の中であわせて検討する。したがって、第16条関係の原案の中から被害及び生活の立て直しを図るための中期的な居住というのを省いて、犯罪被害者等の被害直後の居住の確保につき、現状に関する必要な調査を行い、1年以内を目途に結論を出し、必要な施策を実施するというのを厚生労働省の方で行っていただくということでいかがでしょうか。
 それから、17条の関係で、これはやはり雇用、労働に関する被害を受けた労働者ということでありまして、裁判制度とか捜査、それから、例えば、ご意見を構成員の方からも前回いただいたと思うんですけれども、精神的なケアだとか、身体的な治療のために病院に通うための休暇というもろもろも含めてということでありますので、やはりここは厚生労働省の方で主体となって調査をして、検討していただかなければいけないというふうに思うわけであります。その際に、例えば、裁判制度だとか捜査の関係で現状について、なかなか厚生労働省で把握できないということであれば、警察庁と法務省の協力を得てということで、厚生労働省の方で主体的に調査をし、1年以内を目途に結論を出し、必要な施策を実施するという案でいかがかと思います。

○小西構成員 そうしますと、この16条の原案のところで、その中期の居住の方が除かれたわけで、原案どおりという形になると、具体的には原案はどういう形になるか確認したいんですが。

○事務局 後でちょっと細かい文言整理があり得べしということでお聞きいただきたいと思うんですが、「厚生労働省において、犯罪被害者等の被害直後の居住の確保につき、現状に関する必要な調査を行い、1年以内を目途に結論を出し、必要な施策を実施する」。ただ、この「居住」という表現がいいかどうか、ご意見を賜りたいと思います。

○小西構成員 その「直後の居住」というと、イメージが大分違うんですよね。多分、一時保護に類することで、問題は児相や婦相が適正に使われているかどうかということではなく、恐らくここには載ってこないのに一時保護が必要な犯罪被害者がいるということなんですね。ですから、適正な利用に努めるの「ア」の方が私は非常に不十分だと思うので、もちろんこれは適正な利用をしていただかなくてはいけませんけれども、それでは不十分であるということをせめて文言として一つ確認していただければと思います。

○事務局 そうしますと、「児童相談所及び婦人相談所による一時保護の実態に関する必要な調査」というような表現の方がよろしいでしょうか。

○小西構成員 はい、それでも結構です。そこに今犯罪被害者がどの程度いて、人数としてはどれくらいかを調査していただくということで。

○事務局 それとお尋ねですけれども、児童相談所、婦人相談所での一時保護の期間というのが今決められています。これらの期間が適当なのかどうかというようなあたりもご意見の中に含まれているのではないかと理解しておりましたが。

○小西構成員 ここも、今、DVの一時保護所の期間が適当かどうかということについては、男女共同参画の会議の方でも議論があるわけで、むしろそれでは一番必要な生活支援について不十分ではないかという意見が非常に委員の間ではたくさん出ていると思います。そういう点では、現在のこの適正な運用のみでは、児童と婦相の対象者だけでも不十分なわけなので、そこで議論が錯綜してしまうのですが、犯罪被害者についても、ではなぜ一時保護が必要なのか、さっきから話が出ていますけれども、例えば安全の確保だとか、あるいはその時期の本人の生活の保護という点からはどれくらいの日数が必要なのかということは、あまりここでは時間がなくて議論できていないんだと思うんですね。そのことも含めて議論していただくというふうに書いていただければありがたいと思います。

○事務局 それでは、文言の整理は後刻させていただくこととし、今までのご議論を踏まえますと、このような案でいかがでしょうか。  「厚生労働省において、児童相談所及び婦人相談所による一時保護の現状に関する必要な調査を行い、1年以内を目途に結論を出し、必要な施策を実施する。」

○小西構成員 結構です。

○太田構成員(厚生労働省) 今の関連で1点だけ。13条と16条の基本的な考え方は今の整理でまとめるよう相談させていただきたいと思います。
 あと、17条でありますけれども、これはやはり私ども所掌の範囲でできることは当然いたしますけれども、これを労働者保護という観点からの休暇制度と考えるというのは、どうもやはり私どもからするとちょっと違うのではないかということで、あくまでもこれはやはり犯罪被害者の保護のための被害回復のための休暇制度となると、犯罪被害者全体を所掌している内閣府なり、しかるべきところが中心になって、私どもが協力してやるというのが適当ではないかということでございます。

○事務局 よろしいでしょうか。すみません、先ほど来、内閣府の所掌事務として犯罪被害者等の権利利益の保護があるじゃないかというご指摘があるんですが、ここで一言申し上げたいと思うんですけれども、犯罪被害者等の権利利益の保護というのは、これは基本法をお読みいただいてもおわかりのように、これは政府一丸となって目指すべき「目的」なんです。したがって、「目的」を分担管理するということはないわけでありまして、まさに各省庁が、基本法に基づいて、法目的が図られるように、所管されているそれぞれの制度を犯罪被害者等の権利利益の保護という観点からしっかり取り組むというものでありまして、それがあるから内閣府だということになりますと、ではすべてが内閣府なのか、ほかの省庁の所掌がなくなるんですかと、そういうご議論になるわけでございまして、それはやはりそれぞれの省庁で担当されていることについて、犯罪被害者等の権利利益の保護のためにという観点をしっかりと持って取り組んでいきましょうということでございます。
 それで、もし内閣府設置法の第4条第2項のことをおっしゃっているのであるとするならば、それは閣議決定された基本的な方針に基づいて、さらに強力な、いわゆる内閣補助事務と言っている総合調整の機能が付与されるという話であり、それを行うことがあり得べしということで例示として書かれているもので、今それに相当する閣議決定はなく、また、そのときでも各省庁が所管されている事務について、かわって内閣府が行うことができるというところまでの条文ではございません。

○岡村構成員 ちょっと一つよろしいですか。先ほど聞き落としたかもしれませんが、被害直後の居住と、それから生活立て直しのための中期的な居住、これは2つあるんでしょうか。2つ入っているんですかね。

○事務局 先ほどご議論いただきまして、中期的な居住の確保という問題の趣旨は、1つはそういう場所をやはり優先的に入居できるようというものと、それから入居した場合のそういう家賃と、あるいは日常生活支援も含めた経済的支援が必要だというご趣旨でございましたので、これはこの16条の居住の安定の、いわゆる一時保護の実態の問題としての検討とは別のところで行っていただければいいではないかと。それぞれの検討の受け皿があるではないかと。1つは、公営住宅の優先入居の問題は国土交通省の方で検討していただくということになっておりますし、それからもう1つの経済的支援の問題につきましては、全体の社会保障制度、あるいは福祉制度の中でいかに犯罪被害者等の方々のための経済的支援がいかにあるべきかという、その場で検討していただこうということでございます。

○岡村構成員 それはわかっているんですが、一時保護というのは児童相談所と婦人相談所のこの2つに限っていますね。だけど、男性だって、奥さんや子どもを殺されてたった1人になった男性もいるわけなんですよ。一時保護が要るわけなんです。だから、児童相談所とか婦人相談所だけに限ることは一時保護に欠けると思うんです。現実に、私も大久保構成員も協力をしてその方々のために居住の確保に努めたことがありますから。奥さんが子どもを殺して、奥さんも自殺未遂を起こしたとかというふうなときには、そこにもう住めないんですね。

○事務局 わかりました。今のご意見を踏まえますと、児童相談所及び婦人相談所に限定しない表現にするということでよろしいでしょうか。

○小西構成員 むしろそうしていただきたいです。私の趣旨も同じです。

○大久保構成員 ぜひそうしていただきたいと思います。

○太田構成員(厚生労働省) 児童なり、婦人なり、そういう観点は私ども責任を持ってやらせていただきますけれども、男性まで含まれると、ちょっと私どもの所掌範囲を超える部分がありますので、それは全体の中でご検討いただきたいと思いますが。

○井上構成員 ちょっとよくわからなくなったのですが、「ア」の方は、現在ある制度がどういうふうに運用されているかについて調査をして、必要に応じてそれを改めていくという趣旨かなと思ったのです。それで、今の岡村構成員から出された問題は、むしろ「イ」の方の一環なのではないかという感じがするのですけれども。被害直後にそこに住めない、それで、居住というよりはむしろ生活全般を立て直すのに支援をするということではないかというふうに思ったのですが、「イ」に含めるということはできないのですか。「ア」の方は、むしろ、現在ある制度がどういうふうに運用されているのか、どうなっているのかということをきっちり認識して、それを改めるなら改めるということではないのですか。今お話の部分は、現在制度としてあるというわけではないわけですよね。それまで「ア」に入れてしまうと、焦点がぼけてしまって、何の調査をするのか、どこが調査するのか、そういう話になってしまうのではないでしょうか。

○小西構成員 それはおっしゃるとおりなんです。それはそもそも、ですから厚生労働省がご答弁になったことが非常に不十分であるというところから出てきているわけでして、一時保護に関しても、では男性の被害者はどうすればいいか、それから実質的に、例えば性犯罪被害者も強盗の被害者もそういうものは利用できてないわけですね。では、その人たちの一時保護について、この文言の中にどうやって入れていくかという問題で、一つは、一時保護というところにこの「ア」の方の焦点を置いて、児相、婦相、それ以外のことも含めるように書いていただくというのがあるかもしれません。今の厚生労働省のご意見では、それは厚生労働省だけではできないということでしたけれども、むしろそれはやっていただかなくてはいけないわけで、できないのであれば、どういう形でやるかご検討いただきたいと思います。
 岡村構成員は「イ」の方もおっしゃっていて、こちらは多分生活支援につながっていくような連続的な流れとして何か実質を調査してほしいということだと思いますので、直後、一時保護と全体の流れという2本にここを整理して、今のように、問題はむしろここに書いてないことにある、というのが最初から議論されていると思いますので、そのことを入れていただきたいと思います。

○事務局 それでは、今のご発言を踏まえますと、「ア」は原案のまま残して、「イ」として、「厚生労働省において、犯罪被害者等の被害直後の一時保護の現状に関する必要な調査を行う」ということにすれば、児童相談所と婦人相談所に限らずに、そのほかの現状、それからそれを踏まえた必要性についての調査検討ということになろうかと思いますけれども、いかがでしょうか。

○小西構成員 むしろ厚生労働省のご意見が要るんじゃないですか。

○太田構成員(厚生労働省) 先ほど申し上げたとおり、児相と婦相の問題につきましては、現状を調査して、必要な施策を実施するということにつきましては、先ほどより申し上げているように、私どもも積極的に取り組んでいきたいと思っていますが、例えば男性被害者の問題、これは新たな問題でございますので、それはむしろ犯罪被害者全体をどうするかという、先ほど推進会議などでご検討されると言いましたけれども、新たな仕組みをどうするかということでございますので、その中で検討される方が適当ではないかというふうに考えております。

○小西構成員 少なくともそういう困っている人がいることをじゃあ明らかにしていただくということでどうですか。今、私たちはそういう人がいることを知っていますけれども、数字としても、正確な統計としても出てこないからこういう形になりますから、では犯罪被害者の直後のニーズについてきちんと調べていただきたい。それは省庁にかかわらず調べていただきたいということを入れてください。

○事務局 わかりました。それでは、文言の整理はするといたしまして、今のご指摘の、現在、児童相談所と婦人相談所以外の一時保護の関係について、どういうふうにするべきなのかという点につきましては、推進会議に設ける検討の会の中で検討をするということにし、ここでの厚生労働省の調査及び施策の検討の対象といたしましては、児童相談所と婦人相談所における実態を調査し、そして必要な施策の検討を行っていただき、実施に移していただくと、こういう方向でいかがでしょうか。

○宮澤座長 いかがでしょうか。大分時間もたっておるんで、前回の悪いイメージが頭をよぎってきたのでありますけれども……。

○太田構成員(厚生労働省) すみません、もう1点だけ。決して時間延ばしとか後ろ向きということではないんですが、責任を持ってできることとできないことがありますので、それで申し上げたいんですが、休暇制度の観点でございますけれども、労働基準法の観点、労働者保護ということでしたら、私ども責任を持ってやらせていただきますけれども、やはり被害回復全体になりますと、ここもあわせて全体の犯罪被害者の被害回復をどうしたらいいかという形で、全体の中の推進会議の中で検討させていただくのが、もちろん私どもも入らせていただきますけれども、全体の中で検討させていただくのが適当ではないかと思っております。

○中島構成員 すごく簡単なことではないかと思います。4ページの基本法第17条関係の雇用の安定のところで、厚生労働省からの修正意見で、「内閣府、警察庁」の後に「厚生労働省」に二重線を引かれましたが、二重線を引かなければよいだけだというふうに私は思った次第です。

○太田構成員(厚生労働省) それでも結構です。

○中島構成員 それであれば了解です。

○井上構成員 よろしいですか。今の点、二重線が引かれいているというので、やはり身を引いているという印象が強いと思うのです。また、理由の中で、裁判員制度との関係に触れて、その場合は内閣の下に設けられた審議会ないし推進本部の方で検討したのではないかと書かれているのですが、確かに、そこで議論はしましたけれども、その上で、労基法との関係で何か措置が必要だということになっていたとすれば、当然厚生労働省の方にお願いをして、労基法との関係で問題があるのかどうかを検討していただくということになっていたと思うのですが、そこまではいかなくて、公務を理由に休みを取るのを不利益に扱ってはならないという現行の労基法の規定の範囲で対応しようということになったために、厚生労働省の方には持ち込まれなかったというだけです。そういうことが必要であるということになれば、当然、厚生労働省の方でご検討をいただいていたと思うのです。
 ですから、今回の問題も、厚生労働省の方では扱えず、内閣府等で検討すべき事柄だということではなくて、当然、厚生労働省の所管する労基法との関係で問題があり得るわけなので、厚生労働省としてもご検討の上、問題があればそれを積極的に出していただく、あるいは労基法の方で対応できるならばこうできるというふうに対応されるのがやはり筋ではないかなと思います。

○太田構成員(厚生労働省) 労基法の中で私ども対応するのが難しいということで申し上げているんですけれども、確かに検討も必要ですので、先ほど来お話がございましたように、私ども逃げるつもりはございませんので、この二重線は消していただいて、内閣府、警察庁、厚生労働省、関係各省で検討するということでしたら結構でございます。

○事務局 わかりましたが、ここに法務省も入っていただかないといけないと思いますね。裁判制度等ありますので。

○太田構成員(厚生労働省) それは結構です。

○河村構成員(法務省) 裁判員制度との関係につきましては、当時、検討会の座長を務められた井上構成員のおっしゃったことが結論的と申しますか、この被害回復のための休暇制度と裁判員というものになりますと、ちょっとまた違った面もあろうかとは思われます。ただ、こういう検討につきまして、その関係も含めてバランス論として必要ではないかということでございましたら、私どもそういう前提で検討させていただきたいとは思います。

○岡村構成員 この被害回復のための休暇ですけれども、裁判傍聴のための休暇、これは入りますか。

○事務局 まさにそういったことも含めて検討していくことになるのではないかというふうに思いますが。

○岡村構成員 ぜひ入れていただきたいと思います。

○大久保構成員 被害者にとりまして、裁判を傍聴するということ自体が被害回復に大きな意味合いがありますので、ぜひ入れていただきたいと思います。

○宮澤座長 それでは、もう本当に1時間以上たってしまいましたので、大変強引だと言われたらそれまででありますけれども、一応いろいろな検討を踏まえて、原則として骨子案を了承したということにして……。

○河村構成員(法務省) いや、ちょっとお待ちください。12条が議論未了です。

○山田構成員 今、法務省がご提出された再意見についてのお話でありましたけれども、ちょっとその論点について若干申し上げたいと思います。法務省さん、よろしいですか、お先に。内閣府の資料の1ページ下段から3ページにかけてですが、時間がないので結論部分だけお尋ねをいたしますけれども、附帯私訴、損害賠償命令というのは、いずれも例示であるというふうにお答えいただいてございます。その「例示」という意味なんですけれども、例示であるということは、とりもなおさず附帯私訴あるいは損害賠償の請求等のそれぞれにつきましては導入の是非、可否を含めて検討するんだという趣旨であって、導入は当然の前提としたもの、導入ありきということではありませんよという趣旨ですということで理解してよろしいんでしょうか。そこのところが明確でございませんので、はっきりとお答えをいただければと思います。

○事務局 まさに前回のご議論の中で、賛否相半ばするご議論があったわけでございます。それを踏まえて、このような原案を提案させていただいたんですが、おっしゃいますように例示でありまして、現時点において、それを附帯私訴だとか損害賠償命令制度だとか、それを導入するという意味でもありませんし、それを排除するという意味でもございません。

○岡村構成員 この「検察官の立証の成果」というふうに限定しておりますけれども、先ほど私が申しましたようなことがいろいろありますので、刑事手続……

○事務局 すみません、その点については3ページをご覧いただきますと、岡村構成員の意見という囲みがありまして、その下(1)の3行目の後段から見ていただきますと、「修正意見を入れることに特段のご異論がなければ修正させていただきます」と、このように考えております。

○井上構成員 ちょっとよろしいですか。先の論点からまず議論をして、それで今、岡村構成員が出された論点について議論をしないと、混乱するのではないでしょうか。

○河村構成員(法務省) 先ほどの例示の点も含めまして、本日再修正意見ということで出させていただいておるとおりでございます。これらの制度そのものというふうに言われますと非常に困難、今の時点で結論は、そのものを導入するというふうな結論が出たとは思われないというふうなことであります。
 それからもう1点、先ほどの内閣府のご説明でまいりますと、財産犯の損害賠償については、没収・追徴ということで、別に切り分けるというお話でございますけれども、財産的被害の回復ということで考えてまいりますと、ここで例示として出ております附帯私訴でございますとか損害賠償命令、いずれの国の制度におきましても、片方は財産犯、片方は身体犯というふうな整理はそもそもなされておりませんで、どういう制度を考えるのか非常に、内閣府のご指摘の趣旨を理解しかねるところでございます。やはりここは被害者の損害の回復のために、こういった附帯私訴、損害賠償命令とともに、没収・追徴を利用した損害回復といったことも例示にいたしまして、ただし外国で行われておる制度そのものが、直ちに日本にそのままの形で導入するといたしますと、様々困難な点もございますので、我が国にふさわしいものを導入する方向で必要な検討を行うということでいかがかということでございます。
 それとともに、ここに「検察官の立証の成果を利用」というふうに書かせていただいておりますのは、現行法でまいりますと、立証責任を負う原告官である検察官の立証が主といったことから、こういった書きぶりをさせていただいておりますけれども、より正確に申し上げますならば、本日の井上構成員のご意見の、第2パラグラフの最後のセンテンスにございますけれども、「刑事手続の成果を利用することにより」というのが、より正確であろうとは思われます。

○井上構成員 幾つか言われたと思うのですが、私も、最初の没収・追徴を利用した損害回復というものについて、それを異なった性質の制度だというふうに事務局が整理されたことには、ちょっと引っかかっています。また、そのように、それは今考えているものとは趣旨が違うものだということになりますと、附帯私訴あるいは損害賠償命令といったものを考えていくときも、そういう重い犯罪で被害者の方々が精神的に重い負担に苦しんでいるというものだけを念頭に置いたものを考えるべきだということになってしまいかねない。しかし、今、そこまで絞る必要はないのではないかと思うのです。いろいろな制度を考えていった上で、対象があまりにも広すぎるので限定するとか、何らかの正当な理由があってそういうことにするというのならばよいのですけれども、今はとにかく、これから検討していこうという段階ですので、例示としては間口が広い方がよいのではないかでしょうか。
 さらに、さっきのご説明では、この没収・追徴を利用した損害回復の制度さえとれば、この点の要請は充足されるというふうに受けとめられるのは困るということでしたが、例示されているような制度を複数、重ねて取り入れるということだってあり得るので、こう書いたからどれか一つだけで事足りると受け取られるということには必ずしもならない。ですから、まだ十分なお答えにはなっていないように思います。
 それと、さっき山田構成員が言われた点については、法務省の提案にあるように、「について」というふうにし、「我が国にふさわしいもの」というふうに書けば、例示であるということは明確になるので、その点はその提案が採用されれば、私の意見は撤回させていただきます。

○岡村構成員 この「我が国にふさわしいもの」というのが、これはなかなかくせ者だと私は思うんですよ。どの制度だって我が国にふさわしくないものは、採用されるはずはないのであって、ここのところにだけ「我が国にふさわしいもの」というふうに書かれることは、何か理由があるんじゃないかと推測する。これはとっていただいて当然のことだと思うんです。

○事務局 内閣府の回答、それから今日付言してご説明を申し上げたことについて、ご指摘があった点ご説明したいと思いますが、まず没収・追徴を利用して損害回復を図る制度というのが、全く別の制度であるので除くというふうに、もしご理解をされたということであれば、それは違うということをまず申し上げたいと思います。それから、決して殺人とか性犯罪被害者といった、精神的に重い負担に苦しむ犯罪被害者に限るものとして考えるべきというふうに思っているわけでもございません。
 ただ、この附帯私訴あるいは損害賠償命令制度を導入すべきというご要望の趣旨は、そういう大変重い負担に苦しむ犯罪被害者等のご負担を軽減をするというための制度として、ぜひ導入をというご意見であったというふうに私は理解をいたしております。一方、没収・追徴を利用した損害回復を図る制度というのは、財産被害者を対象とするものであります。もちろん、財産犯被害者を対象とすることは当然なんですけれども、もし、ここの取りまとめで言っている検討の結果として、没収・追徴というところでとどまるならば、これは本来のご要望の趣旨から外れてしまうのではないか。したがって、その例示として含めるべきではないのではないかということを申し上げたわけでございます。
 それと、井上構成員からも、複数でも例示の中から取り得ると、もちろんそうですけれども、先ほど申し上げたような点からして懸念が残るということで、例示としてはふさわしくないのではないかというふうに申し上げた次第でございます。
 それから、「我が国にふさわしいもの」というくだりでございますが、これはまさに諸外国の制度をそのままやはり導入するというのは、これはなかなか難しいというご議論もあって、それを踏まえて例示として示したわけですが、その例示であるという趣旨がより明確になるということでのご意見でございますので、内閣府といたしましても、これは修正するということでいかがかというふうに考えているところでございます。

○岡村構成員 基本法では、「刑事に関する手続との有機的な連携を図るための制度」と、こういうふうにはっきり書いているんですよね。それを具体化していくのが基本計画ですが、これでは、それがより不明確になるような感じになると思うんです。

○井上構成員 それはちょっとご心配が過ぎるような気がするのですね。  その点は、新たに何らかの制度を導入する方向で必要な検討をするということなので、「我が国にふさわしい」と書いているだけであり、これがあるから例示されているような制度が排除されてしまうことにはならないと思います。例示されているものが、最初から検討の対象から排除されるというものではないということは、すでに確認されていますので、当然それをも含めて検討がなされるということだと思います。それに、その部分を削ってしまうと、「制度について」に続くところで何を言えばいいのかがわからなくなってしまいますし、逆にもとに戻しますと、今度は、私などが懸念しているような誤解を招きかねないところがありますので、法務省ないし事務局から提案のあった修正案でよろしいのではないかと思います。

○河村構成員(法務省) ちょっとよろしいでしょうか。先ほど没収・追徴を利用した損害回復につきまして、財産犯に限られるというふうに誤解を与えているのかもしれませんですが、これは、例えば財産犯について、まず措置するようなことを検討するといたしましても、将来的にそれに限定されるのかといいますと、ここはいろいろな観点から考えていくべき事柄でございまして、その意味でもこちらの方で若干ご説明させていただいた部分の、その一部を取り上げて、非常に限られたものとしてそれぞれ例示に入る、入らないというご議論はいかがなものであろうかと。むしろ、没収・追徴を利用した損害回復といったものにつきましても、ここに例示を入れていただくこととで、様々な制度、その果てと申しますか、そういったものを踏まえた新たな制度について検討をさせていただくということとさせていただけないでしょうか。

○岡村構成員 わかりました。では、折衷案。「制度について被害者の視点に立った我が国のふさわしい」というふうに「被害者の視点に立った」ということを入れていただければと思います。視点に立った我が国にふさわしいものを新たに導入すると。

○井上構成員 よろしいですか。そこの「被害者の視点に立った」という語句が、どういう意味を持つのか、なぜそれが必要なのかはちょっとよくわかりませんが、被害者の方々のご要望あるいはお気持ちにできるだけお答えできるような制度整備等を考えていこうというのが、そもそも基本法を貫く考え方であり、それを受けて骨子案全体ができあがっているはずですので、この部分だけ特に、さらに重ねてそのことを強調されると、またちょっと別の観点から別の懸念が生じることにもなるかと思います。「わが国にふさわしい」というのは、比較的ニュートラルな表現だと思いますので、これでよろしいのではないかと思います。

○宮澤座長 山田構成員、どうですか。

○山田構成員 いや、どうぞ。今のところでいらっしゃいますか。

○事務局 今、最終的に「没収・追徴を利用した損害回復」というのを例示として入れるかどうかということで、内閣府の意見は、財産被害者を対象とするものということで、ちょっとここの例示ということには消極。それから先ほど法務省の構成員の方からは、それに財産犯被害者に限定されないんだというご説明があって、その上でこれを例示として書き得るべしということで、これは分かれているんですけれども、できましたらこれについてのご意見をいただければと思います。

○山田構成員 「没収・追徴を利用した」というのは法務省のご意見ではありますが、入れていただいた方がわかりやすいのではないかと思います。それから、制度については、まさに制度についてと、このとおりにしていただくと。それから、「我が国にふさわしいもの」は、やはりこのままにしておきませんと文章として締まりませんし、ここに「犯罪被害者の視点に立って」というものを入れるのには反対でございます。「検察官の立証の成果を利用することにより」というのは、刑事手続を利用するということではございませんので、「検察官の立証の成果を利用する」ということで、このままでよろしいと思います。

○宮澤座長 山上構成員、何かその法律的な、一般常識的な意味でどうですか、文章としても。

○山上構成員 私が感じますのは、この没収・追徴を利用した損害回復というのは、法務省でもともと検討していたところと似通っているものですから、この3つを加えて3つ目だけできたというべきか、2つ目の方の趣旨のものが何か違った形で、日本に合う形で何かできるんじゃないかと期待を持っているんですが、そんな結果になってはいけないなというふうに感じているんですが、そういう意味ではないということであれば、加えていただいてもいいかというように思います。

○岡村構成員 この「検察官の立証の成果」を「刑事手続の成果」というふうに改めてください。

○事務局 その点につきましては、この3ページをごらんいただきたいんですけれども、この検察官の立証の成果を利用するだけではないという、その前提については、まさにこれは18条の議論の中身にもかかわってくることというふうに考えておりますが、ただそこに、岡村構成員意見の四角の下の(1)に記載しておりますように、皆さん特段のご異論がなければ、こういうふうに修正させていただいていいのではないかというふうに内閣府としては考えております。

○井上構成員 その点は、河村構成員の方から、正確には「刑事手続の成果」をとすべきではないかというご発言ありましたが、岡村構成員の修正意見のご趣旨も、刑事手続そのものというり成果を利用するということのようですので、その方が正確ではないかと思います。岡村構成員からも、今ご提案がありましたので、「刑事手続の成果」でよろしいのではないでしょうか。

○事務局 すみません。3ページ、「刑事手続を利用することにより」という修正案になっていますが、「刑事手続の成果を利用することにより」ということでよろしければ、このように修正させていただきたいと思います。

○山田構成員 3ページの方に移っていなかったので、2ページの中で勝負をするならば、このままでよろしいというふうに申し上げたので、3ページに移って「刑事手続の」という文言に変えるとするならば、当然「成果」というふうに入れるべきであると思っております。

○事務局 2ページの没収・追徴を利用した損害回復の関係でございますけれども、ここはまさに経済的な、財産犯被害者に限定されるかどうかというところでの認識が違ったと思います。したがって、その文書を整理するといたしまして、財産犯被害者に限定されないという趣旨のことをここに加える。そして提示をするというのはいかがでしょうか。

○河村構成員(法務省) もともとここで書かれておりますのが、損害賠償請求とございますけれども、これは財産犯だけではございませんので、当然のことというふうに思われますが。当然のことであって、書くとかえって誤解を与えるように思われますが。

○井上構成員 その点は、現在の没収・追徴の制度を念頭に考えると、財産犯がもっぱらの対象になる。おそらくそういう頭で来ており、事務局の方でも当然そういう頭でお考えだったと思うのですが、それ以外の犯罪をも対象にした没収・追徴ということも、理論的には考えられないことではないように思います。実際にそういうものを作ることができるかどうかはわからないのですが、この段階ではあまり、可能性を狭くしない方がよく、その意味で、あくまで例示ですし、入れておいた方がよいのではないかという感じがします。書き分けると、逆に、限定されてしまうことにもなるように思いますので。
 確かに、附帯私訴や損害賠償命令について、これを取り入れるべきだというご意見は、ここの理由に書かれているような重大な事案を対象にしたものであるということは事実なのですが、基本法の第12条自体は、必ずしもそういった事案のみに限定していないように思います。ですから、間口をより広いものにしておいた方がよい。今後の検討を進める上で手を縛らないという意味で、そうしておいた方がよいのではないかという感じがします。

○宮澤座長 いかがですか。もう、今のご発言等々を踏まえて、それ以上のご発言要求がなく異論がなければ、次のテーマに移らさせていただきたいと思います。では、そういうことにさせていただきます。

○岡村構成員 私どもは、訴訟参加については、生命身体と重大ですけれども、附帯私訴については損害賠償全般を考えておりますので、同じように。だから、これはこのままでいいのではないかなと、こう思っております。

○宮澤座長 それでは、精神的・身体的被害の回復・防止への取組というテーマに移ります。  まず、事務局に説明を求めます。

○事務局 最初にご議論をいただきますのは、基本法第14条関係、保健医療サービス及び福祉サービスの提供、それから現状認識、犯罪被害者等の要望にかかる施策。これにつきましては、内閣府資料1ページからをご覧いただきたいと思います。  それから、ヒアリング等で寄せられました要望につきましては、4ページ以下に記載しております。

○宮澤座長 この点について、各省庁でご説明をしてくださるようでしたら、そうですね、厚生労働省からどうでしょうか。

○田中構成員代理(厚生労働省) 今日当日、確認事項についてという紙を追加で配布させていただいております。第3回犯罪被害者等基本計画検討会確認事項についてという表紙がついた紙は、後で配らせていただいたんですが、ありますでしょうか。2枚ですね。これは、後で出したので、かいつまんでご説明させていただきます。
 後遺障害の関係ですが、症状固定化した後、転院が必要だということでご要望があったわけですけれども、私ども医療機関の機能分担を進めておりまして、やはり急性期、例えば手術などを行ったところと、それからその後療養するところは、やはり分けていかなきゃならないと思っております。転院が必要だということについては、申しわけないですが、そこは私どもでいろいろな病院や診療所間の連携なども進めて対応していきたいと考えています。
 次の(3)の女性、少年被害者の関係ですが、在宅支援を行うための保健師の増員云々というところですけれども、在宅支援を行うというのは、保健師が何を意味しているか必ずしも明らかではないんですが、児童相談所におきまして児童福祉士でありますとか児童心理士などを配置しております。それの配置基準も今見直しを図ったところでありまして、そういった環境の整備を進めていきたいと考えているところであります。
 それから次のページ、その他の医療福祉サービスの充実ということで、総合支援ケアセンターという言葉でご要望いただいています。これも、内容は必ずしも不明なところでございますが、私どもの所管する児童福祉施設などで母子生活支援施設というのがございまして、そこで対応を図っていけたらと思っております。
 次に、高齢者等への助成サービスを使えないかということなんですが、例えば介護はホームヘルプサービスなどいろいろあるんですけれども、それはやはり介護の一般的な原因を問わない要介護状態について、保険制度で対応しているものですから、そういうものを流用するにしても、その財源のあり方というのはやはりあるわけで、それはやはり先日、第2回の会議で2年間の検討会、経済的支援について検討されるということでございますので、そちらの方で議論して、その上で私どもの所管している介護や障害福祉のサービスが利用できるかどうか、そういったことを検討していくのがよいのではないかなと思っております。
 3ページ目に参りまして、精神保健センター、保健所の関係ですけれども、PTSDに対する養成研修などを行っているところですが、これについては今後とも進めていきたいということでございます。
 4ページ目ですけれども、すべての医療機関に相談業務として、被害者の対応というご要望ですが、これはやはり医療機関それぞれ役割がございまして、診療科もいろいろ違うと思います。そこは、適切な連携を図っていくということが大事なんじゃないかなと思っております。
 次に、療養施設の方に被害者の優先入所ということですけれども、そういう療養が必要な度合いというのは、原因を問わないでいろいろな状態があると思いますので、状態に応じて、そこは施設をよく探していくということで対応するのがいいんではないかなと、連携が大事なんじゃないかなと考えております。
 すみません、長くなって恐縮ですが、次、15条関係ですけれども、児相、婦人相談所については、いろいろ処遇がよくないんではないかということ、特に混合処遇の問題が指摘されておりますが、これは改善するために5年間の目標を定めて取り組みたいと考えているところであります。また、これは先ほどのシェルターの話とかぶるわけですが、一時的な保護については、地方自治体を調査して対応するということを、先ほど統括官の方から申し上げたところでございます。
 次のページに参りまして、子供の虐待などのレビューですが、これは社会保障審議会の児童部会のもとに、検証する専門委員会を設置して対応するということとしております。本年4月に第1次報告書を取りまとめたところでございます。
 また、1ページめくっていただきまして、里親でございますが、これについては児童相談所から里親とするものを派遣するような援助事業であるとか、里親自身の資質の向上を図る援助事業を創設しているところでございまして、積極的に進めたいと考えております。
 次のページですけれども、8ページ、関係職員の研修等ですけれども、PTSDの関係の専門家研修、それから13年度からですけれども、思春期精神保健の専門家の養成研修を始めているところでございます。
 下の方に、民生委員の方が、どうもよくない対応をされているんじゃないかなという指摘について、ご要望がございます。これについては、民生委員が秘密を守るのは当然のことでございますので、これはよく指導を徹底してまいりたいと思います。また、具体的な事例があればご指摘いただきたいと思っております。
 最後に、公的シェルターでの人権侵害等ですが、婦人相談所等関係施設で二次被害があるという指摘はあるのは承知しておりますので、これはきちんと専門研修の予算をとって進めていきたいと考えております。

○宮澤座長 どうもありがとうございました。この問題については、いろいろ被害者にアドバイスをする立場として、いろいろな問題をお持ちだろうと思うので、今のお答えに関して、さらにご質問というか……

○事務局 法務省が。

○宮澤座長 ごめんなさい、すみません、そうですね。法務省の対応をご紹介願えますか。

○小西構成員 ちょっといいですか。混乱していますが、こちらのその配布された資料と今の関係はどうなっているんですか。補足なんですか。

○事務局 配布いたしました資料では、事務局の方で論点として整理をしてご議論いただくために、整理してお配りしました。今ご説明いただいた諸点というのは、整理した論点になかなかおさまり切らない、個々の対応について……

○小西構成員 補足と考えていいんですよね。

○事務局 対応について、論点でおさまり切れないものを別個、今ご説明していただいたということです。

○小西構成員 基本の論点については、また述べられるというふうに考えていいんですか。

○事務局 基本的な論点については、もう既に……

○小西構成員 もうそれは終わったんですか。

○事務局 はい、資料で提出していただいていますので、資料でお配りしたものについては説明を省略された、そういうことでございます。

○小西構成員 説明は省略と、わかりました。結構です。

○宮澤座長 法務省でいいですか。この資料3ですよね。口頭で何か、加えるようなことがあればご発言願いますという、そういう趣旨です。

○河村構成員(法務省) あえて追加させていただくとなりますと、検討中の施策の実施ということで、お手元に配布させていただいております、私どもの資料4の2の(1)でございます。その中に(1)、(2)がございますけれども、これを導入することになりますと、当然刑事訴訟法等の改正という法整備が必要になってまいりますので、相応の期間が必要になるということはご理解いただきたいと思います。

○宮澤座長 ありがとうございました。次に、文部科学省から、こちらに提出いただいたこの資料に加える、何かご発言要望があれば、よろしくお願いします。

○文部科学省(板東審議官) 資料の5のところに、資料を添付させていただいておりますけれども、大変申しわけないことで、最初にお詫びを申し上げなきゃいけないんですが、先週の末に届けさせていただきましたので、あらかじめお目通していただく時間がなかったのではないかと思っておりますので、ちょっと簡単にその点だけご説明させていただく方がよろしゅうございますでしょうか。

○宮澤座長 どうぞ、はい。

○文部科学省(板東審議官) あるいはもう、今お目通しいただくということの方が……

○宮澤座長 先ほどの例によれば、どうぞ何か……。発言要求があるんじゃないの。

○小西構成員 全部終わってから。

○宮澤座長 はい。そうしますと、内閣府の構成員からの発言を求めるということになりますよね。

○事務局 それでは、今14条の関係でございますけれども、犯罪被害者等からのご要望に対しまして、各省庁から事前にいただいた資料、もう既にお目通しいただいていると思いますが、この中で今後の新たな取組ですとか、あるいは前進させる取組、そして提出いただいたもの、これは別に配布した内閣府資料のとおり取りまとめております。これは、表裏5ページ、3枚紙のもので、本日付の日付で、「第3回犯罪被害者等基本計画検討会 精神的・身体的被害の回復・防止への取組について(各省庁提出に係る施策等とりまとめ)」、こういう資料がお手元にあると思います。  これは、ただいま申しましたように、各省庁から事前にいただいた中で、今後の新たな取組、あるいは前進させる取組を提出していただいたものを別個取りまとめたものでございます。
 この資料の1、基本法第14条関係というところに、5つの論点につきまして、それぞれ各省庁から提出いただいたものを整理しております。
 まず、これらのものにつきましては今後の新たな取組、あるいは前進させる取組ということでございまして、これらについては骨子案に盛り込むことを提案させていただきたいと思います。その上で、そのほかの講ずるべき施策についてご議論いただければというふうに思います。
 なお、この資料の中で下線を付している部分がございます。ここは、各省庁からいただきましたものをもとに、それを敷衍させていただいたり、あるいはより趣旨を明確にさせていただいたりというようなことで、事務局の方で加筆をさせていただいた箇所でございます。その点も含めてご確認をいただければと思います。

○宮澤座長 どうぞ、ご意見を。

○小西構成員 それでは、一番最初の(1)にありますPTSD等の精神被害に関するサービスの点からなんですが、厚労省のご配布いただきました資料の方にもあるし、どこにもたくさん書いてあるんですけれども、PTSDに関する取組について質問すると、常にPTSD対策にかかわる専門家の養成研修が出てまいります。
 ところが、今これがどのくらいのレベルにあるかというと、私も講師として参加しておりますのでよく存じておりますが、役には立っております。要するに、これは主に災害支援に関して、地域保健の観点から入門的なPTSDについて知るという研修のレベルになっておりまして、ところが今回のヒアリングを見てみても、ほぼ全員が言っていることは、PTSDに関して本当に治療できる人をくれということなんですね。
 PTSDの治療に関しては、日本トラウマティック・ストレス学会というのがありますので、恐らく、多分一番専門家が多いところと思いますけれども、そこの理事が大体20名ぐらいいますが、その全員が治療に関しては、患者の数が自分のキャパシティをはるかに超えていて、ほぼお手上げの状態で、ほとんどほかに持っていく場所がないという状況にあります。ですので、この研修では非常に不十分です。
 ここに「医療、福祉関係者に対する啓発をさらに推進する」とありますが、PTSDの治療に関して本当に治療できる専門家、医師を増やすためには、継続的な研修を行うか、あるいは集中研修とスーパービジョンを重ねて行う、私の提案の方に書きましたけれども、そういうようなことが必要になりますし、そういうようなことを実際にしようと思うと、これは何らかの研修センターのようなものを持たない限り、現状では不可能だと思います。私だけの意見でなく、ほかの構成員のお話も聞いていただければわかりますが、PTSDの治療者の不足というのは、今本当に甚だしいんですね。幾ら被害者支援組織ができても、もちろんそういうところは大変役に立っていますが、ではそこからどこに治療を頼めばいいのかというところで現在大きな壁に突き当たっています。この点に関しては、ぜひ今回何とかしていただきたいと、どうしても変えていただきたいというふうに私は思っています。
 例えばそういうところでやっていただきたいことに関しては、もっとほかにもございますが、今回ここのところで議論していただきたいことは、そういう治療者を育てるということと、それからもう一つ、やはりPTSDにかかわる費用ですね。治療について、費用をどうやって負担していくかということについて、保険診療とそれ以外の方式の組合せが何か必要ではないかと私は思っていますけれども、この2点なんです。今申し上げた、治療者をつくってくれというのがまず第1点目。
 それから2番目としては、厚生労働省資料6の1枚目の紙に、ちょうど今の2つが書いてあるんですね。1がPTSDに対する取組で、2の方がPTSD患者の保険診療、治療薬の保険適用となっていますけれども、現在PTSD治療については、ここでは医療保険の適用対象となっていますが、それは薬の治療のときに何とか保険が使えるということだけでありまして、例えばPTSDには、現在アメリカで行われていますエビデンスに基づいた治療の中では、SSRIという薬物と、それから認知行動療法などを中心とする特定の心理療法が有効であるということになっているんですけれども、この2つは、どちらも保険の適用になっておりません。さらに、例えば司法で評価を正確にするためには、PTSDの構造化面接を使えということになっていますが、これも日本では保険の適用になっておりません。実際に例えば患者さんが、SSRIの治療をまず受けたいというときに、PTSDという名前では今受けられないわけですね。もう一つ、それから今度は認知行動療法を受けようと思うと、本当にこれは1回1万円とか2万円とか払える人以外は受けられない。実質そういう人は少ないですから、結局、今治療を受けられている人は、たまたま大学や研究所の中で、私どものような研究者が、ただでもやっていけるような、普通でない治療の形にしか組み込まれないということになっています。これは、本当にゆゆしいことだと思います。そこのところを変えていく必要があるというふうに考えています。

○中島構成員 ただいま小西構成員よりお話があったので、関連して補足と、若干違う視点でお話しさせていただきたいと思います。  厚労省が、既にいろいろな施策をされていることを私どもも十分承知しておりますし、被害者の方も承知しております。しかし、なぜこれだけ被害者から要望が出るかという点について、まずお考えいただきたいと思います。また、それをどのようにお考えになるのかということだと思います。つまり、施策があるのに要望が出るということは、不足しているからだという答えが一番簡単な答えではないかと思うのです。したがって、その不足しているものをどのように補うかというのが、この基本計画検討会の中で検討されるべきであり、また厚労省の方にも積極的にお考えいただきたい点であるかと思います。
 そこで、厚労省の資料の、この6つある資料の一番最初の、保険診療について、これを皆さんにもわかるように少しお話ししたいと思います。PTSDに関する治療について診療費は医療保険の適用の対象になっていることは間違いないことですが。しかし、先ほど小西構成員からお話のありました、PTSDに有効だという治療薬、SSRIはうつ病等に関しては保険の対象になっていますけれども、PTSDという名前では、保険の対象になっていません。したがって、うつ病が合併している患者さんにはSSRIは使えても、もしPTSD単独である、ある意味非常にピュアな犯罪被害者ということになりますが、その方には有効な治療薬は保険適用にならない、場合によっては自費で払うということになってしまします。この矛盾を解決していただきたいというのが要望なのでございます。
 もう一つ、私の資料12をめくっていただいて、支援案として書いてございますところで少し説明をしたいと思います。支援案と書いてあって大きな四角の2番目、PTSDと精神的被害に関する利用、福祉サービスの充実の、下の方の保険における改善ということで、これも小西構成員と同じ意見なのですが、先ほど言った薬に関しての保険適用を認めていただきたいということと、CAPSについてです。これはPTSDを正確に診断するためにはなくてはならないツールでありますが、1時間半ほどかかります。これが現在保険適用になっておりません。PTSDの正確な診断がなされないことが、裁判等においても非常に被害者にとって不利をこうむるものだと考えております。したがって、これが保険適用になれば医療機関で実施が可能になり、それがひいては刑事司法関係で大きな益を与えるものだというふうに考えております。このような有益なツールに関しての保険診療を認めていただきたいということがあります。
 あと、治療効果があると言われています認知行動療法につきましては、1回1時間半から2時間かかります。有効だと思われているものですが、それが12回かかるわけですので、このような時間のかかるものにつきまして、通常の保険点数の範囲内で医療機関がやる気にならないわけです。そうしますと、何らかの形でこれを別個の、やや高めの保険点数につけていただかない限り、実施するというのは一般医療機関ではほぼ不可能だというふうに考えますので、こういった保険医療におけます優遇といったものをお考えいただければと思います。
 それで、今日私の方で新たに追加させていただきました追加資料として、図がついているのがございます。四角がたくさん書いてあるものがございますけれども、ちょっとご覧いただけたらと思うのですが。望むことはたくさんございますけれども、この中で要点だけお話ししたいと思います。こういったPTSDに関する専門家の数が少ないこと、調査研究がなされていないことを解決するための一つの方法としまして、仮の名前として、ナショナル・トラウマティック・ストレスセンター、ナショナルセンター構想というものをぜひしていただきたいと思います。この名前は、PTSDに限定されないという意味です。ここで、被害者の調査、治療、高度医療の開発、研修というものを行うことができれば、今まであがっている問題に対する解決に対して、かなり大きく寄与するものとなるというふうに私は考えております。これがナショナルでなければならない理由として、例えば兵庫県にあります心のケアセンターは、兵庫県以外のことで起きたことに対して責任を負うことはできないし、派遣されることもできないことがあります。全国をカバーするための唯一の方法はナショナルであるということに尽きるわけです。したがって、ナショナルセンターというものをつくっていただきたいということになります。
 そして、これらの下部組織として精神保健福祉センターを挙げてありますが、ここで相談は既になされていると書いてありますけれども、これを実際に運用するためには、精神保健福祉法において、精神保健福祉センターの業務として「犯罪被害者の相談」という一文を入れていただくことによって、これを自分たちの仕事であると認識できます。単になされているということだけではなくて、それをはっきり明示する形で対応していただけることを強く求めるものであります。
 もう一つ、2枚目のページで、茨城県で、私のいたいばらき被害者支援センターがネットワークをつくっていて、様々な工夫をしておりますが、その中の、このネットワークの中で入っていないところが救命救急医療です。犯罪被害者の多くは負傷を負ったり、あるいはご遺族が、救命救急センターにくるものですが、ここではその後の連携がなされていないというのが明らかでございます。
 それに関連して、3枚目ですが、これは私どもの国立精研で災害医療センターの救命救急におきまして、どのような患者さんが入院されているのかということを調査いたしました。ここは常勤の精神科医はおりません。たまたま私ども研究の関係で今1人配置されているのですが、交通外傷、災害等も含めまして心的外傷体験を持った患者さんというのが実に3割います。対人暴力は1.4%と少ないのですが、これだけの被害者の方が救命救急にいて、その後の精神的な処遇ケアについて、連携がなされていないというのは甚だ問題があるかと思いますので、少なくとも三次救急におきまして精神科医療をそこで行えるような体制といったものをつくっていただくということを要望する次第です。

○宮澤座長 山上構成員、何か補足的な発言はありますか。

○山上構成員 PTSDは、犯罪の被害者、特にレイプの被害者あるいは遺族の方々に非常に高率に出てくるものです。これを、やはり一つには、発症をできるだけ防ぐ意味でも、私たちは早期の援助が必要ですし、治療的な援助あるいは性犯罪者の被害者の方々などには、早期にカウンセリングなんかが無料でできるようなシステムが必要だと思いますけれども、ある確率で、必ず重い後遺障害を持つ人たちが出てきますので、そこに対する治療の体制あるいは治療的な援助を提供できる体制が非常に不備であるということは、今お二人が言われたとおり、私たちが被害者支援組織の方から、こういう方をまず各地で相談を受けて、直ちに医者を探すときに大変苦労をするもので、この研修を盛んにやっているというレベルではとても間に合わない。我々が信頼できる、そういう深い傷を負った方たちを紹介できるところというのは、非常に限られたところしかありません。やはり、この問題を考えるのに、やはり教育と研修をしっかりとした形でできるところ、それからエビデンスに基づいた治療をちゃんと確立していくような、しっかりとした施設をやはり幾つかつくっていく必要があるんではないかと、私も感じます。

○宮澤座長 ただいまの発言、何かお答えがあればお答えをしていただけますか。

○矢島構成員代理(厚生労働省) 大変貴重なご意見をありがとうございます。  私どもも精神保健福祉センターですとか、そういうところを活用して、いろいろな相談とかさせていただいています、研修もさせていただいています。私どもは、それをまず今回、この法律ができたということを周知徹底させていただかなければいけないということで、今年の1月19日に、全国のそういう関係部局長会議が厚生労働省でありましたので、そのときの資料の中に、今回、犯罪被害者等基本法が成立したということと、法律の簡単な概要ですけれども、それを各都道府県の部長さん、局長さんあたりに、資料の中でご紹介させていただきまして、保健所ですとか精神保健福祉センターにおける相談支援体制の充実等を含め、犯罪被害者等に対する各種施策の強化、推進を図っていただきたいということを、その資料で、各都道府県にお知らせをさせていただいたところであります。
 ただ、都道府県の方がこの法律について、多分現場も十分承知していない点もあるかと思いますけれども、そういうことで今私ども、この法律ができたということで、現場の精神保健福祉センターですとか保健所ですとか、そういうところの担当者に、まずちゃんとそういうことで自覚というんでしょうか、ご理解いただくところからまず始めさせていただいているところであります。
 それから、研修の話も出ましたけれども、研修の中身につきましても、私ども専門の、まさに研修を担当していただいています先生方のご意見を承りながら、カリキュラム等もいろいろと工夫をさせていただいていますので、本日ご提案がありましたことも含め、私どもの研修の中で、先生方にどういうふうなカリキュラムにしていくのかということも含めて相談をさせていただきたいというふうに思っております。

○厚生労働省(傍聴者) それでは、ご質問ございました医療保険関係につきまして、ご説明申し上げます。  ご要望ございましたCAPSなどの、いわゆる診断評価のための心理テストでございますとか、それから認知行動療法、そういったものについて、これは一部保険にも入っているわけでございますが、そういう取扱いについてでございます。現在、一部のものについては先ほどお話しされましたように、既に保険適用になっているわけでございますけれども、新たな医療技術というものを診療報酬に導入するに当たりましては、一応科学的な根拠に基づいて有効性等の評価というものが必要でございまして、学会などからも希望に基づきまして、私どもの中に医療技術の評価を行います専門的な組織がございます。そちらの方で専門的な見地からの評価を行いまして、具体的な導入に向けての対応をすると。それから同じように、現在の診療報酬点数に入っているものにつきましても、この枠組みの現在の中では十分に対応し切れないというような場合につきましても、同じように先ほどこのくらいの回数で、どれだけのものがあるとこういう成果があるんだというお話がございましたので、そういったものを学会を通じて、私どもの方にご要望いただければ、ちょうど今、実は次の診療報酬改定に関します学会要望の締切が今月末でございますので、ぜひそういった形でご活用いただければというふうに思います。
 それからあとは、医薬品の方でございますが、これは薬事法等の関係もありまして、なかなか保険だけの話にはおさまらないわけでございますが、先ほどお話ありましたけれども、SSRIのうちのパキシルにつきましては、現在我が国におきましても治験が行われているということでございまして、この結果などをもとにいたしまして、薬事法の承認を得られれば、医療保険におきましても迅速に適応対象になるということで、取組がオン・ゴーイングであるということでございます。

○宮澤座長 今のお話を聞いて、何かご発言は。

○大久保構成員 今のお話は、質問をなさった小西構成員と中島構成員の方から、また再度質問の方がよろしいのではないかと思います。

○小西構成員 今、お2人の方からお話をいただきましたが、それぞれについて申し上げたいと思います。一つは、研修を検討していきたいという、その程度の形でいただいたんですけれども、多分現状はわかっていらっしゃらないと思うんですね。今、ちょうど中島構成員の方から茨城県での実践例という紙が出てきましたから、これに基づいて実態をお話ししたいと思うんですけれども、私、実は茨城県で精神科の単科の病院に週1回、臨床をしに行っています。ごく普通の臨床をしに行っています。茨城県は、比較的ほかの都道府県に比べて、警察と医療の連携がうまくいっているところだと思いますがこれで例えば茨城の被害者支援センターが被害者をどこに送ってくるかというと、国立病院に送っても専門家がいなかったりする。このため、私がいるところは、田舎の普通の小さい精神科の単科の病院ですが、県南地域の被害者が週1回しか行っていない私のところへ全部集まってきてしまうような状況があるんですね。もし治療のキャパシティがあればもっと、患者さんが集まるのでしょうが、私が実際にそこで1時間半の療法をやろうと思うと、普通の診療の中で、1日に二、三人診られればいいくらいで、ほかの患者さんも診なくてはいけませんから、そういう状況の中で、お断りしている状況です。また、被害者支援センターだけでなく、児相からも性的虐待の被害者が来るというふうに、すごく集中してくるんですね。
 何でそうなるかというと、国立病院などに本来だったら、そういうPTSDの重い人たちを診てくれる機能というのがあればいいんですけれども、そういうふうになっていないんですよ。私の行っているところは、最寄り駅というのがないようなところで、車で1時間半ぐらいかかってくる被害者の人もいます。でも、そうしででも治したいと思ってこられるのに、時間がなく十分な治療ができないという状況が実際にあるんですね。うまく動いているところでそうであって、そうではないところは、ほぼこの図の線がもうばらばらに切れていて、せっかく警察に行っても、それから支援センターに行っても、その先治療につながらないというのが現実だということを知っていただきたいと思います。どこにもとは言いません、それは現実的ではないと思いますけれども、ぜひ、各都道府県に一つぐらいは、かなり重度のPTSDの人もきちんと受けとめられる医師がいる機関というのは必要だと思います。中島構成員と重なるのでもう出しませんけれども、私も、だから何か国の研修ができるセンターとともに、都道府県に一つ専門拠点のようなものを置いていただきたいというふうに思っていました。例えば国立病院とか自治体病院とか、基幹になるような病院に専門の医師を置けたらよいのになというふうに思っています。それにはかなり時間がかかりますから、専門の医者を一人育てるのは短期研修では無理なんですね。そういう重い人たちに対応するための継続的な、育てるという教育を考えていただきたいと思います。もう少し、ですから前向きにご答弁いただかないと、また同じことになってしまうと思いますので、ちょっとまた考えてください。
 それから、もう一つ、保険診療の方なんですが、現在今でも点がとれるとおっしゃった、多分、通院精神療法のことだと思いますが、通院精神療法は大体15分程度ですよね。15分の療法ではPTSDはとても使えません。認知行動療法、専門の療法を使わない場合でも、大体1時間ぐらいはかかってしまうのが普通で、そうじゃなくやっていくと、やはり非常に二次被害の原因になりやすいですし、診療報酬を請求できることとなっていると書いてありますが、現実にはそうなっていなくて、実際に各地の病院でPTSDを診ている先生は、要求していないけれども、もっと長い時間やっているというのが現状のことをご理解いただきたいと思います。

○大久保構成員 それでは、今、医師のお話が出ましたので、その医師とともに働く、例えば看護職ですとか、あと心理関係の人たちも不足をしているというお話をさせていただきたいと思います。
 私が勤務しております被害者支援センターでは、犯罪被害者の方がいらっしゃいますと、まず医療が必要だとなりますと、やはり先ほど小西構成員からもお話が出ましたように、どこどこの病院ということができませんので、日本トラウマティック・ストレス学会の理事の先生にお願いをしまして、この近くにこういう先生いらっしゃいませんでしょうかということで、個人的な努力によって医師を探して、そこに行っていただくというような形をとっております。ただ、一般的にどこでも行きますと二次被害を大変深く受けます。その二次被害をただ精神科だけではなくて、例えばけがをして受診をした外科ですとか、整形外科の人たちからも被害を受けると、精神的な衝撃がどのような形で出るのかということの理解もされていませんので、もともと問題のある、医師の指示にも従えない、問診をしてもきちんと答えられない、だめな患者というような烙印が押されてしまいがちでして、そこへ受診し続けることが被害者自身にとっても苦痛でできなくなって、治療を中断してしまうということがよくあります。
 この犯罪被害者等基本法の精神は、いつでもどこでも適切な支援が網の目のように受けられるということですが、たまたま運がよければいい先生に出会えて回復できる、それではおかしいと思うんですね。そのためにも、周りでまたその人とともに働く職種の育成も大切だと思います。医師も一朝一夕では育成できないというお話が今ありました。私は、保健師でも社会福祉士でも全部同じだと思います。私は、過去に保健所で保健師として働いているときがありまして、そのときも自分自身の精神保健相談員の資格を取るため、2か月間精神保健福祉センターの方に毎日通って実習にも行ったという記憶があります。犯罪被害者に特化した相談、指導ができるようになるには、そのような形で実習も含めた、きちんとした対応がとられなければ、日本の犯罪被害者への支援というものはなかなか広がっていかないのではないかと思っております。
 それと、日本の被害者支援は話を聞くというところから始まりましたので、精神的なケアでまずお話を聞くというところが、あまりにも強調され過ぎているように感じていますが、その話を聞くといいますのも、犯罪被害といいますのは、ちょっと困っているような問題ではなくて、他人の不法行為によって犯罪被害を突然に受けるものですから、その深さあるいは人に対する信用、信頼感、全く根底から失ってしまっています。そういうときに、きちんと安心をして話ができる専門家を見つけるということは、大変難しいことです。
 これは、ごく最近、都民センターの方で体験した事例なんですけれども、ある大学教授でもあり、カウンセラーである先生のところに行きましたら、真っ先に言われたことは、「とにかく早く事件は忘れなさい。あなた、これだけ大変な目に遭ったんだから、そこから何か得るものがあるはずだ」というようなことを言われるということは、これは不思議なことではないんです。しょっちゅうこういうことが起きて、被害者はだれにもわかってもらえない、そして自分だけがこれだけおかしいのかなということで孤立して、社会との縁も切って家に閉じこもっている、そういう人がたくさんおりますので、医療に期待することは本当にたくさんありますので、今ある制度ではなくて、新しい制度も積極的につくって広げていくという姿勢で、ぜひお願いしたいと思います。犯罪被害者への支援ができれば、私はもういろいろな病気、もう命がないと思えるような病気の人であっても、きちんと対応できる医療関係者を育てることができる、そのように信じておりますので、ぜひよろしくお願いいたします。

○中島構成員 先ほど、医療保険についてお答えいただいて前向きに取り組んでいただけているというお話でしたので、学会等を通して積極的にこちらも要望を述べさせていただきたいと思いますので、それをご検討いただければ幸いかと存じます。
 つけ加えることが2点あります。私の申し上げましたナショナルトラウマセンターについて、この要望が出ているのは私だけではないと思いますが、これについて厚労省のお考えをお伺いしたいということと、先ほど厚労省のできることでつけ加えることを忘れたのですが、卒前教育につきまして徹底していただくことで、授業の中に犯罪被害者に対する機会についての授業を設けることと国家試験にそれを取り入れることがあります。国家試験のあるものについては、国家試験の項目としてそれを取り入れるとすれば、誰でも勉強いたしますので、そのことについてのお考えを厚労省の方にお伺いしたいところです。
 あと文科省の方にお伺いしたいことが1つありますが、先に厚労省の方のお考えを伺いたいです。

○田中構成員代理(厚生労働省) 国立のセンターということですが、極めて大きなお話をいただいたと思います。また、国立のセンター、いろいろ4つぐらい書いてあるんですが、そのうちの一つは先生のいらっしゃる精神・神経センターですので、そちらの方でできるところはやるというのがいいのではないかなと思っております。もう1点は何……

○中島構成員 国家試験。

○田中構成員代理(厚生労働省) 国家試験、医師の国家試験……

○中島構成員 医師だけではなく看護師もすべて、社会福祉士も厚生労働省管轄の国家試験ですね。

○厚生労働省(傍聴者) 看護師につきましてですけれども、確かに不十分だというお声があるというのは、担当課の方でも認識はしております。来年、ちょうどまず国家試験直接ではございませんけれども、養成上の方のカリキュラムについては、来年見直しに向けて検討する時期に来ておりますので、その中でも検討を進めていくというのが一つと、さらにその専門看護師の分野ですね、そういったものについては関係する学会でありますとか団体でありますとか、そういったところに働きかけを進めていきたいと、そのようなことでございます。

○小西構成員 この問題については言いたいことがたくさんあるので、今の現状というのは、本当にもう自分が過労で死にそうですので、どうしてもたくさんある。私の様々な意見については、資料11の2と3のところをご覧いただけるとありがたいと思いますが、今出ていないことについて、ちょっと幾つか申し上げますと、PTSDの認知行動療法が、エビデンスがあれば保険になるかもと今おっしゃっていただいたので、ぜひそれは要望していきたいと思いますが、実際にこれが日本で本当に普及して、日本でエビデンスのある研究が出せるようになるには、かなり時間がかかるというふうに私は思っています。それでも、被害者の方の、今本当に待ったなしの状況であったり、それからさっき二、三人自分でしか診られないと言いましたけれども、経済的にも病院にも迷惑をかける状態でしかできていない。引き合っていない。
 それから、何も認知行動療法だけではなくて、多くの被害者の方の求めているのは、今自分がどういう症状があって、これからどうなっていって、大体どういう治療を受ければいいのかということに関する専門的なアドバイスです。これは、連続じゃなくても1回でもいいんですけれども、それをきちんと受けることというのも非常に望まれているわけですね。その中に、先ほど大久保構成員が言われたような、例えば司法に関するアドバイスなんかも一緒に入ってくると、多分一番望ましいと思われていると思います。ですから、少し医療だけにかかわらないカウンセリングでの、そういうきちんとしたアセスメントなんかも必要としている人が多いわけです。そういうことをいろいろ考えてみますと、これは私見なんですけれども、保険だけではちょっと無理なのではないか。そうだとしたら、例えばそういうときのアセスメントとアドバイスなんかも含めて、カウンセリングなり相談なりの何か無料のチケットを発行していただくとか、これまた先ほど経済的支援の話と重なってきてしまいますけれども、そういうことが必要ではないかというふうに私は思っています。
 3ページのところにずっと最初から書いてあるんですが、2ページの下が専門機関でアドバイスが可能な専門家の養成ですね。資料11の3ページのところで、「イ」がCAPSの保険診療組入れ、これはお話ししました。次が、治療薬の保険診療の組入れですが、その次に一定の条件を満たす専門家の心理治療について、チケットを配布するとか、あるいは一定の条件を満たす専門家の精神的被害についての相談、こちらの方が少し広いですけれども、カウンセリングについてチケットを給付するとか、こういう形がないと、今のようにただ志のある者がただでやるという形では、これはもう絶対広がりませんので、これをお願いしたいというふうに思います。
 そのほか、実は臨床心理士、心理の専門の専門家も、この分野には大きくかかわっていますけれども、現状の「心のケア」と言われるレベルは、やはりコミュニティー全般の保健というところからまだ脱していない。しかし、中には少数ながら専門診療、例えば認知行動療法などの専門診療をされている方もいますから、そのことを考えても、医療だけでないこういう給付も多少考えられないと、実際に被害者が治療に出会うということが非常に難しいというふうに考えております。
 ほかにもたくさんありますけれども、あまり私ばかりしゃべっていてもあれですから、以上です。

○宮澤座長 文部科学省で何かご発言、ご希望があればと思いますが。

○中島構成員 私の方から質問したいんですけれども……

○文部科学省(板東審議官) 今、ご質問があるというお話でしたけれども。

○中島構成員 文科省の方への質問といいますか、これはご検討いただきたいという方がいいのかもしれません。文科省の資料の最初の提言に、少年被害者に対する医療サービスの提供ということで、要望として、小・中・高校に専門カウンセラーの常置が必要とあることに関してです。現在このように配置されているというお話があったのですが、この「常置」という言葉の解釈の問題もあるかと思いますが、非常勤職員で週に1日で1年契約、この体制では学校等で犯罪が発生したり交通事故の被害者が発生したとき、対応するのが難しいかと思います。私どもの考える「常置」というのは、職員として毎日いるカウンセラーが必要だということですが、これについて文科省で何かご検討ございますでしょうか。

○文部科学省(板東審議官) 今、構成員からお話のように、今配置をして、特に中学校は全校配置を目指しておりますスクールカウンセラー、非常勤ということがございますけれども、おっしゃいますように、ケースによりましては、学校によりましては常勤の職員が必要ではないかというご要望もあるところでございまして、実は教職員の定数改善と申しますか、それぞれの学校でどういう教職員を備えていくべきかという定数改善計画というのを文部科学省はつくっているわけでございますけれども、それが来年度以降のものをどういうふうに考えていくか。それから、これはちょっと三位一体の議論になっておりますけれども、義務教育費の国庫負担制度なんかがカバーしております職員の範囲というものをどういうふうに考えていくか。それから弾力的な運用をどう考えていくか。そのあたりの話について、今検討をしているところでございますので、ご意見としては、例えばそういった学校が備えるべきスタッフの中に、いろいろな専門スタッフ、おっしゃいますような臨床心理関係の専門スタッフを常勤で置けるような、そういった弾力化を図るべきじゃないかということもございますので、そういった点も検討の方に入ってくるということでございます。
 ただ、今ご指摘のように、なかなか専門的なスタッフとして常置できるものの数というのがどれぐらいかという問題がございますので、全部が常置というのは難しい話だろうと思いますけれども、学校あるいは子供の状況によって、専任の常駐スタッフを配置することも可能のような形に持っていくべきじゃないかと、そういった検討をさせていただくことになっております。

○大久保構成員 一つよろしいでしょうか、文科省の方に。
 こちらの資料を見てみますと、平成17年度には臨床心理分野の専門職大学院が開設されたとなっておりますけれども、実は臨床心理士さんの今までのカリキュラムの中に地域保健がないと思うんですね。そうしますと、人といいますのは犯罪被害者であっても、社会で生活をしており、そこの視点の欠けた方が被害者支援にかかわりますと、かえって傷つくということもよくあることですので、また資質向上という意味からも、カリキュラムをもう一度見直す、そして再度しっかりとした教育をしていただくというようなことも、ぜひお考えになっていただければと思います。

○岡村構成員 文科省にお尋ねしますけれども、加害少年の場合は少年院に入りまして、そこでそれなりの教育を受けるわけですね。ところが被害少年や、それからそのきょうだい、その子たちはもうショックで、不登校になったり寝込んだり、家にこもったりする子がいっぱいいるわけです。その子たちは加害少年のような教育は受けない。全部それは家族が背負い込んでしまっている。だから、そういう被害少年に対して学校が、教師が行って授業をするとか、あるいはカウンセラーを派遣するとか、そういう手当をしていただきたいなと思うんです。というのは、被害者の話を聞きますと、被害少年だけでなくて、そのきょうだいも同じようなショックを受けて、みんな学校に行かなくなる、そういう子がいっぱいいるんですね。その辺考えていただきたいと思います。

○文部科学省(板東審議官) 最初の臨床心理士が、大学におけるカリキュラムの問題もございますけれども、おっしゃいますようないろいろな点については、臨床心理士については資格認定は民間資格という形になっておりますけれども、いろいろな形で、例えば今ご議論としては少し国家資格的なものを考えたらどうかというご議論もあるようでございますし、カリキュラム自体のあり方については、常に協会の方でも見直しをされているということでございますので、そのあたりにつきましては、またご趣旨をお伝えしながら検討をお願いしたいと思っております。
 それから、大学院教育自体につきましても、各大学、大学院がそれぞれ特色を発揮してという部分は当然あるわけでございますけれども、必要な部分、こういった社会的なニーズに応じて、どのような大学院が、あるいは大学の学部が期待にこたえた努力をしていけるか、このあたりについては文部科学省としても、逐一大学の方にああいうふうな形で情報提供したり呼びかけていきたいというふうに思っているところでございます。
 それから、被害者の児童あるいは家族に対するサポートでございますけれども、これもなかなか一律にということにはなかなか踏みにくいかと思いますが、今、不登校の子ども一般につきましても、もう少しきめ細かくフォローしていこうというような形で、学校なりあるいはサポートをしていく地域の方々あるいは専門家も含めて、チームをつくりながらいろいろな形でサポートをさせていただくと、これは加害児童なんかに対しても、そういったサポートをしていくわけでございますけれども、被害者に対しても、よりきめ細かな、そういった地域における体制をつくって対応させて個々に工夫をさせていただいているかと思いますし、それから養護教諭とか、あるいは臨床心理士などのそういったところの配置につきましても、文部科学省としてもできる限り支援をしていきたいと思っておりますので、例えば養護教諭などが、犯罪被害などが起きた学校などで加配という形でプラスアルファで配置をされ、今かなりきめ細かい対応がされているというケースもございますので、そういう点も考えたいと思います。
 今お話のように、学習支援ということも問題になろうかと思いますので、それにつきましても個々にどういった対応を図っていくかという事例の収集、提供なども積極的に図っていくべきではないかというふうに考えております。ただ、かなり個別のケース、いろいろなケースがあろうかと思いますので、ちょっと一律にこういう形でというふうにはなかなか対応しにくいのではないかと思っております。

○山上構成員 今まで既に意見が出て、重なる部分は省きますが、資料13として書いてあるところで、重ならない部分だけちょっと述べさせていただきたいんですが、厚労省でもPTSD等に関する医療・福祉サービスの中で、精神保健福祉センターや保健所でスタッフを養成していっている、研修をさせていくことがございますが、実際に支援にかかわって、どこか保健所にとかセンターにといっても、そこの窓口となれるだけの人がまだいないんですね。できれば、特定の人が被害者の方にきちっと対応できる、専門的なトレイニングを受けていく形を1人、窓口として精神保健センターなどに置いていただければ、そういうことを非常に依頼しやいすし、被害者の方も二次的な被害を受けずに済むだろうという感じを持ちます。
 それから、2番目の後遺障害に関する医療サービスに関してですけれども、重い後遺障害を持って、例えば植物状態などでもう入院が長引くときには、被害者遺族の人たちがどんどん、長く長期化するときには移る病院を探さなきゃいけないとか、こういう悲惨な状況があって、またようやく見つけた病院では、かなり個室のお金を別に払わなきゃいけない、そういう長期にわたる医療を考えれば、いずれ行き詰まることが見えるようなところがあるものですから、そういった方たちに対する、何かもう少し継続的な援助を出してほしいということ。それから同じく植物状態になったときに、いつも介護で家族が、親が付き添っていて、なかなか外にも出られないというような状況もしばしばありますので、そういうところでのいろいろなサービスができるとよいと思っております。
 それから、そのほか医療・福祉サービスのところで、やはり犯罪の被害者が医療機関で、先ほどちょっとありましたけれども、産婦人科の病院とか、あるいは救急の病院などで二次被害を負うことはしばしばありますので、やはり医師あるいは医療関係者の教育をしっかりとしていただければと思います。
 また、最後に一言、地下鉄サリン事件のときのような、ああいう大きな中毒などによる障害が大規模に発生したような場合というのは、新型の感染症なんかが発生したときの厚労省の素早い動きとは違って、これは犯罪被害者ということの違いがあるんでしょうけれども、大規模のものでもなかなか対応が遅いように感じられます。また、それをしかし、多数の方が健康被害を一斉に受けて、しかも将来どうなっていくか、後遺症のこととかいろいろと思っているわけですから、ある規模のものが起きたときには、厚労省としてもそういう緊急のきちっと対策をとってフォローするという、そういう体制をつくっていただければというふうに思います。

○大久保構成員 一つ、厚労省の方にぜひお願いしたいんですけれども、先ほど通達を出したとおっしゃっていましたけれども、保健所は本当に忙しいところですので、通達が出てきてもなかなか、気持ちがあっても時間がないというところがあるのもまた実情だと思うんですね。そこで一つ、厚生労働省さんにも多分いいかと思いますことを一つ提案させていただきますと、運営報告の精神保健の中に、犯罪ですとか事故、事件という項目を再載として載せるということは無理なことでしょうか。もし、それがありますと、それをゼロとして毎年厚生省に報告するということは、ちょっと恥だと考えるのが一般的ですので、多分効果が上がるのではないかと思いますが、いかがでしょう。

○田中構成員代理(厚生労働省) 幾つか初めていただく要望もございまして、それについて今ここでお答えできる状況にございませんが、まことに申しわけございません。例えば今の保健所の関係の報告でありますとか、サリンの関係の対応でありますとか、もちろん過去サリン事件等を対応していた人の調査などをしたことがあるんですが、今後体制をどうするかでありますが、そういったことについては、今ちょっとお答えする用意がございません。
 また、今までご要望いただいた中で、医療機関外のカウンセリングなどにつきましては、これは医療保険制度の適用にならないんですね。とすると、ではそういったサービスを利用したときに、誰が負担して、どういうレベルまで経済的支援を行うかということであろうと思いますので、今度は推進会議のもとに設置される検討会でどういったものがいいのか、例えば生活支援サービスというようなご要望がありました。そういうものは幅広く検討していただくのがいいのではないかなと思っております。

○小西構成員 多分これは、そちらの検討会に回さないとだめなことであろうとは思っております。ただ、保険と2本立てということを確認してもらいたいんです。というのは、必ずしも警察に行く人だけが被害者じゃないということはあるわけで、少なくともヘルスの観点から言えば、被害を受けて具合が悪い人については何らかの対策が必要なわけですね。そういうことを考えると、犯罪被害者等給付金だけで考えていこうとか、あるいは損害賠償だけで考えていこうというのでは無理があるということは確認していただきたいと私は思います。
 それから、さっき国立のセンターは非常に大がかりな話だと言われましたけれども、どう考えても一つ国で持っていないと、多分その治療も難しい。それからもう一つ今日は言えないかもしれないけれども、例えば子どもの犯罪に関して、司法面接という専門の技術があるわけですね。司法面接をすることで、それこそさっきワンストップとおっしゃいましたが、ワンストップで子どもの情報を全部とって、検察も警察も使うことができ、それから医療の方でも使えるというような機能とか、それからきょう私、実は、今PTSDの被害者の鑑定でちょっと行かなくちゃいけなくなっているんですけれども、司法にはPTSDというか、やはりかかわりが非常に深いんですが、それをやってもいいと思っている専門家がほとんどいません。こういう司法における、司法精神医学の被害者部門と言っていいのかもしれませんけれども、そういう技術も実はこの分野には非常に必要ですが、これはとても各県、個々に対応してとか言えるような形のものではないと思います。今の子どもの件、それから司法の件、そういうことも含めても、ぜひひとつ、国で研修したり調査したりするものをつくっていただかないと、きっと進まないんだろうというふうに考えています。

○中島構成員 今の件についてよろしいでしょうか。ただいまの件で、先ほど厚労省の方から、私どものところがあるではないかというお話がございましたけれども、私どもの方でやらないということではありません。国立精神・神経センターの成人精神保健部においては、ペルー人質事件以来1人で対応してまいりました。その後一、二年の間に室長が2人増えましたけれども、私も派遣されましたが、中越地震、尼崎列車事故への派遣を行っております。これしか人はおりません。このような人員配置の今の状態では十分にできないので、厚生労働省がここがあるじゃないかとおっしゃるのであれば、この中にナショナルセンターを推進するための予算配分、人員配置について前向きなご検討をいただけるというようなご発言があると、喜ばしいと存じますが、いかがでしょう。

○田中構成員代理(厚生労働省) ナショナルセンターというのは、とても大きなお話ですから、ここで前向きなというわけにはいきません。ただ、構成員の方で、これからナショナルセンターとしての成人精神保健部をどう発展させていくかという、いろいろお考えがあると思いますので、ここら辺は精神保健研究所長様と相談されて、例えば組織要望されるなりしていただければと思います。ここで、いやこれだけ頑張りますとか、そういうことはとても申し上げられない。

○中島構成員 では、確認ですが、要望が出た場合にご検討いただけるというご発言というふうに思えばよろしいでしょうか。

○田中構成員代理(厚生労働省) ご要望といいますか、そういう組織要求であれば、当然それぞれについて検討されると思っております。

○宮澤座長 時間ばかりたつので大変あれなんですけれども、この辺で、今までの議論をまとめてはどうか。

○事務局 ではよろしいでしょうか。この第14条の関係について、まとめの案として提案をさせていただきたいと思いますが、先ほどの繰り返しになりますけれども、まずお手元の3枚物の「☆」の項目がたくさん並んでおります資料がございますが、これをご覧いただきたいと思います。これは先ほど申し上げましたように、各省庁から新たな取組ですとか、あるいは前向きの取組について、前もって提出されたものを事務局で取りまとめたものでございます。ただいまご議論に出ておりましたような中身などもございまして、これらはご異論なければ、このとおり、まとめとさせていただきたいと思っております。
 それから、この中に含まれていないもので、いろいろ犯罪被害者等の皆さんから、あるいは構成員の皆様から、事前にヒアリングあるいは資料提出という形でご意見をいただいております。そして、さらにただいま14条関係についてご議論をいただいた、いろいろな点がございます。それらを踏まえまして、次のような形で取りまとめとしてはいかがかということについて申し上げたいと思います。5つの項目に関しまして10点ございます。
 まず最初の14条関係(1)のPTSD等精神的被害に関する医療・福祉サービスの充実という論点についてでございますが、1点目といたしましては、PTSDの精神的被害の診断治療あるいは鑑定をするハイレベルの専門家、医療機関の不足という指摘がございました。これらを踏まえて、「厚生労働省において、犯罪被害者等のPTSD等の精神的被害について、犯罪被害者等に特有の対応を要する面があることを踏まえ、診断、治療、鑑定等を行う専門家及び施設が不足していることを前提に、実態を把握し、その上で必要とされる専門家の養成及び組織、施設の増強に資する施策を検討し、1年以内を目途に結論を出し必要な施策を実施する」というのが1点目でございます。
 2点目は、医師について学生のときから犯罪被害者等の精神的ケアについて教えてほしいというご要望がございます。これらを踏まえまして、「文部科学省において、厚生労働省の協力を得て、犯罪被害者等のPTSD等の精神的被害について、医療従事者になろうとする者の大学その他教育課程の中で、必要な知識、技能を習得させるための施策を検討し、1年以内を目途に結論を出し、当該施策を実施する」というのが2点目でございます。
 3点目は、身体医療に連動した精神的ケアの重要性についてのご指摘がございます。これを踏まえまして、「厚生労働省において、身体医療に連動した精神的ケアのための体制整備に資する施策を検討し、1年以内を目途に結論を出し当該施策を実施する」、これが3点目でございます。
 4点目は、PTSDにつきまして、治療薬への保険の適用あるいは保険診療の適用を求めるご要望、ご指摘がございました。これを踏まえまして、「厚生労働省において、PTSDに対する治療について、医療保険適用の範囲の拡大について検討し、1年以内を目途に結論を出し必要な施策を実施する」、これが4点目でございます。
 2番目の論点、後遺障害に関する医療・福祉サービスの充実の関係でございますが、これにつきましては、重度の障害を負ったことによる医療、介護等の負担の訴え、さらにそれに加えた捜査、刑事、民事の裁判等の負担ということについての声があります。そういったことに対する支援、ご要望を踏まえまして、「推進会議のもとに設置される犯罪被害者等に対する経済的支援を手厚くするための制度のあるべき姿及び財源に関する検討のための会議において、特に犯罪等の被害による後遺障害者に対する経済的支援及び福祉サービスのあり方について、十分に検討する」、これが後遺障害に関する医療・福祉サービスの充実の関係でございます。
 次に、3番目の論点、女性被害者・少年被害者に対する医療・福祉サービスの充実の関係で3点ございます。1つは、児童精神科医の増員あるいは少年に関する専門的な心理カウンセラー、臨床心理士、ソーシャルワーカー、保育士、児童福祉士の養成を求めるご要望が寄せられております。そういったご要望を踏まえまして、「厚生労働省において、少年被害者の被害について、犯罪被害者等に特有の対応を要する面があることを踏まえ、治療または保護を行う専門家が不足し、そのための体制及び施設が十分ではないことを前提に、現状に関する必要な調査を行い、その上で少年被害者が利用しやすく地域的な隔たりなく十分な治療、配慮を受けられ、また十分な期間保護が受けられるようにするため、児童精神科医等専門家の養成、その適正な配置、その他の体制整備及び施設の増強に資する施策を検討し、1年以内を目途に結論を出し、当該施策を実施する」、これが1点目でございます。
 女性被害者、少年被害者の関係で第2点目でございますが、これは捜査終了後も少年被害者の心理等に関しまして、親の相談に乗れる専門家を捜査機関が紹介するべきだというご意見が寄せられております。これを踏まえまして、「厚生労働省において、少年被害者の被害に対する相談、治療等を行う専門家、医療施設、その他の施設等を把握し、警察とも連携して、その周知に努める。」
 それから、女性被害者、少年被害者の関係の3点目でございますが、これは強姦被害者のための24時間対応の専門医療機関の設置ですとか、あるいは地域に2,3の産婦人科医を協力病院に指定する制度などを求めるご要望が寄せられております。こういったご要望を踏まえまして、「厚生労働省において、性暴力被害者について特有の対応を要する面があることを踏まえ、実態を把握し、その上で性暴力被害者が利用しやすく、地域的な隔たりなく、十分な治療、配慮等を受けることができるような医療体制の整備に資する施策を検討し、1年以内を目途に結論を出し当該施策を実施する」、以上が3番目の論点の女性被害者・少年被害者に対する医療・福祉サービスの充実でございます。
 次に、4番目の論点、犯罪被害者等の支援に精通した心理職・精神科医・法律家等の養成、これについては1点でございます。これは、裁判に頼るだけの科学的な検証や診断書の作成ができる医療関係者の増加の要望が寄せられております。先ほどもご議論に出たところでございますが、これらのご要望、ご指摘を踏まえまして、「厚生労働省において、警察庁及び法務省の協力を得て、現状及び諸外国の状況に関する必要な調査を行い、厚生労働省及び文部科学省において犯罪の実情及び刑事手法に精通し、犯罪被害者の置かれた状況を踏まえた支援、捜査、裁判を見通したケア、検査、診断書の作成等を行うことのできる医療従事者、福祉関係者を養成するための施策を検討し、1年以内を目途に結論を出し当該施策を実施する」ということでございます。
 最後、5番目の論点、その他医療・福祉サービスの充実については1点でございます。これは、個々の医療機関、特に基幹となる医療機関についてはPRが必要であり、いざというときに窓口になるところを周知しておく必要が、ただいまのご議論でもございました。こういうご要望を踏まえまして、「厚生労働省において、犯罪被害者等が利用しやすいように医療機関の情報を周知するとともに、関係機関において当該情報を共有し、適時適切に犯罪被害者等に提供する」、以上でございます。

○岡村構成員 時間の関係で申し上げませんでしたが、被害者の家族が困っているのは、被害者が後遺症が確定したために、もう体が動かなくても家に帰されてしまう、病院に置いてくれない、家に人手が足りない、こういう人たちがかなり多くいるんです。そういう人たちを病院に入れてあげるような、そういう施策が足りないんですよ。それは、私たちの意見書には書いてありますけれども。これは深刻な問題になっているんですよ。それを追加していただければと思うんですよ。

○事務局 今の植物状態なり症状が固定したといって、転院を迫られるというようなことでしょうか。

○大久保構成員 それはもう、ほとんど数か月過ぎますと、そのように迫られます。家族は犯罪被害に遭って自分たちの生活も立ち直っていないのに、追い出されるような形で、病院を探さなければいけないということが現状としてあります。

○事務局 これにつきましては、先ほど厚労省の方から、この「確認事項について」というペーパーが出ておりますけれども、この最初に、今ご指摘のご要望に対する厚労省の考え方が出ております。

○岡村構成員 大体、保険点数の関係で、3か月たったらもう病院を出されることが多いんですね。

○田中構成員代理(厚生労働省)  病院、いろいろそれぞれ機能がありまして、急性期にいろいろスタッフを用意して、ぱっとやる機能もあれば、それで手術などが終わってから症状が落ち着いて、その後では療養すると、家に帰って、そういう機能もあって、それは入院、医療機関によって特徴がそれぞれあるものですから、そこは最初の急性期の治療が終わったら、やはりそれなりの、また別なところに移っていただくというのは合理的なのではないかなと思っています。そこら辺のわずらわしさとか大変さというのは、非常にあるのではないかなと思うんですけれども、一方で医療をし、リソースを使って効率的に進めるためには、これはやむを得ないことなんだと思っていますので、何とかご了解いただけないかなと思っているところでございます。

○岡村構成員 それはわかるんですが、それでは、次に引き受けてくれる病院を紹介してくれればいいんですけれども、これはまた家族が探さなきゃいけないけれども、なかなか引き受けてくれる病院がないんですよね、現実問題として。それが非常に困っている。

○厚生労働省(傍聴者) 非常に大変お悩みになられているんだと思います。こういう声は、犯罪被害者の方々に限らず結構多うございまして、私ども今、いろいろ医療提供体制の観点でいろいろ考えてはおります。その中では、ちょっと今日も、先ほど1ページ目にちょっと抽象的でわかりづらいかもしれませんが、書かせていただいたのは、医療機関の間の連携でありますとか、あるいはさらに福祉サービスに移行していただく場合には、適切な福祉サービスへのつなぎですね、そういったことが進んでいくような法改正整備、そういったことを進めていこうということで今考えておるところでございます。また、犯罪被害者に特化して、その連携がということではございませんけれども、一般的な連携をどんどん進めていこうと、こういうことで今考えているところでございます。

○岡村構成員 それは、骨子の中には入れていただけませんか。

○事務局 よろしいでしょうか。ではご提案ですけれども、ご指摘のような植物状態になって症状が固定したということで転院を迫られている、そういう実態について、厚生労働省の方で調査をしていただいて、その調査に基づいて必要な施策について、1年以内を目途に検討していただいて、その必要な施策についての実施をしていただくというようなことが、一つ案として考えられるのではないかと思います。

○岡村構成員 必ずしも、植物状態ではなく、一部動くとか、意識ははっきりしているけれども体は動かないと、こういう人たちがいるんですよね。だから、それは植物状態とはちょっと違うんですが、同じように困っているんです。植物状態と私申し上げましたけれども、それも意識ははっきりして、体が自由にならないとという意味です。

○中島構成員 これは言葉のこともあると思いますが、犯罪被害等によって長期療養するための療養型の病院が少ないということだと思います。ですから、長期療養を必要とする被害者に対する施設の確保等について検討していただけるというような形だったらどうかと思いますが。

○厚生労働省(傍聴者) 一般論として申し上げれば、確かに今、医療機能の分化ということを進めております。急性期の方は急性期、そこを比較的入院期間が短く退院していただいて、まださらに療養する長期療養が必要な方であれば、長期療養の別の方に移っていただくと、さらには療養型の施設を充実していきましょうと、そういうことは一般的な方向としては私どもも一般的なこととして考えておりますので、そのような対応の枠組みの中でということであれば、それはしていくことかと思いますが。

○事務局 それでは、ちょっと文言の整理をいたしました上で、骨子案のお示しをする際に長期療養の実態というものを厚生労働省の方で調査をしていただきまして、そしてその調査に基づいて必要な施策があるのかどうか、検討していただいて、1年以内にというような方向で取りまとめて骨子案としてお示しをしたいというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

○宮澤座長 では、そのようにさせていただきます。
 特にご意見がなければ次の15条の関係に移りますが、健康上の理由で5分。

○宮澤座長 特にご意見がなければ次の15条関係に移ります。第15条関係、安全の確保について事務局から説明をお願いいたします。

○事務局 基本法第15条関係、安全の確保でございますけれども、現状認識、犯罪被害者等の要望に係る施策につきましては、お手元の内閣府の資料の11ページ以下でございます。それから、ヒアリング等で寄せられた要望につきましては13ページ以下でございます。

○宮澤座長 それでは、関係省庁にご説明をお願いします。先ほどと同じ要領でてきぱきと進めたいと思いますので、ご協力ください。まず、警察庁ですかね。

○片桐構成員(警察庁) 警察庁の15条の関係は資料2というのがございまして、その中に15条関係は記載をしてございます。1枚ちょっとになっております。お読みいただきたいと思いますが、特に補足はございませんが、1点だけ匿名報道の発表の話だけ若干補足いたしますと、我々の本音の気持ちとしては、できるだけ被害者のご要望に沿って、被害者の方が匿名を希望されるのであれば、私どもとしては発表はしないという方向でやりたいという気持ちは大変強く持っておりますし、現にそういうふうな匿名発表をしたことは多々あるんですけれども、そのたびごとにマスコミの方から権力のチェックができない、または知る権利に反するということでもって抗議を受けて、そこでいろいろやりとりをしながら、ある場合には我々はそういった申し出があってもそれを拒否する、ある場合には、マスコミの方のご要求に応じてそれを発表をするというようなケース・バイ・ケースで大変苦悩をしている状況でございますので、その点ご理解をいただきたいと思います。あとは記載のとおりでございます。

○宮澤座長 ありがとうございました。次は法務省ですね。

○河村構成員(法務省) 先ほど15条の関係もあわせた形でご留意いただきたいということを申し上げたところでございますが、資料4で提出させていただいたとおりでございます。ただ、本日配布されました各省庁提出に係る施策等の取りまとめという中で、基本法第15条関係(1)、(2)の中で「1年以内を目途に結論を出し」云々とございます。これにつきましては、先ほど相応の期間が必要になるということを申し上げたのでございますけれども、検討ということにつきましては、目途として1年以内ということは可能かなという、努力できるかと思われるのでございますが、その際立法措置が必要ということになりますと、これは実施まででこの1年以内が入っておりますと、これは非常に困難と言わざるを得ないと考えております。
 それから、あとこれは表現ぶりだけの問題かもしれませんですが、(2)の1つ目の「☆」のところでございますが、最初に証人等の住所等が関係者に知られることがないよう求める制度、これは法律上の制度でございます。ところが後段にございますのは、それと並ぶようなものではございません。その意味では、制度ではないということと、もう一つが運用するものという表現でまいりますと、運用していただくのは、実は私どもの職員だけではございませんで、裁判所でございましたり、弁護士の方もいらっしゃるものですから、法務省において意識向上と言われましても、この表現でありますとちょっと誤解を与えるかもしれないという、たとえて申しますと、ほかのところでは検察官等ということで、法務省でなし得る内部のさまざまな施策ということがございますので、研修等を通じたその辺との整合性をご考慮いただければと思います。

○宮澤座長 ありがとうございました。そうすると、今度は厚生労働省ですね。

○田中構成員代理(厚生労働省) 15条関係につきましては、シェルターがございまして、先ほど14条関係でも申し上げました婦人相談所、児童相談所のそういう施策をしています。また、今虐待を受けた子ども、非行児童の保護処理が問題になっておりますので、その改善を実施するということを掲げさせていただいております。以上でございます。

○宮澤座長 ありがとうございました。文部科学省ですかね。

○文部科学省(板東審議官) お配りしております資料の追加で何か申し上げるべき点は今はございませんけれども、またご質問、ご意見にお答えをさせていただきたいと思います。

○下河内構成員代理(総務省) ご要望いただいた項目の中に住民基本台帳の閲覧制限という項目がございまして、本日提出の資料3に総務省関係の資料をつけさせていただいております。特につけ加えることもないわけでございますが、基本的にはドメスティック・バイオレンスとかストーカー行為などの被害者保護のための住民基本台帳事務における閲覧の制限といったことにつきまして、記載させていただいておりますように、16年7月1日から統一的にこういった支援措置を講じさせていただいているわけでございますけれども、ご要望の中にございましたように、警察等の意見を聞いて、その必要性を確認して、不当な目的に利用されることを防止する支援措置を講じているわけでございますけれども、必ずしも私どもは十分な措置であるというふうには考えていないところでございます。
 それで、資料3の3ページをごらんいただきますと、住民基本台帳の閲覧制度等のあり方に関するそもそものあり方について検討を始めたところでございまして、幅広くこういった閲覧制度が住民基本台帳で利用されているわけでございますけれども、社会経済情勢とか個人情報保護に関する意識の変化から、見直しを求める意見が寄せられておりますし、また閲覧制度を悪用したと考えられる刑事事件も発生したわけでございます。この17年5月から始めた検討会でございますけれども、今年の秋までに何とか結論をまとめたいというふうに考えているところでございます。
 それで、それまで何もやらないのかということでございますけれども、閲覧等の請求事由の厳格な審査を行いましたり、請求者をきちっと確認をすると、こういった徹底を行うように通知を地方公共団体に出させていただいておりまして、できるだけ窓口でそういったチェックを十分に行っていただくような対応を今お願いをしているところでございます。
 ちょっと1つだけお願いなのでございますけれども、内閣府が今日提出されました3枚紙のペーパーで第15条関係のところに、私どもは一番後ろのところに4ページのちょうど真ん中あたりに内閣府が出されましたページがございまして、3のちょっと1つ上のところに「☆」がついてございまして、「総務省において、住民基本台帳の閲覧等については、「住民基本台帳の閲覧制度等のあり方に関する検討会」において」、の次のところなのでございますが、「犯罪被害者等の保護の観点から」というふうに書いてあるわけでございますけれども、必ずしも住民基本台帳につきましては、これは保護の観点からだけ行うものではありませんで、個人情報保護ということで検討させていただいておりますので、できればここは「犯罪被害者を含めた個人情報保護の観点から十分な検討を行い」という形で、そういった形にさせていただくというふうに思っておりますので、どうぞぜひご審議いただければというふうに考えているところでございます。

○宮澤座長 ありがとうございました。それでは、内閣府の構成員からお願いします。

○事務局 それでは、第15条関係につきまして、今ご説明いただいたわけですけれども、第14条のときと同じように、各省庁から事前に犯罪被害者等からの要望に関して、各省庁から事前にいただいた中で、今後の新たな取組、あるいは前進させる取組を提出していただいたものにつきましては、ただいまご覧いただきました3枚紙の2.の第15条関係のところで整理をさせていただきました。これらについては骨子案に盛り込むことを提案させていただきたいと思います。下線を引いた部分は事務局で加筆させていただいたものでございます。
 なお、先ほど法務省の方からご指摘がありましたが、3ページの一番上の「1年以内を目途」にというのは、大きな法改正等の関係もあり、難しいという点でございますが、これは例えば2年以内の結論、2年以内を目途に結論を出すということでいいのかどうかというあたりも後ほどお聞かせいただければと思います。
 それから、先に全部申し上げたいと思いますが、(2)の最初の「☆」のところで、運用するものというのが法務省関係者以外の関係者にも及ぶというご懸念がありますので、ここはそれでは例えば「検察官等」というようなことを例として挙げられましたが、そういう法務省関係者ということにきちっとおさまるような表現ぶりであればいいのかどうかということもお聞かせいただきたいと思います。
 それから、総務省の方から、4ページの15条関係、一番最後の「☆」のところで、「犯罪被害者等を含めた個人情報の保護の観点から」という修正意見がございましたが、それを前提にご確認いただければというふうに思います。

○宮澤座長 ありがとうございました。何かご意見ございませんか。

○岡村構成員 出所者のお礼参りというのを被害者は本当におそれているんですね。仮出所、仮出獄の場合は保護観察所が管理して、住所等も把握し、それを被害者に伝えることができますけれども、刑期満了になったならばあとはどこ行くかわからないんですね。たとえ出るときに「大阪に行きます」と言ったって、北海道に行くことだってある。出所してしまえば、どこへ行ったかわからない。刑期満了者の方がむしろ凶悪である場合があるわけでありまして、びくびくすると、こういうことです。
 そこで、私はやはり重大な犯罪については、刑期満了者についての住所を把握する制度、つまり新しい法律をつくるべきであると思うんです。そして、情報提供する。それは加害者の保護にもつながる。つまり加害者も10年も刑務所にいて出てくると、もう食っていく方法がないんですね。人も雇ってくれないし、家族も面倒見ないということで、結局食えないからまた犯罪を起こすということになるわけで、刑期満了者についても国が把握して、できるだけ生活ができるような支援を続けると、この両方をねらった立法をつくっていただきたいと思っております。
 そして、これは今運用でやっておりますけれども、運用でいろいろやっても、仮出獄の場合はそれはできるでしょうけれども、出所してしまえば何もできないと、こういうのが現状ですので、特別な立法をぜひお願いしたいと思っております。

○山田構成員 私の方は資料14の特に第15条の関係で1枚だけでございますが、今、岡村構成員がお話しされたことに関連しまして、受刑者が出所するときの情報についてなんですけれども、これはこのペーパーに記載したとおりでございますが、受刑者釈放通知の希望申出書というのがあるんですが、それを送付するところと送付しないところがあると。それから、希望申出書の中身も現行はばらばらといいますか、ちょっとそれぞれ違っている。今ここに待ってきたのがあるんですが、横浜地方検察庁と東京高検とではまた違いますし、それから東京高検と最高検あてのもまた違いまして、それぞれちょっと皆違う。希望する通知内容を問うているものもあれば、それを問うていないものもある。さらには、受刑者釈放通知制度についての説明書というものを添付しているところもあれば、添付していないところもあるというようなことでございますので、結局はこれは運用によっているので、ばらばらになっているのかなと。したがって、先ほど岡村構成員が言われたとおり、法律でもって決めていけば統一的なことができるのではないかと思っております。

○久保構成員 名前の原則非公開と匿名ですけれども、これはマスコミの過剰報道ということで二次被害とか、いろいろな問題を起こしておりますが、なかなか肩身が狭くて言いづらいんですけれども、ここで警察庁がお書きになっているように、プライバシーの保護と公益性ということを総合的に勘案しつつ、個別具体的に配慮していくという線をぜひ維持していただきたい。報道の自由とか、それから知る権利なんて大げさに構えるまでもなく、犯罪の背景とか、いろいろな面を多角的に検証していくには、ケースによっては名前が必要かなということで、マスコミ自身が最近警察の発表とは別に、名前を出していくのかいかないのかということについてもかなり内部で検討しておりますし、研究もしているということで、さっき悩んでおると言われましたけれども、我々も同様悩ませていただいて努力させていただきたいというふうに思います。

○河村構成員(法務省) 先ほどの釈放関係の情報について、どういった制度を構築していくのか、そのあり方というのは今後検討をすべき課題であることは承知をいたしておりますが、山田構成員の方からご指摘になりました書式の不統一でございましたり、書式の中で書いてある文言が違ったりといったことでございますが、これは実は今年の1月にこれまでの運用を踏まえまして、様式などを一部改正いたしておりまして、そのためにその前後で若干何か取扱いが違ったのかなというふうに誤解を与えている向きがあるかもしれません。いずれにしましても、運用ベースといたしましても、制度の適正な運用を全国の検察庁に対し周知徹底させていただきたいというふうに思っております。

○岡村構成員 加害者にしつこくつきまとわれたりして、身辺に危害を感じて何回も警察へ証拠を持っていっても捜査してくれない場合があった。どうしても捜査をしてくれない場合には、例えば裁判所の令状で捜査開始命令を出すとか、何かそういうふうなことをしていただかないと、何回警察へ行っても相手にしてくれないうちに殺人事件が起こったというのが私たちの会員にも何人もいます。それをひとつ考えていただきたい。
 それから、ストーカーが今は恋愛感情の問題だけでとらえているようですけれども、それをまた当初原案にあったように、恋愛感情の問題を取り除いて、つきまとう者はとにかく処理ができると、こういうふうに法を改めていただきたいと思います。

○片桐構成員(警察庁) 趣旨としては、告訴制度があれば、告訴していただければ、適正に受理されれば我々捜査機関は捜査する義務がありますから、告訴制度を使っていただければ従前のようなことは全くそれはないと思いますので、その制度をぜひお使いいただきたい。あえて捜査開始命令というような制度までは踏み込む必要がないのではないかというふうに思っております。
 あとストーカーの関係でございますけれども、なぜこれは恋愛感情とか好意の感情に絞ったのかというと、立法当時いろいろいきさつがあったようでございますけれども、1つにはストーカーでご相談があるもののほとんどがこういった恋愛の問題、好意が満たされない怨恨の問題というふうなことになっていると。平成16年の数字を見ますと95%以上がそういった形になっているという状況なので、これ以上に今のところ広げる必要はないのではないかというふうなことではないかと。これはもともと議員立法でございますので、そういった趣旨でもってやられているというふうに理解をしておりますし、かつて警視庁がこの範囲を広げたいということでもって条例を出しましたけれども、いろいろな反対運動が結構ございまして、一遍頓挫をし、条文を修正して出し直して通ったという経緯がございまして、まだまだどうも広げると弊害を心配される方が多くて、なかなかそこまで行ってないというのが実態でございます。

○岡村構成員 告訴制度を利用しろというお話ですけれども、告訴してもなかなか取り上げてくれないんですよ。こういう証拠を持ってこい、こういうあれが足りない、これが足りないということで、私は弁護士になって今まで何回も告訴したんですが、取り上げてくれなくて困って、検察庁に出して、検察庁で取り上げてもらった事件がかなりあります。だから、捜査をしないために、いろいろな理屈を言うのが現場にいらっしゃるんです。まじめにやっている方ももちろんいらっしゃいますよ。そうでない方がいらっしゃるので、そのときはどこかで捜査をしなさいというような命令を出してもらわないと困るなと思っているわけです。

○片桐構成員(警察庁) ご指摘のような問題があったことは事実ですし、今も全くないと私は断言もできないんですけれども、ただ平成12年の警察改革以後、告訴、告発については、きちっと受理しなさいということで厳しく徹底をしていまして、また告訴相談、告発相談の状況については、とりあえず県警本部がきちんと把握をするという制度になっておりますので、相当改善されているはずなので、ぜひその辺を見守っていただきたいというふうに思っております。

○山田構成員 被害者の氏名・住所の原則非公開という点なんですけれども、内閣府の3枚物のペーパーの3ページ、(2)、この原則非公開、原則公開で例外的に非公開とするのかなと思いますが、これはさておくとしまして、(2)の2つ目の「☆」の3行目あたりに「検察官又は弁護人が、証拠開示の際に、相手方に対して、被害者の氏名等が知られないようにすることを求める」と、「相手方に対して」というのは、これは当の本人だと思うんですけれども、これはその前の文章は公開の法廷においてということがありますから、事件と関係のない一般の傍聴の人たちに広く知られてしまうということは、それは防ごうというのはよくわかるんですが、相手方に対してというとこれはどうなんでしょうか。つまり被告人の側から見た場合、その国の制度として弁護権や防御権というものがあるわけでして、示談をしたいとか、申しわけないと思っていて何とか償いたいというような場合もあるわけでございますが、その点との関連というものがちょっとこの文章にはない。つまり国民の防御権、弁護権に対する配慮の視点というものを踏まえて、こういったことを検討されるということをちょっとお願いをしたいと思うんですが。

○岡村構成員 被害者の現住所を加害者側に知られるのが非常に困るということ、怖がるんですね。証人も同じなんです。特に相手が暴力団関係の人たちなんかの場合にされると、そういう復讐が怖いものですから、住所はひとつ知らせないのを原則にしていただきたいと思います。証人も同様です。

○河村構成員(法務省) これにつきましては、現行の制度といたしましては、報復等の加害行為がなされるおそれがある場合には、これは法制度としてでございますが、お互い、つまり検察官、弁護人、双方相手方に対しまして配慮を求めるということができるようになってございますけれども、今お話にございましたような加害行為以外でも非常に傷つかれたりということに対する配慮に対して、どういった方策があり得るかということでございまして、もちろん被害者の安全、あるいは不安感と申しますか、そういったものの保護とともに、防御権といった観点からの考慮も当然必要だということでございまして、その意味でこれは原則非公開と書いてございますが、私どもとしてもともと公開されているものにつきまして、今あるいは法制上朗読をせざるを得なかったりといった事柄につきまして、その辺の被害者への配慮というものをさらに進める制度というものを当然被告人等の防御権との調整の中で、導入できないかどうかということを検討するということでございます。

○山上構成員 幾つか意見があるんですが、1つ今の被害者の情報の関連で、先ほど総務省の方から犯罪被害者等を含むという表現に変えられて、含む個人情報という表現をされましたけれども、これは恐らく一般の個人情報とは別に犯罪被害者の安全を守るという視点があった方がいいと私は思うので、これは並列して犯罪被害者等の保護の視点並びに個人情報の関連と、そういう方がいいんじゃないかと私は感じております。
 それから、私が言いたいのは、ストーカー事件の相談なんかに乗ることがあるわけですけれども、今の法務省で通知するという制度とは、加害者がどこに出所するか、帰省先が被害者にはわからない、そこの保護観察所に行って初めて情報が入るという、非常に心もとない情報の出し方なものですから、今の制度のもとではいろいろな限界があります。結局は警察に行き、警察からいろいろな連絡をとってもらって、最終的には被害者にある程度情報が入るようにできたんですけれども、そういう幅広い範囲を加害者が動くので、今そういう矯正施設関係、あるいは警察同士の関係とか、そういう連携というのはとても大切だと思うので、その点をぜひしっかりこれから検討していただければと思います。また、その中で保護観察所、保護司と保護観察官を生かした被害者への情報の提供等、そういうものがぜひしっかりと重視した形でできるようにしていただきたいと思っております。

○大久保構成員 先ほどの法務省の方の説明の中でも、それが「できる」という表現をなさいましたけれども、回答を読ませていただきますと、ほとんどができる、できる、できるとなっているわけなんですね。でも、被害者は皆さん大変な思いをして再被害、あるいは公判の中で傷つけられるということがたくさんありますので、裁量にゆだねられるという現状ではありますけれども、そうではなくていろいろな制度を被害者の権利と司法関係者の義務としてぜひ制度化していただきたいと思います。
 遮蔽のことにつきましても説明文がありましたけれども、希望があればやっているとおっしゃいますけれども、決してそうではないんですね。これは今、現在被害者支援都民センターでもかかわっておりますけれども、遮蔽するかどうかは当日決めます。そこへ行くのさえ怖いのに証言に行かなければいけない。その朝決めますと、あまりにも被害者を軽んじていると思うんですね。ですから、制度はとにかく希望があればできるようにしていただきたい、それを明文化していただきたいと思います。

○井上構成員 今の点ですが、「できる」というのは、先ほどの山田構成員のご意見、河村構成員のそれについてのコメントにありましたように、これを被害者等の権利とし、司法関係者がそれによって義務づけられるということになりますと、ほかの考慮が一切排除されるということになるので、「できる」という形にしているのだろうと思うのですね。そして、私もその方が、制度としては妥当な制度ではないかというふうに思っています。
 もう一つついでに申し上げますと、先ほどの総務省関係について、構成員からご提案のように並列するということになると、個人情報の保護の観点からというのは、この検討会としてあえて言うべきことではなくなってしまうので、犯罪被害者等の保護の観点をも含めて十分な検討を行う、というふうにしてはどうでしょうか。個人情報の保護の観点からの検討は、本来のこととして既に行われているはずですので、そこに特に犯罪被害者等の保護という点にも配慮して行ってもらうということにしてはどうかというふうに思うのです。
 また、さきほど河村構成員からご発言のあった「相手方に対して」という点は、証拠開示の相手方に対してそういうことを求めるという趣旨なのだろと思います。相手方が関係者に住所等を漏らさないようにしてもらうということなのでしょう。「関係者に」というのが抜けているために、相手方にも知らせないのかという誤解を生んだので、相手方というのは弁護人だと思うのですけれども、そのように解するのは、証拠開示という点からすると問題があることになります。このまとめ方の文章がちょっと誤解を与えているのではないかという感じがします。

○河村構成員(法務省) 最後の点、井上構成員がおっしゃいましたように、既にある加害のおそれの場合の配慮というものについて、加害のおそれ以外の様々な弊害に対する配慮をお願いできる仕組みというのはないのかという検討をさせていただけないかということでございます。
 それから、権利としてはどうかというお話でございますが、これも井上構成員がおっしゃったとおりでございまして、これ以外の要素が一切排除されるとなると、これはやや制度として困難であると言わざるを得ないのではないかと思われます。また、裁判所として「できる」とかということで裁判所の権限として規定する規定ぶりという問題もございますけれども、仮に純然たる権利ということで不服申立というふうなものまで考えるとなってまいりますと、その不服の当否を判断するために審理を実施いたしましたり、その不服の当否に関する判断が出た後の証人尋問のあり方とか、その結果としての迅速かつ適正な処罰の実現への支障とか、その辺もさまざま配慮しなければならないことだと思われます。

○宮澤座長 何かもしこれ以上のご意見がなければ。どうぞ。

○事務局 すみません、事務局の方から確認なんですけれども、論点を整理したその論点になかなか含み切れないものについて何点かございます。そして、一部は既にペーパー提出でご説明いただいているんですが、法務省の関係で何点かあります。
 ざっと言いますと、出所の際の住所、矯正の程度と犯罪被害者等が求める情報の開示の中で出所時の住所だけではなく職場そのものの住所、住居移動を犯罪被害者等に情報提供してほしい。収容先、刑務所内での加害者の更生プログラムへの参加状況、矯正の程度などを情報提供してほしい。それから、虐待、DV、性暴力、ストーカーに関し加害者に対する教育、治療、ケアを求める要望があるけれどもどうか。それから、加害者の保釈や服役後の釈放に際し、被害者の安全確保を考慮して被害者が意見を述べる機会を設けること。被害者の安全確保のために必要な条件遵守を義務づけられるようにすることが要望されているがどうか。それから、未成年の子の親に対する法的権利の拡大を求める要望があるがどうか。それから、最後ですが、再被害の防止に関して多くの要望が寄せられているが、具体的な施策の必要性、相当性を検討する前提として、再被害の実情いかんの問題となるところ、法務省において再被害の実態をどのように把握しているかという点についてご説明いただければと思います。

○河村構成員(法務省) 申しわけありません。ちょっと事項について確認をとらせていただけますでしょうか。  被害者が求めておられる情報と申しますのが様々なものに及んでおるということについてどう考えるかというのが1点でございますね。

○事務局 もう一度申しますと、出所時の住所だけでなく、職場及びその後の住居移動を犯罪被害者等に情報提供してほしいという要望でございます。それから、収容先刑務所内での加害者の更生プログラムへの参加状況、矯正の程度などを情報提供してほしい。この情報提供の関係はこの2点でございます。

○河村構成員(法務省) これにつきましては、刑の執行段階におけます犯罪被害者やそのご遺族の方々などへの支援施策が十分でないとの認識のもとに、私どもの意見として出させていただいております資料と申しますか、2ページの2に記載したとおりの検討を行っております。
 ただ、今、事務局の方からもご指摘にございましたけれども、この提供を希望される情報は多岐にわたっております。ただ、一方で加害者の再犯を防ぎまして、新たな犯罪被害者等を生み出さないためにも、改善、更生に必要な環境を確保することも重要なことでございますので、提供させていただける情報の種類、範囲などにつきまして、慎重に検討しなければならないと考えております。もっともこれにつきましては、2年以内を目途のこの検討というものを進めているところでございます。
 それから、加害者の保釈または服役後の仮釈放時に被害者の方から意見を言う機会を与えてもらいたいという要望につきましては、被告人が被害者等の身体もしくは財産に害を加え、または畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるときは法律上保釈ができないとされておりまして、検察官におきましては適宜被害者等から事情を聞くなどいたしまして、意見を裁判所に提出させていただいておるところでございます。
 仮出獄の決定につきましては、各地方更生保護委員会におきまして、必要に応じまして当該事件に係ります犯罪被害者やご遺族の方々から心情等をお聞きしているところでございますが、なお不十分であるとのご批判があることは承知いたしておりまして、今後これにつきましてもそのあり方を鋭意検討をしてまいりたいと考えております。
 申しわけございません。それ以外の項目はちょっとメモを取れなかったのですが。

○事務局 あと3点ございますが、1つは虐待、DV、性暴力、ストーカーに関し、加害者に対する教育、治療、ケアを努める要望、それから2つ目が未成年の子の親に対する法的権利の拡大を求める要望、3点目が再被害の防止に関しては、多くの要望が寄せられているが、具体的な施策の必要性、相当性を検討する前提として、再被害の実情のいかんが問題となるけれども、法務省において再被害の実態をどのように把握しているかの3点があと残っております。

○河村構成員(法務省) 再被害の関係での調査につきましては、私どもとして今調査をいたしておりませんが、必要であればその調査につきましても検討はさせていただきたいと思っております。  それと、申しわけありません。未成年者の子の親に対するとおっしゃったんですが、あと未成年者の件でしょうか。

○事務局 それから、加害者に対する教育、治療、ケアの関係、虐待、DV、性暴力、ストーカーの関係です。

○河村構成員(法務省) 加害者の更生段階におけますプログラム等につきましては、性犯罪につきまして、既に研究を進めておりますけれども、それ以外の犯罪類型につきましても、必要な検討を進めてまいりたいと考えているところでございます。
 それから、未成年者の場合につきましての要望というと幾つかございますけれども、特にどの点でございましょうか。

○事務局 未成年の子の親に対する法的権利の拡大を求める要望が出ております。

○河村構成員(法務省) 今の未成年の子の親に対する権限強化ということでございますか。具体的にどの要望を取りまとめられたというふうに考えさせていただいたらよろしゅうございますか。

○事務局 例えば、財産管理の関係ですとか、その他子どもの権利をより強化するべきだというものでございます。

○河村構成員(法務省) 財産管理という点につきましては、現在でもそれに親権者としてふさわしくない場合には、親権喪失の宣告という手続がございます。この中には、財産管理という面での喪失ということを求める、制限するという仕組みもございますし、これらにつきましては、当該子ども以外の者が申立てが可能な制度となっておるわけでございます。具体的に申しますと、親権者である親が子を虐待いたしました場合などには、家庭裁判所が子の親につきまして、親権喪失の宣告をいたしました上で、親族等の請求に基づきまして、未成年後見人を選任すると、この後見人が子の法定代理人の立場で慰謝料等の請求ができるなどされておりまして、それ以外にも先ほど申し上げましたような財産管理に限った形での親権を喪失させた上で未成年後見人の選任ということができる仕組みにはなってございます。

○山上構成員 今お話しになりましたDVや虐待の加害者の問題というのは、むしろどっちかというと事件化する前の厚生労働省の段階で、それがどんどん悪化していくのを防ごうとするときに、被害者だけをサポートするだけではなくて、加害者側の教育や治療とか、そういうものの可能性も厚生労働省の方で取り組むことも考える余地があるのではないかと感じるんですが、そういうことは検討されないものなのでしょうか。

○山本構成員代理(厚生労働省) 厚生労働省でございますけれども、今ご指摘のように例えば児童虐待一つをとってみますと、もともと養育支援が必要な家庭で発生していると。養育支援にはいろいろな要因があるわけでございまして、私どもはこういう犯罪といいますか、虐待を起こさないための予防対策として、養育支援家庭を早期に発見いたしまして、そこで主として市町村の保健活動がメーンになるかと思いますけれども、そういうところでさまざまな保健師さん、あるいは場合によっては子育てサポーターといったような子育て経験のあるような方を積極的に個別訪問をしまして、発生予防につなげていくといったような事業を16年度からスタートさせて大々的にやっているところでございます。
 そういうことで、起こってからの対応というのはまた別途ございますけれども、極力こういう問題が起こらないような保健福祉面での支援というものもあわせてやっていくことが重要だろうというふうに思っております。

○中島構成員 これは確認ですが、内閣府の方からいただきました資料の3ページの「(3)加害者が逮捕されるまでの間、危険を回避するための犯罪被害者等専用シェルターの確保」につきまして、ここの「☆」では既存の施設の適切な運用のみ書かれていますが、先ほどの議論で既に性暴力被害者、あるいは男性の被害者においてこういう施設がないということが出て、それは別途検討するという話がありました。そこには危険回避のためのシェルターというような文言は多分入ってなかったかと思いますので、もし別途そういったここには入らない被害者に対する危険回避のシェルター等を検討するのであれば、先ほどの施設、中長期一時的施設のところに危険回避の目的の施設といったようなことを入れていただく必要があるのかと思います。
 その中で、特に強調していただきたい点が1点ございます。私は先ほどの14条の方に入れてしまったのですが、欧米にありまして日本に最も欠けているものがレイプクライシスセンターと呼ばれる強姦被害者に対する24時間で施設保護も備えたシェルターです。日本にはございませんので、そういった観点をぜひその中に盛り込んでいただけたらと思います。

○事務局 ご指摘の点を踏まえて、文章整理をさせていただきたいと思います。

○宮澤座長 それでは、もしよろしければこの点についての整理案といいましょうか、ご意見をお願いします。

○事務局 それでは、私の方から取りまとめ案について確認をさせていただきたいと思いますが、まず内閣府の方が配布いたしました3枚物の「☆」の項目が並んでいるペーパーですけれども、ご議論の中でまず3ページの「(2)刑事手続における被害者の氏名・住所の原則非公開」の最初の「☆」でございますけれども、法務省からのご指摘を踏まえまして、このように変えてはいかがかと思います。「法務省において、証拠開示の際に証人等の住居等が関係者に知られることがないよう求める制度について、また性犯罪の被害者等について、公開の法廷では仮名を用いる運用がなされていることについて周知を徹底するとともに、検察官の意識を向上させる。」
 それから、同じペーパーの次のページ、4ページの総務省の関係でございますが、2.の一番最後の「☆」でございますが、先ほどのご議論を踏まえて、傍線部分、「犯罪被害者等の保護の観点も含めて十分な検討を行う」ということで修正させていただければと思います。
 それから、(3)の関係で、先ほどの中島構成員のご指摘の点を踏まえて文章整理をさせていただこうと思います。
 それから、この資料の各まとめの項目以外に犯罪被害者等の方々や構成員からのご意見、ご要望を踏まえて、1点取りまとめ案として提言させていただきたいと思います。これは児童虐待の関係で、早期発見につきまして、虐待事実発見促進と通報につなげるため、医療機関内ネットワークの構築が必要だというご意見などがございます。それらのご意見を踏まえまして、「厚生労働省において医療施設における虐待の早期発見のための取組を推進するための施策を検討し、1年以内を目途に結論を出し、当該施策を実施する」ということでいかがかと思います。

○大久保構成員 すみません、一言よろしいでしょうか。ちょっと確認の意味もあるんですけれども、先ほど検察官の意識を向上させるとおっしゃいましたが、それだけでは少し無理があるようでして、弁護士さんが漏らすということもよく現場ではお聞きすることもありますので、弁護士さんという言葉も一言入れていただくという、あるいはその関係者ですか、そういう形で何か入るということは可能でしょうか。

○山田構成員 なかなか難しいんじゃないんでしょうかね。弁護士自治という視点がございますので、弁護士会が弁護士会において十分に勉強をし、研究していきますけれども、これを今回の政府の所管するところでの話ということでは難しいような気がいたします。

○事務局 今の観点なんですけれども、3枚ものの5ページ、次の19条の関係でご議論いただくんですけれども、弁護活動における配慮等ということで、政府の施策ではないんですけれども、こういうことで研修を充実させるというようなことをいただいていますので、そういう形でよければ内容をまたお示しした上で含めさせていただければと思います。

○山田構成員 私が難しいんじゃないでしょうかというふうな申し上げようをしたのは、まさに文章にしてみないとわからんなという点もございますので、最後の5ページ目の(3)については私どもは承知しておりましたのですけれども、そういうことですので、よく検討をさせていただきたいと思います。

○事務局 では、先ほどのご指摘を踏まえて調整させていただきたいと思います。

○山田構成員 いちいち確認するまでもないことと思いますが、第2回検討会から今回の検討会にかけてと同様に、今取りまとめられましたことについては、改めて文書でいただいて、それに対してこちらから再度意見を申し上げる機会があるということを承知して、そういうことでよろしゅうございますね。

○事務局 はい、おっしゃるとおりでございます。

○岡村構成員 先ほど検察官の意識を向上させるという話がありましたが、刑事訴訟法の第196条には、「検察官、検察事務官及び司法警察職員並びに弁護人その他捜査に関係のある者は、被疑者その他の名誉を害しないように注意し」とありますが、被疑者の次に「被害者等」を入れてもらったらどうだろうと思うんですよ。これは私の資料9の6枚目の上に書いてあることでございます。

○河村構成員(法務省) 今の問題につきましては、犯罪被害者等の人権に十分な配慮がなされ、そういった方々の負担が軽減されるように犯罪被害者等の心身の状況、その置かれている環境などに関します理解を深めるための訓練、啓発、専門的知識または技能を有する職員の配置など、必要な施策を犯罪被害者等基本法においても規定されているところでございまして、まずは被害者の方々の立場、心情、名誉等への配慮につきましては、検察官等の能力や意識等によりまして、意識等をより一層向上させるべく、指導、教育を徹底するのが大事ではないかというふうに考えています。この196条の関係で申しますと、先生ご指摘のとおり、主体として刑事手続にかかわる方すべてが入ってくるということでもございまして、今は被疑者その他のものとなっておるところに犯罪被害者等を加えるということでございますけれども、こういったことは犯罪被害者等の名誉への配慮については、まずもってこういった方に接する関係機関の職員の能力や意識の向上をどのように図っていくかという問題とも考えられるわけでございまして、刑訴法をご指摘のような形で改正することについては、法的な必要性でありますとか、実際上の効果なども含めて十分検討していく必要のあるテーマかと思います。直ちに導入というふうな形で結論を出すのは非常に難しい問題があろうと思っております。

○岡村構成員 特に性犯罪の被害者は非常に名誉を傷つけられることがあるんですね。4字か5字か、少し字を入れるだけで済むんです。

○片桐構成員(警察庁) 字数は構成員がおっしゃいますように一応少ないのでございますが、先ほどほかの構成員の方からもいろいろとご意見があるところでございまして、どういった形でその辺の配慮を実効あらしめていくかということもございますので、そういう趣旨として受け取っていただければと思います。

○中島構成員 最後の方で内閣府の方から厚生労働省に対して虐待の早期発見のいろいろなネットワークの推進ということを言っていただいて大変ありがとうございます。そして、私は、ここにDVを入れていただきたい。DVは非常に見逃されております。そして、DVに関してはDV防止法により、医療関係者はその防止等につきまして、義務があるとなっていたと思いますので、ぜひ入れてください。

○事務局 では、そのようなご指摘を踏まえてまとめ案を作成をいたしますが、よろしいでしょうか。

○山本構成員代理(厚生労働省) すみません、原案は医療ネットワークの構築ということで今おまとめでしょうか、内閣府の方でご提示のあった。

○事務局 はい、一番最後に申しました「厚生労働省において医療施設における虐待」、今ご指摘がありました「DVの早期発見のための取組を推進するための施策を検討し、1年以内を目途に結論を出し、当該施策を実施する」ということになろうかと思います。

○山本構成員代理(厚生労働省雇) 一応持ち帰って検討させていただきたいと思います。

○河村構成員(法務省) 内閣府の方でお取りまとめいただきました先ほどの資料の3ページ目でございますけれども、(1)の「☆」の「1年以内を目途に結論を出し、その結論に従った施策を実施する」とあります部分と(2)の2つ目の「☆」の「1年以内を目途に結論を出し、その結論に従った施策を実施する」ということでございますけれども、これにつきましては法改正等が必要という場合には、それも考えますとやはり2年以内というふうな形でお考えいただけるとこちらとしてはありがたいと申しますか、そうしていただけないでしょうかという思いがございます。

○宮澤座長 ほかのご意見は。もしご異論がなければ趣旨に従いますが。
 それでは、大変恐縮で私の責任は大きいんですけれども、最後に第19条関係、保護、捜査、公判等の過程における配慮、これについて事務局から説明をしてください。

○事務局 それでは、基本法第19条関係、保護、捜査、公判等の過程における配慮等でございますけれども、内閣府の資料の18ページ以下でございます。それから、ヒアリング等に寄せられたご要望につきましては21ページ以下でございます。以上です。

○宮澤座長 関係ある省庁から何かご発言のご希望がありましたらば。まず、警察庁はいかがでしょうか。

○片桐構成員(警察庁) 第19条関係は私どもの資料2のページを打ってありませんが、4ページ以降になります。研修の充実と職員の対応、施設の改善関係でございますが、二次被害の実態についての調査ということをお求めがございましたので、そこにお付けをしてございます。既にお読みいただいていると思いますので、中身は省略させていただきます。
 後で配った資料を若干ご説明申し上げますが、まず被害者の方から事情を聞く場合に被害者対策専門の車を今各県に配布をしておりまして、お手元にこういうカラーコピーの絵があるんですけれども、1枚めくっていただきますと2枚目にございますように、中にテーブルがあって、窓は全部遮蔽ができる、中の様子がわからない形になっていまして、例えば性犯罪の被害の現場に行くとか、また被害者の方が警察に行くのを躊躇されるという場合には、こういった車を使って、そこで事情を伺うということを今やっているところでございます。これは国の予算で相当数の車が現在各県に配賦をされているところでございます。
 さらに1枚めくっていただきますと、被害者の方から事情をお聞きする場所なんでございますけれども、よく鉄格子のはまった取調室で聞かれるというふうなこともあって、被害者の方から苦情をいただいているところだったんですけれども、平成12年から5か年計画ですべての警察署について施設の改善を行いまして、お手元にあるような明かりを広く取り入れ、なおかつ部屋の雰囲気も明るくした、そういった別途の部屋を準備をして、そこで事情を伺うというふうなことをやっていまして、これはほぼすべての警察署でこういった整備が終わったという状況にございます。
 それから、もう1点職員の教育の観点なのでございますけれども、部内用で中で被害者支援に当たった人間、非常に中には苦労している人間もいるんですけれども、そういった支援員の体験を我々の中で共有しようという趣旨のもとに、こういった体験記を毎年、毎年募集をして、それを幾つか選んで冊子にして各県に配り、そしてまたそれをこの仕事に当たる人間ばかりでなく、職員みんなが読んで、そういった体験を共有しようということでもってつくっている資料でございます。よろしくお願いします。

○宮澤座長 どうもありがとうございました。この車両も部屋も私はうちの近くの警察署で拝見しまして、大変うれしく思いました。
 それでは、法務省、何かおっしゃりたいことがあればどうぞ。

○河村構成員(法務省) いわゆる二次被害的な資料につきましても、警察庁さんの方からご紹介ございましたですが、私の方で先ほど再被害と伺ったのがいかなるものかわからなかったんですが、いずれにしろ犯罪被害者等が捜査、公判等の過程において受けた新たな精神的被害、いわゆる二次被害の実情を焦点とした調査というものは行ってはおりませんですが、平成11年度に法務総合研究所におきまして、現実の被害者等に対するアンケート方式による調査を行っておりまして、その中で捜査協力及び証人出廷の負担に関する調査がございます。その調査結果につきましては、お配りしたとおりでございます。
 あと第19条関係プロパーの問題といたしまして、関係職員の研修の充実等々につきましては、資料に述べさせていただいておるとおりでございます。

○宮澤座長 ありがとうございました。それでは、厚生労働省から何かご発言があれば。

○田中構成員代理(厚生労働省) 特にございません。

○宮澤座長 ありがとうございました。文部科学省からのご発言はありますか。

○文部科学省(板東審議官) この点については、特に挙げていただいているものばございませんので。

○宮澤座長 どうもありがとうございました。最高裁判所でご発言あればよろしくお願いします。

○最高裁判所(伊藤事務総局刑事局第2課長) 私どもの施策につきましては、本日事前にお配りしていただいていると思いますが、最高裁判所の提出資料、これは資料7に記載させていただいております。
 それで、関係職員への研修につきましては、この2枚ものの後に3ページ目からゴシックの2枚がついておりまして、こういう研修をやらせていただいていると、こういう関係でございます。
 この関係で、先ほど小西構成員の方から、司法研修所の研修が来年で終了するのではないかと、不十分ではないかと、こういう紙をいただきましたけれども、確認いたしましたけれども、来年以降やめるという話はないようでございまして、ただ来年度のカリキュラムは現在未定であるということだけのようでございます。最高裁判所といたしましては、被害者関係の研修というのを重点施策の一つにしてございますので、それを拡大することはあれ、縮小することはないのではないかというふうに私は思っております。
 それから、修習生にそういう被害者についての知識が乏しいとショックを受けられたと、こういうご指摘でございますが、この点は要するに実際に講師に来ていただいた方がそういうふうに見えたということは、恐らくそういう観点が否めないのであろうと思います。そのあたりも含めて、今後さらに研修を充実させていく必要があると思っているところでございます。
 それから、施策のその他の点もよろしいでございましょうか。

○宮澤座長 はい、どうぞ。

○最高裁判所(伊藤課長) 裁判所といたしましては、基本的に立法をするところではございませんので、決められた法律にしたがってその制度を的確に運用すると、これが裁判所の基本的な施策ということになります。その観点で言いますと、現時点におきましては、犯罪被害者保護二法をいかに適切に運用するかということでございます。その点につきましては、本日先ほどお配りしたんですが、「第3回犯罪被害者基本計画検討会の追加留意事項について(最高裁判所)」と、こういう5枚組の資料をお配りさせていただきました。これの一番最後のページをご覧いただきますと、犯罪被害者保護二法に基づく制度の運用状況について記載しているところでございます。この紙を見ていただければわかりますとおり、例えば遮蔽につきましては、平成12年11月から平成17年3月までで合計で4,256件利用されていると、こういうことでございます。それから、前回ご指摘がございましたが、被害者等に公判記録の閲覧謄写をさせた事例数というのは2,866件ございます。させなかった事例というのは42件しかないと、こういうことになってございます。
 それから、山上構成員の方から、裁判所のビデオリンクや遮蔽の装置が全国で使えるようになってないのではないかと、こういうご指摘が紙であったと思いますが、ここは資料7に書いてございますけれども、ビデオリンク装置につきましては、全地方裁判所及び主要な合議事件取扱い支部、合計で65庁に配備済みでございます。それから、遮蔽装置につきましてはさらに広く、全部で百十数庁に配置してございます。それで、いずれも運搬が可能なものでございますので、基本的に要望さえあればどこでも使用できると、こういうふうになっているところでございます。

○宮澤座長 どうもありがとうございました。
 以上の各官庁におけるご説明に関連いたしまして、内閣府の構成員からご発言があればよろしくお願いします。

○事務局 それでは、第19条の関係について今ご説明をいただいたわけですけれども、先ほどの3枚紙をご覧いただきたいのですが、同様に19条関係につきましても犯罪被害者等からのご要望に関しまして、各省庁から事前にいただいた中で、今度の新たな取組、あるいは前進させる取組を提出いただいたもの、これを3枚紙の4ページの3.19条関係ということで取りまとめをいたしました。これらについては、骨子案に盛り込むことを提案させていただきたいと思います。
 それから、先ほどと同じように、この論点にまとめ切れないご要望について、それぞれ事前に各関係省庁にお願いをしておりましたが、その中で法務省の関係はペーパーを提出していただいておりませんので、大変恐縮ですが、また申し上げますので、お考えを伺いたいというふうに思います。
 1つが法務省において庁舎の建て替えを予定している検察庁では、被害者専用待合室を設置し、それ以外の検察庁についてはスペースの有無、設置場所等を勘案しつつ、専用待合室の設置について検討していくとしているが、専用待合室整備の具体的に予定はどうでしょうかということが第1点。それから、遮蔽措置、ビデオリンク等の措置がより広範に運用されることを求める要望が寄せられているが、どうでしょうか。今最高裁からお答えいただきましたけれども、法務省はいかがでしょうか。それから、被害者が二次被害を訴えることのできる苦情相談窓口が必要であるとの要望が寄せられているが、どうか。また、そうした苦情の声を生かした研修を行うべきであるとの要望が寄せられておりますが、どうか、これも法務省分をお答えいただきたいと思います。それから、次に特別のトレーニングを受けた者による司法面接を求める要望、子どもの証人保護のため、安心できる機関等でのビデオ証言を証拠として採用することを求める要望、警察、検察、医師、心理、家庭裁判所など、各専門家が集まって出した結果や判断がどこでも通じて、このまま何度も話をしなくてよい形をとってほしいという要望。 それから、児童虐待専門の警察官、検察官、弁護士などの育成を求める要望が寄せられておりますが、どうか。これは法務省にお答えいただきたいと思います。それから、次に欧米のように検察、裁判所にいて、児童専門のスタッフを配置し、二次被害を受けないよう、支援することを求める要望が寄せられておりますが、どうでしょうか。それから、次に女性についても思い出すことも苦痛な被害体験を繰り返し話さなければならないシステムの改善を求める要望が寄せられておりますが、いかがでしょうか。それから、民事訴訟においても遮蔽措置、ビデオリンク、付添いを民事訴訟法上認めることを求める要望が寄せられているが、いかがでしょうか。
 それから、警察の関係で、警察における急性期心理支援についての専門技術を確立し、対外的連携をスムーズにし、連続的な支援を行うことを求める意見が寄せられておりますけれども、どうでしょうか。これは警察庁はまだお答えがなかったと思います。
 それから、警察、検察、裁判所等に被害者専任支援員を常駐させる制度の整備を求める意見が寄せられておりますが、いかがでしょうか。これは法務省の分をお願いしたいと思います。
 それから、最後ですが、被害者支援員の性別の偏りの是正を求める意見が寄せられておりますが、いかがでしょうか、これは警察庁及び法務省からお考えを伺いたいと思います。

○河村構成員(法務省) 非常に多岐にわたっておりますので、あれでございますけれども、司法面接でございますとか、被害者が繰り返し事情聴取などに応ずる、あるいは証人尋問を繰り返し受けるといったようなことによる負担、被害の軽減と申しますか、そういった観点につきましては、司法面接というものがどういう制度をイメージしておられるかということによるわけでございますけれども、医療的な観点からの質問と犯罪立証、あるいは日本の場合非常に詳細なものが要求されるものもございますし、量刑も含めたあたりの事情を伺う必要もございまして、そういったもので一度にこれを行うということになりますと、なかなかその後の証拠調べでございますとか、証拠能力等々の関係で検討すべき課題は多いと思われます。なお、この司法面接なり何なりで一度の聴取、取り調べの結果をそのまま証拠とすることについて、反対尋問の機会すら許さないということになりますと、これより大きな問題を提起することになるわけでございます。
 しかしながら、現在におきましてもそういった被害者の方に対する配慮といったものにつきましても、職員等の研修、あるいは日常の一連の処理の過程等を通じまして、できるだけご負担をおかけしないように指導をしているところでございますし、例えば法廷でご証言いただくということになりましても、繰り返し同一事実についての証言が予定されるといったようなことを避けます場合には、ビデオリンクで行われた証人尋問の中身を被害者の方が同意なさるのであれば、録画させていただいて、これを別の裁判で使えるといった制度も導入させていただいているところでございます。
 それから、弁護士の専門家の方の養成ということにつきましては、これはそういった認定、あるいは教育、訓練等を含めた事柄につきましても、弁護士会の方で対応していただく法制となっているものと理解しております。
 それから、民事訴訟法の改正と申しますか、ビデオリンクや付添い、遮蔽等について、民事の裁判においても同様の手続が行えるようにすべきではないかというご意見につきましては、遮蔽につきましてはごく一部の民事の事件において現に実施された例もございます。ただ、ビデオリンクを決めまして、これを民事訴訟において導入することになってまいりますと、その辺につきましては、被害者等の方々のニーズや民事裁判としての当事者の手続的保障を踏まえた検討が必要でございますし、検討するものに法改正を伴うといったこともございますので、検討自体に基本的な計画策定から少なくとも1年間のご猶予はいただきたいというふうに思っております。
 それと、支援員につきましては、これは扱う事柄が検察の実務についての知識が要求される、あるいはこういった刑事手続等についても、習熟したということから、検察事務官のOBの方になっていただいておるわけでございますけれども、現時点ではそういった検察の業務に精通した経験豊かな方の中に女性の数が少ないということから、女性の支援員が少なくなっているものと思われますけれども、女性の被害者に対する支援につきましては、女性の検察官、検察事務官等が対応するなどの配慮をしておりますし、今後は女性の被害者の方々に、よりきめ細かな配慮ができるよう、ご指摘の点につきましても検討を進めてまいりたいと考えております。
 苦情相談窓口という点につきましては、この支援員自体がそういった犯罪被害者のご相談等に応じているわけでございまして、この窓口に従事する者につきましても、必要な研修を実施いたしております。また、日常業務においても上司による指導等を通じまして、犯罪被害者の方々などの気持ちに対する理解の増進に努めているところでございます。
 そして、設備面と申しますか、提出の関係で具体的にいつまでということでございますけれども、これにつきましては現に被害者専用待合室の設置につきましては、これまでの被害者の方々からのご指摘を踏まえて、今後庁舎の建て替えを予定しております検察庁におきましては、設置する予定でございます。そして、被害者専用待合室が設置されていない検察庁については、設置を検討するに当たりまして、設置のためのスペースの有無、あるいは被疑者等の動線と申しますか、動く線と交わらない場所といった配慮も必要でございますので、今後可能な限りそういった事情を勘案しつつ整備を進めていくという予定でございます。
 なお、繰り返しになってまいりますけれども、研修関係につきましては、様々なご指摘を踏まえまして、さらに充実を図ってまいりたいと考えております。

○片桐構成員(警察庁) 私どもに2つご質問がございまして、1つは急性期心理支援に係る専門技術の確立と対外的連携の関係でございますが、まず私どもの専門的技術の確立という観点から申し上げますと、現在、各都道府県警察におきましては、全部ではないんですけれども、27都道府県で68人の臨床心理士の資格を有する者を部内に配置いたしております。まずこういう者が当たるとか、またこれ以外にも、毎年、警察大学校を始めとして被害者のカウンセリング技術を専門に教育する、そういった課程を設けて、そこに各県のカウンセリングに当たる職員に―主に女性でございますけれども、来てもらって研修をするとか、そういったようなことをやっておりまして、またこういったものでも対応ができないという場合には、部外の精神科医とか臨床心理士に委嘱するなどによって早期に危機介入を図るということは現在進めているところでございます。なお一層、こういった知識、技能の向上に努めてまいりたいというふうに考えております。
 それから、連携の関係でございますが、すべての都道府県及び全警察署単位に被害者支援連絡協議会というものをつくっておりまして、これは検察庁とか知事部局、弁護士会とか医師会、臨床心理士会等と犯罪被害者支援に当たる関係の団体がすべて入っているものでございますけれども、こういったネットワークをつくっておりまして、継続的な支援が必要であるということであれば、こういったネットワークを使って連携をスムーズにし、支援を行っているという状況でございまして、なおこういった活動をさらに強化、推進してまいりたいと考えております。
 それから、被害者支援員の性別の関係でございますけれども、若干数字を申し上げますと、平成16年6月現在の数字でございますが、全国で2万2,322人の被害者支援員を指定しておりまして、このうち女性は4,039人、約18%台ぐらいになると思います。ちょっと今、計算が間違っているかもしれませんけれども、ざっとそんな感じかなと思います。これが、一昨年、その前年の平成15年12月末現在ですと、2万1,377人を全体で指定し、女性がそのうち3,737人でございますので、数字的には女性の比率が上がってきているという状況にございます。警察は、ご承知のように女性職員が大変少のうございまして、警察官だけで申し上げましても、現在、女性警察官の全体に占める比率は4%台でございますので、性別の偏りということは、構造的に同じようにするということはなかなか難しいのですけれども、ただ、こういうことで、全体の女性職員の比率からすれば、相当多くの女性支援員を指定しているという現状にあるということはご理解いただきたいと思います。

○山田構成員 日弁連にもご質問、ご意見をいただいておりますのですが、それに対するお答えということでよろしいでしょうか。資料14を見ていただきますが、1枚目は先ほどもう申し述べましたので、1枚目の裏からでございますけれども、ここにゴシックで書いてある(1)と(2)というものですね。(1)項は、「被害者に二次的被害を与えて加害者を有利にする弁護士の手法は見直してほしい」ということでございます。(2)項は、2ページでございますが、「弁護士は、被害者遺族の対応について、定期的に研修を受けることを義務づけること。あまりにも資質の低い弁護士は、弁護士資格を剥奪すること」ということをいただいております。これは、内閣府の方の検討課題の20ページにあるところでございますが、今、そのページは見ていただく必要はございません。
 これに対する回答をここに書いてございますが、その内容につきましては、ここにいらっしゃる方の大方の方がもうご存じのことかと思いますので省略して申し上げますが、弁護士の仕事、職業というものは、自由で、かつ、独立した立場のもとに行わなければならないということは、これはもう歴史が生んだことで明らかであろうかと思います。また、その弁護士の仕事、職務というものは、検察官が合理的疑いを超えて有罪の立証をした場合にのみ刑罰が科せられることになるということからして、不十分な証拠で冤罪を生んでしまうことのないように尽くさなくてはならないということがございます。他方、刑事裁判で事実関係に争いがある場合は、目撃者や被害者の供述が重要なんですが、必ずしもそれが正しいかというと、またそうでもない。思い違いもあれば、時には自分の被害を誇張するというようなこともなくはないわけでございます。そういったことを前提にして考えた場合に、弁護士が二次的被害を与えて加害者を有利にする、そういう「手法」と呼べるようなものがあるかどうか。ないのだと思いますけれども、しかし、時としてそういうふうな二次的被害を与えてしまっているということも、もちろんあるのだろうなと思います。
 ただ、こうした場合に、個々のそういう弁護活動に対して介入できないということは、これは自由、独立という視点、弁護士の自治という視点から、できないわけでございます。当然そこには、弁護士が自由で独立した姿勢を持ってその職務を行わなければ、逆に弁護士としての存在、弁護士の責務、使命を果たせないという問題に帰着することになるからであります。
 とはいえ、弁護士が信義、誠実に、かつ、真実を尊重して職務を行わなければならない、アンフェアであったり名誉毀損したりしてはならないということは事実でございますけれども、こういった問題については、やはり日弁連の方として研修を充実させて、個々の弁護士の意識の改革を求めていくというよりないのだろうと思っております。「資質の低い弁護士は、弁護士資格を剥奪すること」とございますが、これは懲戒委員会でもって処理をしなくてはならないんですけれども、懲戒委員会というのは公正・公平でなくてはなりませんから、弁護士会の会長とか役員であってもこれに口を挟むことはできないというシステムになっておりまして、個々の事案でもって懲戒委員会が真剣に公正に審議しているということでございます。
 なお、添付しました「犯罪被害者支援について」という資料がございますが、初めが1月11日付、2枚目が5月31日付でございますが、時間の関係上、省略して申し上げますと、2枚目の下の方の「記」というのがございますが、精通した弁護士の名簿の作成をしろということを日弁連の方から各弁護士会の会長にあてて要請しております。弁護士会においては、まだ弁護士専門認定制度というものが、今、議論はされておりますが、まだできてはおりません。しかしながら、この犯罪被害者については精通している弁護士というものについての名簿作成を具体的にするということでございます。
 なお、その研修について、一応申し上げますと、全国の弁護士会で衛星放送を活用したサテライト研修というものを、7月1日、行うことになっております。次のペーパーの裏を見てください。2ページ目です。研修ビデオというものが、ここに1巻、2巻、3巻というふうにございまして、これによりまして研修しております。最後のペーパーですが、7月1日には小西構成員にもお越しいただいて、このようなシンポジウムを開催するというようなことになっております。

○大久保構成員 1点お願いがありまして、お話しさせていただきます。
 警察庁の方にお尋ねしたいんですけれども、私の資料8の3ページの⑦のところにも書かせていただきましたが、確かに警察のカウンセリング体制は整備されてきておりまして、そして、ただ、部外の精神科医や臨床心理士に委嘱しているということを今もお話しくださいましたけれども、臨床心理士というような形である種の職種に限定するのではなくて、「精神科医及び犯罪被害者支援に精通した者」としていただけますと、もっともっと犯罪被害者支援にかかわる人たちが、しっかりと被害者にかかわって回復を手助けするということに役立つのではないかと思いますので、その点、またお考えいただければと思います。

○片桐構成員(警察庁) 今は、心理的・精神的被害に対する打撃の緩和といいますか、そういう観点から申し上げたんですが、さっき後でちょっと申し上げた被害者の支援員ですけれども、こちらは必ずしもそういった専門家でない人が入っていますけれども、まずこういった方が被害者に付き添ったり、それからまたいろいろな相談に応じたり、情報提供するという形でもって初期の危機介入をしますけれども、その後、いろいろな生活上のご不便に対する援助とかというものは、今申し上げた被害者支援のネットワークとか、また各県、全部ではありませんけれども早期援助団体とか、またそのほかの支援団体もございますので、そういったところに速やかに引き継いでいくという形でやっておりますので、この被害者支援員がまさにキーパーソンというか中核になりながら、そういうものの連携を図っていくということをやっているということでございます。

○大久保構成員 きちんとペイされる臨床心理士、それが適用にならない犯罪被害相談員というところで、何かもう少しお考えいただけないものかと思ってお尋ねしました。

○片桐構成員(警察庁) それは、もっと犯罪被害者の気持ちがよくわかった人を置いてほしいというふうなことでございますか。

○大久保構成員 いえ、そうではなくて、例えば厚生労働省さんも、国家資格を持ったいろいろな職員の研修もこれから力を入れていくとおっしゃってくださっていますので、1つの職種に限定するということが、ちょっと納得できないわけですね。「心理面で精通した」とか、そういう物の書き方でしたらわかるんですけれども、職種に限定しているというところがとても不思議なんです。

○片桐構成員(警察庁) 「心理面にも」というふうに理解いただければいいと思うんですけれども、そこだけではなくて、それ以外のいろいろなご支援をするについても、いろいろな知識を持ちながら関係団体に引き継いでいくとかというふうな形でございます。

○大久保構成員 ただ、臨床心理士さんでなければ、それをお願いしたときに費用は払えないということを言われておりますので。

○片桐構成員(警察庁) 部外の臨床心理士に委嘱した場合に、その経費が公的に支給されていないという問題について何とかすべきだというお話ですか。

○大久保構成員 何とかではなくて、それはそれでいいんです。別の職種にも、それが適切だと思われるような職種であれば、広げていただきたいということです。

○片桐構成員(警察庁) それ以外の支援についても……。

○大久保構成員 いいえ、そうではなくて、精神的緩和のために被害者に接したとき、あるいは調書をとるときに、被害者の方が精神的に落ちつかないというようなときには付き添うということがありますね。そういうとき、精神科医または臨床心理士であればきちんとペイされるんですけれども、その他の職種には支払いはできないということをお聞きしておりますので、その職種の幅を広げていただきたいとお願いしているわけです。

○片桐構成員(警察庁) 当座といいますか、早期の段階における付き添いとかは、この支援員というのはご承知のようにうちの警察職員がやっておりますので、ペイとか何とかという問題ではないのではないかと思うのですけれども。

○大久保構成員 委嘱した臨床心理士さんには払っているということですか。

○片桐構成員(警察庁) 委嘱した臨床心理士には払っているけれども、それ以外の例えば支援のネットワークを使って……

○大久保構成員 いいえ、そうではないんです。では、また後ほど。

○片桐構成員(警察庁) すみません、趣旨がよくわからなくて。

○岡村構成員 では、時間がありませんので、2つばかりお願いがあります。
 1つは、保護二法では、法廷の付添いは被害者が証人になったときだけでありますけれども、しかし、被害者がつらいのは証人になったときだけではありません。私の場合は、事務所の弁護士が2年間ずっと公判のつど付き添ってくれました。この付き添いがなければ、私は殺人現場の様子とか何かは聞けなかった。その法廷があると、その後3日、4日、私は寝込みました。それくらい疲れるんです。
 ところが、事務所の弁護士は家族ではありませんから、一般の傍聴人と同じように朝早く並んで傍聴券を得て、そして私の隣に付き添ってくれるんです。そういうことをしなくても済むように、証人にならない場合にも付き添いがぜひ必要だと思いますので、その制度をつくっていただきたい、こう思います。私も、ある人の事件で付き添いに行ったんですが、傍聴券が手に入らないために、遠く山口まで行きながら、付き添うことができなかったということがあります。
 それからもう一つは、冒頭に申しましたが、傍聴席の遮へいです。これは、最高裁が前回、いろいろな理由を挙げてできないと言われましたけれども、私が今日申しましたように、別に遮へいをしたからといって傍聴の自由を制限するわけでもないし、暴力団の家族あるいは加害者の家族と混在して並んで傍聴するということは耐えられないことでありますし、特に性犯罪の被害者になりますと、皆に顔を見られたくないし、しかも被害者と顔を合わせたくない、こういうことがあるものですから、傍聴席を遮へいしたからといって、傍聴の自由を制限するわけではないと思いますので、この2つをぜひお願いしたいと思います。

○山上構成員 最高裁判所にお願いしたいことがあるんですけれども、先ほどのビデオリンクの件は、たまたま私たちが相談に乗ったケースで、それを急に望むと、実際に出廷しなければならない日が決まっていたわけですけれども、その日にそういうものを利用できるかどうかというと、そうたくさん数はないので日を延ばさなきゃいけないとか、そういう可能性もあるとか、そういう話があったものですから、もう少し自由に選択ができるだけ充実させてほしいという希望でございました。
 それから、私の要望のところに書いたのでありますけれども、裁判所にも被害者に対応する窓口をぜひつくっていただきたい。そして、専任の人をぜひ1人置いていただきたいと思います。検察は、支援員を置く制度をつくりまして、その方たちは検察事務官を何十年と勤められて退職された方たちなどがいらっしゃるわけですけれども、私たちはよく一緒に活動することがあるのですが、彼らは何十年と検察に勤めていて被害者の気持ちをこのようにじっくり聞くことが初めてで、それで被害者のことをちっとも知らなかったということがわかったとよく言われます。そういうように専任の人がいて初めて被害者も安心して相談できますし、専任だからしっかりと被害者の気持ちを受けとめるということができるようになると思いますので、そういう退職された方、パートの形でも結構ですけれども、専任の人をぜひ置いていただきたいということがございます。
 それからもう一つ、裁判所内に待合室でも、あるいは証人として出るときでも、傍聴人として出るときでも、被害者が安心していられる部屋、加害者たちに接しないで済むような安全な部屋をひとつ用意していただくということはぜひ実現していただきたいと思います。

○山田構成員 関連してよろしゅうございますか。  内閣府の方でまとめていただいた3枚物の5ページを見ますと、上から2つ目の「☆」ですけれども、「法務省において、庁舎の建て替えを予定している検察庁では云々」とございますが、これは裁判所でも、例えば現に今、八王子支部では八王子市から立川市の方へ移転しようとする動きがありますし、あるいは墨田簡易裁判所の方に全部簡裁をまとめようというようなことがあるわけでございますけれども、そういった折にも、ぜひ待合室であるとか、あるいは通路、出入口に、被害者と加害者が遭遇しなくても済むような工夫というものが、やはり今のうちにできるようにしていただきたい。
 それから、裁判員制度を導入するに当たりましては、全国で恐らくいろいろと法廷をいじらなくてはならない事態になるだろうというふうに考えられますが、そこで何がしかの工事が行われるのであるならば、ぜひただいまのような点もお忘れなきようお願いしたいということでございます。

○宮澤座長 だんだん時間が本当に、7時を過ぎてしまいましたけれども、今のご要望に何かもしお答えいただけるのでしたら、法務省それから最高裁判所、おっしゃられる限度においてご発言いただければ幸いです。

○河村構成員(法務省) 現行制度で被害者の方々などが証人となられたときには付き添いの制度があるということでございますが、これの意味のある部分と申しますのは、いわゆるバーの内側で、証人席のそばに証人以外の方が入っていただけると。それは、訴訟関係人全部の同意があれば、以前も可能であったのでございますけれども、仮に同意なさらないときであっても可能とする制度ということで導入させていただいております。その意味で、傍聴席ということになってまいりますと、もともとそういう制限はございません。他方で、被害者の方につきましては特に優先的な配慮ということを、私どもで申しております被害者保護二法のうちの1つの中で規定させていただいておりますけれども、付添いの方のお気持ち、被害者の方と付添人の方のニーズはわかるわけではございますが、ただし、他方で物理的な制約もある。また、被告人側にとりましても、被告人の配偶者等といった者への配慮といったことも必要になってまいりますので、そういう意味で優先的な傍聴とはされておりませんけれども、そのお立場に応じた配慮が可能であるということでございます。
 したがって、それを法制的に規定するかということになりますと、一体どこまで入っていただけるのか、あるいはほかの方とのバランス等でどうやって切り分けをしていくのかといった観点の検討が出てくると思われます。

○岡村構成員 そんなに大勢でない場合などに、1人、2人付き添ってやっても、傍聴券が外れたために付き添いできなかったという例がある。私自身がそういう体験もしましたので、何とかその辺を工夫していただきたいと思います。

○最高裁判所(伊藤課長) 今の傍聴券の問題となりますと、基本的に裁判所の問題になるわけでございますが、被害者保護法で優先傍聴が認められている方にしか優先傍聴を認めていないということではございませんで、余裕がある限り、もちろんほかの傍聴人、あるいはプレス等の要望等もございますので、その数には限度があるわけですけれども、できる限り付き添い等にも傍聴券が渡せるような配慮というのはしておるつもりなんです。たまたま構成員の傍聴に行かれた事件でそういうことができなかったということを今お聞きしましたけれども、そこはそういう配慮はしておるつもりだということだけご理解いただければと思います。
 それから、遮へいの関係なのでございますが、これも結局、法廷がすいているというような場合を考えますと、例えば1ブロック全部を区切ってしまえばいいわけですから、比較的問題がないわけでございますが、実際には特に大きな事件になりますと、傍聴希望の人もたくさんいて、そうするとその一部だけをコの字型に切ったりすることになりますと、結局、そのコの字型の背後にいる人のところは裁判長の席から見えないということになりまして、法廷警察権等の行使に支障がある場合があり得るという観点で検討が要るというふうに申し上げておるわけでございます。

○岡村構成員 例えば、何かついたてを立てるとか、いろいろな工夫があると思うんですよ。全部隠す必要はないので、何とかそこを工夫してもらいたいと思います。

○最高裁判所(伊藤課長) そういう観点で申しますと、そもそも傍聴席の一部に遮へいをとる措置をとってはいけないという法律はもともとないわけでございまして、それは運用上、どこまでできるかという話だろうと思います。そこを検討しないというつもりは全くございませんので、どういう方法が可能なのか考えてまいりたいと思います。
 それから、専門の職員の配置についてご要望がございました。裁判所におきましては、被害者等の方から相談や問合せがありました際には、総務課あるいは担当の書記官室においてできる限り丁寧に説明するようにという指導をしておりまして、そういう対応がされているのではないかというふうに考えてはおるわけでございますが、被害者等の方々からそういうご要望があるということは、まだまだ不足しているのだろうということだと思います。その点は、さらに今後も研修等に努めていきたいというふうに考えております。
 また、実際に研修をいろいろやっておりますので、対応に当たる場合に、難しい事件等におきましては習熟した職員が応対するということも十分にあるわけでございます。これを進めて、さらに被害者問題専任の職員を配置すべきだということになりますと、これは今度、裁判所というのはご存知のとおり全国に多数ございますものですから、地方ごとにどういう事情があるかということも、事件数等を見きわめながら検討していく必要があるだろうというふうに考えてございます。
 それから、待合室の関係でございますが、この点についての裁判所の考えをご説明したいと思います。傍聴を希望する犯罪被害者等の待合室につきましては、現在どういうことをしておるかといいますと、要望に基づきまして、例えば一般の目に触れないように証言まで別の部屋にいたいのだと、こういうご要望がありますれば、そういう一般の方から触れないような部屋を用意しまして、そこで待機していただいているということもよくやっているわけでございます。それから、例えば普通の法廷の入口から入らずに、裁判官と同じように裏廊下を通っていただいて法廷に入っていただくということも、ご要望があればやっておるわけでございます。
 要するに、来庁時間、待機場所、法廷を案内する時間、経路等、いろいろな事件ごとに細かい配慮をしているというふうにご理解いただければと思います。裁判所といたしましては、専用の待合室、要するに箱を設けておくということだけでは、被害者の具体的な保護としては十分ではないのではないかというふうにむしろ考えておりまして、待合場所等につきまして、具体的な希望に基づきまして、必要な場所や案内経路等を配慮して対応すると。そのために、一般の待合室と別の待合室が必要だというケースにつきましては、個別に対応する部屋を用意させていただいている、こういうことでご理解いただければと思います。

○片桐構成員(警察庁) 先ほどのお話で、確認しますが、要するに部外の精神科医とか臨床心理士に委嘱した場合には公的負担があるのに、それ以外の民間の支援の方が支援した場合には公的負担がないというのはおかしいではないかという……

○大久保構成員 おかしいとは言いません。職種を犯罪被害者支援に精通した犯罪被害相談員等にも広げてほしいということです。

○片桐構成員(警察庁) 広げるべきであるということですね。

○大久保構成員 はい。

○片桐構成員(警察庁) 実態を申し上げますと、今、民間の支援員の方に対しては、電話相談については国が補助金を出しまして、各県がそれを予算化して、電話相談については委嘱経費を払って、それで支援された方にお支払いするという形はできているようなんですけれども、ただ、これを予算化するかどうかは各県の判断で、実際には予算化している県はまだ少ないという実態にありますので、こういった制度をもっと使ってもらうようにはしなければけない。また、こういった予算を流す際には、だれがどういう支援をしたか、するかについて、ある程度、範囲を明確にしなければいけませんけれども、それがどの程度できるのかどうかということについて、まだ勉強が進んでおりませんから、また支援団体の方々といろいろとお話をしながら、調査、勉強してみたいと考えております。

○宮澤座長 それでは、まとめ案を簡潔にお願いします。

○中島構成員 法務省の方から、お答えの十分ではなかった点が1点あるのですが。

○宮澤座長 どういう点ですか。

○中島構成員 司法面接に関するところです。私や小西構成員が意見を出したのは、司法面接という言葉を使わなくてもよいのですが、子どもの被害者に対して適切な面接をするための教育とか専門員の養成、あるいは法廷における子どもの証人を保護するようなプログラム等の実施について、法務省が現在実施しているものがあるのかどうかということと、実施するつもりがあるのかどうかということだと思うのですが、それについてお答えいただけますでしょうか。

○河村構成員(法務省) 司法面接という言葉の中で、実はイメージいたしましたのが、イギリスの医療にも通じた方がソファーのあるところで被害者から事情を伺って、それを録画したものを証拠としてそのまま採用するというふうな制度をお考えかなと思いましたので、先ほど証拠の扱いとか、いろいろクリアしなければならないということで申し上げたわけでございます。ただ、先ほど来、被害者の方の負担をできるだけ少なくするということにつきましては、研修の機会、あるいは日常の指導などの面でも、職員に対して指導・教育をしているところではございますし、またそういう意味で、より少ない負担のもとで適切なお話をいただけるように努力しているところでございます。また、先ほども少し申し上げましたのですけれども、法改正の中でも、ビデオリンクによる尋問の映像と音声によって、他の共犯者等の公判で一から繰り返し証言しなくてもいいという制度も導入させていただいております。
 その意味で各種研修、会同等において周知を図っておるところではございますけれども、今後とも、より一層、検察官等の能力や意識の向上をさせるための方策をさらに検討してまいりたいと思っております。

○中島構成員 ということは、現在、子どもに特化したトレーニングはしていないということでしょうか。

○河村構成員(法務省) 子どもに特化したトレーニングということになりますと、実は例えば子どもということで、私ども日々、これは犯罪を行った方、受けた方、事情聴取と申しますか、取調べでありましたり、必要な場合には法廷でご証言いただかなきゃならないところも含めてやっておるところでございまして、そういったことから、それだけに特化した研修というわけではございませんが、日常の業務処理においても、当然、上司等の指導を行っておりますとともに、少年特有、小さいお子さん特有の問題につきましても、研修等の機会にその辺についての知見なり意識をより深めてもらうための努力はいたしておりますし、さらに今後ともそのための方策ということを検討していきたいということを申し上げているわけであります。

○中島構成員 これ以上指摘するつもりはないのですが、子どもに関しては特別な問題がいろいろございますので、全体の中で扱うというのは非常に不十分でありますので、子どもに対しては特別のプログラムを、研修あるいは証人保護につきまして検討していただければということをお願いする次第です。

○事務局 よろしければ、第19条関係の取りまとめ案をご提案させていただきたいと思います。  まず最初に、3枚物、「☆」のものを整理させていただきました。この4ページの3.で整理させていただいたものを、まず取りまとめ案としてはいかがかというふうに思います。
 それから、このほかに犯罪被害者等の方々から寄せられたご意見とかご要望、それから構成員の方から寄せられましたご意見、ご要望、そしてただいまのご議論などを踏まえまして、5点、取りまとめ案として提言させていただきたいと思います。
 1つは、遮へい措置だとかビデオリンク等の措置の関係でございますけれども、「法務省において、裁判所におけるビデオリンク装置の配備の進展等を踏まえ、ビデオリンク等の犯罪被害者等の保護のための措置について周知徹底を図り、一層適正に運用されるよう努めていく。」  2番目でございますが、これは民生委員による二次被害の関係のご指摘がございましたけれども、この関係につきましては、「厚生労働省において、民生委員に対し、犯罪被害者等への適切な対応を確実にするための指導を実施していく。」
 3点目が、性暴力被害の方への対応で、同性の捜査官の配備の問題でございますが、この点につきましては、「警察庁において、性暴力被害者への対応等に資するよう、同性の捜査官の配備にさらに努める。」
 4つ目でございますが、公的シェルターでの人権侵害や女性相談員への不信の訴えというものがございました。これにつきまして、「厚生労働省において、公的シェルターにおける犯罪被害者等への対応を確実にするための研修・啓発を実施していく。」
 最後、5点目でございますが、民事訴訟においても遮へい措置、ビデオリンク、付き添いを認めてほしいというご要望がございました。これを踏まえまして、「法務省において、民事訴訟においても遮へい措置、ビデオリンク、付き添いを民事訴訟法上認めることについて検討を行い、1年以内を目途に結論を出し、その結論に従った施策を実施する。」

○宮澤座長 ただいまのおまとめにご発言のご希望があるようですから、どうぞ。

○河村構成員(法務省) 法務省でございますが、最後の民訴の法整備の検討でございますけれども、私どもも前向きに検討はいたします。ただ、1年ということで申しますと、精いっぱいやりますが、やや困難な、基本的な手続法制の整備そのものでございますので、そこはほかの刑事手続に関します法整備と同じ程度の猶予をいただければありがたいと思います。

○事務局 皆様のご異論がなければ、2年以内というふうにさせていただきたいと思います。

○宮澤座長 もしほかにご発言のご要望がなければ、もう大分時間を超過しまして、本当にざんきに耐えないところでありますが、村田大臣から一言お願いいたします。

○村田大臣 前回に引き続きロングランの検討会になりまして、皆さん方の熱心なご議論、まことにありがとうございました。
 私も、じっと聞いておりまして、片や大変細かい議論が一つあり、片や訴訟手続とか犯罪被害者に対する身体的、精神的、あるいは経済的な非常に新しい支援のシステムができるのかどうかという本格的な部分と両方相まって議論しているものですから、細かいところに入り過ぎたり、あるいはもとに戻ったりしながら議論が進められているわけでございまして、皆さん方、役所側も含めまして、その固まっていないところをもやもやしながら議論しているわけだから、行きつ戻りつの議論になるのも当然だと思いながら聞いているわけでございます。皆さん方には時間の点で大変ご負担をおかけいたしますけれども、どうか新しい制度に向かっていくとすれば、これも重要な過程でございますので、今後とも引き続きご協力を願えたら大変ありがたく思うわけでございます。今日は、本当に長い間、ありがとうございました。

○宮澤座長 どうもありがとうございました。それでは、検討会の事前準備に当たってお願いというのを、座長の権限をもって一言言わせていただきたいと思います。
 基本計画の作成作業自体、この夏までに骨子案を作成するという大変タイトなスケジュールであります。検討会では、効率的な議論を行うことが必要なのでありまして、そのために、事前にまず各省庁が考えていることを資料として提出していただき、各構成員に配布しておるわけであります。そして、有識者の構成員にもそれぞれのお考え、意見を事前に提出していただいているわけです。検討会の場では、これら提出のあったものを前提に、検討会の場でどう考えるかという議論をするわけなのであります。
 しかしながら、検討会の直前になって提出されたものについて、これを受けとめる各省庁にとっては検討時間がないということになりまして、追加の議論について深まらないおそれもないわけではありません。大変厳しい注文ではありますけれども、意見等の提出については、どうぞ事務局が事前にお示ししたスケジュールどおりに提出していただけるよう、ぜひともご協力願いたいと思います。もとより官庁側においても、期限を守っていただくようお願いするものであります。
 今日は、どうもありがとうございました。


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